いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
血液は、生命活動に必要な栄養素(酸素、鉄など)や
身体の機能恒常性に必要な免疫機能(白血球など)などを
毛細血管を含めて全身にくまなく流れることによって
供給、維持しています。
身体の一つの大きなネットワークとも言えると思います。
実際に血液を通して小胞、たんぱく質、DNAなどの
様々な物質が一定の走化性を持って
運搬されていると考えています。
その血液の元となる造血系幹細胞、前駆細胞は
一生のうち一兆個の血液系細胞を生み出すとされています(1)。
仮に一定で100年だとすると
1年で100億個の血液系細胞が生み出され、
既に存在する一部が入れ替わっているということになります。
そのような造血系の幹細胞、分化細胞の系統は
生命活動において動的で活発ですが、
その個体発生の機序についてはよくわかっていない
と考えられています(2)。
Sophia G. Espanola氏ら研究グループは
ゼブラフィッシュにおいて
造血系幹細胞の発展、再生の機序を考える上で
大切となる物質を特定して
その物質を欠損させたときに
どのような下位プロセスが生じるか調べました(1)。
それによると
supt16hという物質が
造血系幹細胞、前駆細胞の形成に関わっている
ことを確かめました。
このsupt16hは
Facilitates chromatin transcription (FACT) complex
と呼ばれクロマチン転写に関わる複合体です。
具体的な機能としては
・RNAプロメラーゼ2をクロマチンに接続させること(3)
・RNAポリメラーゼ2に転写活性を与えること(4,5)
これらがあります。
これを欠損させると上述した転写機能が損なわれ
造血系幹細胞、前駆細胞の発展に必要な
Notch信号のレベルが下がります。
この時、クロマチン自身の構造可変性が高まる
のではなく、p53という遺伝子が
特異的な構造可変性、構造変化が現れました(1)。
このp53とNotch遺伝子の関連性が示唆されています。
phc1というNotch信号を弱める機能を抑制すると
supt16hが欠損した状態でも
Notch信号と造血系幹細胞、前駆細胞の表現型の欠損が
回復しました(1)。
これらのことから
supt16h, p53, phc1
これらがNotch信号の変化を通して
造血系幹細胞、前駆細胞の活動性を制御していると
考えられています(1)。
p53が過剰に発現されるとphc1発現クロマチンと結合して
phc1の発現量を増加させます。
それによってNotch信号が弱められるので
その上流過程にあるsupt16hがp53の適正制御を乱す
一つの因子になっています。
p53というのは変異があると
高い割合での癌の罹患と関係があるとされています。
従って、非常に重要な遺伝子で
遺伝子の安定性、転写の制御
エピジェネティックな改変に置ける関与が認められています(6-8)。
Notchシグナルは造血のための重要な信号である
という事は知られています。
このNotch受容体は細胞膜貫通タンパク質から成り、
信号の発生源となるリガンドタンパク質が
この受容体に結合すると
受容体の細胞内の一部の部位が切断されて
細胞内の核に移動します。
そうした流れで細胞の機能に関わりますが
機能としては細胞分化のための遺伝子制御を行います。
従って、
造血幹細胞、前駆細胞が適切に分化するためには
このNotchシグナルは欠かせないということです(9-11)。
受容体への結合は
他の細胞に発現したリガンドが結合する様子が
描かれているので細胞同士のシグナル伝達
という形式も考えられるということです。
Notchシグナルの受容体、リガンドは
造血系幹細胞、前駆細胞においても複数あります
(受容体)
notch1a、notch1b、notch2、notch3
(リガンド)
deltaA、deltaB、deltaC、deltaD、dll4、
jag1a、jag1b、jag2
/考察/
参考文献(1)の研究結果における
ゼブラフィッシュの実験では、
Notchシグナル、p53、supt16h、phc1の
どれが乱れても他の要因に影響があり
p53、Notch信号などは
幅広い範囲で極めて重要な役割を担っていますが、
生体内のそれらの関連系統が
それほど脆弱なものではないと推測する部分があります。
仮に外的な刺激によって
どれか一つの要因が擾乱を受けたとしても
それを補うような生態機序もあるのではないか
と考えます。
もしそうであれば、
その様な相互補完的な要素を含めて考えると
最終的には人の健全な細胞形成を強く維持するために
どうすればいいか?という事に貢献すると考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Sophia G. Espanola, Hyemin Song, Eunjin Ryu, Aditya Saxena, Eun-Sun Kim, Jennifer E. Manegold, Chanond A. Nasamran, Debashis Sahoo, Chang-Kyu Oh, Cara Bickers, Unbeom Shin, Stephanie Grainger, Yong Hwan Park, Lauren Pandolfo, Mi-Sun Kang, Sukhyun Kang, Kyungjae Myung, Kimberly L. Cooper, Deborah Yelon, David Traver & Yoonsung Lee
Haematopoietic stem cell-dependent Notch transcription is mediated by p53 through the Histone chaperone Supt16h
Nature Cell Biology (2020)
(2)
Bertrand, J. Y. et al.
Haematopoietic stem cells derive directly from aortic endothelium during development.
Nature 464, 108–111 (2010).
(3)
Hondele, M. et al.
Structural basis of histone H2A–H2B recognition by the essential chaperone FACT.
Nature 499, 111–114 (2013).
(4)
Saunders, A. et al.
Tracking FACT and the RNA polymerase II elongation complex through chromatin in vivo.
Science 301, 1094–1096 (2003).
(5)
Hsieh, F.-K. et al.
Histone chaperone FACT action during transcription through chromatin by RNA polymerase II.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 7654–7659 (2013).
(6)
Vousden, K. H. & Lane, D. P.
p53 in health and disease.
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8, 275–283 (2007).
(7)
Levine, A. J. & Berger, S. L.
The interplay between epigenetic changes and the p53 protein in stem cells.
Genes Dev. 31, 1195–1201 (2017).
(8)
Beckerman, R. & Prives, C.
Transcriptional regulation by p53.
Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2, a000935 (2010).
(9)
Kumano, K. et al. Notch1 but not Notch2 is essential for generating
hematopoietic stem cells from endothelial cells.
Immunity 18, 699–711 (2003).
(10)
Kim, A. D. et al.
Discrete Notch signaling requirements in the specification of hematopoietic stem cells.
EMBO J. 33, 2363–2373 (2014).
(11)
Clements, W. K. et al.
A somitic Wnt16/Notch pathway specifies haematopoietic stem cells.
Nature 474, 220–224 (2011).
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