2025年1月2日木曜日

アグレカンの構造と機能

アグレカン(Aggrecan)は、関節軟骨内にある
主なプロテオグリカンです。
プロテオグリカンとは
タンパク質と糖の複合体で
高分子量の多糖が側鎖についたたんぱく質です。
この多糖は親水性で多くの水分を保有できるため、
ゲル状の軟骨特性を支持する細胞外マトリックスです(1)。
この際、多糖からなる細胞外マトリックスである
ヒアルロン酸も複合体として取り込み、
このヒアルロン酸もゲル特性に貢献します。
ヒアルロン酸は基底層との接着特性を支えます。
このような水分を多く含むヒドロゲル特性は
軟骨部での機械的ストレスの低減、滑り性などを保証します。
軟骨ではヒアルロン酸の他
タイプ2コラーゲンも形成されます。
軟骨に多いタイプで
細網状(ネットワーク状)構造を作ります。
高い弾性を示します。
このコラーゲンとアグレカンの複合体網目構造(1:Fig.1)が
軟骨組織の機械的堅牢性を保証します。

アグレカンは軟骨組織の10%程度を占めます(1)。

アグリカンは多モジュール分子であり、
特定の機能を持つ複数のドメインから構成されています。
アグレカンの骨格を形成する
コアタンパク質の分子量は約250 kDaです。
コアタンパク質は
3つのグロブラー(球状)ドメイン(G1, G2, G3)
これらに分かれています。
(2:Figure 2)に示されるように
ヒアルロン酸にG1球状ドメインが枝状に結合します。
G2とG3ドメインの間に
多数のグリコサミノグリカン鎖が結合しています。
糖鎖の親水性と隙間に水分子を多く保有することができます。
軟骨全体で水分量を多く保持できるのは
周辺の骨組織などとのイオン濃度の差による
浸透圧に一部、依存します(1)。


- G1ドメイン: 
ヒアルロン酸(HA)とリンクタンパク質を介して結合し、
大型のアグリゲートを形成します。
ヒアルロン酸との結合は非共有結合性です。

免疫グロブリンフォールド(immunoglobulin fold)
ヒアルロン酸結合モチーフ(HA-binding motif)が2つ
これら3つのモジュールで構成されます。

免疫グロブリンフォールドはG1球状ドメインの
折りたたみ構造を保証し、
ジスルフィド結合によって
βシート折りたたみ構造が安定化されています(1)。
この免疫グロブリンフォールドは
G1ドメインを通じて他の細胞外マトリックスや
細胞上に発現される細胞接着分子など
タンパク質を結合する上で重要な役割を果たします(3)。
このG1ドメインは免疫グロブリンフォールド、
そのジスルフィド結合によって
他の物質と複合体化する「糊(Glue)」の働きをします。


- G2ドメイン: 
主に補助的な役割を果たし、ヒアルロン酸とも弱く結合します。

プロテオグリカンの直列繰り返し構造を持ちます。
100のコンドロイチン硫酸(CS)
60のケラタン硫酸(KS)
これら糖鎖がアグレカンに結合していますが、
これらの側鎖形成に直接的かつ間接的に関与します。

このドメインはG1ドメインのように
コラーゲンなど他のたんぱく質との結合活性を持ちません(5)。


- G3ドメイン: 
末端ドメインでカルボキシル構造を形成します。
3つのモジュール構造を持ちます。
- EGF-like module
- CRD module
- CBP module

CRDモジュールとフコースやガラクトースとの結合します(7)。
これは電気的、水和相互作用などによって
糖鎖全体の立体構造を調整する働きがあります。

CBPモジュールはテナスシンRなど
他のたんぱく質性細胞外マトリックスと結合活性を持ちます(8)。

分泌調節やECMへの統合に関与します。
このG3ドメインは軟骨細胞から
適切な構造で細胞外に分泌される際に重要な役割を担います。
具体的には
- シャペロンタンパク質相互作用による適切な折り畳み
- ゴルジ体内でのグリコサミノグリカン(GAG)鎖の付加
- EGF様ドメインは細胞内の分泌制御シグナルに関与


