Lesley Cheng & Andrew F. Hill(敬称略)
からなる医療研究グループは
細胞外小胞を治療として利用するための
具体的な研究成果を総括されています(1)。
また、生体模倣の細胞外小胞の内容についても
総括の中で触れられています。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有したいと思います。
//治療効果がある積載物輸送//ーー
細胞外小胞を使った治療としての利点は
自家移植として利用されたときには
低い免疫原性を示し、副作用を減らすことができる事です。
また、
大きさや脂質膜の構成は
標的細胞と融合し、それに取り込まれるために
理想的であると考えられています。
さらに、内容物を劣化させることなく
輸送する事が可能です。
--
その内容物を積載する方法はいくつかあります。
〇親細胞に過剰発現させる。
〇物理的に封入する、電気穿孔法など。
〇化学的な処理を使う。
これらなどです。
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miRNAとsiRNAは細胞外小胞に搭載され
それが受け細胞まで輸送されたことは
発光酵素遺伝子発現ベースアッセイを使って
立証されました(2,3)。
--
封入例として、
人の血漿から分離された細胞外小胞の中に
電気穿孔法を使って
抗癌性のあるmiRNAを封入する事に成功しています。
それにより
人の癌細胞細胞株のアポトーシスが促進された事が
試験管によって確かめられました(4)。
--
積載できる大きさは
DNAの場合には少なくとも数百分子量までは
1つの細胞外小胞当たり積載する事ができます。
しかし、その限度は
おおよそ750~1000ベースペア
プラスミドDNAでは4.5kb~10kbである
とされています。
DNAの長さが大きくなると積載効率は低下します(4)。
--
上述した電気穿孔法の場合は
核酸が凝集して、積載効率を低下させる問題があり、
その凝集を回避するための付加的な対策が必要です(5,6)。
--
親細胞内で治療効果のある積載物を過剰発現させて
自発的に細胞外小胞に搭載する手法は
特にエクソソームのような小さな細胞外小胞に
搭載する手法としては共通的です。
このアプローチはエクソソームの生物学的な
生成過程、取り込み過程を利用する事になります。
例えば、
miR-146aを過剰発現させた樹状細胞から生み出した
細胞外小胞は同様にmiR-146aを多く含みます。
重症筋無力症、神経系自己免疫疾患のマウスモデルで
抗炎症性、CD80, CD86のレベルを低下させました(7)。
同様に
骨髄間葉細胞由来の細胞外小胞に対して
miR-146bを過剰発現させ、搭載した実験では
原発脳腫瘍のラットのモデルで
グリオーマ異種移植成長を減少させました(8)。
--
細胞種特異的輸送系統(*)に関連する
特定の細胞種への標的性を高める
細胞外小胞への機能化として
RNAアパタマーがあります。
それを
「バクテリオファージphi29
モーターパッケージングRNA」
これに取り付けます。
それによって細胞外小胞表面に発現され
癌細胞で過剰発現されている特定の受容体に結合します(9)。
同じように
脳を標的とする場合には
LAMP2を神経細胞特異的RVGペプチドと融合させ
細胞外小胞表面に装飾します。
これによって
siRNAをアルツハイマー病のマウスのケースで
脳に輸送させる事に成功しています(9)。
--
HChrR6エンコードmRNAを持つ細胞株の
遺伝子導入は癌組織、
例えば、異種移植乳癌で
ほぼ完全に成長を止めたという
治療効果が動物のケースでありました(10)。
--
間葉系幹細胞から分泌した
臨床グレードの細胞外小胞(CD9+, CD63+, CD81+)
に対して発がん性変異KRAS^G12D特異的なsiRNAを
電気穿孔法で封入したiExosomesでは
KRAS^G12Dに変異がある人の膵臓癌細胞での
マウスモデルにおいて腫瘍組織の
成長をほぼ検出できないレベルまで低下させました(11)。
--
上述したように
LAMP2を神経細胞特異的RVGペプチドと融合させ
細胞外小胞表面に装飾した
アルツハイマー病マウス実験モデルでは
血液脳関門を通過し、
神経細胞、マイクログリア、乏突起膠細胞
に標的化されました(9)。
--
心筋幹細胞の一種であるcardiosphere由来の
細胞外小胞は心筋の生存、増殖を促進し
血管生成を促します。
この手法は損傷を負った心筋に対する再生のために
検討されます(17)。
--
聴覚障害の治療の為の
蝸牛有毛細胞に対して遺伝子治療をするために
アデノウィルスベクトルを含む
細胞外小胞の使用が検討されています(18)。
--
細胞外小胞は標的タンパク質を輸送するために
エンジニアリングすることもできます。
NDFIP1は細胞外小胞へ搭載されたタンパク質に
関与する物質として確認されます(12)。
それはNDFIP1によって認識される
WWタグを持つ標的タンパク質をラベル化する
事によって利用できます。
結果として標的タンパク質が
細胞外小胞内に搭載されます。
その証明のために使われた最初のタンパク質は
Cre-recombinaseです。
これは受け細胞によって内包された
レポータータンパク質として使われます(13)。
WWタグCre-recombinaseを含む
細胞外小胞の鼻腔輸送は
脳において積極的な取り込みがありました。
そのことは
これらのエンジニア細胞外小胞は
神経疾患に対して利用できるとされています(14)。
//生体模倣の小胞//ーー
治療で利用できる小胞は
細胞由来の細胞外小胞に加えて
〇生体模倣小胞
〇リポソーム
〇カーボンナノチューブ
〇ミセル
〇デンドリマー
これらが挙げられています(1)。
--
細胞由来の生体模倣の小胞は
特定の細孔を設けたフィルターに押し込んで
人工的に特定の大きさの小胞を作り出すプロセスです。
この生体模倣の小胞は
大きさや被膜の構成を含めて
細胞外小胞と似た特性を持っています。
この方法では
異なる親細胞から生成され
エクソソームのような小さな細胞外小胞と比べて
100倍以上の小胞の収量を得たとされています(15)。
この生体模倣の細胞外小胞を得るためには
フラグメントとなる脂質が細胞膜に必要で
それが押し込みの過程で
球状の構造に再構成させる機能を持ちます。
その過程で周辺の分子も取り込みます。
--
この生体模倣の小胞の製造プロセスは
主に三工程からなります。
〇細胞を取得し、適切な緩衝内で再懸濁させる。
〇機械的な力で細胞を破壊する。
〇生産するための小胞を精製、濃縮する。
この生産方法の利点は
大量生産が可能で、
合成の間に任意の薬剤を封入できる可能性がある
ということです。
実際に抗がん剤を入れた報告があります。
それを発がんしているマウスに投与しました(16)。
