細胞外小胞が発がん性、神経毒性持つ因子を
備えている事を考えると
細胞外小胞の形成、放出、取り込みを抑制する事は
病態を改善させる可能性があります。
しかし、
細胞外小胞は病変部位で多く放出されているかどうかは
議論の余地があります。
〇変わらない(2-4)
〇多い(3,5)
〇少ない(6)
とそれぞれ異なる報告があります。
大きさの問題もあると考えられます。
例えば、癌細胞ではより細胞外小胞は大きい
かもしれません。
一方で、その数に関わらず、
病変部位で多く存在する細胞外小胞の分泌を
選択的に抑える事は意義がある事です。
--
細胞外小胞を抑えるための3つの方法があります。
①neutral sphingomyelinase(nSMase 2)経路
②ESCRT経路
これらは親細胞で標的とされます。
一方、
③受け細胞での取り込みを抑える
この手法も考えられます。
しかしながら、
健康で、生理学的な恒常性に関わる
重要な細胞外小胞と病因となるそれとを切り分けて、
病因となる細胞外小胞だけを
抑える事は容易ではないとされています。
--
Lesley Cheng & Andrew F. Hill(敬称略)
からなる医療研究グループは
上述した親細胞、受け細胞療法のアプローチで
細胞外小胞の分泌、取り込みを抑える手法を
総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有したいと思います。
//nSMase 2標的による抑制//ーー
薬剤GW4869がこの経路を標的として
細胞外小胞を抑制します。
いくつかの症例について紹介します。
--
monensinでプリオン感染細胞を処置した場合、
細胞外小胞は多く分泌されました。
しかし、GW4869でそれが抑えられました(7)。
--
大腸癌由来の細胞外小胞は
癌細胞増殖と細胞死を抑制することが
生体内で知られていますが、
GW4869は癌の成長は抑えられました(8)。
--
GW4869によって
マイクログリア由来の細胞外小胞による
タウタンパク質の増加は
マウスのモデルで抑えられました。
それはnSMase 2標的siRNAでも同じです(9)。
--
アルツハイマーのマウスにおいて
GW4869はセラミドレベルを低下させました。
結果、脳由来の細胞外小胞レベルが下がり、
そのレベル低下は血中でも同様でした。
--
nSMase 2経路を薬剤で抑えると
動物生体内においてアルツハイマー病の脳の
アミロイド量やプラーク量が減ると
報告されています(10)。
--
しかしながら、nSMase 2経路を抑制する事は
全般的にエクソソームの分泌量を下げることが
考えられることから、通常細胞に対する
オフターゲットの影響を調べる必要があります。
例えば、
GW4869は脂質結合特性を持っているとされています(11)。
//他の抑制剤//ーー
〇抗不安薬Cannabidoil,
〇Chloramidine
これらはいくつかの癌細胞タイプで
細胞外小胞の分泌を抑えたと報告されています(12,13)。
--
Cannabidoilは特にChloramidineより有効で
100-900nmのサイズの大きな細胞外小胞を
86.7%以上抑えたとされています(12)。
これはより癌細胞に効果的でした。
--
〇Cytochalasin D
〇Glyburide
〇Chlorpromazine
これらは150nm以上のサイズの
細胞外小胞の分泌を減らしました(13)。
これらの薬剤は
細胞骨格の損傷を通して放出された
細胞外小胞を抑える働きがあります。
これは抗がん剤(methotrexate)の
癌細胞への治療感受性を高めました(14)。
--
しかし、ほとんどの報告は
試験管内のもので(12-14)、
まだ、マウスでも立証されていない段階です。
//ESCRT経路を標的とした抑制//ーー
ESCRT経路を利用した細胞外小胞の抑制の
研究はまだ黎明期であるとされています。
--
癌細胞はエクソソームを生存や免疫抑制に利用し、
ESCRT経路に関わる物質が欠損すると
癌の成長が抑えられる事がわかっています(15-17)。
--
ALIXはエクソソームの前駆体である
腔内膜小胞の内腔への物質の輸送に関わります。
これを癌細胞のエクソソームの構成を
変えるためにノックダウンすることができます。
実際に
ALIXをノックダウンした乳癌細胞からの
エクソソームのタンパク質分析では
