2022年5月5日木曜日

エクソソーム治療を実現させる上での課題

多くの病気の臨床前モデルで有望な結果が得られたので
研究者、開発者は安全で、実現可能で、再現性のある
間質系幹細胞治療の実現のため従事しています。
しかしながら、臨床へのトランスレーションにおいて
いくつかの困難な課題があります。
大きなハードルはエクソソームの精製です。
そのための方法、分析、標準化が未熟です。
このような課題から産業レベルへの製造スケールアップも
難しい状況です。
--
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas 
(敬称略)からなる医療研究グループは
上述した課題を踏まえたうえで
研究開発を推し進めるためのガイドラインをいくつか
示されています(1)。その内容の一部、追記、考察を
読者の方と共有したいと思います。

//臨床前動物モデル//ーー
動物モデルの選択はエクソソームベースの治療の発展において
重要です。臨床前の段階で効果を確かめることは
臨床へのトランスレーションにおいて重要です。
気管支肺異形成症のような新生児の疾患に対して
いくつかの動物モデルが発展してきました。
また新生児の実際の環境と類似するように
その方法が最適化されてきました(2)。
マウスのケースでは在胎期間が20日と非常に短いので
肺胞のモニターや肺の成長は非常に速く
試験を迅速に行う必要があります。
重要な事は、子宮内でどれくらい肺が成長して
生まれるか?その肺の成長と出産のタイミングは
人とマウスで異なります。
満期産で生まれたマウスの肺の状態は
人のケースでは在胎期間24~28週の早産児の状態と
類似するとされています。
従って、生まれたばかりのマウスは
早産児が関わる気管支肺異形成症を始め
肺の疾患を研究するのに良いモデルとなります。
しかし、機能としては異なります。
満期産のマウスは成長段階としては
早産の子供とステージは類似していますが、
機能としてはガスの交換は十分にでき、
酸素の補充は必要としません(2,3)。
--
エクソソームベースの治療の研究をするにあたり、
マウスのような小さな動物では
重量あたり少ないエクソソームしか必要としません。
従って、人のケースと類似性を持たせて
肺疾患に対するエクソソームの臨床前動物モデルの
研究をしていくためには
子羊のようなもっと大きな動物モデルが
適していると考えられています(4)。

//間葉系幹細胞の異種性//ーー
エクソソームについていくつかのわかっていないことがあります。
〇ドナー組織に関わらず全ての間葉系幹細胞からの
 エクソソームは同じですか?
〇ドナーとなる人、動物、異なる培養環境は
 間葉系幹細胞由来のエクソソームにどのように
 影響を与えるでしょうか?
これらの問いに対して
間葉系幹細胞由来のエクソソームによる治療と
標準化された製造の開発を促進するために
答えを見つけていく必要があります。
--
提供者(ドナー)による異種性は非常に困難な問題です。
高齢の方から得た間葉系幹細胞は
ゆっくりと増殖し、分化機能が弱くなっている
ことが試験管で知られています(5,6)。
例えば、
臍帯血から取り出した11の間葉系幹細胞の培養のうち
2は遺伝子不均衡を有していました。
異なる遺伝子型(Genotypes)を持つ遺伝子モザイクが
確認されています(7)。
このような不確定性は間葉系幹細胞による
治療に影響を与えます
それはそこから分泌するエクソソームにも影響を与えます。

//エクソソームの異種性//ーー
細胞外小胞の生成機序はいくつかあります。
エクソソームのようにエンドソーム内で生成され
エンドサイトーシスから2度の陥入を経て
精製される細胞外小胞もあれば、
直接、細胞膜に内側から陥入して生成する
細胞外小胞もあります。
しかし、このように細胞内での生成機序の異なる
異種の起源をもつ細胞外小胞を区別して
分離する方法は現在の所ない状況です。
そういった中で
遠心分離の方法で大きさごとの分離方法は
存在します(8)。
またエクソソームに多く発現している
テトラスパニンのうちCD63, CD9, CD81などの
バイオマーカーもあります。
これらの表現型を元に分離する方法も考えられます。
大きさが同じでも表面リガンドが大きく異なれば、
エクソソームの機能が異なる事が考えられます。
内容物、大きさ、膜の構成、表面リガンドを
完全に揃える事は不可能ですが、
その一致性が高まれば、
エクソソームがどのように体に影響しているか?
という解読を促進することができます。
また、現在課題となっている
臨床応用、再現性、大量生産の課題の
いくつかを超えられる可能性があります。

