2022年5月6日金曜日

エクソソーム治療を実現させる上での課題(2)

多くの病気の臨床前モデルで有望な結果が得られたので
研究者、開発者は安全で、実現可能で、再現性のある
間質系幹細胞治療の実現のため従事しています。
しかしながら、臨床へのトランスレーションにおいて
いくつかの困難な課題があります。
大きなハードルはエクソソームの精製です。
そのための方法、分析、標準化が未熟です。
このような課題から産業レベルへの製造スケールアップも
難しい状況です。
--
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas 
(敬称略)からなる医療研究グループは
上述した課題を踏まえたうえで
研究開発を推し進めるためのガイドラインをいくつか
示されています(1)。その内容の一部、追記、考察を
読者の方と共有したいと思います。

//オルガノイド、Lung-on-a-chip//ーー
薬剤がどのように生体内で反応するか?
それを臨床前で確認していく事は、
臨床試験での失敗を最小化し、成功に導くために重要です。
細胞生物学、医療工学、マイクロ流体などの
近年の技術発展は人の組織の機能的なモデルを
人工的に構築することを可能にしています。
例えば、「Organs-on-chips」です(2,3)。
気管支肺異形成症を持つお子さんの
臨床前試験における薬剤効力の確認において、
肺の人工組織を基板の上に乗せる
Lung-on-a-chipsは有効です。
間葉系幹細胞由来のエクソソームの効力検定に
利用する事ができます。
Lung-on-a-chipsは肺の微小環境を再現しています。
上皮、内皮、免疫細胞を含みます。
特定の培養環境では、
マクロファージ、基底細胞
間質細胞、分泌細胞、タイプ2細胞
は3次元に自己形成する事ができます。
臨床前試験では間葉系幹細胞由来のエクソソームによる治療において
生理的な利点が顕著でしたが、
このエクソソームの生体内分布、代謝経路については
評価するのが難しいとされています。
従って、治療の標的とした細胞に対する
エクソソーム治療との相互作用についての詳細を
分析するのに課題があります。
エクソソームに任意の表面リガンドを形成して機能化する
細胞種特異的輸送系統(*)では
標的性(オンターゲット or オフターゲット)が
評価項目の中で極めて重要なので、
生体内分布を確かめる新たな評価方法を確立することが
必要になります。
(*)Cell-type-specific delivery system

//代謝経路と生体内分布//ーー
前述した生体内分布を調べる方法として
近赤外の親油性色素のラベルをエクソソームに結合させ
近赤外光によってマウス内のエクソソームの
動きを追跡するという方法です(4-6)。
静脈、腹腔、皮下注射によって
その背板内分布は異なります。
しかしながら、標的細胞の融合などで
色素が希釈され、分析寿命を縮まることがあります。

//製造、毒物学、安全性//ーー
細胞治療に比べて、間葉系幹細胞由来のエクソソーム
による治療が魅力的なのは、
細胞よりも免疫原性が低いことです。
これは同系異種移植などで生じる
移植片対宿主病(拒絶反応)などのリスクが
低いかもしれない事を意味します。
またエクソソームは吸入噴霧する事が可能です。
それによって例えば
気管支肺異形成症など呼吸器に疾患を持つ
お子さんにおいて、投与ルートを
呼吸器から行うことができます。
それによってより最適な輸送向性が得られる
可能性もあります。
また、エクソソームは機能性を維持した状態で
-20℃の環境で6か月凍結保存する事が可能です。
--
エクソソーム治療の安全性、毒性については
現時点では最適な形で管理されていません。
発がん性やオフターゲット活性など
考えられる副作用があります。
現時点で少なくともエクソソーム治療を受ける人は
腫瘍形成、免疫原性などのリスクも考えて
数年間は注意深くモニターする必要があります。
しかし、大人1000人以上のメタ分析では
間葉系幹細胞による細胞治療において
60カ月まで癌のリスクは上がらなかったとされています(7)。
従って、間葉系幹細胞由来のエクソソームは
この間葉系幹細胞の特性を色濃く反映すると
考えられるので、今後のメタ分析で
同様、あるいはそれ以上の安全性が確認される
可能性が考えられます。

//考察//ーー
生体内分布を光で行う場合、
近赤外光であっても生体組織への進入長が限られています。
従って、身体の大きな人では難しさがあります。
臨床前の動物モデルも含めて、
血液など液体生検から標的細胞まで運ばれた痕跡を
見つける事ができれば、人への応用が可能です。
例えば、標的細胞の細胞種特異的なcirculating miRNAを
エクソソームなど輸送媒体の内容物によって
バーコード化して、特定の目印を付ける事で
輸送されたかどうかの確認ができるか?
このような視点があります。
この場合、バーコード化されたRNAを
血中から検出することで間接的ですが、
輸送向性を評価する事ができる可能性があります。

(参考文献)
(1)
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas 
“Good things come in small packages”: application of exosome-based therapeutics in neonatal lung injury
Pediatric Research volume 83, pages298–307 (2018)
(2)
Konar D, Devarasetty M, Yildiz DV, et al. Lung-on-a-chip technologies
for disease modeling and drug development. Biomed Eng Comput Biol
2016;7:17–27.
(3)
Esch EW, Bahinski A, Huh D. Organs-on-chips at the frontiers of drug
discovery. Nat Rev Drug Discov 2015;14:248–60.
(4)
Wiklander OPB, Nordin JZ, Loughlin A, et al. Extracellular vesicle
in vivo biodistribution is determined by cell source, route of
administration and targeting. J Extracell Vesicles 2015;4:26316.
(5)
Takahashi Y, Nishikawa M, Shinotsuka H, et al. Visualization and
in vivo tracking of the exosomes of murine melanoma B16-BL6 cells in
mice after intravenous injection. J Biotechnol 2013;165:77–84.
(6)
Ohno S-I, Takanashi M, Sudo K, et al. Systemically injected exosomes
targeted to egfr deliver antitumor microrna to breast cancer cells. Mol
Ther 2013;21:185–91.
(7)
Lalu MM, McIntyre L, Pugliese C, et al. Safety of cell therapy with
mesenchymal stromal cells (SafeCell): a systematic review and meta-
analysis of clinical trials. PLoS One 2012;7:e47559


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