2022年5月29日日曜日

免疫細胞由来エクソソームによる細胞種特異的輸送系統実現への可能性

細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)においては
病変部位の細胞が特異的に発現している
表面リガンドを見つけ、
それに結合親和性の高い表面リガンドを
ナノ粒子、細胞外小胞に装飾することを目的としています。
それによって病変部位への輸送効率を高めます。
その際にそのたんぱく質を探索する必要があります。
そのやり方によっては
リスクが大きくなるかもしれないという懸念があります。
それに対する現時点で持っている一つの答えは
免疫細胞由来の細胞外小胞(エクソソームなど)を使う事です。
Clotilde Théry, Laurence Zitvogel & Sebastian Amigorena 
(敬称略)がリソースとして示しているように
免疫細胞由来のエクソソームは
免疫細胞が持つ機能の一部を引き継いでいます。
元々、免疫細胞は非自己抗原など異物を発見したら
免疫機能が高まり、病変部位に対して反応する機序を持っています
この時に病変部位に対して
免疫機能が一定の向性、走化性を有していれば、
機能化したエクソソームを使うことで
他の機能を病変部位に有効に作動させることができます。
細胞ではなく、エクソソームを使う事の利点は
エクソソームは核酸や薬剤などを封入できるからです。
細胞では消化されてしまうため
CAR-T細胞のように細胞外の受容体に機能を持たせる
ことに留める必要があります。
ここで重要になるのが、前述したように
病変部位で機能が高まった免疫細胞の分布、過程です。
その走化性、向性の機序を理解する事が
エクソソームをどの細胞由来で得るかの選択に影響を与えます。
例えば、下のResourceに示しているように
インテグリンに結合するICAM1は
B細胞や樹状細胞由来のエクソソームに発現されています。
転移性の癌では特異的なインテグリンが発現されている
ことが確かめられていますから、
それに対するICAM1依存的な走化性はどうか?
このような視点があります。
あるいはるMHCクラスⅠ、Ⅱは
抗原提示によって免疫細胞を引き付けます。
癌細胞などで発現されています。
その際にキラー、ヘルパーT細胞が引き付けられますが、
同じ機序でエクソソームも引き付けられるかもしれません。
そこで一定の向性、走化性が生まれる可能性もあります。
癌抗原が多く分布している周辺の場所では
癌細胞そのものだけではなく、
エクソソーム、免疫細胞依存的にも
MHCクラスⅠ、Ⅱ依存的に引き付けられます。
なぜならMHCクラスⅠ、Ⅱは免疫細胞由来の
エクソソームにも分布しているからです。
そうすると病変部位付近の多く抗原があるところに
エクソソームも同様に多く分布します。
これは抗原提示したMHCクラスⅠ、Ⅱが
免疫細胞由来のエクソソームを引き付けること
を前提にしているので
これが成り立つかどうかが非常に重要です。
このような病変部位のエクソソームの局在化は
循環器を通しての免疫細胞由来のエクソソームの
輸送媒体としての潜在性を与えます。
--
また免疫細胞由来のエクソソームは
ナノ粒子でも同様に懸念される
移植片対宿主病(拒絶反応)、免疫惹起を
潜在的に抑える事ができる可能性もあります。
なぜなら、免疫細胞そのものから生まれた
小胞だからです。
自家移植の場合は当然そうですが、
異なるドナーでもNK細胞、樹状細胞など
自然免疫系由来のエクソソームでは
そのような拒絶反応は生じにくいかもしれません。
--
加えて、
すでにわかっている病変部位、
免疫細胞由来のエクソソームそれぞれの
表面リガンドの中の組み合わせの中で
高い親和性を示すものを見つけるという
帰納的なプロセスも役立ちます。
その遺伝子を明らかにし、抽出することで
標的性が上がるように過剰発現させる方法も考えられます。
その方法では想定されるリスクは
新規のタンパク質を探索するよりも
顕著に小さくなります。
--
Clotilde Théry, Laurence Zitvogel & Sebastian Amigorena(敬称略)
からなる医療研究グループは
2002年の時点でわかっている
主に免疫細胞由来のエクソソームが発現している
タンパク質についてのリソースを提供されています(1)。
そのリソースを引用させていただき、
付加的な説明を加え、
読者の方と情報共有したいと思います。

