人の生殖では1つの卵子が受精して
そこから細胞分裂が始まっていきます。
多能性があるため身体のあらゆる組織が
その多能性幹細胞から生まれていきます。
その時に私たちは細胞そのものの動的機序に焦点を当てがちですが
細胞間の密なコミュニケーションが行われている
と考えられています。
そのコミュニケーションとは細胞間の
タンパク質、脂質、糖、核酸などの物質の交換です。
それはエクソソームを含む細胞外小胞によっても輸送される
と考えられます。
人の身体の構成は個人差はありますが、
おおよそ定まっています。
従って、その成長のルールは正確で、精密に調和したもので
ある可能性があります(1)。
その中で細胞間のコミュニケーションは
細胞同士の信号のやり取りに使われますから
1つの重要な役割を担っていると考えられます。
従って、命を授かってから、在胎、出産、成長に至るまで
エクソソームを含めた細胞外小胞の役割は
非常に重要である可能性があります。
実際に在胎期間に応じたエクソソームの働きがある
とされています。
それは過渡的に成長する中での信号の変化が必要である
ということを意味しているかもしれません。
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)
からなる医療研究グループは
人の生殖と成長に関わるエクソソームに焦点を当てて
一部総括されています(1)。
その内容の一部、追記、考察を
読者の方と情報共有します。
繊細な情報も含みますが、議論のもととなればと思います。
人の生殖、妊娠、胚成長は
正確で、精密に調和した動的な
細胞間コミュニケーションを必要とします。
精液、羊水、血液、母乳には
それぞれ機能化されたエクソソームを含みます。
精液のエクソソームはその成熟に関わります(2)。
分子プロファイリングによって
精液由来のエクソソームには
〇microRNAs let-7a
〇microRNAs let-7b
〇microRNAs miR-148a
〇microRNAs miR-375
〇microRNAs miR-99a
これらを豊富に含みます(3)。
これらのmiRNAはサイトカインIL-10, IL-13の発現と関わります。
従って、エクソソームは生殖器に常在する免疫機能において
重要な役割を果たします。
精液由来のエクソソームはHIV-1感染を
抑制する働きもあります(4,5)。
それはHIV-1の転写に関わる
転写活性因子をブロックする事によって
生じるかもしれないとされています(6)。
ただし、性交渉の際の避妊具装着は
HIV感染症予防の観点においても
今まで通り必要であると考えられます。
疫学的に完全な抑制性は考えにくいからです。
---
エクソソームは胎盤を感染症から守る働きがある
かもしれません。
それは胎盤の細胞からそれ以外の細胞へ
エクソソームに含まれるmiRNAを輸送することによって
生じるかもしれません。
それによってウィルスへのオートファジー、食作用を促します。
例えば、
〇ポリオウィルス感染症
〇サイトメガロウィルス感染症
〇単純ヘルペスウィルス感染症
これらです。
妊娠女性の血液中には
その在胎期間に応じたmiRNAやタンパク質を内包する
エクソソームが存在します。
このmiRNAは早産、正期産を含めた
妊娠の進行の痕跡を示すものであるかもしれない
とされています(7,8)。
血漿由来のエクソソームは妊娠の間に動的に生成されます。
妊娠初期、中期、後期といった在胎期間に応じて
それに特異的なエクソソームが生まれます。
それは機能的に陣痛や分娩に関わるとされています(9)。
但し、これはマウスのケースなので、
人においてどのような影響があるかはさらなる研究が必要です。
--
母乳の中に含まれるエクソソームは産後の赤ちゃんの
健康と成長を促します。
母乳由来のエクソソームは免疫機能を持つmiRNAが含まれています(10)。
また生体外の研究で抹消の血液由来の制御型T細胞の数が
増えることがわかっています。
これは免疫寛容性を制御する細胞です(11)。
母乳由来のエクソソームは
〇豚の腸の上皮細胞
〇マウスの腸管
これらの成長を促すことが
それぞれ培養、生体内で知られています(12)。
しかし、母乳を赤ちゃんが飲んだときに
エクソソーム自身とその中身(タンパク質、核酸など)が
分解酵素などがある中で保持されるか?
これについては不明なままです。
エクソソームが重要だという事実をさらなる
研究で確認できれば、動物モデルから段階を経て
特に成長や免疫機能などに問題があるお子さんに対して
静脈注射など異なるルートで
母乳由来のエクソソームのみを注入することが
治療の選択肢の一つとなるかどうか?
