細胞種特異的輸送系統(*)を実現するための
必要要件の一つは、
「標的細胞種に本当に薬剤が届いているか?」
これを確かめる事です。
(*)Cell-type-specific delivery system
動物実験だけではなく、
最終的には人のケースでも求められます。
しかし、臨床前の段階である程度、
その特異的な薬理が確かめられていれば、
人のケースではより間接的な方法でよいかもしれません。
いずれにしても薬剤輸送経路に関して、
基礎から土台を築いていく必要があります。
考えられる方法としては
身体の透明でかつ人との遺伝子の整合性の高い
ゼブラフィッシュを用いて
特別に設計されたナノ粒子、小胞が
標的細胞まで運ばれている様子を視覚化して調べる事です。
もう1つは、細胞種特異的な遺伝子を
バーコード化して、血中や尿などに
遊離しているそれを確認するという事です。
バーコード化するための物質は
特別に設計された小胞、ナノ粒子が
特異的に内包しています。
従って、小胞が標的細胞まで届いたかどうかを
遊離RNAのコードによって識別できる可能性があります。
--
これらの他には
Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)ら
国際的な医療研究グループが総括されている(1)
"Organ-on-a-chip"があります。
人由来の組織で人工臓器、組織(の一部)を作り
それを基板、チップ内に任意に設計して組み込み
その環境内でナノ粒子薬剤の輸送状況を評価することで
特定の細胞種に特異性を持って輸送され
取り込まれたかどうかを評価する事ができます。
Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)らの
総括の要約の中で示されている
"An application-specific Organs-on-chips"
これが大切になります。
細胞種特異的輸送系統に則った薬理を調べるときには
それに応じた人工組織セットが必要になります。
少なくとも最終的な評価の時点で
あまりにも単純すぎると輸送の障壁が少なすぎて
実態を反映しないという事になります。
また、ゼブラフィッシュのように動きを
光学顕微鏡などで可視化できるようにする必要もあります。
最終的に細胞外小胞、脂質ナノ粒子などの
ナノ粒子による細胞種特異的輸送系統を
臨床前に評価していく際の
「標的細胞種に本当に薬剤が届いているか?」
というのは治療反応を下支えするための
非常に大事な評価項目となります。
そうであるとするならば、
その方法(Method)、手順(Protocol)
それに対する教材(Primer)が非常に重要になり、
オープンソースとして国際的に共通化していく必要がある
かもしれません。
少なくとも情報の汎用化、共有は必要です。
--
Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)ら
医療研究グループは上述したことに関連する
The Organ-on-a-chipの手引書、指針を総括されています(1)。
//要約(1)、追記//ーー
Organ-on-a-chipはマイクロ流体システム、経路を持つ
チップ、基板内に収められたエンジニアリングされた
または自然の組織の一部を含む一体型の装置です。
エンジニアリング、自然の組織に関わらず、
人工的な基盤材料の上に任意の形を持って収める必要があるため、
組織の成長においてiPS細胞技術を含めた
多能性幹細胞技術と培養環境最適化の発展、向上は
非常に重要になります。
このOrgan-on-a-chipは試験管内の基礎的な実験から
臨床応用までを繋ぐトランスレーショナル医療において
重要な評価装置となります。
通常は、マウスなどの動物が使われますが、
Organ-on-a-chipはより人の環境に似せて行うことです。
それが原則としてあります。
また上述したように形態の自由度がある事から
特定の評価のために最適化した設計にすることもできます。
人の身体の中を開胸、侵襲せずに
光を当てて光学顕微鏡で分析する事は不可能です。
最も透過率の高い赤外線でも表層に留まります。
一方Organ-on-a-chipでは、人由来の組織で光学顕微鏡で
細胞の動きや薬剤の動きなどを分析できるような
システムを組むことも原理的にはできます(ref.(1)Fig.1)。
そうした中で
人の生理現象により似せるためには
〇細胞の微小環境の制御
〇組織特異的な機能の維持
これらが重要になります。
微小環境は、細胞外マトリックスを含む間質や
組織の土壌などの設定を合わせる必要があります。
組織特異的な機能の維持においては
腎臓で有れば、ろ過の機能をうまく組み込む必要があります。
また血液、神経系、免疫の機能をどう組み込むか
という観点も必要になります。
この中で神経はより難しいかもしれません。
--
Organ-on-a-chipは次世代の実験土台、プラットフォーム
として注目を浴びています。
人の病態生理や治療効果について調べる事が目的です。
しかしながら、
Organ-on-a-chipは決まった設計図、雛形がなく
異種性に富み、自由度が高いため、
新しい研究者にとっては
自分の求める結果に最も適したOrgan-on-a-chipは
どのようなものか?
