細胞外小胞には様々なRNAの生物型(biotypes)が存在します。
そのうち、miRNAは細胞間コミュニケーションの媒体として
最もよく知られており、他のRNA生物型においては
その機能に関する知見は限られています。
細胞外小胞のRNAの機能性を独立して調べるためには
いくつかの困難性があります。
その困難性とは以下です。
--
細胞内の特定のRNAの量は過剰発現により超生物学的な
レベルとなり、それが細胞外小胞の放出レベルや
他の積載物の量、種類を変えてしまいます。
その他の積載物の影響をRNAは受けます。
また、培養条件によっても影響を受けます。
よく使われるウシの血清では
その血清内に含まれるRNAを細胞外小胞が取り込んでしまいます。
このウシの血清内に含まれるRNAを取り除くために
遠心分離機が使われますが、
それでも完全に取り除くことはできません。
またRNAの切れ端を含むRNAは機能がよくわかっていませんが、
これがドナー細胞、受け細胞で機能的な効果を持つことがあります。
--
Killian O’Brien, Koen Breyne(敬称略)ら
医療研究グループはRNAのバイオタイプごとの
細胞外小胞の内容物としての機能を総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を読者の方と
情報共有したいと思います。
//miRNAs//ーー
miRNAは細胞外小胞を通じた細胞間の輸送によって
様々な疾患、生理(下流経路も含めて)に関わることが
試験管、生体内の両方の実験で明らかになっています。
例えば、以下の機能があります。
--
miR-193bは中枢神経系の細胞外小胞を通じて分泌されます。
神経細胞のアミロイド前駆タンパク質の発現レベルを
低下させ、アルツハイマー病の病態を緩和させます。
従って、miR-193bはこの疾患のバイオマーカーとして
使用されます(2)。
-
miR-124aはアストロサイト内でグルタミン酸輸送に関わります。
それはシナプス伝達において重要です(3)。
-
miR-19がアストロサイト由来細胞外小胞から分泌された場合
脳腫瘍と関連します。癌細胞の腫瘍抑制因子であるPTENを
抑制することによって、脳への転移、その成長を
促すことが知られています(4)。
-
miR-375が間葉系幹細胞由来の細胞外小胞に含まれる場合、
骨髄幹細胞によって骨の再形成を促します(5)。
-
miR-155, miR-146a、これらが樹状細胞間で
交換されたときには炎症性に関わります。
miR-155はエンドトキシン誘発炎症反応を促進、
miR-146aはそれを抑制します。
-
その他、Killian O’Brien, Koen Breyne(敬称略)らが
参考文献(1)Table.1に示すように
横紋筋肉腫、グリア芽腫、乳癌細胞、
心臓前駆細胞、心筋細胞、神経前駆細胞
脂質マクロファージ、脂質間葉系幹細胞、
脂肪細胞から放出された
細胞外小胞内のmiRNAは
血管生成、免疫反応、インスリン抵抗性、
骨形成、癌形成など様々な生理に関わることが
知られています。
//mRNAs//ーー
細胞外小胞に含まれるほとんどのmRNAは
1kb以下ですが、レトロウィスル内ト同じように
それよりも長鎖のRNAを含むこともあります(6)。
そのmRNAは受け細胞で転写、翻訳され
特定のタンパク質の資源となります。
しかし、その場合
受け細胞内でのエンドソームからの放出が
機能的mRNAの輸送の一つの障害となります(7)。
一方、mRNAによるタンパク質の発現は報告されています。
例えば、
肥満細胞間、膠芽細胞腫と内皮細胞の間での
細胞外小胞の輸送においてmRNAは
それぞれレポータータンパク質を発現した
といわれています(8,9)。
また、
膠芽細胞腫とHEK293T細胞の混合培養条件で
細胞外小胞によって輸送されたmRNAは
1時間以内に翻訳されたとされています(10)。
加えて
肺動脈平滑筋細胞と心臓内皮細胞の間の
mRNAの細胞外小胞仲介の輸送では
複数の異なるmRNAの輸送によって
アクチン細胞骨格の制御や
細胞外マトリックスの再形成などを
誘発したとされています(11)。
--
細胞外小胞内のmRNAが受け細胞でタンパク質を
発現させたかどうかと受け細胞で新しく
発現されたタンパク質を区別する事は難しいとされています。
しかし、ナノ粒子によるmRNAの輸送や
それに関連するCRISPR遺伝子編集などの証拠は
細胞外小胞のmRNAが受け細胞で翻訳されうる
ことを示しています(12,13)。
//lncRNAs//ーー
細胞外小胞内のlncRNAsの機能は多様であるとされています。
例えば、
低酸素状態の心筋細胞はlncRNA NEAT1を
高いレベルで含む細胞外小胞を放出します。
それが線維芽細胞に取り込まれる事によって
線維化を促進する遺伝子を発現することが
知られています(14)。
低酸素状態誘発因子である1α-stabilizing lncRNA
は癌関連マクロファージ由来の細胞外小胞内に
含まれます。それが乳癌細胞の運動性を促進します(15)。
//考察//ーー
miRNAは細胞特異的、疾患特異的に様々な機能がある事が
miRNAの型を含めて明らかになっています。
従って、その情報をベースに治療に応用することが
原理的には可能であると考えられます。
mRNAも新型コロナウィルスのワクチンで
ナノ粒子において抗原であるタンパク質の生成が
可能であることが示されています。
この知見を細胞外小胞を通した
mRNA治療に生かすことができると考えられます。
(参考文献)
(1)
Killian O’Brien, Koen Breyne, Stefano Ughetto, Louise C. Laurent & Xandra O. Breakefield
RNA delivery by extracellular vesicles in mammalian cells and its applications
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 21, pages585–606 (2020)
(2)
Liu, C. G., Song, J., Zhang, Y. Q. & Wang, P. C.
MicroRNA-193b is a regulator of amyloid precursor
protein in the blood and cerebrospinal fluid derived
exosomal microRNA-193b is a biomarker of
Alzheimer’s disease. Mol. Med. Rep. https://doi.
org/10.3892/mmr.2014.2484 (2014).
(3)
Morel, L. et al. Neuronal exosomal mirna- dependent
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transporter glt1. J. Biol. Chem. https://doi.org/
10.1074/jbc.M112.410944 (2013).
(4)
Zhang, L. et al. Microenvironment- induced PTEN
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(5)
Chen, C. C. et al. Elucidation of exosome migration
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016-0458-3 (2016).
(6)
Hoen, E. N., Cremer, T., Gallo, R. C. & Margolis, L. B.
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10.1073/pnas.1605146113 (2016).
(7)
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(8)
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(10)
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(15)
Chen, F. et al. Extracellular vesicle- packaged
HIF-1α- stabilizing lncRNA from tumour- associated
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cancer cells. Nat. Cell Biol. https://doi.org/10.1038/
s41556-019-0299-0 (2019).
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