2022年5月21日土曜日

静電気力を利用した細胞外小胞への物質の積載

細胞外小胞を薬剤の輸送媒体として
使用するためには、様々な要素が重要になります。
〇特定のサブタイプに精製する
〇薬剤を有効に封入する
〇薬剤を劣化から守る(親細胞、輸送ルート、受け細胞)
〇細胞外小胞を劣化から守る(親細胞、輸送ルート、受け細胞)
〇細胞外小胞を標的細胞まで有効に輸送する
〇受け細胞で有効に取り込ませる
〇受け細胞で薬剤を放出させる
これらなどが考えられます。
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Koen Breyne(敬称略)からなる医療研究グループは
強い正電荷をもつたんぱく質(+scProtein)を
細胞外小胞内に導入することによって
負電荷をもつ(プラスミド)DNAの封入や
受け細胞での安定性、
それによるエンドソームからの有効な放出を
実現されています(1)。
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この正電荷タンパク質は構造のドメインの中で
正電荷を持つアルギニン、リジンのアミノ酸を
タンパク質の外側にむき出しに配置させ
機能的なアミノ酸は親組織から維持することで
構成されています(2)。
この正電荷タンパク質は
細胞の細胞膜を通した移動が可能なので(3)
そのままエンドソームや細胞外小胞に取り込まれる
ことが可能です。
細胞外小胞の表面は負電荷をもつ
セラミド(4)、フォスファチヂルセリン(5)の
脂質からなるので、静電気的に引き寄せされます。
この正電荷のタンパク質は負電荷をもつDNAを
引き込んで、細胞外小胞内に組み込まれることが可能です。
また、
エクソソームの腔内膜小胞に発現されている
テトラスパニンは内腔への取り込みにおいて
重要な役割を果たします(6,7)。
このテトラスパニン(CD63, CD81)が発現されている
比較的大きなサイズの細胞外小胞の
正電荷タンパク質(+scProtein)の取り込みは向上しています。
従って、この表面リガンドと相互作用していることが
想定されます。
さらに
細胞外小胞内に正電荷タンパク質が取り込まれた
状態では受け細胞内での
〇脱グルコシル化
〇DNA分解酵素活性
〇劣化
これらを防ぐことができたとされています(1)。
正電荷タンパク質が置く含まれている細胞外小胞は
220nm~100nmであり、100nm以下のそれよりも
多かったとされています。
上述したように安定性が高い事に寄って
エンドソーム内で長い間相互作用ができるため
エンドソームからの放出の能力が向上する
ことが考えられます(8,9)。
--
この強い正電荷をタンパク質に与える方法は
自然のルートでの方法における以下の困難を
乗り越えることができます。
〇積載物のバラつき
〇複数の積載物輸送の選択性の低さ
〇積載プロセスの制御性の低さ
〇過飽和条件の受け細胞の用意
これらです(10)。

//考察//ーー
細胞外小胞への有効な物質の搭載は
その物質が正に帯電していれば、
そのまま負に帯電した細胞膜に引き寄せられるため
この報告で正電荷のタンパク質が引き寄せられ
自然なルートで搭載されたように
封入されると考えられます。
一方で、負に帯電した核酸のような物質も
意図的に正に帯電した物質を
細胞外小胞の内腔への輸送媒体として用意して
負(細胞膜)⇔正(例えば、タンパク質)⇔負(例えば、核酸)
というような互いに引き合うシステムを作ることで
通常は効率が低いと考えられる
負電荷をもつ物質の有効な搭載も可能になる
ということだと考えます。

(参考文献)
(1)
Koen Breyne, Stefano Ughetto, David Rufino-Ramos, Shadi Mahjoum, Emily A. Grandell, Luís P. de Almeida & Xandra O. Breakefield 
Exogenous loading of extracellular vesicles, virus-like particles, and lentiviral vectors with supercharged proteins
Communications Biology volume 5, Article number: 485 (2022) 
(2)
Ma, C., Malessa, A., Boersma, A. J., Liu, K. & Herrmann, A. Supercharged
proteins and polypeptides. Adv. Mater. 32, 1905309 (2020).
(3)
McNaughton, B. R., Cronican, J. J., Thompson, D. B. & Liu, D. R. Mammalian
cell penetration, siRNA transfection, and DNA transfection by supercharged
proteins. Proc. Natl Acad. Sci. USA 106, 6111–6116 (2009).
(4)
Trajkovic, K. et al. Ceramide triggers budding of exosome vesicles into
multivesicular endosomes. Science 319, 1244–1247 (2008).
(5)
Sharma, R., Huang, X., Brekken, R. A. & Schroit, A. J. Detection of
phosphatidylserine-positive exosomes for the diagnosis of early-stage
malignancies. Br. J. Cancer 117, 545–552 (2017).
(6)
van den Boorn, J. G., Schlee, M., Coch, C. & Hartmann, G. SiRNA delivery
with exosome nanoparticles. Nat. Biotechnol. 29, 325–326 (2011).
(7)
Alvarez-Erviti, L. et al. Delivery of siRNA to the mouse brain by systemic
injection of targeted exosomes. Nat. Biotechnol. https://doi.org/10.1038/nbt.
1807 (2011).
(8)
Brock, D. J. et al. Efficient cell delivery mediated by lipid-specific endosomal
escape of supercharged branched peptides. Traffic 19, 421–435 (2018).
(9)
Cronican, J. J. et al. Potent delivery of functional proteins into mammalian
cells in vitro and in vivo using a supercharged protein. ACS Chem. Biol. 5,
747–752 (2010).
(10)
Sutaria, D. S. et al. Low active loading of cargo into engineered extracellular
vesicles results in inefficient miRNA mimic delivery. J. Extracell. Vesicles 6,
1333882 (2017).


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