それを考える事に難しさがあるとされています。
従って、
Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)らは
応用特異的なOrgan-on-a-chipを発展するための
手引書、指針を示されています(1)。
その中で、
〇デザイン、設計
〇製造方法
〇動作方法
〇得られる結果を抽出する技術
これらの原理、考察を示されています。
//背景//ーー
Organ-on-a-chipでは血液を含めた
体液システムを模すために流路を作る事が前提としてあります。
そのためのチャンネルは髪の毛の細さほどの
マイクロチャンネルのネットワークが
装置内に築かれます。
それによって流量を調整します(2-4)。
--
人に限らず、動物においても
生物学的に複雑に連携しているため、
生体内で何が起こっているかというのを
調べる事においては制限があります。
そこで、2次元、3次元の組織を細胞培養から
作ることをしますが、その独立組織は
生物学的な連携が欠如していますから
実際の生理との乖離が大きくなります。
従って、要約でも述べた様に
生体内で直接実験や治験を行うのとは独立したモデルとして、
あるいは空白の領域を埋めるための形式として
Organ-on-a-chipが提案されています。
--
このOrgan-on-a-chipは
The World Economic Forumで
2016年に新たな技術のトップ10内に
ランキングされています(5)。
この技術は大学や研究所だけではなく、
化学、美容、食品、製薬など様々な業種で
利用されるほど現在ではコンセプトとして広がっています(1)。
--
上述したようにOrgan-on-a-chipは
微小環境を整える必要があります。
その中で
〇細胞の極性(6-8)
〇直接的な細胞同士の相互作用(9,10)
〇化学物質、電気信号の伝達(11-13)
これらを達成しています。
また、最も巨視的に臓器様の機能も
人工的な構造を組みこみながら引き出すことを
実現しています(14,15)。
--
iPS細胞技術で特に期待されているのは
患者さん特異的なOrgan-on-a-chipを作ることが
原理的にできるということです(16-18)。
それによって病態生理、表現型、
薬剤の反応などを患者さん特異的に
生体内の一部を模した装置で調べる事ができます(19)。
--
またチップや基板の上に組織を載せますが、
そのチップや基板の形はシリコンなど材料を
選定する事に寄って、リソグラフィーによって
半導体回路のようにナノメートルオーダーで
任意に型を作る事が出来ます(20,21)。
//提案//ーー
細胞種特異的輸送系統では
エクソソームが輸送媒体としての一つの大きな選択肢です。
エクソソームの大きさは50nm-150nm程度です。
基板のリソグラフィー加工技術を利用して
例えば、50~100nmくらいの小胞のみが
通れるナノチャンネルを作ることで
エクソソームの振る舞いを独立的に評価することが
できる可能性があります。
例えば、いくつかの開けた部屋と廊下を用意します。
部屋、空間1:血管内皮
廊下1:ナノ経路
部屋、空間2:肝臓
廊下2:ナノ経路
部屋、空間3:腎臓
廊下3:ナノ経路
部屋、空間4:遊離免疫細胞群
廊下4:ナノ経路
部屋、空間5:脾臓
廊下5:ナノ経路
部屋、空間6:標的細胞
このように薬剤が代謝されやすい人工組織を
部屋、空間に用意します。
そしてその空間内を繋ぐ経路、廊下は
エクソソームだけが通れる大きさにしておきます。
空間1から標的細胞に特異的に結合する
エクソソームを流し込み、
最終的に空間6までどれくらい効率的にたどり着くか?
これについて調べます。
空間を作ったのはそれぞれの組織からの分泌物がたまるので、
ある程度開けた空間、容積が必要だと思ったからです。
途中の組織で生み出されたエクソソームも
同様に次の空間にたどり着いてしまいますが、
それを除外する案は現在は持ち合わせていません。
このナノオーダーの細い廊下(1つでなくてもいい)と
複数の部屋を繋いで、一つの装置としてます。
そして、その振る舞いは顕微鏡で観察できるようにしておきます。
標的化したエクソソームは
蛍光発光させてもいいかもしれません。
全部開けた空間の中で
薬剤が代謝されやすい組織を順番に並べるのと比べて
ナノオーダーの廊下を作る事に意味があるか?
相互作用が少なく、
エクソソームの移動の特異性が上がるので
輸送効率の評価の基準を立てやすいという事はある可能性があります。
また廊下で光の数をカウントができれば、
途中過程でどれくらいの割合のエクソソームが
減少しているか?
組織ごと段階的に評価ができる可能性もあります。
(参考文献)
(1)
Chak Ming Leung, Pim de Haan, Kacey Ronaldson-Bouchard, Ge-Ah Kim, Jihoon Ko, Hoon Suk Rho, Zhu Chen, Pamela Habibovic, Noo Li Jeon, Shuichi Takayama, Michael L. Shuler, Gordana Vunjak-Novakovic, Olivier Frey, Elisabeth Verpoorte & Yi-Chin Toh
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