短い在胎期間の早産の新生児は
その在胎期間に反比例して病気に対する罹患率、
また命を落とすケースが多くなります。
つまり、在胎期間が短く生まれるほど
その様なリスクが高くなるため
生後の注意深い健康維持が大切になります。
出産前のステロイド療法や
サーファクタントを入れ替える
Surfactant replacement療法は
成熟していない肺を持つ新生児の生存率改善に効果があります。
サーファクタントは肺胞の内側にある界面活性剤で
吸い込んだ空気圧に応じて肺胞を広げるためのエネルギーを節約し、
スムーズに酸素を取り込むのに貢献します。
特に、早産に関わらず新生児において
出生時には急激な酸素飽和度の変化がある事も含めて考えると
呼吸、それに関わる呼吸器を健全に管理する事は
重要であると理解しています。
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ステロイドやサーファクタントを使った治療にも関わらず、
一命をとりとめた赤ちゃんにおいて
心肺や脳神経に後遺症が出ることがあります。
今のところこのような心肺、脳神経の疾患を防ぐ
あるいは治療するための単一の効果的な治療法は存在しません。
従って、このようなリスクが高いとされる
超早産児において、このような症状が生じたとき
あるいはリスクが確認された時点で
適切な処置を行えるような新しい治療法が喫緊、必要になっています。
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間葉細胞の幹細胞、間質細胞を使った治療は
新生児学に関連する肺の損傷の多くの実験的なモデルを
立てるために有望であると考えられています。
間葉細胞を使った治療の潜在性は
その細胞が細胞外に分泌するタンパク質群を
利用することで発揮されます。
その細胞外に分泌されるSecretome(タンパク質)は
エクソソームに内包された形で放出されます。
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Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas
(敬称略)からなる医療研究グループは
特に新生児が罹患する肺傷害に焦点を当て、
新生児疾患に対する間葉系幹細胞ベースの治療の
発展と重要性について総括されています(1)。
特に細胞治療の中でエクソソームベースの治療の発展
そして臨床応用するための課題について述べられています(1)。
非常に短い在胎期間の超早産児においては
新生児疾患のリスクが高まります。
例えば
〇脳室周囲白質軟化症
〇網膜症
〇低酸素性虚血性脳症
〇気管支肺異形成症
これらです(2-4)。
これらに対して単一で効果的な治療法は今のところ存在しません。
従って、これらの超早産児の一部のお子さんが持つ
併存症のリスクを減らす、治療するための
新しい治療法、道具が強く望まれています。
Stoll et al.(敬称略)は34000人規模の早産児の
20年の縦断調査の中で
成長が未熟な事に関連するいくつかの疾患の頻度は
年々減少してきています。
しかし、2009-2012年の間で
22週から27週の在胎期間(正期産児は37-42週)。
この新生児の気管支肺異形成症のケースは増えている
と報告されています(2)。
疾患の頻度が減った理由は
お子さんに対する医療ケアが発展した事が挙げられています。
それによってNICU(新生児特定集中治療室)は
より重症の未成熟な肺を持つ新生児を診ることなりました。
その中で治療や予防の難しさに直面しています(5)。
特に新生児のケアにおいては
心臓、肺、血管の状態の健全性は重要だと考えられます。
特に肺による呼吸の機能は
これらすべてと脳に影響を与えるため、
気管支肺異形成症を含めて、
いかなる難しい状況においても治療法を確立していく事は
お子さんの命を救うだけではなく、
その後、その患者さんの人生の健康状態を
改善する事に繋がります。
--
気管支肺異形成症は多因子性の慢性肺疾患です。
酸素補充や人工呼吸器によって治療を受けている
早産幼児に排他的に生じます。
〇肺の成長停止
〇肺胞組織の単純化(組織異常形成)
〇血管形成の不全
〇異常な肺胞機能
これらです(6)。
気管支肺異形成症を持つ幼児は
すでに肺機能の異常は出生時から生じています。
それが幼児期、児童期、青年期まで持続します。
以前、気管支肺異形成症であった若い人は
気道過敏症の発生確率があがります。
肺胞の組織が壊れる肺気腫様の特徴を持つ
肺機能の不全が生じる確率も同様です(7,8)。
その様な中で肺高血圧症が発展すると
命とかかわるものになります(9,10)。
従って、気管支肺異形成症とそれに関わる疾患、後遺症は
新生児の時期特異的な疾患ではなく、
その患者さんの一生の肺の状態に複数の因子で関わるものです。
現在の新生児集中治療は早産児の生存をサポートするだけではなく、
それに関わる肺の損傷を最小化して、
その後の回復を促すこともを目的としています(11)。
〇通気の方法
(適切な酸素濃度の確保)
〇サーファクタントの補充
(肺胞の運動性を助ける)
〇コルチコステロイドの使用
(炎症が生じている免疫機能を調整する)
これら以外に、現状では気管支肺異形成症を防ぐ、治療する
効果的な方法はありません。
現在における最も効果的な方法は
〇合成、動物由来のサーファクタント補充
〇コルチコステロイド投与量とタイミングの最適化
〇通気技術の最適化
これらが挙げられています(12)。
通気技術では少量の気体を高頻度で流す
高頻度人工換気法が検討されます(13)。
このような最適化により改善は期待されますが、
気管支肺異形成症の治療を劇的に改善させるものではありません。
また気管支肺異形成症は多因子の疾患なので
単一経路を標的とした治療では大きな臨床的結果を
達成するのは難しいとされています。
他の方法
〇吸入式一酸化窒素(NO)(14)
〇ビタミンA補充(15)
これらが挙げられていますが、
効果的な臨床的結果をなかなか生みだせない状況にあります。
新たな治療のアプローチとして
〇肺の恒常性
〇正常な組織成長
これらを実現するための必要性が高まっています。
幹細胞治療はこれらの目的を示すことができる
可能性がある有望な方法です。
その細胞治療の中で
〇間葉系細胞
そこから放出される
〇エクソソーム
これを使った治療について焦点を当てて総括されています(1)。
//考察//ーー
間葉系幹細胞は骨、血管、心筋などの再構築など
再生医療を含めた組織の再構築に関連する分化能を持つ
とされています。
従って、新生児など組織成長の臨界期にある時期における
肺組織の成長異常において、
その正常な組織形成を促す根本的な治療に
貢献する可能性があります。
間葉系幹細胞と新生児の気管支肺異形成症の関係において
間葉系幹細胞は「傍分泌様」の効果で組織の回復に貢献する
可能性があると動物モデルで示されています。
例えば、
〇IL-6
〇IL-8
〇血管内皮成長因子
〇コラーゲン
〇エラスチン
これらです。
骨、血管、心筋とは異なり組織の再生よりも
むしろこのような分泌物が大きいとされています(16)。
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas
(敬称略)は、気管支肺異形成症において
これらの傍分泌に関わるエクソソームに焦点を当てています。
〇間葉系幹細胞そのものが与える影響
〇間葉系幹細胞由来の細胞外小胞が与える影響
〇間葉系幹細胞からの上記以外の分泌物
いくつかの要因がありますが、
それを紐解く事によって、
より有効な治療が見つかる可能性があります。
例えば、
エクソソームの役割が大きいということが分かれば、