//Resource//ーー
(参考文献(1) Table1参照)
(*)各細胞種(〇)由来の
 エクソソームタンパク質
-----
<抗原提示>
(*)MHCクラスⅠ
〇B細胞(2)
〇樹状細胞(3)
〇腸細胞(4)
〇癌細胞(5)
〇T細胞(6)
MHCクラスI分子の機能は細胞内のタンパク質に由来する
ペプチド断片を細胞傷害性T細胞へ提示することであり
これが非自己抗原であれば、免疫応答が開始されます。
上述した細胞由来のエクソソームを通じて
非自己抗原があった時にキラーT細胞の活性を促す
ことができます。
-
*MHCクラスⅡ
〇B細胞(7)
〇樹状細胞(3)
〇腸細胞-IFN-γ処置(4)
〇マスト細胞(8)
〇T細胞(6)
これはMHCクラスI分子と同様に抗原提示しますが、
ヘルパーT細胞に対して行います。
-----
<インテグリン>
細胞表面の原形質膜にあるタンパク質で、細胞接着分子です。
α鎖、β鎖のヘテロダイマーで人では24種類が見つかっています。
(*)α4β1
〇網赤血球(9)
-
(*)αMβ2
〇樹状細胞(10)
-
(*)β2
〇T細胞(6)
-
(*)αLβ2
〇マスト細胞(11)
-----
<免疫グロブリンファミリーメンバー>
(*)ICAM1/CD54
〇B細胞(12)
〇樹状細胞(13)
〇マスト細胞(11)
ICAM-1は細胞表面の糖タンパク質であり、
一般的には血管内皮細胞と免疫系の細胞で発現しています。
細胞間接着分子です。
インテグリンに結合する受容体です。
-
(*)P-selectin
〇血小板(14)
GMP-140またはCD62Pとも呼ばれる膜貫通糖タンパク質であり、
活性化内皮細胞または活性化血小板と白血球との
相互作用を媒介します。
細胞接着分子の一つです。
-
(*)A33抗原
〇腸細胞(4)
腸組織に発現される膜貫通糖たんぱく質で
免疫グロブリンスーパーファミリーの新規のメンバーです。
-----
<細胞表面ペプチダーゼ>
(*)ディぺプチジルペプチダーゼⅣ/CD26
〇腸細胞(4)
ディぺプチジルペプチダーゼⅣ/CD26は被膜に結合した
特徴的な多機能タンパク質で
受容体、タンパク質分解分子として働きます。
-
(*)アミノペプチダーゼn/CD13
〇マスト細胞(11)
亜鉛イオン依存の被膜結合エクトペプチターゼで
N-ターミナルニュートラルアミノ酸を持つ
タンパク質、ペプチドを分解する傾向にあります(18)。
-----
<テトラスパニン>
細胞膜を4回貫通する構造を持つ膜タンパク質で
細胞膜上でインテグリンや増殖因子受容体などと複合体を形成し, 
機能を修飾することにより
細胞運動や細胞の活性化に関わります。
エクソソームのマーカーとして使われます。
(*)CD63
〇B細胞(12)
〇樹状細胞(3)
〇腸細胞(4)
〇血小板(14)
〇T細胞(6)
〇マスト細胞(15)
-
(*)CD37, CD53, CD81, CD82
〇B細胞(12)
-
(*)CD9
〇樹状細胞(10)
-----
<熱ショックタンパク質>
細胞が熱などのストレス条件下にさらされた際に発現が上昇して
細胞を保護するタンパク質の一群であり、
分子シャペロンとして機能する。
分子シャペロンとは機能を獲得するのを助けるタンパク質です。
(*)HSC70
〇網赤血球(16)
〇樹状細胞(10)
〇癌細胞(5)
-
(*)HSP84/90
〇樹状細胞(10)
〇腸細胞(4)
-----
<細胞骨格タンパク質>
(*)アクチン
〇樹状細胞(10)
〇腸細胞(4)
〇マスト細胞(11)
螺旋状の多量体を形成して
マイクロフィラメントの1種である
アクチンフィラメントを形作る球形のタンパク質です。
アクチンフィラメントは細胞の形を決定しています。
細胞質流動と、細胞分裂での収縮に関与しています。
-
(*)アクチン結合タンパク質(コフィリン)
〇樹状細胞(17)
アクチンフィラメントのダイナミクスを
制御するタンパク質です(19)。
-
(*)チューブリン
〇樹状細胞(17)
〇腸細胞(4)
真核生物の細胞内にあるタンパク質であり、
微小管や中心体を形成しています。
-----
<膜輸送と融合>
(*)アネキシンⅠ,Ⅱ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵ
〇樹状細胞(17)
アネキシンはルシウムおよびリン脂質に結合する
タンパク質ファミリーで20種類以上が見い出されている。
約70アミノ酸残基からなるαヘリックスが4回
繰り返した構造であります。
細胞内外で多様なリガンドと相互作用、結合する
タンパク質です。
小胞の輸送にも関わり、
エクソサイトーシスやエンドサイトーシスにも関わります。
-
(*)アネキシンⅥ
〇マスト細胞(11)
-
(*)RAB7/RAP1B/RABGDI
〇樹状細胞(17)
Ras関連タンパク質Rab-7aは、
物質を細胞内に取り込むプロセスであるエンドサイトーシス
に関与しています。
-----
<信号伝達>
(*)Gi2α/14-3-3
〇樹状細胞(17)
-
(*)CBL/LCK
〇T細胞(6)
CBL細胞シグナリングとタンパク質のユビキチン化に関与する
E3ユビキチンリガーゼです。
Lckは、リンパ細胞内に見られる
56kDaのタンパク質です。
ナイーブT細胞とエフェクターT細胞の
両方でT細胞受容体シグナル伝達を活性化するために重要です。
-----
<代謝酵素>
(*)エノラーゼ-1
〇腸細胞(4)
エノラーゼ1は、一般的にアルファエノラーゼとして知られており、
ほとんどの組織で発現する解糖酵素です。
(*)チオレドキシン-ペルオキシダーゼ
〇樹状細胞(17)
チオレドキシン-ペルオキシダーゼ
チオール含有タンパク質で酸化ストレスの間
過酸化水素を分解するのに関与しています。

