Chak Ming Leung, Pim de Haan(敬称略)らは
Organ-on-a-chipの
細胞の培地、循環器、モニタリングについて
総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有したいと思います。
//細胞の培地の選択//ーー
単一の細胞種のみがOrgan-on-a-chip装置内に含むときは
培地はその細胞種に対して従来から使われている培地
が選択されます。
しかし、複数の細胞種の時は
どの培地を選択するかに対して複雑になります。
複数の細胞種にとって最適に組み合わせた培地は
それぞれの細胞種に対して機能を維持する必要があります。
この評価基準を満たしたら、
望ましくない干渉がない下流のアッセイの中での
培地の適性を考える必要があります。
この最適化の中で
多くの研究グループはそれぞれの細胞種にとって
良い結果をもたらした培地の混合を採用してきました。
一緒に培養する異なる細胞種が増えていく中で
混合培地の最適化は難しくなります。
例えば、細胞種ごと被膜で区分けすれば
共通の培地を使う必要性がなくなります。
しかし、その被膜が微粒子を通す構造で有れば、
傍分泌の影響があります。
これは肝臓や皮膚のケース検討されています(2,3)。
//灌流//ーー
Organ-on-a-chipで循環器の役割を果たす流路を
灌流させることは一つの特質です。
これは栄養の供給と老廃物の除去の役割が主にあります。
灌流させる方法はいくつかあります。
〇conventional syringe pumps(4,5)
〇microvalve- driven actuator pumps(6,7)
〇peristaltic pumps(8)
〇hydrostatic pressure-based pump-free systems(9-11)
〇pump-free gravity-driven flows
これらです。
どのポンプ方法を選ぶかは
ワンパスタイプか循環型かで異なります。
ワンパスタイプは
syringe pumps、
pump-free gravity-driven flows
これらが適しています。
peristaltic pumpsは循環型の流路に対して
適性を有しています。
また
〇gravity-driven recirculatory flowsは
付加的な力が必要ではないため
システムを単純化できるというのがあります。
また循環型の中で
複数の臓器の相互作用を得ることもできます(11-15)。
流速はどの細胞種、組織、臓器をモデルにするかによって
その最適値は異なります。
それは流体によって生じる組織へのせん断応力を
どれくらいに設定するかを含みます。
--
ワンパスフローはフィードバックがないので
栄養を持続的に供給することができます。
しかし、組織間のコミュニケーションは
1方向に限られてしまいます。
循環型フローは
多臓器の相互のコミュニケーションを得る事ができますが、
持続的な栄養の供給が難しく、
老廃物も蓄積する問題があります。
特に循環型は
定期的な内容物の入れ替えが必要になります。
しかし、Organ-on-a-chipは
数日は入れ替えずに連続で作動させると言われています。
Organ-on-a-chipの流体の量は
固定的な組織と血液、間質液などの生体内の比を
参考にして設計されますが、
その流体の量は設計上限られる事があります。
前述した事と同様に液体も入れ替える必要があります。
--
上述したデザインと異なる方法として
1つのOrgan-on-a-chipからもう1つのそれへ
逐次的に条件付きで物質を輸送する
〇Functional coupling
これがあります(16,17)。
例えば、肝臓と腎臓の機能をカップリングさせる
ことが挙げられています。
しかし、このデザインは
即時的な相互作用をモニタリングするのには
適していません。
//循環器、微小環境の制御//ーー
Organ-on-a-chipでは細胞外ナトリックス、周皮細胞など
細胞の微小環境に関わる組織を
注意深く制御する必要があります。
組織を培養する形状に合わせる必要もあります。
また流体との物理化学的な減少は
マイクロスケールとなります。
その中で微小環境の正確な制御が必要になります。
マイクロ流体は
従来の細胞培地の液体とは異なる
物理化学的特性を持っています。
例えば、
〇気泡の形成
〇蒸発
〇栄養の枯渇
これらなどはマイクロスケール流体では
より強調される可能性があります。
また、
〇オスモル濃度
〇pH
〇栄養の利用性は
マイクロスケールでは劇的に変わる可能性があります。
またサイトカインやせん断応力などがの
生物化学的、機械的な作用が
どのように変わるかを理解する事も大切です。
物理的な流体の無次元数として
〇Rreynolds number (Re; inertial/viscous forces),
〇Péclet number (Pe; convective/diffusive transport)
〇Damköhler number (Da; diffusion/reaction timescales).