間葉系幹細胞から放出されたエクソソームによって
治療する事ができます。
その時により詳しい病理、病態がわかれば、
エクソソームの場合は「細かい機能化」ができるので
それによってより高い治療効果が得られる可能性があります。
その機能化とは
〇大きさなどの調整
〇表面リガンド
〇内容物(場合によって薬剤封入)
これらです。
//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
間葉幹細胞由来のエクソソームを使った治療において
静脈注射で治療する場合、
エクソソームを気管支異形成症を持つお子さんの
傷ついた肺に届きやすいように
エンジニアリングする事でより選択的に治療することが
できる可能性があります。
その際、成長不全病変部位特異的に見られる
周辺に存在する免疫細胞や組織の表面タンパク質リガンドを
分析して、それに特異的に結合するリガンドを
エクソソーム表面に発現させることです。
エクソソーム内には間葉系幹細胞から受け取った
成長に必要ないくつかのタンパク質が入っていると
考えられますが、それに加えて
健全な成長を促すタンパク質、核酸などがあれば
それも加えて輸送する事も考えられます。
(参考文献)
(1)
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas
“Good things come in small packages”: application of exosome-based therapeutics in neonatal lung injury
Pediatric Research volume 83, pages298–307 (2018)
(2)
Stoll BJ, Hansen NI, Bell EF, et al. Trends in care practices, morbidity,
and mortality of extremely preterm neonates, 1993–2012. JAMA
2015;314:1039–51.
(3)
Manuck TA, Rice MM, Bailit JL, et al. Preterm neonatal morbidity and
mortality by gestational age: a contemporary cohort. Am J Obstet
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(4)
Fanaroff AA, Stoll BJ, Wright LL, et al. Trends in neonatal morbidity
and mortality for very low birthweight infants. Am J Obstet Gynecol
2007;196:147.e141–e147.e148.
(5)
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86–90.
(6)
Baraldi E, Filippone M. Chronic lung disease after premature birth.
N Engl J Med 2007;357:1946–55.
(7)
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in very low birth weight infants with or without bronchopulmonary
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corrected age. BMC Pediatr 2012;12:37.
(8)
Stocks J, Hislop A, Sonnappa S. Early lung development: lifelong effect
on respiratory health and disease. Lancet Respir Med 2013;1:728–42.
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Khemani E, McElhinney DB, Rhein L, et al. Pulmonary artery
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dysplasia: clinical features and outcomes in the surfactant era. Pediatrics
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del Cerro MJ, Sabaté Rotés A, Cartón A, et al. Pulmonary hypertension
in bronchopulmonary dysplasia: clinical findings, cardiovascular
anomalies and outcomes. Pediatr Pulmonol 2014;49:49–59.
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Jain D, Bancalari E. Bronchopulmonary dysplasia: clinical perspective.
Birth Defects Res A 2014;100:134–44.
(12)
Collins JJP, Tibboel D, de Kleer IM, et al. The future of
bronchopulmonary dysplasia: emerging pathophysiological concepts
and potential new avenues of treatment. Front Med 2017;4:61.
(13)
Benjamin W. Ackermann, Daniel Klotz, Roland Hentschel, Ulrich H. Thome & Anton H. van Kaam
High-frequency ventilation in preterm infants and neonates
Pediatric Research (2022
(14)
Mercier J-C, Hummler H, Durrmeyer X, et al. Inhaled nitric oxide for
prevention of bronchopulmonary dysplasia in premature babies
(EUNO): a randomised controlled trial. Lancet 2010;376:346–54.
(15)
Couroucli XI, Placencia JL, Cates LA, et al. Should we still use vitamin A
to prevent bronchopulmonary dysplasia. J Perinatol 2016;36:581–5.
(16)
Fumihiko Namba
Mesenchymal stem cells for the prevention of bronchopulmonary dysplasia
Pediatr Int. 2019 Oct;61(10):945-950
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