細胞外小胞は主に微小胞、アポトーシス小体(?)など
エクソソームを除く比較的径の大きな小胞において
心臓血管疾患との関連が指摘されています。
細胞外小胞は循環器に多種多様に放出されるので
血管系の疾患と関連があっても不思議ではありません。
あるいは機能不全によって細胞死、組織が破壊されるときに
放出される大きなものを含む細胞外小胞が
心臓血管疾患を悪化する事も指摘されています。
--
Lesley Cheng & Andrew F. Hill(敬称略)
からなる医療研究グループは
細胞外小胞と心臓血管疾患の関連について
簡潔に総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有したいと思います。
//アテローム性動脈硬化について//ーー
アテローム性動脈硬化はプラークが蓄積することによって
動脈が狭くなる状況のことです。
そのプラークは脂質やコレステロールからなります。
アテローム性動脈硬化は
内皮細胞の機能不全などによって引き起こされ
心臓血管疾患の初期段階に起こります(3)。
また、心筋の連結性や心筋梗塞なども引き起こします。
それらの病態は重篤で、命を落とす事もあります。
//細胞外小胞と心臓血管疾患//ーー
〇内皮細胞
〇平滑筋細胞
〇血小板
〇白血球
これら異なる細胞種由来の細胞外小胞は
アテローム性動脈硬化や心臓血管疾患の
周辺の病態、条件に関連します。
--
上述したように心臓血管疾患に関わる
典型的な細胞外小胞は微小胞を含む
粒子径が200-1000nm程度ものであるとされています。
それがアテローム性動脈硬化の
発生や進行に関わっているとされています(1)。
しかしながら、
動脈硬化が無くても細胞外小胞は発生しています。
動脈硬化に対して抵抗性のある通常の領域では
微小胞様の小胞(90-400nm)がブレブ形成をしながら
細胞膜であるリン脂質のバランスを保っています。
一方、
動脈硬化が生じている領域では
通常組織よりも大きな微小胞が形成されます。
また細胞死した時にアポトーシス小体も含めて(?)
形成されます。それが細胞膜のリン脂質のバランスを崩し
内皮組織に隣接した平滑筋細胞にも影響を与えます(4)。
--
低酸素状態にある心筋細胞から放出された
細胞外小胞はアポトーシス因子である
HSP60や腫瘍壊死因子(TNF)を含みます。
それが細胞死を引き起こし、
受け細胞である心筋細胞にとって有害となります(5,6)。
--
また血小板や白血球から放出された細胞外小胞は
TNF, IL-6, IL-8, IL-1β。
これらのような炎症性サイトカインと
抗炎症性サイトカインも含み
条件によって炎症を促進することがわかっています。
その組織炎症反応によって内皮細胞の機能が不全になります(7,8)。
--
細胞外小胞は内皮組織に対する単球の吸着を促進します。
それは
ICAM1, VCAM1, E-selectin。
これらのような吸着分子の亢進を通して生じます(7)。
単球の病変部位の吸着は
アポトーシスによる細胞死を促し、
その際に細胞外小胞が放出されます。
その細胞外小胞はアテローム性動脈硬化のプラーク内に
放出され、プラークが破裂します(7)。
プラーク破壊は局所貧血の発展につながります(9)。
//治療//ーー
当初は、間葉系幹細胞による心筋梗塞に対する
治療が研究されていました(10,11)。
現在は間葉系幹細胞による治療から
間葉系幹細胞由来の細胞外小胞による治療に
研究対象がシフトしています。
その細胞外小胞が
移動(マイグレーション)や血管生成を通じて
内皮細胞の機能を高める効果があるからです(12)。
また
人骨髄由来の間葉系幹細胞からの
細胞外小胞は白血球が内皮細胞の吸着する機能を
下げたとされています(13)。
--
内皮細胞由来の細胞外小胞中に
miR-214が内包されており、
これが隣接する細胞の血管生成を促した
とされています(12)。
炎症を抑えるために
他のmiroRNAもいくつか見つかっています(14,15)。
//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
細胞種特異的輸送系統が組織よりも
循環器中にある、あるいはそれに隣接する
疾患への応用がおそらく先行すると考えられます。
すでに
Xiangang Huang, Chuang Liu(敬称略)ら
医療研究グループは
病変形成の因子となるCaMKIIγ遺伝子を
サイレンス(オフ)にすることを目的とした
siRNAのマクロファージまでの輸送を
PEGコート下ポリマー脂質複合体ナノ粒子の
PEG先端にマクロファージ受容体stabilin-2の標的ペプチドである
「S2P」を結合させる事によって効率化させようとしています(2)。
これはアテローム性動脈硬化部位のマクロファージを
標的とした治療です。
標的が免疫細胞で有り、かつ動脈硬化部位は
循環器に隣接して存在するので
研究として良い結果が生み出される可能性があります。
一方で、
血管内に含まれるエクソソームなど細胞外小胞も
同様に治療として有効に使える可能性があります。
例えば、病変部位に存在する単球やマクロファージ由来の
エクソソームを使い、かつ炎症を抑える薬剤を封入することで
病変部位の組織、細胞特異的な輸送ができる可能性があります。
また、病変部位の内皮細胞や平滑筋細胞に多く発現される
表面リガンドに高い結合親和性を持つ表面リガンドを
エクソソームに積極的に装飾させる事も同様に考えられます。
それによってアテローム性動脈硬化病変部位特異的に
ナノ粒子を輸送し、そのナノ粒子に薬剤を詰め込むなど
機能性を与える事によって、治療を実現します。
(参考文献)
(1)
Lesley Cheng & Andrew F. Hill
Therapeutically harnessing extracellular vesicles
Nature Reviews Drug Discovery volume 21, pages379–399 (2022)
(2)
