2022年5月27日金曜日

Author correction:目的の遺伝子配列探索の為の細胞内高頻度変異連続進化とその手法

目的の機能を持つたんぱく質などを得るために
指令された人為的な進化(Directed evolution)は
目的の遺伝子配列(Gene of interest)に対して
変異サイクル、増強、選択を適用する事によって
生物分子エンジニアリングに革新をもたらしました。
従来の指令された進化は
スケールや進化探索の深さにおいて
可能な範囲に制約されていました。
つまり、いくつかの適合性の中のバリアを
乗り越えられない遺伝子変異の連続性の低さがあった
ということです。
--
Rosana S. Molina, Gordon Rix(敬称略)ら
医療研究グループは生きた細胞内で
急速な変異、増強、選択を達成する
遺伝システムについて記述されています(1)。
それによって細胞が成長するにつれて
目的の遺伝子配列の進化を可能にしています。
これはタンパク質の進化とエンジニアリングにおいて
重要な研究領域となります。
本日はその背景部分の一部、追記、考察
について読者の方と情報共有したいと思います。

人を含めた生物は時間をかけて進化しますが、
それをミクロにみれば、
細胞レベルの進化の集合と言えます。
細胞内の拡散に変異が入る事によって
様々な機能をもつ生物分子が生成されるようになります。
このような進化を利用して
目的の遺伝子配列を持つ遺伝子に
人為的に進化させることを
Directed evolutionと呼びます。
このような指令された進化は
新たな機能を持つ生物分子をエンジニアリング
するために今まで追究されてきました(5,6)。
しかしながら、
〇バクテリア
〇酵母
〇人の細胞
これらのDNA複製の変異レートは
10^-10~10^-9 per baseとなっています(7)。
これは1kb程度の長さの遺伝子配列内で
変異が起こるには
おおよそ100万回~1000万回の細胞分裂が必要である
とされています。
目的とする遺伝子配列を好ましい形になるように
改善する遺伝子変異を得て、
それを増強、抽出する事は難しいとされています。
--
この指令された進化は
試験管内で多様な世代に変わり、
そこで高レートの変異では
〇error-prone PCR
〇randomized oligonucleotide pools 
これらを
目的の遺伝子配列に与えてきました(6)。
結果として生じた目的の遺伝子配列(GOI)の変異は
細胞に形質導入され、
そこでRNAやタンパク質を表現し、
それら物質の選択、スクリーニングが行われます。
豊富にある、濃縮された目的の遺伝子配列(GOI)の変異は
〇試験管による多様化(細胞分裂)
〇形質転換
〇選択、スクリーニング
〇進化サイクルを進めること
の次のラウンドのテンプレートとなります。
--
指令された進化(directed evolution)は
生物分子エンジニアリングに革新をもたらしました。
とりわけ
〇蛍光タンパク質
〇酵素
〇抗体エンジニアリング
これらに対して革新をもたらしました。
しかし、アクセスできるスケール、深さに
制限がありました。
目的の遺伝子配列(以下GOIs)を急速に進化させ
かつ生体内でできるためには
細胞内で特定の遺伝子材料の高頻度変異を目的とする
必要があります。
一方で、多くの宿主遺伝子は残す必要があります。
これは特定の遺伝子だけを細胞内で
高頻度変異をさせるということです。
それを維持させるためには選択性以外にも
耐性がある必要があります。
このような耐性ある連続的な進化は
厳しい適合性を必要とする長い変異経路を
超える事ができます。
それによって目的とする生物分子標的(depth:深さ)
に達する事ができます。
研究者は多くのGOIsを並列に動かすか
1つのGOIsに対して多くの複製を作るか
を選択することができます。
それによって
〇多くの標的機能に達する事
〇進化のルールを把握する事
〇遺伝子配列と機能のマップを作る事
これらを統計的にすることができます。
--
生体内での連続的な進化のタイプは
〇ウィルスシステム
〇細胞システム
これらに分けられます。
ウィルスシステムではファージが変異を
アシストします。
ウィルスシステムの適合性は
細胞のそれに依存する必要がありますが、
細胞システムはそのものの適合性を
利用することができます。
ウィルスは抗ウィルス抵抗性などによる
変異を利用することもできます。
しかし、ウィルスは
細胞そのもので連続的な進化をさせるよりも
細胞に寄生する形でGOIを制御する必要があるため
細胞そのものよりも複雑であるとされています。
一方、細胞は
培養の容易性、アクセス性の高さ
進化実験のスケール性の高さ
などが利点として考えられます。
Rosana S. Molina, Gordon Rix(敬称略)らは
ウィルスではなく細胞を使った
生体内でのGOIsの連続的な進化について
焦点を当てられています(1)。
特に近年発展してきた
〇OrthoRep
〇MutaT7
〇EvolvR 
これらの方法に焦点を当てています。
-
OrthoRepは
Error-prone DNAポリメラーゼ(DNAP)が
GOIをエンコードした線状プラスミドを複製します。
このDNAポリメラーゼは染色体の遺伝子や
宿主のDNAポリメラーゼは線状プラスミドを
複製しません(8,9)。
-
MutaT7は
核酸塩基デアミナーゼが
T7 RNAポリメラーゼ(T7RNAP)に融合します。
T7RNAPはGOIの隣に位置するT7プロモーターを引き付けて、
デアミナーゼがGOIを遺伝子修正します。
--
EvolvRは
Error-prone DNAポリメラーゼ(DNAP)と
ニッカーゼCas9(nCas9)を融合させます(10)。
ガイドRNAで示された標的サイトで
nCas9は単鎖DNAを破壊し、
Error-prone DNAPが
低い忠誠度とプロセッシビティーで伸長します(11,12)。
この時に高頻度で変異が入ると理解しています。
--
適所でこれらの方法によって
高頻度変異が入るシステムを伴った状態で
もし、GOIの活性が細胞の適合性上昇とリンクしたら
選択淘汰される中において培養する細胞は
改善されたGOI変異の進化をしたと言えます。

