2022年5月5日木曜日

神経変性疾患とエクソソーム

エクソソームがどのように神経変性疾患に関わっているか
というのはわかっていませんが、
病因となるたんぱく質を輸送する事は知られています。
神経細胞は特にそのネットワークが重要です。
どのようなパターンで神経が変性するか?
これによって症状、進行度に関わってくると考えられます。
その空間的なパターンは
エクソソームなどを含む細胞外小胞の輸送向性と
関連がある可能性があります。
異常のある神経細胞からのエクソソームが
その異常性を受け細胞に伝える事が考えられるからです。
そこから雪崩のようにつながっていく可能性です。
そのベクトルを決めるのがエクソソームの
表面リガンドによる特定の走化性です。
この点においてエクソソームは病理と関連する
と考える事ができるかもしれません。
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)
からなる医療研究グループは
エクソソームと神経変性の疾患の関連について
総括の中で述べられています(1)。
その内容の一部、追記、考察について
読者の方と情報共有したいと思います。

エクソソームがどのように生成され
それを含む小胞がどのように分泌されるかは
神経変性疾患と関わりがあると考えられています。
パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症
など神経変性の疾患のベースには
タンパク質病理があります。
そのような病因となる異常な構造を持つたんぱく質を
蓄積させるか、あるは分解させるかといった分岐には
エクソソームが関わっているかもしれない
とされています(2-7)。
実際にアルツハイマー病の患者さんでは
脳脊髄液に存在するエクソソームに
病因となるタウタンパク質
アミロイドベータが内包されている
ことが確認されています(8,9)。
病因となるタンパク質である
アミロイドベータはオリゴマー化されることで
アルツハイマー病に関わるとされていますが、
エクソソームはオリゴマー化を抑える働きがある
かもしれないとされています(10)。
しかし、アミロイド前駆タンパク質が
どれくらい神経細胞に存在しているかによって
エクソソームが病気を促進するか
あるいは抑制するかが変わってきます。
アルツハイマー病と同様に
パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症の患者さんでも
同じように原因となるタンパク質
αシヌクレイン、TDP-43がエクソソーム内で
それぞれ確認されています。
試験管での実験では、エクソソームは
これらのタンパク質を運動神経や神経芽細胞
間葉細胞などいくつかの細胞へ輸送することが
わかっています。
しかし、エクソソーム自身が
これらのタンパク質に作用し、
病気を促進するか、抑制するかについては
今のところわかっていません。
一方で、
自閉症スペクトラム障害を持つ子供では
血漿から取得したエクソソームにおいて
mtDNAが内包されており、
これがマイクログリアのIL-1βを分泌を促進し、
脳内の炎症反応に関連していることが示されています(11)。
従って、タンパク質の輸送に関する
神経変性の病気の進行、抑制についてはよくわかっていませんが、
核酸に関しては、その遺伝子によって
エクソソームによる輸送により
免疫的な炎症を促すケースがあるということです。
--
一方、
エクソソームは血液脳関門や血管からの滲出能力が高いので
薬剤としての潜在性があると考えられます。

//参考//ーー
エクソソームの分泌を抑えるGW4869は
エクソソーム後期課程の多胞体への陥入を防ぐとされています。
一方で、モネンシンは細胞内Caイオン量を増やし
多胞体の量も増やすとされています。
それによってエクソソームの分泌が促進されます。
特にエクソソームの生成を増やすモネンシンは
特定の培養環境から有効にエクソソームを生み出すのに
利用できる可能性があります。

//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
アルツハイマー病由来のオリゴマーが神経細胞の
表面リガンドとして特異的に発現していることが知られています(12)。
従って、このオリゴマーに結合親和性を持つ
表面リガンドを持つエクソソームによって
病因となるたんぱく質の生成を抑える遺伝子や
分解する酵素などを輸送します。
それぞれの遺伝子、酵素を単独で輸送するよりも
輸送効率が顕著に高ければ、利点があると考えられます。
また、タンパク質分解酵素と遺伝子を
両方エクソソームに封入する事で
同時に輸送することもできると考えられます。
それはナノ粒子輸送における特異的な利点の一つです。

(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
 V. Budnik, C. Ruiz-Cañada, F. Wendler, Extracellular
vesicles round off communication in the nervous system.
Nat. Rev. Neurosci. 17, 160 – 172 (2016). doi: 10.1038/
nrn.2015.29; pmid: 26891626
(3)
C. Quek, A. F. Hill, The role of extracellular vesicles in
neurodegenerative diseases. Biochem. Biophys. Res.
Commun. 483, 1178 – 1186 (2017). doi: 10.1016/
j.bbrc.2016.09.090; pmid: 27659705
(4)
L. Yuan, J. Y. Li, Exosomes in Parkinson ’ s disease: Current
perspectives and future challenges. ACS Chem. Neurosci. 10,
964 – 972 (2019). doi: 10.1021/acschemneuro.8b00469;
pmid: 30664350
(5)
J. Howitt, A. F. Hill, Exosomes in the pathology of
neurodegenerative diseases. J. Biol. Chem. 291,
26589 – 26597 (2016). doi: 10.1074/jbc.R116.757955;
pmid: 27852825
(6)
F. N. Soria et al., Exosomes, an unmasked culprit in
neurodegenerative diseases. Front. Neurosci. 11, 26 (2017).
doi: 10.3389/fnins.2017.00026; pmid: 28197068
(7)
E. Levy, Exosomes in the diseased brain: First insights from in
vivo studies. Front. Neurosci. 11, 142 (2017). doi: 10.3389/
fnins.2017.00142; pmid: 28386213
(8)
H. Asai et al., Depletion of microglia and inhibition of
exosome synthesis halt tau propagation. Nat. Neurosci. 18,
1584 – 1593 (2015). doi: 10.1038/nn.4132; pmid: 26436904
(9)
S. Baker, J. C. Polanco, J. Götz, Extracellular vesicles
containing P301L mutant tau accelerate pathological tau
phosphorylation and oligomer formation but do not seed
mature neurofibrillary tangles in ALZ17 mice. J. Alzheimers Dis.
54, 1207 – 1217 (2016). doi: 10.3233/JAD-160371;
pmid: 27567840
(10)
C. Falker et al., Exosomal cellular prion protein drives
fibrillization of amyloid beta and counteracts amyloid beta-
mediated neurotoxicity. J. Neurochem. 137, 88 – 100 (2016).
doi: 10.1111/jnc.13514; pmid: 26710111
(11)
I. Tsilioni, T. C. Theoharides, Extracellular vesicles are
increased in the serum of children with autism spectrum
disorder, contain mitochondrial DNA, and stimulate human
microglia to secrete IL-1 b . J. Neuroinflammation 15, 239
(2018). doi: 10.1186/s12974-018-1275-5; pmid: 30149804
(12)
Yuesong Gong, Lei Chang, Kirsten L. Viola, +4, Pascale N. Lacor, Mary P Lambert, Caleb E. Finch, Grant A. Krafft, and William L. Klein 
Alzheimer's disease-affected brain: Presence of oligomeric Aβ ligands (ADDLs) suggests a molecular basis for reversible memory loss
PNAS 100 (18) 10417-10422 (2003)

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