いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ウィルスは細胞の中でしか増殖できず、
そのものに活動を維持するための
エネルギー代謝機能を持っているわけではないので
生命ではないという見方ができます。
しかしながら、
今、北半球が寒くなってきて
ウィルスの感染が高まってきている中で
まるで世の中で生きているように思いますが、
冷静にその生理機序を見ると
ウィルスは生体の細胞の中でしか数を増やせません。
(と理解しています。)
従って、
ウィルスの感染力を弱めるためには
①身体の中にいれないようにする
②免疫によるウィルスへの攻撃力を高める
③ウィルスを細胞内に入れないようにする
④細胞内でウィルスの増殖を防ぐ
⑤細胞内から細胞外へ出さないようにする(?)
、、、、
これらのような対策が考えられます。
①、②の一部は医療現場の方や専門家ではなく
社会の人、一人一人が実践できることです。
そして
②、③、④、⑤については
私も含め、専門家の方とともに考えていく事です。
ウィルスの増殖には非常に複雑な機序があり、
分かっていないことも多いと理解していますが、
それくらい複雑であるということは
それだけ薬剤によって関与できる部分も多い
ということです。
ただ、④、⑤のように細胞内で狙った機能を生み出すためには
細胞膜を超えて中に入る必要があるので、
細胞外で作用させるよりも
一つ、壁を超えないといけません。
段階を踏まないといけません。
また細胞内での機序を確かめるための分析も
一段難しくなります。
従って、できれば③で有効な方法を見つけ出して
④、⑤でも良い薬があるといった風にできれば、
ウィルスの脅威を大分コントロールできるようになる
と考えられます。
もちろん、新型コロナウィルスの報告では
私がずっと見てきた感覚では
医学領域の中で免疫の報告がかなり多いので、
免疫をどう高めるか?
といった視点も大事です。
それは③、④、⑤の薬剤開発と重なる部分があります。
今述べた様に細胞外でウィルスの細胞への侵入を
効果的に防ぐというプロセスは、
ウィルスを減らすという利点だけではなく
精度、薬効の高い薬剤開発をする上でも
助けになると考えられます。
なぜなら、細胞外にあるため
分析手法が色々生まれると考えられるからです。
細胞外でももちろん難しさはありますが、
関わっている物質の構造を見るときには
細胞内にあるものよりも
難易度は少なくとも若干は下がるとみているからです。
このような解析精度が上がれば、
当然、良い薬剤を生み出せる可能性はあがります。
この侵入のプロセスで流行初期2月、3月ごろから
すでに明らかになっていたことは
SARS-CoVと同様にACE2受容体との結合を介して
細胞内に侵入するということです。
しかし、詳しく調べられた結果、
他にもいろんな物質が関与していると考えられています。
James L. Daly氏(1)、Ludovico Cantuti-Castelvetri氏(2)ら
研究グループはNRP1という受容体も
細胞の侵入に関わっていて、
ACE2受容体と同時に作用した時に
細胞への浸入効率が著しく上がる事を確かめました(1,2)。
新型コロナウィルスにはSタンパク質というスパイクが
無数に表面上に存在していて、
その構造は大きく分けるとS1ユニット、S2ユニットとなり
S1はACE2受容体との結合を担っており、
S2は主に新型コロナウィルスが細胞内に入る
プロセスで必要とされるユニットです。
その時にS2ユニット、細胞膜は形質変換が必要で
タンパク質分解酵素が必要です。
その内の一つが
Transmembrane protease serine 2 (TMPRSS2)
です(3)。
さらにS2ユニットをへき開するにあたり
Furinと呼ばれる遺伝子でコード化された
タンパク質が必要です(3)。
これは以前から報告されていたことですが、
今回、初めてNRP1という受容体が
S1ユニットの一部に結合して、
ACE2受容体と共に細胞表面で固定されていると
感染力が高まることが確認されました(1,2)。
そのNRP1は「串刺しされた団子のような形状で(?)」
その「一部に側面から(?)」結合するような
イメージで描かれています。
(参考文献(4) p.766 イメージ図より)
これはSARS-CoV-2が特異的に持つ特徴かもしれない
と考えられています(1,4)。
試験管において
このNRP1の発現を欠損させた細胞では
感染力が25%以下に下がりました。
(参考文献(1) Fig.1(C)より)
また、このNRP1受容体の構造のうち
GFP-S1(493-685)、 mCherry-b1との結合を
抑制するような抗体(mAb#3)を
腸上皮細胞に分化するCaco-2細胞において確かめたところ
インフルエンザの抗体を比較対象としたときに
60%程度の感染を防ぐことができています。
またこれらのNRP1は
新型コロナウィルスに罹患された方の
肺の組織によって亢進されていることも
確認されています(5)。
従って、肺組織に多く感染が確認されることの
一つの理由はACE2だけではなく
NRP1も関わっている可能性があります。
またSARS-CoV-2が肺の炎症のケースが診られることも
この生理機序が関わっていることも想定されます。
さらに
鼻腔にある上皮にも同じようにNRP1の検出があり(6)
嗅覚障害と伴うこととの関連性が考えられます。
実際にはACE2、TMPRSS2、NRP1
これらの3要素が感染する上で鍵となる物質ですが
これらが全て発現されている状態では
全てないときよりも10倍以上の感染力
またNRP1有無だけでも4倍近くの差になっています。
これは参考文献(1)の結果と一致します。
(参考文献(2) Fig.1(B)より)
従って、重要なのは
ワクチン開発において
Sタンパク質がNRP1に作用する結合部位(エピトープ)
を明らかにして、それに対しての抗体が
自然に罹患した時の獲得免疫として生まれているかどうか?
その確認が大事だと思います。
さらには、その有無にかかわらず、
ACE2受容体だけではなく
この受容体に対しても結合活性を弱めるような
抗体をワクチンによって生み出すことです。
あとは、
前述したように鼻腔と肺に多く発現されている
事が確認されています。
後は後遺症などとも恐らく関係がある
脳なども懸念される臓器の一つですが、
身体の色んな部位において
このNRP1が発現しているかどうか?
その確認も今後大切になってくると思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
James L. Daly et al.
Neuropilin-1 is a host factor for SARS-CoV-2 infection
Science 13 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6518, pp. 861-865
(2)
Ludovico Cantuti-Castelvetri et al.
Neuropilin-1 facilitates SARS-CoV-2 cell entry and infectivity
Science 13 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6518, pp. 856-860
(3)
M. Hoffmann et al.,
Cell 181, 271 (2020).
(4)
Margaret Kielian
Enhancing host cell infection by SARS-CoV-2
Science 13 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6518, pp. 765-766
(5)
M. Ackermann et al.,
N. Engl. J. Med. 383, 120 – 128 (2020).
(6)
M. A. Durante et al.,
Nat. Neurosci. 23, 323 – 326 (2020).
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