//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
Zhongyi Hu, Jiao Yuan(敬称略)ら
医療研究グループは、
Surfaceome、表面タンパク質
この数千種類のデータベースの中から
癌細胞に特異的なたんぱく質を409種類見つけています。
例えば、CDH1, CDH3などは数種類の癌で
特異的な表面タンパク質として検出されています(2)。
このCDH1, CDH3に特異的に結合する
表面リガンドをナノ粒子や細胞外小胞に装飾する事が
細胞種特異的輸送系統の目的です。
この時に考えないといけないのが
①CDH1, CDH3との結合親和性
②そのタンパク質と遺伝子配列の関係
③その遺伝子配列を持つ遺伝子の生成、抽出
これらです。
例えば、
H. Tomas Rube(敬称略)らの
結合親和性と遺伝子配列を繋ぐコンセプト(3)や
タンパク質の構造予測から
タンパク質の構造と遺伝子配列を繋ぐ技術(4)。
これらによって①と②が解決したとしても
その遺伝子を作る必要がありますし、
細胞外小胞ならば、表面に発現する必要もあります。
その時に目的の遺伝子配列(GOI)が分かった状態で
それと一致する遺伝子配列を持った遺伝子を
どのような出発点、テンプレートから探索するか?
それと配列数が同じで
記号が近い遺伝子配列の物を選ぶのか?
そこが疑問としてあります。

//Risk science//ーー
以前、CRISPR Cas9によって遺伝子編集が可能になった時、
そのリスクについても同時に議論になったと思います。
その扱いについて世界的にどこで落ち着ているのか?
というのは調査が必要ですが、
少なくとも遺伝子学に関わる研究分野では
その技術が使われ、あるいは派生して、
日進月歩で科学技術が発展しています。
今回の高頻度変異を目的のタンパク質を得るために
生物内で利用する内容において、
すぐに世界から大きな反応がありました。
そのように受け取っています。
それは主にリスクについてです。
そのリスクについては多面的に理解しています。
上述した遺伝子編集技術なども含めて
医学生理学、医療工学だけではなく、
物理、化学、工学分野においても
その技術発展に伴うリスクは
広範にみれば必ず存在します。
ただ、今回の記事において
特別、世界から一斉にそのような反応があったことは
そのリスクについてより深く考える必要性を与えます。
少なくとも国際的、学際的な議論は必要です。