--
生体模倣の小胞は研究でとどまり、
産業化には至っていません。
//考察//ーー
生体模倣の細胞外小胞は機械的な圧力によって
人工的に細胞外小胞を生み出す方法として
広く普及している自発的な方法と差別化されます。
上述したように
任意の大きさに穴を揃えて開けて
押し込むことによって
その反動で細胞膜が突出し、
さらに押し込むと膜が根元でちぎれて
一定割合の細胞外小胞が得られるという
手法であると理解しています。
この方法だと細胞膜の表面リガンドを
確実に反映させる事ができます。
エクソソームの製造バラツキがどうしても
改善できなかった時の代わりの方法として
生体模倣の細胞外小胞の製造プロセスは
1つ挙げられると考えられます。
(参考文献)
(1)
Lesley Cheng & Andrew F. Hill
Therapeutically harnessing extracellular vesicles
Nature Reviews Drug Discovery volume 21, pages379–399 (2022)
(2)
Alvarez-Erviti, L. et al. Delivery of siRNA to the mouse
brain by systemic injection of targeted exosomes.
Nat. Biotechnol. 29, 341–345 (2011)
(3)
Banizs, A. B. et al. In vitro evaluation of endothelial
exosomes as carriers for small interfering ribonucleic
acid delivery. Int. J. Nanomed. 9, 4223–4230
(2014).
(4)
Lamichhane, T. N., Raiker, R. S. & Jay, S. M.
Exogenous DNA loading into extracellular vesicles
via electroporation is size-dependent and enables
limited gene delivery. Mol. Pharm. 12, 3650–3657
(2015).
(5)
Kooijmans, S. A. A. et al. Electroporation-induced
siRNA precipitation obscures the efficiency of siRNA
loading into extracellular vesicles. J. Control. Release
172, 229–238 (2013).
(6)
Johnsen, K. B. et al. Evaluation of electroporation-
induced adverse effects on adipose-derived stem cell
exosomes. Cytotechnology 68, 2125–2138 (2016).
(7)
Yin, W. et al. Immature exosomes derived from
MicroRNA-146a overexpressing dendritic cells
act as antigen-specific therapy for myasthenia gravis.
Inflammation 40, 1460–1473 (2017).
(8)
Katakowski, M. et al. Exosomes from marrow stromal
cells expressing miR-146b inhibit glioma growth.
Cancer Lett. 335, 201–204 (2013).
(9)
Pi, F. et al. Nanoparticle orientation to control RNA
loading and ligand display on extracellular vesicles
for cancer regression. Nat. Nanotechnol. 13, 82–89
(2018).
(10)
Wang, J. H. et al. Anti-HER2 scFv-directed
extracellular vesicle-mediated mRNA-based gene
delivery inhibits growth of HER2-positive human
breast tumor xenografts by prodrug activation.
Mol. Cancer Ther. 17, 1133–1142 (2018).
(11)
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clinical-grade exosomes for pancreatic cancer.
JCI Insight 3, e99263 (2018).
(12)
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(Ndfip1) is required for the exosomal secretion
of Nedd4 family proteins. J. Biol. Chem. 283,
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(13)
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1269–1278 (2017).
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modification profiling of exosome-mimetic nanovesicles
compared to exosomes. Proteomics 19, e1800161
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nanovesicles for targeted delivery of chemotherapeutics
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(17)
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to inner-ear hair cells using exosome-associated AAV.
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