12種類のタンパク質が抑制されていたことが
示されています(15)。
また、同様に乳癌を持つマウスモデルで
ALIXの欠損は抗癌免疫反応を促進することが
示されています(15)。
これはPD-L1の発現量が関わっている可能性があります。
--
〇Charged multivesicular body protein 4B (CHMP4B)
これによるALIXの2量体化の抑制は
腔内膜小胞の内容物仕分け機能を欠如させ
上皮成長因子受容体などのタンパク質量を低下させます(17)。
上皮成長因子受容体は特に固形の癌の成長と関連しています(18)。
--
shRNAによるRAB27Aのノックダウンは
肺腺癌細胞の細胞外小胞の分泌を減少させます(16)。
これは
〇Metalloproteinases
〇miRNA
これら肺腺癌細胞に関わる物質の放出、取り込みを
抑制したかもしれないとされています。
--
薬剤のスクリーニングから
〇tipifarnib
〇farnesyltransferase inhibitor
これらが
●ESCRT依存性ALIX
●ESCRT非依存nSMase2
これらを転移性の前立腺癌細胞内において
抑制したことが確かめられています(19)。
また
〇neticonazole
〇ketoconazole
〇climbazole
これらがALIX抑制依存的に細胞外小胞の放出を
抑える働きがあるとされています(19)。
--
しかし、
エンドソーム-リソソーム不全がある
神経変性疾患において
細胞外小胞の放出を抑える事で
神経毒性のあるタンパク質の細胞内の蓄積を
導いてしまう可能性が指摘されています。
例えば、
テトラスパニン(CD63)のノックダウンが
エンドソーム異常のある
ダウン症候群の患者さんで報告されています。
また、
RAB27Aの遺伝子抑制が
ALS関連タンパク質であるTDP43の蓄積を
導くとされています(20,21)。
//受け細胞取り込みの抑制//ーー
細胞外小胞の受け細胞での取り込み経路は
いくつかのルートがあり、複雑であるため
定期的に総括されています(22,23)。
例えば
〇clathrin-dependent pathways
〇clathrin-independent pathways
〇plasma or endosomal membrane fusion
〇phagocytosis,
〇micropinocytosis.
これらが挙げられています。
しかし、どの経路で主要に取り込まれているか
というのは可視化できる顕微鏡の解像度限界によって
確認することが難しいとされています。
一方、例えば
〇dynosore(inhibitor of dynamin)
これはclathrin-dependentエンドサイトーシス
をトランスフェリン依存的に抑制する事が
エプステイン-バールウィルス感染B細胞由来の
テトラスパニンCD63+細胞外小胞が
そのウィルス非感染上皮細胞に取り込まれる際に
確認されました(24)。
同様に
人悪性腫瘍のメラノーマ細胞由来の
細胞外小胞の取り込みがdynosoreの使用によって
抑えられ、腫瘍血管生成が抑制したとされています(25)。
//考察//ーー
少なくとも癌の治療に関しては
微小胞、ラージオンコサム、アポトーシス小体など
細胞質からエンドソームを介さずに
直接、発芽して生じる
径の大きな細胞外小胞をより強く標的化する事で
オフターゲット効果を下げる事ができるかもしれません。
〇エクソソーム(50-150nm)
〇微小胞(100-1000nm)
〇ラージオンコサム(1000nm-10000nm)
〇アポトーシス小体(100-5000nm)
これらなので、エクソソームを除く
細胞外小胞は大きくなっています。
そのためには
癌細胞と通常細胞で
細胞外小胞の大きさの分布に着目した解析が重要になります。
心臓血管疾患でも同様に動脈硬化部位において
細胞外小胞が大きい傾向にあります。
それは試験管でもいいかもしれません。
大きな細胞外小胞はESCRTは関与せず、ESCRTは
エクソソーム前駆体の腔内膜小胞に関わると考えられます。
ESCRTとは異なる、
大きな細胞外小胞が特異的に関連する
細胞内経路を掴み、それを抑える事で
癌に対して、より効果的である可能性があります。
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