2022年5月26日木曜日

オートリソソームシステムとフォスフォイノシチド

生物は様々な循環のもとに恒常性を
保っていると言えます。
摂餌すれば、尿や糞便などによる排出があります。
熱の循環もあります。
そうした循環は細胞レベルで行われています
不要な物質を分解して、排出する機能です。
その分解を担っているのがオーファジーであり
リソソームです。
従ってリソソームの機能を理解する事は
人を含めた生物の基礎的な循環の一部を
理解する事になります。
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
(敬称略)から成る医療研究グループは
オートファゴソームとリソソームの
生成プロセスと融合について総括されています(1)。
その内容の一部、追記、まとめを
読者の方と情報共有したいと思います。

//オート-リソソームシステム//ーー
リソソームは動性に富んだ細胞内小器官で
細胞内外の物質を分解させる働きを持ちます。
それは内腔の酸性分解酵素によって生じます。
リソソームとリソソーム関連細胞内小器官は
他の機能も持っています。
〇加水分解酵素、細胞毒素などの分泌
〇代謝信号ハブ
これらなどです。
リソソームは多様なホスフォイノシチドを有します(2,3)。
--
細胞外の物質は融合を通じて
エンドサイトーシスの経路で
リソソーム内腔へ輸送されます
〇凝集された細胞内タンパク質
〇欠陥のある細胞内小器官
〇病原体は
オートファジーを通して
リソソームによる分解の標的となります。
このオートファジーは小胞体の特定の部位に
PtdIns3Pを合成する事によって
新たに膜を形成します。

//オートファゴソーム形成//ーー
オートファゴソームの形成は
オートファジー関連タンパク質を含む
複数の複合体によって生じます。
オートファゴソームの前駆体は
ファーゴフォアー(phagophore)と呼ばれ
小胞体のPtdIns3Pを豊富に含む部位から生まれます。
ファーゴフォアーは拡張し、閉じ、
それによって成熟したオートファゴソームを形成し
最終的にリソソームと融合します。
--
オートファジーは
〇UNC-51-ULK1複合体の活性
〇mTORC1の不活性
これらによって生じます。
小胞体でファーゴフォアー発生部位に
ULK1複合体が転座することは
PI4KIIIβの輸送によって促進されます。
それはPtdIns4Pの
局所的な貯蔵を生み出すために生じます(4)。
活性なULK1はVPS34 complex Iの引き寄せを促進し
PtdIns3Pの局所的な生産に寄与します。
PtdIns3Pのオートファジー貯蔵は
PI3KC2αを含むclass II PI3Ksによって生成されます。
それは特異的な細胞の環境(シェアストレスなど)によって生じます。
PtdIns3Pは様々なPtdIns3P結合タンパク質を
引き寄せるための信号分子として機能します。
そのPtdIns3P結合タンパク質は
〇double FYVE domain-containing protein 1 (DFCP1), 
〇autophagy-linked FYVE protein (ALFY) 
〇WD repeat domain phosphoinositide-interacting protein (WIPI) family of scaffold proteins
これらです(5)。
PRoPPiNドメインを通したWIPI2は
オメガサム(ファーゴフォアー)でPtdIns3Pに結合します。
それはATG12–ATG5–ATG16L1複合体を引き寄せます(6)。
この複合体は
ubiquitin-like lC3 familyタンパク質と
phosphatidylethanolamineの結合のための
E3-likeリガーゼとして働きます。
WIPI2とVPS34 complex Iは互いに引き寄せあい
PtdIns3PとLC3の正のフィードバックループを生みます。
これはファーゴフォアーの拡張、閉膜にとって重要です。
PtdIns3Pが豊富にある部位には
lipid transfer protein ATG2を通したWIPI4は
小胞体を拡張したファーゴフォアにつなぎます。
その拡張に必要なリン脂質の転換を可能にします。
--
PtdIns3Pの生成はオートファージの発生に必要ですが、
リソソーム分解による除去は経路を完了するための
必要条件であるとされています(5,7)。
オートファジーの後期課程の
PtdIns3Pの加水分解は
MTMRタンパク質によって仲介されます。
これらのホスファターゼの欠乏は
〇X-linked centronuclear myopathy 
〇Charcot–Marie–Tooth disease
を含む疾患と関連します(8)。