Xiangang Huang, Chuang Liu, Na Kong, Yufen Xiao, Arif Yurdagul Jr., Ira Tabas & Wei Tao
Synthesis of siRNA nanoparticles to silence plaque-destabilizing gene in atherosclerotic lesional macrophages
Nature Protocols (2022)
(3)
Boulanger, C. M. et al. Circulating microparticles from
patients with myocardial infarction cause endothelial
dysfunction. Circulation 104, 2649–2652 (2001).
(4)
Bobryshev, Y. V., Killingsworth, M. C. & Orekhov, A. N.
Increased shedding of microvesicles from intimal
smooth muscle cells in athero-prone areas of the
human aorta: implications for understanding of the
predisease stage. Pathobiology 80, 24–31 (2013).
(5)
Yu, X. et al. Mechanism of TNF-α autocrine effects in
hypoxic cardiomyocytes: initiated by hypoxia inducible
factor 1α, presented by exosomes. J. Mol. Cell. Cardiol.
53, 848–857 (2012).
(6)
Gupta, S. & Knowlton, A. A. HSP60 trafficking
in adult cardiac myocytes: role of the exosomal
pathway. Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 292,
H3052–H3056 (2007).
(7)
Mesri, M. & Altieri, D. C. Endothelial cell activation
by leukocyte microparticles. J. Immunol. 161,
4382–4387 (1998).
(8)
Mesri, M. & Altieri, D. C. Leukocyte microparticles
stimulate endothelial cell cytokine release and
tissue factor induction in a JNK1 signaling pathway.
J. Biol. Chem. 274, 23111–23118 (1999).
(9)
V Fuster 1, B Stein, J A Ambrose, L Badimon, J J Badimon, J H Chesebro
Atherosclerotic plaque rupture and thrombosis. Evolving concepts
Circulation. 1990 Sep;82(3 Suppl):II47-59.
(10)
Yu, B. et al. Cardiomyocyte protection by GATA-4
gene engineered mesenchymal stem cells is partially
mediated by translocation of miR-221 in microvesicles.
PLoS ONE 8, e73304 (2013).
(11)
Feng, Y., Huang, W., Wani, M., Yu, X. & Ashraf, M.
Ischemic preconditioning potentiates the protective
effect of stem cells through secretion of exosomes by
targeting Mecp2 via miR-22. PLoS ONE 9, e88685
(2014).
(12)
Zhu, F. et al. Adipose-derived mesenchymal stem cells
employed exosomes to attenuate AKI-CKD transition
through tubular epithelial cell dependent Sox9
activation. Oncotarget 8, 70707–70726 (2017).
(13)
Luu, N. T. et al. Crosstalk between mesenchymal stem
cells and endothelial cells leads to downregulation of
cytokine-induced leukocyte recruitment. Stem Cell 31,
2690–2702 (2013).
(14)
Jansen, F. et al. Endothelial microparticles reduce
ICAM-1 expression in a microRNA-222-dependent
02–2214 (2015).
(15)
Wang, X. et al. Cardiomyocytes mediate
anti-angiogenesis in type 2 diabetic rats through the
exosomal transfer of miR-320 into endothelial cells.
J. Mol. Cell. Cardiol. 74, 139–150 (2014).
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