(参考文献)
(1)
Rosana S. Molina, Gordon Rix, Amanuella A. Mengiste, Beatriz Álvarez, Daeje Seo, Haiqi Chen, Juan E. Hurtado, Qiong Zhang, Jorge Donato García-García, Zachary J. Heins, Patrick J. Almhjell, Frances H. Arnold, Ahmad S. Khalil, Andrew D. Hanson, John E. Dueber, David V. Schaffer, Fei Chen, Seokhee Kim, Luis Ángel Fernández, Matthew D. Shoulders & Chang C. Liu
In vivo hypermutation and continuous evolution
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 36 (2022) 
(2)
Zhongyi Hu, Jiao Yuan, Meixiao Long, Junjie Jiang, Youyou Zhang, Tianli Zhang, Mu Xu, Yi Fan, Janos L. Tanyi, Kathleen T. Montone, Omid Tavana, Ho Man Chan, Xiaowen Hu, Robert H. Vonderheide & Lin Zhang 
The Cancer Surfaceome Atlas integrates genomic, functional and drug response data to identify actionable targets
Nature Cancer volume 2, pages1406–1422 (2021)
(3)
H. Tomas Rube, Chaitanya Rastogi, Siqian Feng, Judith F. Kribelbauer, Allyson Li, Basheer Becerra, Lucas A. N. Melo, Bach Viet Do, Xiaoting Li, Hammaad H. Adam, Neel H. Shah, Richard S. Mann & Harmen J. Bussemaker 
Prediction of protein–ligand binding affinity from sequencing data with interpretable machine learning
Nature Biotechnology (2022)
(4)
John Jumper, Richard Evans, Alexander Pritzel, Tim Green, Michael Figurnov, Olaf Ronneberger, Kathryn Tunyasuvunakool, Russ Bates, Augustin Žídek, Anna Potapenko, Alex Bridgland, Clemens Meyer, Simon A. A. Kohl, Andrew J. Ballard, Andrew Cowie, Bernardino Romera-Paredes, Stanislav Nikolov, Rishub Jain, Jonas Adler, Trevor Back, Stig Petersen, David Reiman, Ellen Clancy, Michal Zielinski, Martin Steinegger, Michalina Pacholska, Tamas Berghammer, Sebastian Bodenstein, David Silver, Oriol Vinyals, Andrew W. Senior, Koray Kavukcuoglu, Pushmeet Kohli & Demis Hassabis
Highly accurate protein structure prediction with AlphaFold
Nature volume 596, pages583–589 (2021)
(5)
Arnold, F. H. Design by directed evolution. Acc. Chem. 
Res. 31, 125–131 (1998).
(6)
Packer, M. S. & Liu, D. R. Methods for the directed 
evolution of proteins. Nat. Rev. Genet. 16, 379–394 
(2015).
(7)
Drake, J. W., Charlesworth, B., Charlesworth, D. & 
Crow, J. F. Rates of spontaneous mutation. Genetics 
148, 1667–1686 (1998).
(8)
Ravikumar, A., Arrieta, A. & Liu, C. C. An orthogonal 
DNA replication system in yeast. Nat. Chem. Biol. 10, 
175–177 (2014).  
(9)
Ravikumar, A., Arzumanyan, G. A., Obadi, M. K. A., 
Javanpour, A. A. & Liu, C. C. Scalable, continuous 
evolution of genes at mutation rates above genomic 
error thresholds. Cell. 175, 1946–1957.e13 (2018).  
(10)
Jinek, M. et al. A programmable dual-RNA-guided 
DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. 
Science. 337, 816–821 (2012).
(11)
Halperin, S. O. et al. CRISPR-guided DNA 
polymerases enable diversification of all nucleotides  
in a tunable window. Nature. 560, 248–252 (2018).  
(12)
Tou, C. J., Schaffer, D. V. & Dueber, J. E. Targeted 
diversification in the S. cerevisiae genome with 
CRISPR-guided DNA polymerase i. ACS Synth. Biol. 9, 
1911–1916 (2020).


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