2022年5月27日金曜日

リソソームの活性と動的機序とホスフォイノシチド

リソソームは細胞内の物質の消化に関わる
細胞内小器官なので
細胞の栄養状態に応じて
その働きが変わることが考えられます。
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
(敬称略)からなる医療研究グループは
リソソームの機能を中心として
栄養状態、ホスフォイノシチドとの関連について
総括されています(1)。
本日はその内容の一部、追記、まとめについて
読者の方と情報共有したいと思います。

//リソソームとホスフォイノシチド//ーー
リソソームは多様な型のホスフォイノシチドを有しています。
それは細胞の機能、代謝状態に依存して
独特な役割を担うことと関連しているかもしれません。
オートファゴソーム、エンドソーム機能を制御する
PtdIns3Pに加えて、
リソソームはPtdIns(3,5)P2、PtdIns5Pを有しています。
これらのホスフォイノシチドは
〇リソソーム
〇後期のエンドソーム(多胞体)
〇他のリソソーム関連細胞内小器官
これらに対して特異的であると考えられます(2,3)。
一方、
リソソームは
PtdIns4P、PtdIns(4,5)P2からなる
ホスフォイノシチドは多くは含まず、
これらはゴルジ複合体や細胞膜に多く含みます(4-6)。
PtdIns(3,4)P2は希少なホスフォイノシチドです。
これはリソソームの機能を制御するかもしれません(7,8)。
これらの異なるホスフォイノシチドを含むことは
リソソームの機能状態と関連しています(9)。

//リソソームの動的機序と栄養信号//ーー
リソソームは代謝信号ハブとして重要な役割があります(9)。
〇インスリン
〇成長因子信号
〇栄養の利用性
これらはmTORC1によって統合され
異化と同化経路の均衡状態が保たれます。
mTORC1は複数のタンパク質
〇kinase mTOR
〇distant relative of the PI3Ks
〇regulatory-associated protein of mTOR(Raptor)
〇additional subunits
これらから成ります。
細胞やリソソームのアミノ酸の状態に反応して
Rag small GTPasesによってリソソームに引き付けられます。
--
ホスフォイノシチドは
リソソームの mTORC1活性を制御します。
それにより任意の細胞内サイトで
栄養物質の代謝を制御します。
細胞膜でインスリンや関連受容体が
一旦リガンドに結合すると
class I PI3Ksを活性化させ
PtdIns(3,4,5)P3を生成させます。
引き続いてエフェクタータンパク質キナーゼAKT
を脂質仲介で活性化させます。
細胞表面でのこのAKTの持続的な活性化は
PtdIns(3,4,5)P3からPtdIns(3,4)P2への
加水分解によって達成されます(7)。
この活性化されたAKTは間接的に
mTORC1活性を刺激します。
これはリソソーム結節硬化複合体2(TSC2)の
リン酸化反応による抑圧によって生じます。
また
mTORC1-activating RHEB GTPase。
これも関与します(7,9)。
--
mTORC1活性とリソソームの動的機序は
リソソームのホスフォイノシチドによって
局所的に制御されています。
例えば、
PtdIns3P, PtdIns(3,4)P2、PtdIns(3,5)P。
これらです(10)。
PtdIns3P生成キナーゼVPS34は
mTORC1の活性を必要とします。
mTORC1の活性のPtdIns3Pの仲介は
小胞体とリソソームの膜接触の形成が必要で
リソソームmTORC1が細胞周辺へ転座する必要があります。
そこでインスリン、成長因子信号が起こります(11)。
このメカニズムは
〇小胞体被膜タンパク質のprotrudinと
 リソソームPtdIns3Pの接続、
〇PtdIns3P結合タンパク質FYVE
  coiled-coiledドメイン含有タンパク質FYCO1
 これらのリソソームへの引き付け
これらが必要です。
これはリソソームのキネシンによる輸送を
誘発するために必要です(12)。
protrudinとFYCO1のどちらが欠損すると
mTORC1活性は抑制され、
細胞核のTFEBレベルが増加します。
この事は
〇ホスフォイノシチド
〇mTORC1
〇リソソーム恒常性、動的機序
これらが密接に相互に関連している事を示しています。
--
PtdIns3Pがリソソーム機能と動的機序を制御している
第二のメカニズムはPIKfyveを通して
PtdIns3PからPtdIns(3,5)P2を生成している事に関係します。 
PtdIns(3,5)P2はmTORC1-inhibitory TSCの
膜への引き寄せを促進するものです。
異なる細胞種でmTORC1制御における
PtdIns(3,5)P2の対立的な役割が
どのように調整されるか?
というのはさらなる研究が必要です。
--
Class III PI3K VPS34によるPtdIns3Pの生成は
mTORC1を亢進し、リソソームの分散を誘発します。
一方、
Class II PI3K PI3KC2βによるPtdIns(3,4)P2の
リソソーム貯蔵の局所的な生成は
反対の役割を有します(8)。
成長因子が不足した状態では
PI3KC2βは
リソソーム上のmTORC1 subunit Raptorを引き付け
PtdIns(3,4)P2を生み出すために 
PtdIns4Pをリン酸化します。
PtdIns(3,4)P2合成はmTORC1信号を抑制します。
これは
〇inhibitory 14-3-3 proteins(8)
これの引き寄せ
〇oxysterol-binding protein (OSBP)-related protein 1 long isoform(ORP1L)-mediated transport of cholesterol 
〇mTORC1活性のimportant cofactor
この働きを促進することで生じます(13)。
リソソームのPtdIns(3,4)P2は
リソソームが微小管形成中心へ逆行性輸送する事を促進します。
mTORC1信号のPI3KC2β仲介抑制は
細胞の栄養状態が改善すると緩和されます。
それは
〇タンパク質キナーゼN仲介リン酸化
〇PI3KC2βの複合体形成
これらに依ります(14)。
リソソームのPtdIns(3,4)P2のエフェクタータンパク質は
ほとんどわかっていません。
その中で
PtdIns(3,4)P2はsmall GTPasesの活性循環に影響を与えます。
そのことはリソソームを
ダイニン、キネシンんモーターにリンクさせます。
それによってリソソームの位置とmTORC1活性を制御します(9,15)。
これはリソソームとキネシン接続を促進する
ADPリポシル化因子様8(ARL8)を含みます。
また、リソソームをダイニン、キネシンモーターに
接続するRAB7を含みます(16-18)。
しかし、
リソソームの位置取りとmTORC1の活性が
どのように機械的に関わっているかは
まだほとんどわかっていません。
--
総合すれば、上述したことは
局所的なホスフォイノシチド信号が
栄養信号、代謝とリソソーム動的機序と
どのように関連するかを説明するものです。
例えば、PtdIns(3,4)P2の働きは
単一の脂質が細胞膜か、リソソームにあるかによって
mTORC1活性の亢進、抑制の異なる効果を
どのように持つかを説明するものです。

