2022年5月29日日曜日

単一、多臓器Organ-on-a-chipの例

Organ-on-a-chipは薬剤研究のために使われます。
その吸収、分布、代謝、排出、毒性などを評価します。
その装置、システムの機能性は
デザインの中で一番優先されるものです。
初めの決定事項はOrgan-on-a-chipを
単一臓器か多臓器システムどちらかにするかです。
単一臓器システムの場合は
その臓器、組織特異的な機能を研究できます。
多臓器システムでは臓器間の相互作用を調べる
ことができます。
Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)ら
医療研究グループは
単一臓器か多臓器システムそれぞれにおいて
デザイン、材料選択、製造、生存のサポートなどについて
ケーススタディーとして総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を読者の方と
情報共有したいと思います。

//単一臓器システム//ーー
経口投与の薬剤の腸での吸収は
共通的にTranswell assaysで調べられます。
その構造が参考文献(1)Fig.3Aaに示されています。
薬剤が通過する層の間に腸の上皮組織が層として
形成されます。その通過を見る事で
薬剤の吸収を評価します。
またFig.3Abに示されるように
その吸収プロセスをマイクロ流体に組み込む
こともできます(2)。
この上皮組織は細孔のある被膜の上に成長されます。
筺体を含む材料としてはPDMSが使われます。
透明で、生体互換性のあるシリコンラバーで
フォトリソグラフィーなどで作ることができます。
被膜はコラーゲン表面コードで前処理され
細胞の吸着が向上するようにします。
Caco-2細胞は薬剤の吸収を評価する研究としては
王道となる細胞株です。
マイクロチャネルの中で培養されます。
これらの細胞は腸上皮細胞が持っている
多くの他の機能を失わせますが、
一般的な薬剤吸収の研究としては適しています。
腸のOrgan-on-a-chipは培養液の中に留められ
その培養液は再循環しない2つのシリンジポンプによって
供給される細胞媒質と共に存在しています。
これらのデバイスは
液体クロマトグラフィーや蛍光ベースアッセイによって
工学的に薬剤の吸収について調べます。
--
新型コロナウィルスの単一臓器の
Organ-on-a-chipについてもデザインされています。
抗ウィルス薬のテストの為です(3)。
ウィルス感染のプロセスは複雑で
免疫機能や他の臓器の関与もあります。
しかし、ここでは
腸の上皮、血管壁、免疫機能について
2つのチャネルを持つOrgan-on-a-chipが設計されています。
筺体を含む材料は弾性のあるシリコンラバーで
浸透性膜はコラーゲン、Matrigelで前処理されました。
被膜の弾性は組織の蠕動様の運動を作動させるために
利用されています。
腸のオルガノイドは患者さんの生検サンプルから
取り出し、培養しました。
内皮細胞はもう一つの側面に形成され、
腸の血管機能を含めています。
末梢の血液単球細胞は患者さんの血液から分離されています。
蛍光発光を認識する光学的な分析の他に
オフラインの遺伝子分析も
腸のウィルス感染を分析するのに使われています。