これらがあります。
これらは今述べたサイトカインやせん断応力が
どのようにマイクロスケールで組織に影響を与えるか?
を算出する上で参考となる係数です。
拡散と反応時間に比で示されるDaは
マイクロ流体では小さくなり
反応時間が支配的になります。
対流が反応時間に対して十分かどうかを示す
Pe/Daはサイトカインなどの生物化学的な物質が
十分組織間で相互作用するかどうかを測るためには
重要な係数となります。1よりも有意に大きい
数字となるように設計する必要があります(18,19)。
--
せん断応力や物質の輸送は流速が関わります。
自己分泌や傍分泌の要因を調べる研究では
全ての細胞のせん断応力を特性が劇的に変わる
閾値よりも下になるように流量設定する必要があります。
例えば、せん断応力に敏感な細胞は
〇胚幹細胞(<10^–3 dyne-cm^–2 )(18)
〇原発性神経細胞(<10^–3 dyne-cm^–2)(20)
〇肝細胞(<10^–1 dyne-cm^–2)(21,22)
これらです。
--
また組織間を流れる液体は血液としての働きもあるため
細胞、組織が生き延びるための最適な環境を
用意する必要があります。
〇酸素濃度(21%)程度
〇二酸化炭素(5%)程度
〇pH(7.0-7.4)程度
です。
意図的に低酸素状態を作る時には10%以下
とすることもできます(23)。
//モニタリング//ーー
Organ-on-a-chipが正常に保たれているかは
顕微鏡などを使って視覚的に継続的にモニタリング
する必要があります。
細胞、組織の大きさ、数、形
気泡や微生物汚染
これらなどです。
特に気泡は細胞を破壊することもあります。
従って、チューブなど連結部を
注意深くつなぐことと
空気圧を確実に抜く必要があります。
気泡が細胞や組織に影響がなければ、
無理に取り除かず、そのまま分散させたり
出口に逃がす事も考えられます。
しかし、多くの場合、
細胞や組織に影響を与える為、
流し出すなどをして積極的に取り除く必要があります。
細胞などを培養するときに
外部の気泡トラップなどを装備させ
エンジニアリングすることで
そうしたリスクを減らすことができます。
微生物汚染も実験の中断など
大きな影響を与えることがあるので、
適切な防止策を講じる必要があります。
//考察//ーー
Organ-on-a-chipは目的にも依りますが、
組織はできるだけ小さくしたいという需要があると思います。
細胞を大きく組織化させる事が難しいからです。
そうするとオーダーはマイクロスケールになり、
そこでの循環器系はマイクロ流体、
あるいはナノ流体になります。
上述したようにバルクの流体と異なるため
マイクロ流体、ナノ流体独自の困難性があると思います。
1つは、装置の耐久性があるかもしれません。
繰り返し、長く使うことができるか?
ということです。
身体の毛細血管というのは
大動脈とは異なり、閉塞してもバイパスする事ができるため
体内では血管生成を通じて、
時々閉塞しながらも恒常性は保たれていると考えられますが、
Organ-on-a-chipではそのリカバリー機能を
人為的に行う必要があることと
スケールが小さくなると
リカバリーを実施するハードルが上がることがあり、
耐久性に問題が出る可能性が考えられます。
(参考文献)
(1)
Chak Ming Leung, Pim de Haan, Kacey Ronaldson-Bouchard, Ge-Ah Kim, Jihoon Ko, Hoon Suk Rho, Zhu Chen, Pamela Habibovic, Noo Li Jeon, Shuichi Takayama, Michael L. Shuler, Gordana Vunjak-Novakovic, Olivier Frey, Elisabeth Verpoorte & Yi-Chin Toh
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