//細胞飢餓時のリソソームの再形成//ーー
細胞が長引く飢餓状態にあると
リソソームとオートリソソームはチューブ状になり
小さくて、未成熟のリソソームである
プロトリソソームとして発芽します。
この経路は
Autophagic lysosome reformation
と呼ばれます。
これは
PtdIns(4,5)P2とPtdIns3Pを含む
多数のリソソームのホスフォイノシチド種によって
制御されます。
これらはリソソームの再形成の特徴的な段階で作用します。
長期の飢餓状態は
PIPKIアイソフォームによって
オートリソソームのPtdIns(4,5)P2の合成を誘発します(19)。
PtdIns(4,5)P2はリソソームのチューブ化を誘発します。
それはキネシンとクラスリンAP2コート物質の
引き寄せによって生じます。
そして、このチューブ状の中間物質から
プロトリソソームの発芽形成を促進します(20)。
このリソソームチューブ化は
PtdIns(3,5)P2合成によっても促進されます(21)。
プロトリソソームの小胞は
クラスリンAP2コートチューブから摘み取る事に寄って
形成されます。
それは膜分裂酵素ダイナミン2が
PtdIns(4,5)P2に制御される事によって生じます(22)。

//まとめ//ーー
リソソームの栄養状態の監視や
栄養状態に応じたリソソームの動的機序は
様々な物質が関与しますが、
ほぼ共通してホスフォイノシチドが間接的に関与しています。
ホスフォイノシチドがリン酸化などを通じて
適切な型に変わることで
様々栄養状態に対するリソソーム恒常性、
ひいては細胞の恒常性が築かれると考えられます。

(参考文献)
(1)
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
Phosphoinositides as membrane organizers
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)
(2)
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(3)
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