他方で球状ドメイン外の骨格となるたんぱく質は
以下の構造を有します(1:Fig.3)。

- The inter-globular domain(IGD)
球状ドメインであるG1とG2を隔てる
タンパク質の骨格となる部分です。
この部分は細胞外マトリックス分解酵素活性を持ち、
分解圧を受けたときに、へき開サイトを有し
この部分から分解されます。
長さはおおよそ一定で25nmで
形状の安定し、堅牢で、柔軟性はありません。
この特性はケタラン硫酸によるかもしれません(4)。
このドメインは根元に存在するので
分解酵素圧によってへき開されると、
より先端部にある多糖構造が乖離されるため、
おおよそのアグレカンの特性は喪失します。
この部分はアグレカンの寿命、代謝回転に関与します。
関節炎などの炎症の際に亢進される
- レチノイン酸(retinoic acid)
- 炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-α)
これらはMMPsを含めた
細胞外マトリックス分解酵素の発現活性を高めるため、
軟骨部の特性を支えるアグレカンが減少します。


- Keratan sulfate (KS) domain
側鎖であるケラタン硫酸の結合サイトを提供します。
また、コンドロイチン硫酸結合骨格部にも分布しています。
このドメインの機能は不明ですが、
アグレカンの軟骨組織内の分布に影響を与えるかもしれません。
加齢に伴い特に膝関節の半月板において
ケタラン硫酸の数が増えるという報告があります(6)。
これは逆に分子量の大きなコンドロイチン硫酸の数。
これを低下させる可能性があります。
分子量が小さいので水分保持能力が低く、
アグレカンの機械的特性に影響を与える可能性があります。


- Chondroitin sulfate (CS) domain
このドメインに結合する糖鎖である
コンドロイチン硫酸は負に帯電し、
アグレカンの高い水分保有能力の決定因子です。


グリコサミノグリカン鎖:
コアタンパク質の側鎖として
- コンドロイチン硫酸(CS)
- ケラタン硫酸(KS)
これら多くの鎖が結合しています。
アグレカンの分子量の90%を占めます(1)。
おおよそアグレカン1つにつき、約100の糖鎖を持ちます。
糖鎖の総分子量は2,000kDa程度になります。
これらの負に帯電した多糖類は水分を引き寄せ、
軟骨の高い保水性と弾力性を生み出します。

軟骨細胞(コンドロサイト)は、軟骨内に存在する細胞タイプで、
アグリカンやコラーゲンII型などの
細胞外マトリックス成分を合成します。


(参考文献)
(1)
CHRIS KIANI , LIWEN CHEN , YAO JIONG WU , ALBERT  J YEE , BURTON B YANG
Structure and function of aggrecan
Cell Research (2002); 12(1):19-32
(2)
Shibnath Ghatak 1,*, Edward V Maytin 2, Judith A Mack 2, Vincent C Hascall 2, Ilia Atanelishvili 3, Ricardo Moreno Rodriguez 1, Roger R Markwald 1, Suniti Misra 1
Roles of Proteoglycans and Glycosaminoglycans in Wound Healing and Fibrosis
Int J Cell Biol. 2015 Sep 10;2015:834893
(3)
J Grover 1, P J Roughley
The expression of functional link protein in a baculovirus system: analysis of mutants lacking the A, B and B' domains
Biochem J. 1994 Jun 1;300 ( Pt 2)(Pt 2):317-24
(4)
F P Barry 1, P J Neame, J Sasse, D Pearson
Length variation in the keratan sulfate domain of mammalian aggrecan
Matrix Biol. 1994 Aug;14(4):323-8
(5)
A J Fosang 1, T E Hardingham
Isolation of the N-terminal globular protein domains from cartilage proteoglycans. Identification of G2 domain and its lack of interaction with hyaluronate and link protein.
Biochem J. 1989 Aug 1;261(3):801–809
(6)
D McNicol, P J Roughley
Extraction and characterization of proteoglycan from human meniscus.
Biochem J. 1980 Mar 1;185(3):705–713
(7)
D F Halberg 1, G Proulx, K Doege, Y Yamada, K Drickamer
A segment of the cartilage proteoglycan core protein has lectin-likJ Biol Chem
. 1988 Jul 5;263(19):9486-90.e activity
(8)
A Aspberg 1, R Miura, S Bourdoulous, M Shimonaka, D Heinegârd, M Schachner, E Ruoslahti, Y Yamaguchi
The C-type lectin domains of lecticans, a family of aggregating chondroitin sulfate proteoglycans, bind tenascin-R by protein-protein interactions independent of carbohydrate moiety
Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Sep 16;94(19):10116-21.
 

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