//材料の殺菌//ーー
シリコンなどの吸着性のある物質を含めて
Organ-on-a-chipの意図しない外因性の影響を避けるためには
材料の殺菌処理が必要になります。
これは、循環器系を再現する
マイクロ流体経路でも同じです。
しかし、その殺菌方法は最適である必要があります。
不適切な方法であると、
Organ-on-a-chipやマイクロ経路に
ダメージを与えてしまいます。
それによって意図しないリーク経路などが
生じてしまい、特性に影響を与えてしまいます。
例えば、
共通的なプラスチック
PMMA, PC。
これらなどは従来の加圧滅菌器は
適していないとされています。
なぜなら、熱抵抗が低いからです。
他には紫外線照射、エタノール処理があります。
しかし、紫外線照射は透明性がないため
表面以外の深さのある物質に対する
殺菌には適していません。
また物質が吸収してくれるかもわかりません。
エタノールはPMMAを分解してしまう特性があります。
またPDMSなどにしみこみ、
再度、細胞を作り込んだときに
液体が滲出してしまう恐れがあります。
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ガンマ線の照射や酸化エチレン処理は
臨床の環境においては適している殺菌処理の
選択肢であるとされています。
//材料の表面処理//ーー
Organ-on-a-chipには
プラスチックやシリコンなどの材料と
生体の組織、液体の界面があるので
適性な結果や好ましい組織形成のためには
表面処理をする必要があります。
Pluronic acidは界面活性剤であり、
組織を成長させたときに
凝集して塊ができたり、
分離したりすることを防ぐ効果があります。
これは臓器の機能を維持する上で
重要な項目です(2)。
他には
細胞外マトリックスでコートする事で
基板に対する細胞の吸着力を上げる方法があります。
腸上皮を成長させるときに
これらのコートが使われます(3,4)。
他には血液脳関門の内皮組織です(5-7)。
この時には
組織、疾患特異的な細胞外マトリックスを
使うことができます。
例えば、腸では腺窩様の構造を誘発しました(8,9)。
このバイオマトリックスとして
Matrigel,フィブリン、コラーゲンがあります。
細胞をこれらバイオマトリックスの
液性の前駆体と混ぜるながら
Organ-on-a-chipに搭載する事ができます。
また、バイオマトリックスは
粘着質のある厚みある物質なので
肝臓や皮膚など3次元構造の土台として
利用する事も出来ます。
また、このバイオマトリックスは
特定の細胞種においては維持と分化において
重要な役割を果たすかもしれないとされています。
実際に
Matrigelは神経幹細胞内で
神経細胞の維持、分化を促進しました(10)。
フィブリンベースのゲルは
筋芽細胞の培養の中で筋原性の分化を促進しました(11)。
//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivey system
細胞種特異的輸送系統において
薬剤輸送効率を分析する事は重要項目の一つです。
それはナノ粒子を使った治療や
分子標的の治療でも同様です。
その評価プラットフォームの一つは
Organ-on-a-chipです。
しかし、当然、等身大の組織を全て
作ることはできませんから、
重要な部分を切り取って評価していくことが
求められると思います。
ナノ粒子や細胞外小胞の輸送バリアとなるのは
①免疫細胞
②血管内皮
③血中デブリ層
④肝臓
⑤腎臓
⑥脾臓
これらが考えられます。
通常生体内ではこれらが密接に相互作用しながら
細胞外小胞やナノ粒子に対して影響を与えます。
しかし、Organ-on-a-chipは
それをよりシンプルにすることが求められますから
それを切り分けて評価する事が
1つの有望な筋、経路であると考えます。
そうした時には
これらの組織、細胞を区分して
段階的に評価する事です。
1つ1つ組織を作って評価していくことも
可能性としてあります。
この方法は技術的な障壁は低いと思います。
もう1つは
①~⑥をつなげて
最終的に⑦の空間で標的細胞を作ります。
脳であれば、間に血液脳関門は必要です。
そのつなげる際に、
できれば流路の大きさを調整して
細胞外小胞のサブタイプを振るいに掛けられる
様にしておくことも考えられます。
しかし、ナノ流体は
界面抵抗があり、その抵抗層で埋められてしまうため
流すために圧力が必要になり、
その圧力でエクソソームが破壊されるなど
影響を受けてしまうかもしれません。
また、ナノレベルの流路を作ることが難しいという
課題もあります。
しかし、Detao Qin(敬称略)ら
医療研究チームは
流路の厚みが100nmで幅が5μm
の流路をマイクロ・フィブリル化によって
作製することに成功されています(12)。
この報告が優れているのは
縦横のアスペクト比が大きい事です。
小さい方をナノオーダーにするだけでも
そのオーダーの粒子を流路でふるいに掛けられる
可能性があるからです。
また長辺方向においてはナノ流体の複雑性を
回避する事もできます。
しかも、透明のシートに流路を光らせることができ
潜在的には蛍光マーカーを付けた
エクソソームの動態を分析することができる
可能性があります(12)。
エクソソームを流路で分析できれば
上述した①~⑥の要素をつなげた状態で
かつそれぞれでの除去損失を別個分析する事が可能です。
あとは、
どのようにOrgan-on-a-chipに組み込むかです。
大きさが小さいという事は
細胞外小胞で特に問題となっている
大きい小胞を除くことができるため
小さなエクソソーム特異的な評価が可能です。
(参考文献)
(1)
Chak Ming Leung, Pim de Haan, Kacey Ronaldson-Bouchard, Ge-Ah Kim, Jihoon Ko, Hoon Suk Rho, Zhu Chen, Pamela Habibovic, Noo Li Jeon, Shuichi Takayama, Michael L. Shuler, Gordana Vunjak-Novakovic, Olivier Frey, Elisabeth Verpoorte & Yi-Chin Toh
A guide to the organ-on-a-chip
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 33 (2022)
(2)
Jensen, C. & Teng, Y. Is it time to start transitioning
from 2D to 3D cell culture? Front. Mol. Biosci. 7, 33
(2020).
(3)
Kim, H. J., Huh, D., Hamilton, G. & Ingber, D. E.
Human gut- on-a- chip inhabited by microbial flora
that experiences intestinal peristalsis- like motions
and flow. Lab Chip 12, 2165–2174 (2012).
(4)
Kim, H. J., Li, H., Collins, J. J. & Ingber, D. E.
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Maoz, B. M. et al. A linked organ- on-chip model of
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(6)
Brown, J. A. et al. Recreating blood–brain barrier
physiology and structure on chip: a novel neurovascular
microfluidic bioreactor. Biomicrofluidics 9, 054124
(2015).
(7)
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barrier platform for understanding nanoparticle
transport mechanisms. Nat. Commun. 11, 175
(2020).
(8)
Esch, M. B. et al. On chip porous polymer membranes
for integration of gastrointestinal tract epithelium
with microfluidic ‘body- on-a- chip’ devices. Biomed.
Microdevices 14, 895–906 (2012).
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crypts and colonoids in a microarray platform.
Lab Chip 13, 4625–4634 (2013).
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Uemura, M. et al. Matrigel supports survival and
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Afshar Bakooshli, M. et al. A 3D culture model of
innervated human skeletal muscle enables studies
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(12)
Detao Qin, Andrew H. Gibbons, Masateru M. Ito, Sangamithirai Subramanian Parimalam, Handong Jiang, H. Enis Karahan, Behnam Ghalei, Daisuke Yamaguchi, Ganesh N. Pandian & Easan Sivaniah
Structural colour enhanced microfluidics
Nature Communications volume 13, Article number: 2281 (2022)
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