(参考文献)
(1)
Clotilde Théry, Laurence Zitvogel & Sebastian Amigorena 
Exosomes: composition, biogenesis and function
Nature Reviews Immunology volume 2, pages569–579 (2002)
(2)
Kleijmeer, M. J. et al. Antigen loading of MHC class I
molecules in the endocytic tract. Traffic 2, 124–137 (2001).
(3)
Zitvogel, L. et al. Eradication of established murine tumors
using a novel cell-free vaccine: dendritic-cell-derived
exosomes. Nature Med. 4, 594–600 (1998).
(4)
van Niel, G. et al. Intestinal epithelial cells secrete exosome-
like vesicles. Gastroenterology 121, 337–349 (2001).
(5)
Wolfers, J. et al. Tumor-derived exosomes are a source of
shared tumor rejection antigens for CTL cross-priming.
Nature Med. 7, 297–303 (2001).
(6)
Blanchard, N. et al. TCR activation of human T cells induces
the production of exosomes bearing the TCR/CD3/ ζ
complex. J. Immunol. 168, 3235–3241 (2002).
(7)
 Raposo, G. et al. B lymphocytes secrete antigen-presenting
vesicles. J. Exp. Med. 183, 1161–1172 (1996).
(8)
Raposo, G. et al. Accumulation of major histocompatibility
complex class II molecules in mast-cell secretory granules
and their release upon degranulation. Mol. Biol. Cell
8, 2631–2645 (1997).
(9)
Rieu, S., Geminard, C., Rabesandratana, H., Sainte-Marie, J.
& Vidal, M. Exosomes released during reticulocyte
maturation bind to fibronectin via integrin  α 4 β 1. Eur. J.
Biochem. 267, 583–590 (2000).
(10)
Thery, C. et al. Molecular characterization of dendritic-
cell-derived exosomes. Selective accumulation of the
heat-shock protein hsc73. J. Cell Biol. 147, 599–610
(1999).
(11)
Skokos, D. et al. Mast-cell-dependent B- and T-lymphocyte
activation is mediated by the secretion of immunologically
active exosomes. J. Immunol. 166, 868–876 (2001).
(12)
Escola, J. M. et al. Selective enrichment of tetraspan
proteins on the internal vesicles of multivesicular endosomes
and on exosomes secreted by human B lymphocytes. 
J. Biol. Chem. 273, 20121–20127 (1998).
(13)
Clayton, A. et al. Analysis of antigen-presenting-cell-derived
exosomes, based on immuno-magnetic isolation and flow
cytometry. J. Immunol. Methods 247, 163–174 (2001).
(14)
Heijnen, H. F., Schiel, A. E., Fijnheer, R., Geuze, H. J. &
Sixma, J. J. Activated platelets release two types of
membrane vesicles: microvesicles by surface shedding and
exosomes derived from exocytosis of multivesicular bodies
and  α -granules. Blood 94, 3791–3799 (1999).
(15)
Vincent-Schneider, H. et al. Exosomes bearing HLA–DR1
molecules need dendritic cells to efficiently stimulate specific
T cells. Int. Immunol. 14, 713–722 (2002).
(16)
Johnstone, R. M., Adam, M., Hammond, J. R., Orr, L. &
Turbide, C. Vesicle formation during reticulocyte maturation.
Association of plasma-membrane activities with released
vesicles (exosomes). J. Biol. Chem. 262, 9412–9420 (1987).
(17)
Thery, C. et al. Proteomic analysis of dendritic-cell-derived
exosomes: a secreted subcellular compartment distinct
from apoptotic vesicles. J. Immunol. 166, 7309–7318
(2001).
(18)
Malin Wickström,  Rolf Larsson,  Peter Nygren,  and Joachim Gullbo
Aminopeptidase N (CD13) as a target for cancer chemotherapy
Cancer Sci. 2011 Mar; 102(3): 501–508.
(19)
Zofia Ostrowska, Joanna Moraczewska
Cofilin - a protein controlling dynamics of actin filaments
Postepy Hig Med Dosw (Online). 2017 May 5;71(0):339-351.


0 コメント:

コメントを投稿

 
;