2025年1月4日土曜日

パールカンの構造と機能

パールカン(Perlecan)は、
基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質(HSPG)
ヘパラン硫酸プロテオグリカン2(HSPG2)です。
分子量468(kDa)の4,391アミノ酸からなります。
これは既知の中で最も大きなタンパク質の一つです。
長さはおおよそ100-200nmあります
「パールカン」という名前は、
回転影像で「真珠の連なり(1:Figure 1)」
これのように見えることから由来しています。

パールカンは、N末端からC末端まで大きく分けて、
5つのドメインがあります(Ⅰ~Ⅴ)(1:Fugre 1)。
糖鎖が結合したプロテオグリカンであり、
多くの細胞外マトリックス(ECM)成分や細胞表面分子と結合し、
交差リンク(Cross link)を形成します。
例えば、コラーゲンと基底で結合し、
コラーゲンの繊維、メッシュ構造の
クロスリンカーとして機能することで
基底の構造体としての安定化に関与します(8)。
長い高分子なので架橋構造体として優れます。
他方で、細胞外マトリックスの機能的な働きにも寄与します。
具体的には機械的シグナル応答に関与します(9)。
パールカンは一番大きなドメイン3に周期的に
ラミニンからなる球状のドメインを持ちます。
この折りたたみ構造はパールカンの機械的柔軟性。
それを支援する可能性があります。

パールカンは血管内皮細胞や平滑筋細胞によって合成されます。
パールカンはParaHoxozoaを含め種を超えて高い保存性を持ち、
遺伝子重複とエクソンシャッフルを通じて
古代の祖先から進化したことを示しています。


パールカンの糖鎖は通常、ヘパラン硫酸(HS)ですが、
コンドロイチン硫酸(CS)であることもあります。
上述したように、コアタンパク質は、
5つの異なる構造ドメインから構成されています。

N末端のドメインI(アミノ酸1-195)は、
糖鎖が結合する部位を含んでいます。
この糖鎖はパールカンの結合活性を支援します。
SEA homology構造を有します。
細胞外マトリックス、成長因子など
多様なたんぱく質と結合する能力を持ちます(7;Figure 3)。

ドメインIIは、
LDL receptor class A moduleとして
LDL受容体のリガンド結合部分に相同な4回の繰り返し配列を含み、
6つの保存されたシステイン残基と、
LDL受容体によるリガンド結合を仲介するペンタペプチドDGSDEを含んでいます。
リポタンパク質の結合や構造に関与する部分です。
脂肪のクリアランスの機能があります。

ドメインIIIは、
- Lamninin-1 EGF-like repeats
- Laminin-1 globular homology 1
これらの繰り返しパターンからなる大きなドメインです。
ラミニンのドメインIVaおよびIVbに相同です。
球状ドメインで調査構造の安定化に寄与します。
パールカンは長い直線状の高分子なので
一定の構造的な安定性が必要で
この大きなドメインは繰り返しの球状折りたたみ構造ドメイン。
これを有することで構造的安定性を支持します。

ドメインIVは、Ig-like repeatを排他的に構成し
一連の免疫グロブリンドメイン(IGモジュール)から構成されています。
他の細胞外マトリックス、細胞との接着に関わります。
パールカンのFGFなどの誘導機能に関与します。
例えば、
- フィブリリン-1
- タイプIV、V、VI、XIコラーゲン
- エラスチン
これらの細胞外マトリックスと結合できます(7)。


C末端のドメインVは、
- Laminin-1 globular homology 2
- EGF-like repeats
これらの周期構造から形成されます。
ラミニンの長腕のGドメインに相同であり、
自己集合を担い、基底膜形成に重要である可能性があります。
ドメインVには、糖鎖が結合する部位もあります。
N末端と同じように成長因子の結合に寄与します。
両サイドに細胞へ誘導分子を結合させることで
誘導体としてのその長さをより有効に利用することができます。

パールカンのコアタンパク質と糖鎖は、
- マトリックスの組み立て
- 細胞増殖
- リポタンパク質の結合
- 細胞接着
これらを調節する可能性があります。


パールカンは、軟骨の細胞外マトリックスの重要な成分であり、
正常な成長板の発達と長骨の成長に不可欠です。
従って、パールカン欠損マウスに小人症が観られます。
結合した糖鎖のヘパラン硫酸を通じて、
成長板の発達に関与するFGF-2,18成長因子に結合します(2)。
骨端線からの骨の成長は糖鎖の改変によって調整されています(4)。
コンドロイチン硫酸は親水性が高く軟骨の弾力性と強度に貢献します。

