生体内には様々なスケールで胞が存在します。
大きなスケールでは細胞があります。
その細胞内には細胞外小胞である
微小胞、腔内膜小胞などもあります。
またリソソームがあります。
それを膜に拡張すると小胞体を含めた
多くの細胞内小器官に存在します。
それらの胞は融合し、分裂します。
また膜とも融合します。
その際には近づき、接触する必要があります。
その接触は無作為に生じているわけではなく、
何らかの制御を受けて起こっています。
それに向性、走化性を与えるのが
小胞を含めた膜表面にあるタンパク質であり
その土台にはリン脂質であるホスフォイノシチドがあります。
細胞内の信号を受けて、
ホスフォイノシチド依存的に
様々なたんぱく質を引き付けます。
それで被膜接合部位ができ、
そこから物質の交換、移動、膜融合、分裂が生じます。
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
(敬称略)ら医療研究グループは
被膜融合部位(Membrane contact site)の
生理機序をホスフォイノシチドと結び付けて
総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有したいと思います。
//被膜結合部位(*)//ーー
(*)Membrane contact site
細胞内小器官は被膜結合部位を通して
互いにコミュニケーションをしています。
例えば
〇脂質、イオンの交換
〇低分子量の代謝生成物のチャネル形成
〇被膜融合、分裂過程を促進
これらです(2,3)。
この被膜結合部位では
2つの細胞内小器官の被膜は
互いに引き合い、
例えば、10-30nmの距離にあります。
これはそれらを繋ぐ因子を通して
物理的に接続されていることによります。
この時、被膜の実体の確認において
重要な役割を果たすのがホスフォイノシチドです。
被膜結合部位は
〇ホスフォイノシチドの分布や代謝
〇他の脂質の分布や代謝
これらを制御します。
それは細胞シグナルや代謝合図に従って行われます(2,3)。
特に小胞体は重要な役割を果たします。
結合部位を形成します。
さらに、その機能は
細胞内小器官特異的なホスフォイノシチドの認識や
小胞体局在化被膜タンパク質の結合の
鍵となるアダプターを含みます。
//被膜結合部位形成の制御//ーー
リソソームなどを含む細胞内小器官の
被膜のリン脂質として存在するホスフォイノシチドは
被膜結合部位を形成するために
細胞内小器官同士をつなぐ
特異的なホスフォイノシチド結合タンパク質を
引き付けます。
小胞体と細胞膜では
〇synaptotagmins (E-Syts)
これが関わっています。
E-Sytsは
〇カルシウムイオン
〇脂質結合C2ドメイン
これらを通じて細胞膜と相互作用します。
これはPtdIns(4,5)P2に特異的に認識されます。
これによる結合は
カルシウムイオンレベルが上昇することによって
促進されます。
それがstore-operatedカルシウムイオン
エントリーを誘発します。
それは
〇小胞体タンパク質STIM1
〇細胞膜CaイオンチャンネルORAI
これらを通して生じます(4)。
STIM1-ORAIとE-Sytsは
カルシウムイオン制御性信号短路の一部です(5)。
この短路の中で
PtdIns(4,5)P2はE-Syt仲介被膜結合部位の形成を促進します。
一方で同時にPLCによって
ジアシルグリセロール(DAG)やIns(1,4,5)P3へ加水分解されます。
Ins(1,4,5)P3は
カルシウムイオン電導性Ins(1,4,5)P3受容体を
小胞体の中で活性化させます。
E-SytsはDAGを細胞膜から小胞体へ輸送させます。
このDAGはホスフォイノシチドを再合成する
前駆物質として機能します。
--
上述した機序と似た
ホスフォイノシチド依存性の機序が
小胞体、トランスゴルジネットワーク、
後期エンドソーム、リソソーム
いずれかの間の被膜接触部位の形成を支配します。
小胞体とトランスゴルジネットワーク
の被膜接触部位では
OSBPと脂質輸送タンパク質、例えば、CERT(6)。
これが
〇TGN上のPtdIns4PのPHドメイン
〇小胞体局在VAMP関連タンパク質(VAP)
これらを通して加わります(2)。
小胞体と後期エンドソームもしくはリソソーム
の被膜接触部位では
複数のホスフォイノシチド結合タンパク質が関与します。
1つの例では
〇FYVE domain-containing ER membrane protein protrudin
〇its associated factor PDZ domain-containing protein 8
これらによるリソソームPtdIns3Pの認識です(7)。
//被膜結合部位の脂質輸送//ーー
被膜結合部位の主要な機能は
タンパク質の機能によって脂質の輸送を行う事です(2)。
その方向性は脂質の濃度勾配によって生じます。
PtdIns4Pは特異的なPI4Ksを通して
ゴルジ複合体、細胞膜で合成されます。
結果として生じた
ゴルジ複合体と小胞体の間のPtdIns4Pの濃度勾配は
コレステロールのような脂質の輸送の動力となります。
それは小胞体からトランスゴルジネットワーク
さらには細胞表面まで輸送されます。
OSBPはトランスゴルジネットワーク内のPtdIns4Pに
小胞体を結合させます。
それはFFaTモチーフ、PHドメインを通して起こります。
それによってコレステロールの輸送が可能になります。
並列してPtdIns4Pは
トランスゴルジネットワークから小胞体へ輸送されます。
上述したCERT(6)や
PtdIns4Pアダプタータンパク質2(FAPP2)(8)は
セラミドやグルコシルセラミドを
小胞体からトランスゴルジネットワークへ
輸送するのを促進します。
--
似たPtdIns4Pベースの機序が
他の小胞体ベースの被膜結合部位でも作動します。
VAP–OSBPベースの被膜結合部位は
小胞体とリソソームの間で
コレステロールの輸送を作動させます。
エンドソームPtdIns4Pは
PtdSerを小胞体からエンドソームへ対向輸送させます。
これは OSBP-related ORP1Θを通じて生じます。
それによりエンドソーム分裂を促進します。
これはdynamin-related ATPase EHD1の作用によります。
PtdIns4Pと下流の生成物である
PtdIns(3,4)P2とPtdIns(4,5)P2は
リソソーム、ファーゴリソソームから
コレステロールを小胞体へ逆流させることができます。
--
被膜結合部位での脂質の輸送は
細胞信号、代謝によって制御されています。