//多臓器システム//ーー
チップ上の多臓器システムは
生体内の全体の分布を模倣する事を前提に設計されます。
また、ナフタレンに対する毒性についても調べられます(4)。
例えば、
肺、肝臓、脂肪組織、他の組織の4つに区分けされた
多臓器システムを形成した場合には
循環の順番と滞留時間が実態と合うように検討されます。
初めに肺に液体を流した後、
その液体を以下の比率で分散させます。
脂肪組織:9%、肝臓:25%、他の組織:66%。
このようにです。
また上述したようにナフタレン毒性についても
調べられました。
これらの区分けされた多臓器システムは
ナフタレンの分布、代謝を可能にするため
重要な相互接続が完備されています。
筺体を含む材料としてetchedシリコンと
machined PMMAを組み合わせて使います。
これらの材料は光学的な評価が可能です。
このケーススタディーでは
肺と肝臓の組織はラットの細胞が含んでいました。
循環器系の動力は蠕動が使われています。
小型化されたラットベースのシステムから
人の組織の状態を外挿して評価する事は
以前、難しいとされています。
近年、肺や肝臓といった組織も
単純な細胞株で人由来の物を作ることが可能になっています。
従って、上述した互換性の問題も
一部は解消される可能性があります。
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薬剤発見のための生理的に関連性のある
多臓器Organ-on-a-chipシステムの開発を狙いとして
薬剤の代謝についても発展しています(5)。
このシステムでは
7~10の臓器モデルを統合的な流体回路に組み込み
それぞれの相互作用を調べます。
このデバイスは
ポリスルホン、ポリウレタンの簡単なプロセスで
製造されます。空気圧制御バルブで
メディアを循環させます。
腎臓、筋肉、肝臓、腸などは
iPS細胞技術を使って人の細胞から作られています。
薬剤(ジクロフェナク)を腸に届け、
そこから他の臓器に循環させます。
実際に生体内はより複雑ですが、
その複雑性を模倣しようとすると
コストやフットプリントを高く、大きくする
必要があります。
従って、適切な妥協点があると考えられます。
--
多臓器システムは抗がん剤の効果、毒性の評価
にも使われます(6)。
固形癌や血液性の癌などが対象です。
筺体を含む材料はPDMS、ガラス、プラスチック
これらが使われ、簡易的なプロセスで作製されます。
癌は様々な悪性条件で
Organ-on-a-chip内で培養されます。
これらのデバイスはポンプレスで扱いやすくなっています。
重力によって循環するシステムです。
従って、フットプリントを下げる事ができます。
--
単一臓器システムは大きくは2つの過程があります。
準備と実験です。
細胞培養、組織化のためには時間が必要です。
成熟したら実験のフェーズに入ります。
--
多臓器システムは2つの動作過程があります。
まずは分けて成熟を促し、
適当なタイミングでそれらをつなぎ合わせます。

//考察//ーー
臓器の数に関わらず、Organ-on-a-chipでは
見たい特性をできるだけ再現しながら
如何にシステムをシンプルにできるか?
という所が一つの鍵であると考えられます。
生体内で影響の小さいと考えられる
交絡因子は取り除いて、
本当に必要な因子だけを反映した形で
評価していくことです。
その中で、
Transwell assaysのように
組織とその機能を1つに絞り込むというのも
選択肢として適切であると考えます。

(参考文献)
(1)
Chak Ming Leung, Pim de Haan, Kacey Ronaldson-Bouchard, Ge-Ah Kim, Jihoon Ko, Hoon Suk Rho, Zhu Chen, Pamela Habibovic, Noo Li Jeon, Shuichi Takayama, Michael L. Shuler, Gordana Vunjak-Novakovic, Olivier Frey, Elisabeth Verpoorte & Yi-Chin Toh 
A guide to the organ-on-a-chip
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 33 (2022) 
(2)
Imura, Y., Asano, Y., Sato, K. & Yoshimura, E.  
A microfluidic system to evaluate intestinal 
absorption. Anal. Sci. 25, 1403–1407 (2009).
(3)
Bein, A. et al. Enteric coronavirus infection and 
treatment modeled with an immunocompetent human 
intestine- on-a- chip. Front. Pharmacol. 12, 718484 
(2021).
(4)
Viravaidya, K., Sin, A. & Shuler, M. L. Development of 
a microscale cell culture analog to probe naphthalene 
toxicity. Biotechnol. Prog. 20, 316–323 (2004).
(5)
Edington, C. D. et al. Interconnected 
microphysiological systems for quantitative biology 
and pharmacology studies. Sci. Rep. 8, 4530 (2018).
(6)
McAleer, C. W. et al. Multi- organ system for the 
evaluation of efficacy and off- target toxicity of 
anticancer therapeutics. Sci. Transl. Med. https://doi.
org/10.1126/scitranslmed.aav1386 (2019).  


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