その検証は価値があります(13)53。
//考察1//ーー
現在、マウスとラットの始原生殖細胞(精子・卵子の元になる細胞)。
これらを多能性幹細胞から作る事に成功しています(14)。
これによって種を超えた生殖のメカニズムや
そこから死産、早産を未然に防ぐ研究などが進む可能性があります。
人への応用を考えた時、
種を超えて比較できる事には意味があるからです。
色んな倫理上の事も含めた制約がある中においても
健康な赤ちゃんを産みたいというが願望は当然あります。
(ただし、ここにもセンシティブな議論があります。)
特に日本では晩婚化が進んでいます。
その中で高齢出産が増えているので、
このような生殖に関わる研究が進むことの
社会の需要は高いと考えられます。
上述した元の細胞、分化した細胞、
エクソソームを含めた細胞間コミュニケーションを
多様に理解することによって
何らかの糸口が見える可能性があります。
//考察2//ーー
牛乳由来のエクソソームが治療で考えられるように
母乳由来のエクソソームも治療に向けた研究対象として魅力があります。
健康な人の母乳由来のエクソソームの比較分析では
エクソソームを含む場合に
試験管、マウスともに腸の組織完全性と免疫抗炎症性が
高いことが示されています(15)。
また早産の子供においても腸炎をエクソソームが
防ぐ可能性が指摘されています(16)。
従って、治療として母乳由来のエクソソームを利用することは
少なくとも免疫系、消化器系において
それに問題があるお子さんに対して効果がある可能性があります。
(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
R. Sullivan, F. Saez, J. Girouard, G. Frenette, Role of
exosomes in sperm maturation during the transit along the
male reproductive tract. Blood Cells Mol. Dis. 35, 1 – 10
(2005). doi: 10.1016/j.bcmd.2005.03.005; pmid: 15893944
(3)
L. Vojtech et al., Exosomes in human semen carry a
distinctive repertoire of small non-coding RNAs with potential
regulatory functions. Nucleic Acids Res. 42, 7290 – 7304
(2014). doi: 10.1093/nar/gku347; pmid: 24838567
(4)
M. N. Madison, P. H. Jones, C. M. Okeoma, Exosomes in
human semen restrict HIV-1 transmission by vaginal cells and
block intravaginal replication of LP-BM5 murine AIDS virus
complex. Virology 482, 189 – 201 (2015). doi: 10.1016/
j.virol.2015.03.040; pmid: 25880110
(5)
J. L. Welch et al., Effect of prolonged freezing of semen on
exosome recovery and biologic activity. Sci. Rep. 7, 45034
(2017). doi: 10.1038/srep45034; pmid: 28338013
(6)
J. L. Welch, H. Kaddour, P. M. Schlievert, J. T. Stapleton,
C. M. Okeoma, Semen exosomes promote transcriptional
silencing of HIV-1 by disrupting NF-kB/Sp1/Tat circuitry.
J. Virol. 92, e00731-18 (2018). doi: 10.1128/JVI.00731-18;
pmid: 30111566
(7)
R. Menon et al., Circulating exosomal miRNA profile during
term and preterm birth pregnancies: A longitudinal study.
Endocrinology 160, 249 – 275 (2019). doi: 10.1210/
en.2018-00836; pmid: 30358826
(8)
R. Menon et al., Quantitative proteomics by SWATH-MS of
maternal plasma exosomes determine pathways associated
with term and preterm birth. Endocrinology 160, 639 – 650
(2019). doi: 10.1210/en.2018-00820; pmid: 30668697
(9)
S. Sheller-Miller, J. Trivedi, S. M. Yellon, R. Menon, Exosomes
cause preterm birth in mice: Evidence for paracrine
signaling in pregnancy. Sci. Rep. 9, 608 (2019). doi: 10.1038/
s41598-018-37002-x; pmid: 30679631
(10)
B. P. Foster et al., Extracellular vesicles in blood, milk and
body fluids of the female and male urogenital tract and with
special regard to reproduction. Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 53,
379 – 395 (2016). doi: 10.1080/10408363.2016.1190682;
pmid: 27191915
(11)
C. Admyre et al., Exosomes with immune modulatory features
are present in human breast milk. J. Immunol. 179, 1969 – 1978
(2007). doi: 10.4049/jimmunol.179.3.1969; pmid: 17641064
(12)
T. Chen et al., Porcine milk-derived exosomes promote
proliferation of intestinal epithelial cells. Sci. Rep. 6, 33862
(2016). doi: 10.1038/srep33862; pmid: 27646050
(13)
O. P. Wiklander et al., Extracellular vesicle in vivo
biodistribution is determined by cell source, route of
administration and targeting. J. Extracell. Vesicles 4, 26316
(2015). doi: 10.3402/jev.v4.26316; pmid: 25899407
(14)
Mami Oikawa, Hisato Kobayashi, Makoto Sanbo, Naoaki Mizuno, Kenyu Iwatsuki, Tomoya Takashima, Keiko Yamauchi, Fumika Yoshida, Takuya Yamamoto, Takashi Shinohara, Hiromitsu Nakauchi, Kazuki Kurimoto, Masumi Hirabayashi, Toshihiro Kobayashi
Functional primordial germ cell-like cells from pluripotent stem cells in rats
SCIENCE • 7 Apr 2022 • Vol 376, Issue 6589 • pp. 176-179
(15)
Shan He, Gang Liu & Xueping Zhu
Human breast milk-derived exosomes may help maintain intestinal epithelial barrier integrity
Pediatric Research volume 90, pages366–372 (2021)
(16)
Jessica W. Madden
Human breast milk exosomes may protect against necrotizing enterocolitis in preterm infants
Pediatric Research volume 90, pages244–245 (2021)
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