2020年11月10日火曜日

感染させた人型受容体発現マウスに対する分析

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

実際に人で新型コロナウィルスの病理や症状などを
分析、評価するときには、
当然、意図しないで罹患した方に対して行います。
従って、感染時の状態、あるいは環境を
制御することはできません。
また、体の中で何が起こっているか調べる時も
その解析手法は限定されいます。
従って、人に似せた形で
人以外の動物に制御した形で感染させた時にどうなるか?
というのを分析することは、
人に対する病理や症状を理解する上で
助けになると考えられます。

Jian Zheng氏らは、マウスに対して
人型のACE2受容体を発現させて、
新型コロナウィルスに感染させたときの
症状について分析しています(1)。

マウスに対して
ウィルスの感染量を3段階、
濃度を一桁ずつ変えてみたところ
ウィルスの感染量に依存して生存率が変わっています。
一番多い量では9日後には
全ての個体において死亡が確認されています。
また、最も多い量では体重も3割程度
減少しています。
(参考文献(1) Fig.1(a))
またどの臓器にウィルスが侵入しているか
調べています。
・肺・脳・心臓・肝臓・脾臓・腎臓・小腸・大腸
です。
それによると肺への感染が一番多く、
続いて脳の感染がみられています。
肺は、感染後2日後にすでに大量の感染がみられ
その後、穏やかに減少していきます。
しかし、脳に関しては
それよりもタイミングが遅れて
感染量が増えてきます。
実際に人でも脳の感染が疑われます(1,2)。
CTで脳の分析をしたときには白い部分が観測され
組織として硬くなり炎症が起こっている
事も確認されています(ブレインフォグ)。
感染が肺よりも遅れるというのは
一つ重要な情報です。

また香料を閉鎖空間に置いた観察では
新型コロナウィルスによる嗅覚障害が
疑われる結果になっています。
(参考文献(1) Fig.2より)
またメスのほうが顕著に表れており(1)、
嗅覚障害が男性よりも女性の人の方が
多い結果と傾向は一致しています(3-5)。

また人と同様、感染後
インターフェロンを始め
様々なサイトカインの上昇がみられ
免疫応答が確認されています。
(参考文献(1) Extended Data Fig.3より)

さらに治療として
回復期の血漿を注入して(CP therapy)
生存率が変わるかどうか確認したところ
その希釈率によって変わり、
希釈しない濃度の高いケースでは
全ての個体において生存が確認されています。
(参考文献(1) Fig.3(a)より)

従って、症状についても
あるいは治療効果についても
一定の人との類似性が見られるので、
その他、臓器のダメージに対して
人における治験を始める前段階として
様々な可能性のある治療を試すことが
後遺症などに対する治療の貢献すると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Jian Zheng, Lok-Yin Roy Wong, Kun Li, Abhishek Kumar Verma, Miguel Ortiz, Christine Wohlford-Lenane, Mariah R. Leidinger, C. Michael Knudson, David K. Meyerholz, Paul B. McCray Jr & Stanley Perlman
COVID-19 treatments and pathogenesis including anosmia in K18-hACE2 mice
Nature (2020)
(2)
Alessandro Pezzini & Alessandro Padovani 
Lifting the mask on neurological manifestations of COVID-19
Nature Reviews Neurology volume 16, pages636–644(2020)
(3)
Makaronidis, J. et al. 
Seroprevalence of SARS-CoV-2 antibodies in people with an acute loss in their sense of smell and/or taste in a community-based population in London, UK: An observational cohort study. 
PLoS Med 17, e1003358, https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1003358 (2020).
(4)
Giacomelli, A. et al. 
Self-reported Olfactory and Taste Disorders in Patients With Severe Acute Respiratory Coronavirus 2 Infection: A Cross-sectional Study. 
Clin Infect Dis 71, 889-890, https://doi.org/10.1093/cid/ciaa330 (2020).
(5)
Lechien, J. R. et al. 
Olfactory and gustatory dysfunctions as a clinical presentation of mild-to-moderate forms of the coronavirus disease (COVID-19): a multicenter European study. 
Eur Arch Otorhinolaryngol 277, 2251-2261, 
https://doi.org/10.1007/s00405-020-05965-1 (2020).

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