また、血管の細胞外マトリックスの重要な成分でもあり、
さまざまな他のマトリックス成分と相互作用し、
内皮バリア機能の維持を助けます。
パールカンは平滑筋細胞の増殖を抑制するため(3)、
血管の恒常性の維持に寄与すると考えられています。
一方、骨成長板同様にFGF-2成長因子の活性を促進し、
内皮細胞の成長および再生を刺激する可能性があります。
組織学的な成長を支持する基底と細胞の連結において
細胞増殖の一つのシグナルとなるFGF経路を
FGF-2とパールカンが結合することによって
細胞に対するFGF-2の受容を高め、
分裂を支持するインテグリン-基底の相互作用を
少なくとも間接的に支持します。
このときにパールカンがFGF-2が
細胞上に発現されるFGF受容体に適切に誘導されるように
その長いたんぱく質構造を利用します。
インテグリンは細胞分裂に関わるため機械的な緩衝は必要なものの、
娘細胞への染色体配置精度を高いレベルで確保するため
絶対的な位置変動を減らしたいという意味において
比較的分子量の小さなS字(フック状の)オステオポンチンを緩衝材として利用しますが、
FFG-2に関しては細胞受容体への誘導が大切なため、
比較的長い距離でも有効に受容体に誘導できるように
真珠のような長い鎖構造を持つたんぱく質が誘導体として適しています。
従って、
パールカンは主に成長因子の「誘導体」、
オステオポンチンは細胞-基質間の「緩衝材」という表現が適切です。

パールカンは間質の細胞外マトリックスとして
細胞近接場の特定の成長因子を細胞受容体に正確に誘導する能力。
これを保持していると考えられます。
脳神経系の海馬の神経突起成長を支持するという報告もあります(5)。
- 線維芽成長因子(FGF-2)
だけではなく
- 神経成長因子(NGF, Nerve Growth Factor)
これを神経細胞受容体に送達させる可能性もあります。
なぜなら、神経成長因子の一つであるBDNFは正に帯電し、
負に帯電しているヘパラン硫酸と結合する能力があるからです(6)。



(参考文献)
(1)
Bjorn R Olsen 
Life without Perlecan Has Its Problems
J Cell Biol. 1999 Nov 29;147(5):909–912
(2)
Simone M-L Smith 1, Leigh A West, Prasanthi Govindraj, Xiuqin Zhang, David M Ornitz, John R Hassell
Heparan and chondroitin sulfate on growth plate perlecan mediate binding and delivery of FGF-2 to FGF receptors
Matrix Biol. 2007 Apr;26(3):175-84
(3)
Pamela J Garl 1, Janet M Wenzlau, Heather A Walker, John M Whitelock, Mercedes Costell, Mary C M Weiser-Evans
Perlecan-induced suppression of smooth muscle cell proliferation is mediated through increased activity of the tumor suppressor PTEN
Circ Res. 2004 Feb 6;94(2):175-83.
(4)
Leigh West 1, Prasanthi Govindraj, Thomas J Koob, John R Hassell
Changes in perlecan during chondrocyte differentiation in the fetal bovine rib growth plate
J Orthop Res. 2006 Jun;24(6):1317-26.
(5)
W L Shee 1, W Y Ong, T M Lim
Distribution of perlecan in mouse hippocampus following intracerebroventricular kainate injections
Brain Res. 1998 Jul 20;799(2):292-300
(6)
Joseph A Hippensteel 1, Brian J Anderson 2, James E Orfila 3, Sarah A McMurtry 1, Robert M Dietz 4, Guowei Su 5, Joshay A Ford 1, Kaori Oshima 1, Yimu Yang 1, Fuming Zhang 6, Xiaorui Han 6, Yanlei Yu 6, Jian Liu 5, Robert J Linhardt 6, Nuala J Meyer 2, Paco S Herson 3,7, Eric P Schmidt 1,8,
Circulating heparan sulfate fragments mediate septic cognitive dysfunction
J Clin Invest. 2019 Mar 18;129(4):1779–1784
(7)
Anthony J Hayes 1, Brooke L Farrugia 2, Ifechukwude J Biose 3, Gregory J Bix 3, James Melrose 4 5
Perlecan, A Multi-Functional, Cell-Instructive, Matrix-Stabilizing Proteoglycan With Roles in Tissue Development Has Relevance to Connective Tissue Repair and Regeneration
Front Cell Dev Biol. 2022 Apr 1:10:856261.
(8)
A J Hayes 1, C C Shu, M S Lord, C B Little, J M Whitelock, J Melrose
Pericellular colocalisation and interactive properties of type VI collagen and perlecan in the intervertebral disc
Eur Cell Mater. 2016 Jul 5:32:40-57.
(9)
Farshid Guilak 1 2, Anthony J Hayes 3, James Melrose 
Perlecan in Pericellular Mechanosensory Cell-Matrix Communication, Extracellular Matrix Stabilisation and Mechanoregulation of Load-Bearing Connective Tissues
Int J Mol Sci. 2021 Mar 8;22(5):2716.

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