2025年1月3日金曜日

ニューロカンの構造と機能

ニューロカン(Neurocan)は、
レクチカンファミリーに属する
コンドロイチン硫酸プロテオグリカンで、
中央神経系の細胞外マトリックスの成分です。
主に神経組織の形態形成および再構築段階で発現します(1)。

- ヒアルロン酸
- ヘパリン
- テナスチン-C
- テナスチン-R
これらなどのさまざまな
細胞外マトリックス成分と相互作用します。
ニューロカンは主にC末端ドメインで
(プロト)カドヘリン、インテグリンなど
神経系細胞の表面に発現される細胞接着分子と結合性を持ち、
一方で、N末端で上述した
位置安定性、神経誘導機能(Mophoregulatory role(5))を有する
テナスシンなどと結合性を持ちますから、
神経細胞と細胞外マトリックスの架橋構造体としての役割。
これに寄与すると考えられます。
これら細胞接着分子と結合するときには
末端付近に側鎖として結合したコンドロイチン硫酸などの糖鎖が
結合親和性に寄与する可能性があります(1:Figure 3)。

その他、成長因子や移動因子である
- FGF-2
- HB-GAM
- アムフォテリン
これらと結合することができます(1:Figure 2)。

- N-CAM
- L1/Ng-CAM
- TAG-1/アクソニン-1
- N-カドヘリン結合型N-アセチルガラクトサミンホスホリル転送酵素
カドヘリンやインテグリンの他にも
主にN末端ドメインのIgドメインと
これら細胞表面分子とも相互作用します(1:Figure 2)。


試験管内での研究では、
ニューロカンの細胞結合や神経突起伸長調節が示されています(1)。


ニューロカンの構造は以下のドメインで分類されます(1:Figure 1)。

1. Igモジュール (Immunoglobulin-like domain)
免疫グロブリンの構造に似たNターミナルドメインで、
主にタンパク質間相互作用に関与します。
他の細胞表面分子や細胞外マトリックス成分と結合する際に重要な役割を果たし、
細胞間接着やシグナル伝達を調節します。
神経細胞の突起形成を促進するのに寄与します。

2. リンクモジュール (Link module)
Nターミナルドメインに2つ結合します。
Igモジュール共にNターミナルドメインとして
球状の折りたたみ構造を取ります(2)。
他のドメインとの結合を促進する役割を持つモジュールです。
コンドロイチン硫酸鎖や他の細胞外マトリックス成分と結合し、
構造的な安定性を提供します。

3. CS-鎖 (Chondroitin Sulfate Chain)
両末端構造をつなぐムチン様部分の末端近傍で側鎖として結合します。
ニューロカンの粘性に寄与します。

4. ムチン様部分 (Mucin-like part)
中央の部分を形成し、600アミノ酸数、約70nmです(1)。
セリン、スレオニン、プロリンを多く含みます。
ムチン様として粘性を持つ領域として知られています。
細胞間での相互作用や細胞表面での信号伝達に重要な役割を果たします。
糖鎖の付加により、他の細胞表面分子と接触し、
神経細胞の成長や移動に関与します。

5. EGFモジュール (Epidermal Growth Factor-like domain)
球状の折りたたみ構造を持つC末端ドメインの一つの構造体です。
カルシウムと結合する能力があるため(4)、
C球状ドメインは主にシナプスの形成を制御する(3)
脳に発現が多いカルシウムを有する
プロトカドヘリンと相互するかもしれません。
エピデマール成長因子に似た構造を持つドメインで、
神経細胞との接着やシグナル伝達に関与します。

6. C型レクチンモジュール (C-type Lectin-like domain)
構造カルシウムイオンに依存して特定の糖分子と結合するドメインです。
他の糖鎖と結合することによって、細胞外マトリックスの相互作用を調整し、
神経細胞の接着や神経突起の成長に寄与します。
カルシウムと結合するため、プロトカドヘリンとも結合し、
シナプス形成にも関わるかもしれません(1:Figure 3)。

7. サシモジュール (Sushi domain)
他のドメインと相互作用し、神経系での適切な細胞間相互作用を維持します。

8. 推定システインブリッジ (Presumptive Cysteine Bridge)
システイン残基によって形成されるジスルフィド結合に基づいた結合部分です。
構造の安定性や他の分子との相互作用を助ける役割を果たします。


ニューロカンは星状膠細胞からも分泌されます。
従って、星状膠細胞依存で(特に抑制系)神経細胞の形成のための
ECM微小環境が一部、構築されるということです(6)。



(参考文献)
(1)
U Rauch 1, K Feng, X H Zhou
Neurocan: a brain chondroitin sulfate proteoglycan
Cell Mol Life Sci. 2001 Nov;58(12-13):1842-56
(2)
C Retzler 1, H Wiedemann, G Kulbe, U Rauch
Structural and electron microscopic analysis of neurocan and recombinant neurocan fragments
J Biol Chem. 1996 Jul 19;271(29):17107-13.
(3)
Shan Meltzer 1, Katelyn C Boulanger 1, Anda M Chirila 1, Emmanuella Osei-Asante 1, Michelle DeLisle 1, Qiyu Zhang 1, Brian T Kalish 2, Aniqa Tasnim 1, Erica L Huey 1, Leah C Fuller 3, Erin K Flaherty 4, Tom Maniatis 4, Andrew M Garrett 5, Joshua A Weiner 3, David D Ginty 
γ-Protocadherins control synapse formation and peripheral branching of touch sensory neurons
Neuron. 2023 Jun 7;111(11):1776-1794.e10
(4)
J Stenflo 1, Y Stenberg, A Muranyi
Calcium-binding EGF-like modules in coagulation proteinases: function of the calcium ion in module interactions
Biochim Biophys Acta. 2000 Mar 7;1477(1-2):51-63.
(5)
Vera Šekeljić 1, Pavle R. Andjus 
Tenascin-C and its functions in neuronal plasticity
The International Journal of Biochemistry & Cell Biology Volume 44, Issue 6, June 2012, Pages 825-829
(6)
Dolores Irala 1 7, Shiyi Wang 1, Kristina Sakers 1, Leykashree Nagendren 1, Francesco Paolo Ulloa Severino 1 2 3, Dhanesh Sivadasan Bindu 1, Justin T. Savage 4, Cagla Eroglu 1 2 4 5 6
Astrocyte-secreted neurocan controls inhibitory synapse formation and function
Neuron Volume 112, Issue 10, 15 May 2024, Pages 1657-1675.e10

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