哺乳類の細胞では小胞体からの
Ins(1,4,5)P3誘発カルシウム流出は
OSBPがトランスゴルジネットワークから
分離する原因となります。
それによって
細胞表面のコレステロールや糖脂質が不足します。
一方で、E-Sytベースの
小胞体と細胞膜の被膜結合部位の形成を促進します(9)。
従って、特徴的な被膜結合部位は
脂質輸送の制御のメカニズムを弱める働きが
あるかもしれないとされています。
--
被膜結合部位の脂質輸送の制御は
細胞信号を伴う
ホスフォイノシチド代謝の統合において重要です。
PLC-coupled受容体の活性化に反応して
PtdIns(4,5)P2はDAGとIns(1,4,5)P3に加水分解され
その不足が生じます。
そのPLCの活性の間で
ホスフォイノシチドの信号能力を維持するために
脂質輸送タンパク質Nir2が
小胞体と細胞膜の間の被膜結合部位で引き付けられます。
これらのVAPベース被膜結合部位では
Nir2が小胞体から細胞膜への
ホスフォイノシチドの輸送を強化します。
一方でPtdOHは小胞体へ輸送されます。
小胞体と細胞表面の間のPtdIns–PtdOH交換は
PtdInsからのPtdIns4Pの再合成を促進します。
それはPtdIns(4,5)P2の補充を可能にします。
それによってアゴニスト刺激に対する
持続的な反応性を確保します。
Nir2はゴルジPtdIns貯蔵を補充します。
それによってPtdIns4Pを持続的に合成できます。
これはPtdIns4Pとコレステロール循環の維持に必要です(10)。
--
(定義しにくい)被膜接触部位は
後期小胞体からインテグリン、Focal吸着キナーゼを含む
エンドソームへコレステロールを輸送出来ます。
これはOPP2を仲介します。
コレステロールの輸送は
〇PtdIns(4,5)P2
〇Focal吸着キナーゼ活性
〇細胞吸着
これらのエンドソーム合成を促進します(11)。
//フォスフォイノシチドのまとめ//ーー
ホスフォイノシチドのモニター、改変の
新しい儀重の発展によって、
その役割の一部が明らかになりました。
ナノスケールの局在化、代謝回転、動的機序です。
また細胞信号から受ける制御も同様です。
また、細胞内小器官同士が接触する事に寄る
物質の輸送、交換、融合、分裂の機序についても
明かになりつつあります(2)。
例えば、ミトコンドリアやエンドソームの分裂は
小胞体と被膜接触部位を形成する事に寄って
制御されるとされています
そこにはホスフォイノシチドPtdIns4Pが関与します(12,13)。
ホスフォイノシチドの型変換が制御されることで
細胞内でどのように細胞内小器官が働いているのか
その一部が明らかになりました。
新型コロナウィルスのようなウィルスに感染すると
ホスフォイノシチドの型を制御する
酵素の働きが改変されます。
従って、特異的な酵素の働きを抑える事で
(例えば、PIKfyve抑制薬 apilimod)
ホスフォイノシチド依存的な新しい形での
抗ウィルス薬の開発に貢献します(14,15)。
しかし、
特に不安定なで過渡的な
PtdIns(3,4)P2、PtdIns(3,5)P2からなる
ホスフォイノシチドを含めて
まだ明らかになっていない部分も多くあります。
代謝や代謝生成物循環との関係においても同様です。
その理解を高めていくためには
〇ホスフォイノシチドを視覚化するツール
〇CRISPR技術の発達
脂質改変酵素にタグをつけるため
〇ホスフォイノシチド結合タンパク質を
生きたまま分析するツール
これらが必要であるとされています(1)。
//考察//ーー
被膜結合部位は細胞内小器官同士の
特に小胞体と他の細胞内小器官代謝生成物などの物質の交換や
それらの分裂、融合などに関わっています。
それは細胞や小胞などで示される
表面リガンドのような物質で互いにテザリングされ、
細胞内小器官同士の接続の維持が可能になっています。
この結合タンパク質はホスフォイノシチド上にあるので
どのように動いて、どれを引き付けて
被膜結合部位を形成するのかは
ホスフォイノシチドが主に関わっていると考えられます。
細胞膜、小胞、細胞内小器官などの膜は
脂質とリン脂質からなりリン脂質は45%程度ですが
機能的な役割を果たしているのは
このうちリン脂質であり、
ホスフォイノシチドであると理解しています。
(参考文献)
(1)
York Posor, Wonyul Jang & Volker Haucke
Phosphoinositides as membrane organizers
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)
(2)
Prinz, W. A., Toulmay, A. & Balla, T. The functional
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(3)
Wu, H., Carvalho, P. & Voeltz, G. K. Here, there,
and everywhere: the importance of ER membrane
contact sites. Science https://doi.org/10.1126/
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(4)
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synaptotagmins. Cell 153, 1494–1509 (2013).
(5)
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and Nir2 at endoplasmic reticulum-plasma membrane
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(8)
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(9)
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(13)
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Proc. Natl Acad. Sci. USA 117, 20803–20813 (2020).
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