新型コロナウィルスのワクチンによって
著しい社会的な需要もあって、急速に発展し、進んだ
mRNAワクチンはウィルスのRNA配列が明らかになってから
おおよそ11カ月で承認されました。
しかし、技術が急激に萌芽したわけではありません。
mRNAを使ったワクチンの構想は
1990年が最初であるとされています(2)。
Ann J. Barbier(敬称略)らの総括によると、
当初は、mRNAを裸のまま輸送する事から始まりましたが、
やがて、現在の形であるナノ粒子に封入して
輸送することが検討されるようになったとされています(1)。
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mRNAを使った医療応用は大きくは3つのカテゴリからなる
とされています。
①新型コロナウィルスのような感染症予防のためのワクチン
②癌の治療などの治療的なワクチン
③任意のタンパク質を生み出し、利用する治療
これらです。
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mRNAは転写因子なので任意のタンパク質を生み出すこと
を目的としています。
そのためには細胞の中に輸送する必要があります。
一方、RNAはDNAなどと比べて潜在的に不安定なので
特定の細胞内に分解しないように輸送する必要があり
そこが一つの挑戦的な要素でした。
RNAを安定化させるため
〇5'cap structure
〇3'poly(A) tail length
〇Untranslated regions
これらの最適化が行われています(3)。
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上述したように細胞内へ輸送する需要の中で
現在の形式であるナノ粒子の利用が検討されてきました。
最初に候補となったのが脂質ナノ粒子です。
典型的な脂質ナノ粒子は
〇イオン化もしくは陽イオンの脂質ナノ粒子
これは陰イオンのRNAと相互作用します。
〇ヘルパーリン脂質
これは細胞膜の脂質に類似します。
〇コレステロール
脂質2重層の流動性を調整します。
〇ポリエチレングリコール-脂質
コロイドの安定性向上とオプソニン化を減少させます。
これらです。
このナノ粒子よりも臨床的応用は進んでいませんが
ポリマーナノ粒子も輸送において有望です。
〇アミン含有ポリマー
〇ヘルパーリン脂質との融合
〇コレステロールとの融合
〇ポリエチレングリコール-脂質との融合
これらが検討されています。
従って、多くは脂質ナノ粒子との融合、混合材料が
候補として挙げられています(1)。
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さらに特定の細胞への標的性を上げるために
その細胞の受容体を含む表面リガンドに結合親和性が高い
特定のリガンドを脂質、ポリマーナノ粒子の周りに
装飾する事です。
これは細胞種特異的輸送系統(*)のコンセプトとなります。
(*)Cell-type-specific delivery system
//意見//ーー
脂質ナノ粒子を使った新型コロナウィルスmRNAワクチンは
数億人を超える人への接種に成功しました。
特にリスクの高い高齢の方、基礎疾患がある人の命を救いました。
健康な人への接種の中でごく一部に重い副反応がありましたが、
安全性の面でも多くの人において許容範囲内でした。
高熱が出ても2,3日で収まるケースがほとんどです。
また価格の面でも2800円(25.5ドル)(*)と安く抑えられています。
(*)モデルナ社価格参考
従って、他の感染症や癌ワクチンなどにおいて
mRNAワクチンを臨床応用するときの
いくつかの壁は低くなったと考えることができます。
また、ナノ粒子を使った先端的な医療の可能性も示されました。
(参考文献)
(1)
Ann J. Barbier, Allen Yujie Jiang, Peng Zhang, Richard Wooster & Daniel G. Anderson
The clinical progress of mRNA vaccines and immunotherapies
Nature Biotechnology (2022)
(2)
Wolff, J. A. et al. Direct gene transfer into mouse muscle in vivo. Science
247, 1465–1468 (1990).
(3)
Pardi, N., Hogan, M. J., Porter, F. W. & Weissman, D. mRNA vaccines—a
new era in vaccinology. Nat. Rev. Drug Discov. 17, 261–279 (2018).
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