//エクソソームの用量評価//ーー
エクソソームの体内の持続期間を評価する事は
その用量、間隔、投与ルート
を最適化する上で重要です。
また、副作用を防ぐ最大容量の決定の上でも同様です。
しかし、これらは疾患、モデル特異的であり
標準化された方法は存在しません。
現在、下記、いくつかの方法で試みられています。
〇Cell equivalents
〇タンパク質濃度
〇光散乱
〇抵抗性パルスセンシング
〇ナノ粒子追跡分析
これらは利点と制限要因があります。
エクソソームの定量分析Ref.(9)-(12)で総括されています。
--
エクソソーム効力検定(potency assay)は
バッチごとの不一致や現在の定量評価の制限要因を
解決してくれる価値のあるツールです。
研究開発されている方は
現在この方法を標準化させるために検討されています。
今までの所
間葉系幹細胞の効力検定は
T細胞増殖、マクロファージ極性アッセイを
軸に進められてます(13)。
このエクソソーム効力検定は
目的に応じて調整する必要があります。
アッセイの例は間葉系幹細胞由来のエクソソームの
免疫調整性の特性に基づいて行われます。
この免疫への効果は生体内ので効果と比例します。
しかしながら、
過剰に単純化された評価手法であり、
もっと注意深く妥当性を考えていく必要があります。
詳細なエクソソームの特性分析としては
効果と特異的なエクソソームマーカー(TSG101, CD63)
の関係性を調べることが挙げられています。
代理マーカーの指定も同様です。
このような痕跡検定はバッチごとの一致性を制御する上で
有効であるかもしれません。

//考察//ーー
エクソソームをどのように精製するか?
大きさだけでの分離は十分ではないとされています。
その機能について評価するためには
理想的には内容物、表面リガンドに基づいて
行われる必要があります。
間葉系幹細胞由来のエクソソームが普遍的に持つ
内容物や表面リガンドを調べ、
それに関連する、感受性を持つ効力検定を行うことで
完全ではないにしても
ある程度の一致性を確保できる可能性があります。
おそらく完全な一致は期待できないので、
エクソソームを使ってどのような機序で治療するか?
それについて定めたうえで
それに基づく効力検定を行う事になると考えます。
例えば、特定の表面リガンドを使うのであれば、
その表面リガンドに関係する効力検定が重要になります。

(参考文献)
(1)
Gareth R Willis, S Alex Mitsialis & Stella Kourembanas 
“Good things come in small packages”: application of exosome-based therapeutics in neonatal lung injury
Pediatric Research volume 83, pages298–307 (2018)
(2)
Nardiello C, Mižíková I, Morty RE. Looking ahead: where to next for
animal models of bronchopulmonary dysplasia? Cell Tissue Res
2017;367:457–68.
(3)
Berger J, Bhandari V. Animal models of bronchopulmonary dysplasia.
The term mouse models. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2014;307:
L936–47.
(4)
Albertine KH. Utility of large-animal models of BPD: chronically
ventilated preterm lambs. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2015;308:
L983–1001.
(5)
Choudhery MS, Badowski M, Muise A, et al. Donor age negatively
impacts adipose tissue-derived mesenchymal stem cell expansion and
differentiation. J Transl Med 2014;12:8.
(6)
Romanov YA, Darevskaya AN, Merzlikina NV, et al. Mesenchymal stem
cells from human bone marrow and adipose tissue: isolation,
characterization, and differentiation potentialities. Bull Exp Biol Med
2005;140:138–43
(7)
Borghesi A, Avanzini MA, Novara F, et al. Genomic alterations in
human umbilical cord–derived mesenchymal stromal cells call for
stringent quality control before any possible therapeutic approach.
Cytotherapy 2013;15:1362–73.
(8)
Kowal J, Arras G, Colombo MJ, et al. Proteomic comparison defines
novel markers to characterize heterogeneous populations of extracellular
vesicle subtypes. Proc Natl Acad Sci USA 2016;113:E968–77.
(9)
Koritzinsky EH, Street JM, Star RA, et al. Quantification of exosomes.
J Cell Physiol 2017;232:1587–90.
(10)
Rupert DLM, Claudio V, Lässer C, et al. Methods for the physical
characterization and quantification of extracellular vesicles in biological
samples. Biochim Biophys Acta 2017;1861:3164–79.
(11)
Chia BS, Low YP, Wang Q, et al. Advances in exosome quantification
techniques. TrAC Trends Anal Chem 2017;86:93–106.
(12)
Akers JC, Ramakrishnan V, Nolan JP, et al. Comparative analysis of
technologies for quantifying extracellular vesicles (EVs) in clinical
cerebrospinal fluids (CSF). PLoS ONE 2016;11:e0149866.
(13)
Willis GR, Kourembanas S, Mistalis SA. Towards exosome-based
therapeutics: isolation, heterogeneity, and fit-for-purpose potency. Front
Cardiovasc Med 2017 (doi:10.3389/fcvm.2017.00063).

0 コメント:

コメントを投稿

 
;