デコリン(Decorin)は、
ヒトではDCN遺伝子によってコードされているタンパク質です。
デコリンは、分子量が平均して
90~140キロダルトン(kDa)のプロテオグリカンで、
小型ロイシンリッチプロテオグリカンファミリーに属しています。
(SLRP: Small Leucine-Rich Proteoglycan)
このタンパク質は、4つのドメイン構造を持っています(2:Figure 1)・
Domain I
- Singal peptide
- Propeptide
タンパク質の輸送・成熟に関与します。
Domain Ⅱ
Rich in cysteine residues
下記、糖鎖が側鎖として結合するドメインです。
安定性や相互作用の場の提供します。
Domain Ⅲ
- Leucine-rich repeats (12 tandem)
3つのN-linked oligosaccharidesが側鎖として結合します。
この部分が様々な受容体に抑制的に結合します。
コラーゲンとの結合部提供します。
このドメインが半月上のアーチ3次元構造を提供します。
Domain Ⅳ
- Carboxy terminal domain
ドメインⅡと同様でシステインリッチの
ジスルフィド結合を有します。
全体構造の維持や分解抵抗性に関与します。
タンパク質コアと、
- コンドロイチン硫酸(CS)
- デルマタン硫酸(DS)
これらからなる糖鎖(グリコサミノグリカン)を持っています。
デコリンに装飾する多糖の数、分子量は多様で、組織に依存します。
デコリンは
線維芽細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞。
これらの細胞によって合成、分泌されます。
血管ではデコリンの分泌は
血管生成の抑制的制御機構として重要です。
デコリンは細胞内や細胞周囲の細胞外マトリックスに存在する
小型のプロテオグリカンであり、
その構造はビグリカン(Biglycan)という
別のタンパク質と密接に関連しています。
デコリンとビグリカンは、
遺伝子重複の結果として進化したと考えられています。
デコリンは結合組織の成分であり、
I型コラーゲンフィブリル(繊維)に結合する能力を持っています。
複数のI型コラーゲンを半月のような構造で
デコレイト(装飾する)、架橋することから(3:Figure 1)
デコリンという名前がつけられています。
この結合により、デコリンは
細胞外マトリックスの組み立てに重要な役割を果たします。
皮膚、腱と靭帯、骨、血管、角膜、軟骨など
強度が必要な組織において
コラーゲン繊維を向きをそろえて束ね、
組織の弾力性と強靭性を補助します。
ドメインⅡに結合した糖鎖が
コラーゲンファイバーの距離を調整します(5)。
デコリンが結合できる細胞外マトリックスは
- コラーゲン1,2,3,5,6,14
- Fibinogen
- Matrilin 1
- Fuibrin
- Elastin
- Tenascin-X
- Tsp 1
これらと結合し(1:Figure 1)、強度と安定性に貢献します。
デコリン(Decorin)は、
細胞外マトリックスや細胞内部に存在する細い繊維状の構造である
フィブリル形成(Fibrillogenesis)に影響を与えるとされ、
以下のようなタンパク質とも相互作用します:
- フィブロネクチン(Fibronectin)
- スロンボスポンディン(Thrombospondin)
- 補体成分C1q(Complement component C1q)
- 上皮成長因子受容体(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)
- トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-beta:Transforming Growth Factor-beta)
デコリンは、TGF-beta 1 の活性を
強化または抑制することが示されています。
デコリンの主な機能は、細胞周期中の調整に関与することです。
デコリンは癌細胞で発現亢進がみられる
チロシンキナーゼ受容体に結合し、抑制することから
癌細胞の増殖を抑え、さらに、
血管内皮増殖因子に結合することから
腫瘍組織の血管新生を抑制する働きがあり、
抗がん効果のある物質として知られています(1)。
デコリンは以下の機能を持つことが分かっています:
- 自食作用(オートファジー:Autophagy) の調整
- 内皮細胞(Endothelial cell) の調整
- 血管新生(Angiogenesis) の抑制
特に、デコリンは血管内皮増殖因子受容体2
(VEGFR2:Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)と
高親和性で結合部位を完全に蓋するように
アンタゴニストとして結合することで(4:Figure 1)、
PEG3と呼ばれる腫瘍抑制遺伝子のレベルを上昇させ、
血管新生を抑制します。
さらに、以下の血管新生因子を抑制します:
- アンジオポエチン(Angiopoietin)
- 肝細胞増殖因子(HGF:Hepatocyte Growth Factor)
- 血小板由来増殖因子(PDGF:Platelet-Derived Growth Factor)
最近、デコリンは筋肉の成長促進である
マイオカイン(Myokine)としての役割も認識されています。
この役割において、デコリンは
骨格筋の増殖を抑制する分泌タンパク質
マイオスタチン(Myostatin)に結合することで、
働きを抑制し、筋肥大(筋肉の成長)を促進します。
(参考文献)
(1)
Thomas Neill,* Liliana Schaefer,† and Renato V. Iozzo*
Decorin A Guardian from the Matrix
The American Journal of Pathology, Vol. 181, No. 2, August 2012
(2)
Annele Orvokki Sainio 1, Hannu Tapio Järveläinen
Decorin-mediated oncosuppression - a potential future adjuvant therapy for human epithelial cancers
Br J Pharmacol. 2019 Jan;176(1):5-15
(3)
Weng Wan Chan 1, David Chen Loong Yeo 1, Vernice Tan 1, Satnam Singh 1, Deepak Choudhury 1, May Win Naing
Additive Biomanufacturing with Collagen Inks
Bioengineering 2020, 7(3), 66
(4)
Thomas Neill 1, Renato V Iozzo 1
The Role of Decorin Proteoglycan in Mitophagy
Cancers (Basel). 2022 Feb 4;14(3):804
(5)
K G Danielson 1, H Baribault, D F Holmes, H Graham, K E Kadler, R V Iozzo
Targeted disruption of decorin leads to abnormal collagen fibril morphology and skin fragility
J Cell Biol. 1997 Feb 10;136(3):729-43
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