2022年5月27日金曜日

Organ-on-a-chipの評価項目

Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)ら
医療研究グループは
Organ-on-a-chipへの適用の際に考慮に入れるべき
適切な細胞資源をどのように選択するか?
そのいくつかの評価基準を示されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と共有したいと思います。

//患者さん特異性//ーー
Organ-on-a-chipを
個人、特定の患者さんなどに個別に合わせて
設計しようとしたとき、
その人の細胞や
その幹細胞由来の細胞が選択肢となります。
しかし、
特定の個人の細胞は
採取できるドナー細胞が限られる事と
組織から細胞を高純度で分離するための良い手順
がないことが挙げられます。
iPS細胞技術の発展(2)によって
患者さん由来の幹細胞を低侵襲でアクセスし
そこから任意の細胞種へ
その患者さんの遺伝子的な特徴を反映して
分化させる事が可能になりました。
そのiPS技術によって
個別化された(患者さんごとの)細胞、組織を
Organ-on-a-chipに搭載できます(3)。

//細胞の元来の機能性//ーー
Organ-on-a-chipに搭載した組織は
生体内に存在した時の組織の生理学を再現する
必要があります。
Organ-on-a-chipは
特定の人の細胞の組織に焦点を当てて
その詳しい評価を生体内にはない配置で
生体内ではできない解析を行います。
その前提として
Organ-on-a-chip内の組織は
生体内の生理機能を再現する必要があります。
しかし、実際には
多能性幹細胞由来の細胞も含めて
原発の細胞と比べて一部の機能しか反映しない
事が度々あります(4)。
原発の細胞はその機能維持のために
生体内で神経、免疫、栄養物など
補完物の影響を受けていると考えられるので
それを試験管に取り出して培養する過程で
組織特異的な機能が失われる可能性が
潜在的にあると考えられます(5)。
ドナー細胞は異種性があり、
かつ提供者が異なるとさらにそれはが大きくなります。
その中で比較のための
Organ-on-a-chip再現性の確保が難しくなります。

//増殖能力//ーー
Organ-on-a-chipでは組織を成長させる必要があります。
装置内の決められた区画内で
種細胞から成長させる場合もあります。
マイクロ流体デバイスの場合は
10^3~10^5個程度のオーダーの
少量の細胞量で作製することが可能ですが、
細胞量を増やしていく事は困難です。
なぜなら、細胞は増殖の過程で
少なくとも一定割合は細胞死していくからです。
iPS細胞は無限に増殖させていくことが可能ですが、
分化や細胞取得の際に多くの細胞が損失します。
細胞を死滅させないためには
栄養を常に届けるために液体チャネルの閉塞が
ないようにしておく必要があります。

//土台となる基質、間質細胞//ーー
基質、間質の線維芽細胞、周皮細胞、脈管構造などの
土台となる細胞はエンジニアリングした組織の
機能性に貢献します。
また病気の進行において重要な役割を果たします。
細胞外マトリックスも含めて基質、間質の
組織をOrgan-on-a-chipの中の
エンジニアリングした組織の中に入れる事は
細胞の信号や構造を変更させます。
また、調査する薬理も変わってきます。
さらに、癌、線維症などでは
基質、間質の状態も変わってきます。
その微小環境は病理、病態を変える為
Organ-on-a-chipでその疾患について調べるときには
例えば、癌細胞のみの組織ではなく
基質、間質を含めた微小環境の反映も考える必要があります。

//時間ウィンドウ//ーー
iPS細胞は特定の細胞種に成熟するためには
2~3週間程度かかると言われています。
皮膚、血液脳関門、腸上皮組織など
バリア組織を形成するときには
細胞同士の接着性を上げるためのセルシートに
再形成するため付加的な培養期間が必要です(6)。
長い時間培養するために
デバイスや作動は強固である必要があります。

//追加的に考慮する事//ーー
Organ-on-a-chipで特異的な組織において
生体内の機能を再現するためには
血液系、免疫系、内分泌系の機能の存在も必要です。
しかし、まだこれらの組み込みは
未成熟なままであるとされています。
また、(抹消)神経系もあると思います。
これは原理的に難しいかもしれません。

//考察//ーー
Organ-on-a-chipはオルガノイドの形成技術を
成熟させる事は重要ですが、
一方で、
その土台となる間質、基質
また相互作用を再現するマイクロ流路などの
循環器系などの再現も重要になります。
実質、間質、基質、循環器系は
生体内で独立することなく
相互作用しながら、特異的な組み合わせがあります。
例えば、腫瘍組織であれば
間質である細胞外マトリックスの構造や密度が異なります。
また土壌となる癌微小環境もあります。
それは基質に影響を与えます。
そのような全体的な再現は単純ではなく
複雑で、想定よりも困難であると考えられます。

(参考文献)
(1)
Chak Ming Leung, Pim de Haan, Kacey Ronaldson-Bouchard, Ge-Ah Kim, Jihoon Ko, Hoon Suk Rho, Zhu Chen, Pamela Habibovic, Noo Li Jeon, Shuichi Takayama, Michael L. Shuler, Gordana Vunjak-Novakovic, Olivier Frey, Elisabeth Verpoorte & Yi-Chin Toh 
A guide to the organ-on-a-chip
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 33 (2022) 
(2)
Yanhong Shi, Haruhisa Inoue, Joseph C. Wu & Shinya Yamanaka 
Induced pluripotent stem cell technology: a decade of progress
Nature Reviews Drug Discovery volume 16, pages115–130 (2017)
(3)
van den Berg, A., Mummery, C. L., Passier, R. & 
van der Meer, A. D. Personalised organs- on-chips: 
functional testing for precision medicine. Lab Chip 19, 
198–205 (2019).
(4)
Diederichs, S. & Tuan, R. S. Functional comparison  
of human- induced pluripotent stem cell- derived 
mesenchymal cells and bone marrow- derived 
mesenchymal stromal cells from the same donor.  
Stem Cell Dev. 23, 1594–1610 (2014).
(5)
Verma, A., Verma, M. & Singh, A. in Animal 
Biotechnology 2nd edn (eds Verma, A. S. & Singh, A.) 
269–293 (Academic, 2020).
(6)
Yeste, J., Illa, X., Alvarez, M. & Villa, R. Engineering 
and monitoring cellular barrier models. J. Biol. Eng. 
12, 18 (2018).

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