//オートファゴソーム-リソソーム融合//ーー
多数のフォスフォイノシチドは
オートファゴソームとリソソームの
連結と融合を制御します(9)。
オートファゴソームは
〇VPS34 complex I由来PtdIns3P
リソソームは
〇VPS34 complex II由来PtdIns3P 
〇PIKfyve complex由来PtdIns(3,5)P2
これらをそれぞれ豊富に含みます。
このうちリソソームの
PtdIns(3,5)P2の合成と代謝回転は
オートファゴソーム-リソソーム融合において
重要な経路であるとされています。
リソソームのPtdIns(3,5)P2のエフェクタータンパク質は
〇actin-associated protein cortactin(10) 
〇lysosomal calcium release channel mucolipin(11)
〇twin pore channel 2 (TPC2)(12)
〇PX domain-containing protein SNX14(13)
これらが想定されています。
--
オートファゴソーム-リソソーム融合は
PI4KIIαのリソソーム貯蔵による
PtdIns4Pの合成も必要とします(14)。
リソソームでは
PtdIns4PがさらにPtdIns(4,5)P2に
リン酸化されます。
リソソームPtdIns(4,5)P2は
リソソームカルシウム放出チャネルmucolipin 1 
を抑制します。
これは多くのリソソーム、オートファジー遺伝子を
制御すると言われています。
しかし、リソソームPtdIns(4,5)P2の機能は
よくわかっていません。
--
リソソームによるホスフォイノシチド並列経路
〇PtdIns3P–PtdIns(3,5)P2  
〇PtdIns4P–PtdIns(4,5)P2
これらの合成、回転代謝の制御は特異的ですが、
オートリソソーム形成のステップとして
まだ理解されていない部分が多くあります。

//まとめ//ーー
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
(敬称略)らがFig.3に示すように
小胞体からファーゴフォアを介して
形成されたオートファゴソームは
その膜のリン脂質としてPtdIns3Pを含みます。
一方リソソームでは
多様にフォスフォイノシチドを含む中で
〇PtdIns3P–PtdIns(3,5)P2  
〇PtdIns4P–PtdIns(4,5)P2
4種類のフォスフォイノシチドが複雑に関与しながら
オートファゴソームとリソソームの
融合に関与すると考えられます。
従って、精巧に制御された様式で
これらの過程が生じると考えられます。
しかし、図中も含めて記述されているように
どの様に複数のフォスフォイノシチドが
タンパク質信号なども含めて関わっているのか?
という事はわかっていません。

(参考文献)
(1)
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
Phosphoinositides as membrane organizers
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)
(2)
Marat, A. L. & Haucke, V. Phosphatidylinositol 
3-phosphates-at the interface between cell signalling 
and membrane traffic. EMBO J. 35, 561–579 (2016).
(3)
Ebner, M., Koch, P. A. & Haucke, V. Phosphoinositides 
in the control of lysosome function and homeostasis. 
Biochem. Soc. Trans. 47, 1173–1185 (2019).
(4)
Judith, D. et al. ATG9A shapes the forming 
autophagosome through Arfaptin 2 and 
phosphatidylinositol 4-kinase IIIbeta. J. Cell Biol. 218, 
1634–1652 (2019).
(5)
Palamiuc, L., Ravi, A. & Emerling, B. M. 
Phosphoinositides in autophagy: current roles  
and future insights. FEBS J. 287, 222–238 (2020).
(6)
Dooley, H. C. et al. WIPI2 links LC3 conjugation with 
PI3P, autophagosome formation, and pathogen 
clearance by recruiting Atg12-5-16L1. Mol. Cell 55, 
238–252 (2014).
(7)
Saha, S., Panigrahi, D. P., Patil, S. & Bhutia, S. K. 
Autophagy in health and disease: a comprehensive 
review. Biomed. Pharmacother. 104, 485–495 (2018).
(8)
Raess, M. A., Friant, S., Cowling, B. S. & Laporte, J. 
WANTED - dead or alive: myotubularins, a large 
disease-associated protein family. Adv. Biol. Regul. 
63, 49–58 (2017).
(9)
Xu, H. & Ren, D. Lysosomal physiology. Annu. Rev. 
Physiol. 77, 57–80 (2015).
(10)
Hong, N. H., Qi, A. & Weaver, A. M. PI(3,5)P2  
controls endosomal branched actin dynamics by 
regulating cortactin-actin interactions. J. Cell Biol. 
210, 753–769 (2015).
(11)
Dong, X. P. et al. PI(3,5)P 2  controls membrane 
trafficking by direct activation of mucolipin Ca 2+  
release channels in the endolysosome. Nat. Commun. 
1, 38 (2010).
(12)
Wang, X. et al. TPC proteins are phosphoinositide- 
activated sodium-selective ion channels in endosomes 
and lysosomes. Cell 151, 372–383 (2012).
(13)
Akizu, N. et al. Biallelic mutations in SNX14  
cause a syndromic form of cerebellar atrophy and 
lysosome-autophagosome dysfunction. Nat. Genet. 
47, 528–534 (2015).
(14)
Baba, T., Toth, D. J., Sengupta, N., Kim, Y. J. & Balla, T. 
Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate controls  
Rab7 and PLEKMH1 membrane cycling during 
autophagosome-lysosome fusion. EMBO J. (2019).

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