RSウィルス関連で命を落とす子供は
年間に118,200人いると言われており、
そのうち6か月未満の若い子供は半分を占めるといわれています。
RSウィルスで命を落とすお子さんの多くは
発展途上国の子供です(6.7)。
RSウィルス感染症は下部呼吸器感染症であり
小児科領域では注目度の高い重要な疾患と言われています。
2歳までにほぼすべての小児が罹患して、
時として細気管支炎や肺炎を合併して重症となることがあります(2,3)。
この感染症は、心肺系、免疫系に基礎疾患がある場合において
重症化リスクが高いと言われています(4)。
母体から抗体移行があるにも関わらず、
ブレークスルー感染するといわれています。
現在の所、ワクチンはなく、
モノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)
が早産や基礎疾患がある場合において適用となっています(5)。
アメリカではRSウィルスは
幼児の入院の共通的な原因とさえており
年間で10万人あたり2千人が
RSウィルス関連肺炎に罹るという統計があります(7-9)。
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上述したモノクローナル製剤は
RSウィルスが流行する季節に数回投与する必要があり
現在では基礎疾患のあるごくわずかな小児に対する
推奨に留まっています(10,11)。
--
今までワクチンの開発はされていましたが
副反応の懸念からその開発が遅れていました。
--
RSウィルスの感染の為に必要なプレ融合構造である
Fタンパク質は中和抗体におけるメインの標的部位となります。
それに対するワクチンの開発が
再び活発になっています(12-14)。
アメリカのファイザー社が開発した
二価(bivalent)のFタンパク質を標的としたワクチン
(RSVpreF vaccine)。
これを妊娠後期(6~9カ月)の女性に対して
アメリカでフェーズ3の盲検試験が行われました。
その中和抗体量、感染(予防)、副反応の結果について
Eric A.F. Simões(敬称略)ら医療研究グループが
報告されています(1)。
このように妊娠女性にワクチンを接種して
免疫を付けておくことが胎児に垂直伝染する効果は
インフルエンザ、破傷風、百日咳で知られています(15-17)。
本日はその結果の一部を
読者の方と共有したいと思います。
(注釈)
水酸化アルミニウムがアドジュバントとして検討されていますが、
アドジュバントがない条件のほうが副反応、中和抗体など
の結果が優れているためアドジュバントなしの結果を抜粋します。
またワクチンの量は120μgの結果を抜粋します。
//副反応、安全性//ーー
(接種箇所の反応)
痛み:30%程度、赤み、腫れは5%以下
(全身性の反応)
倦怠感:50%程度ですが偽薬と変わりません。
頭痛、筋肉通、嘔吐はやや
ワクチン接種群のほうが高くなっています。
特に筋肉痛、嘔吐は中程度の人が
10%程度とやや高くなっています。
(参考文献(1) Figure 2参照)
--
接種1か月以降の
重篤な副反応の頻度はワクチン接種群(いずれの条件でも)
と偽薬群で顕著な差はありません。
母親、子供両方です。
しかし、治験期間で医療的な介入が必要な副作用は
やや母親、接種群で高くなっています。
また子供においては
先天異常がワクチン接種群で高くなっています。
しかし、78%は臨床的に顕著に識別できないほどの軽度であり
母斑、へそヘルニア(出べそ)が含まれるとされています。
(参考文献(1) Table 1参照)
//中和抗体量//ーー
RSV A型、B型共に
1桁以上ワクチン接種群が高くなっています。
偽薬群も中和抗体量が基準値以上になっています。
つまり、ほとんどの人が感染歴があると評価できます。
--
これらの中和抗体量は1倍から2倍以上
臍帯血などを通して胎児に伝搬します。
従って、出生時のお子さんの中和抗体量は
1桁以上ワクチン接種群で高くなっています。
(参考文献(1) Figure 3参照)
(*)
しかし、経胎盤の抗体の子供への伝搬は
中低所得国では小さくなると言われています(19)。
//感染例//ーー
ワクチン接種群 405人は
2019年から2020年のRSウィルス感染例は
3人(軽度)、1人(重度)でした。
一方、偽薬では103人中
5人(軽度)、3人(重度)でした。
ワクチンの効果は
軽度:84.7%
重度:91.5%
これらです。
ただし、症例が少ないため、
ワクチンの効果の定量性を得るためには
もう少し大規模な調査が必要であると考えられます。
//考察//ーー
今回は妊娠女性に対するワクチン接種で有り
母子両方の安全性を担保する必要があります。
副反応のデータからは安全性の評価は
さらに慎重に行っていく必要があると判断されます。
特にRSウィルスで子供が命を落とすケースが多いとされる地域では
接種するベネフィットと副反応のリスクの
天秤のバランスが異なってきます。
ワクチンの効果と副反応を評価していくためには
もう少しスケールアップする事と
さらに長い追跡評価が必要だと考えました。
また、今回、症例は少ない中でも
重症の呼吸器疾患の予防率が高くなっています。
従って、ワクチン接種が軽症化に寄与するか?
という視点も新型コロナウィルスワクチンと同様に
重要になると考えられます。
(参考文献)
(1)
Eric A.F. Simões, M.D., Kimberly J. Center, M.D., Alan T.N. Tita, M.D., Ph.D., Kena A. Swanson, Ph.D., David Radley, M.S., John Houghton, D.O., Stephanie B. McGrory, B.S.N., Emily Gomme, Ph.D., Marquita Anderson, M.D., John P. Roberts, M.D., Daniel A. Scott, M.D., Kathrin U. Jansen, Ph.D., William C. Gruber, M.D., Philip R. Dormitzer, M.D., Ph.D., and Alejandra C. Gurtman, M.D.
Prefusion F Protein–Based Respiratory Syncytial Virus Immunization in Pregnancy
The New England Journal of Medicine 2022; 386:1615-1626
(2)
Laura L. Hammitt, M.D., Ron Dagan, M.D., Yuan Yuan, Ph.D., Manuel Baca Cots, M.D., Miroslava Bosheva, M.D., Shabir A. Madhi, Ph.D., William J. Muller, Ph.D., Heather J. Zar, Ph.D., Dennis Brooks, M.D., Amy Grenham, M.Sc., Ulrika Wählby Hamrén, Ph.D., Vaishali S. Mankad, M.D., et al., for the MELODY Study Group*
Nirsevimab for Prevention of RSV in Healthy Late-Preterm and Term Infants
The New England Journal of Medicine 2022; 386:837-846
(3)
RSウイルス|Respiratory syncytial virus
新潟大学
https://www.med.niigata-u.ac.jp/pub/respiratorysyncytialvirus/
(4)
RSウイルス感染症とは
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html
(5)
RSウイルス感染症Q&A(平成26年12月26日)
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html
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