2020年11月5日木曜日

慢性閉塞性肺疾患の再生と肺線維症の再生可能性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスに罹患された患者さんのうち
罹患中症状、あるいは後遺症として
肺に障害が現れるケースがあります。
実際にそのような肺炎にかかった時に
肺の組織の状態がどのようであるか?
というのを診断する必要があると思います。
その他、肺の組織が免疫系統の乱れによって
炎症を起こすような疾患は
肺に関する後遺症の治療に対して
何らかのヒントを与える可能性があると考えています。

肺の代表的な疾患として
慢性閉塞性肺疾患
(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)
というのがあります。
主な原因は喫煙とされています。
見た目には黒く焦げたような部分が点在し
これは炭素堆積物であると言われています。
症状としては、息切れがあります。
その理由は、肺胞の破壊にあると思っています。
肺胞とは丸い形をしていて
肺胞管が樹木の枝のようになって肺胞を散在させています。
肺胞の組織表面には毛細血管が張りめぐらされています。
この肺胞の機能は吸い込んだ酸素を
今述べた肺胞表面にある血管に運び
二酸化炭素を血管から取り込む役割があります。
従って、
肺胞が破壊されると二酸化炭素や酸素の循環が
うまくいかなくなり、体が酸素を渇望するために
呼吸が浅くなり、息切れを感じるということだと
理解しています。
このように肺胞が破れると肺気腫となり
肺胞の区切りとなる組織がなくなり、
画像としては白く空白な部分が多くなります。
例えば、
参考文献(1)Fig.2(a)を見ると
重い慢性閉塞性肺疾患に罹っている患者さんの
組織のイメージを見ると白く空白な部分が多くなります。
しかし、健康な組織では
そのような白い空間が小さく密集して存在します。

新型コロナウィルスでは
CT画像で肺が白く見えることは
メディアで度々放送されています。
CTは組織の硬さによって軟らかいと黒に
硬いと白に見えます。
従って、骨は白く見えます。
肺が白いとは組織が硬くなっていることなので
上述した肺胞壁が破壊されている有無ではなくて
その肺胞壁が線維化などによって硬くなっている
ことの証明であると考えられます。
従って、タバコが原因と考えられる
慢性閉塞性肺疾患と新型コロナウィルスによる
肺の疾患に関しては重ならない部分がある
と考えられます。

Thomas M. Conlonらは、
肺組織の細胞表面にあるLTβR受容体に抗体を付けて
その信号を抑制することで肺の再生を促すことが
人の組織で確認できたという報告をしています(1)。
これは末期の慢性閉塞性肺疾患の患者さんであり
新型コロナウィルスではありません。
しかしながら、組織を硬くする要因となる
コラーゲンに関しても肺胞壁の回復の中でみられており
(参考文献(1) Fig.2(c)より)
同じような治療がひょっとすると
新型コロナウィルスで問題になっている
肺炎からの回復にも貢献する可能性がある
と考えています。

慢性閉塞性肺疾患が起こっている患者さんの
肺組織のダメージに関わっている経路のバランスは
以下のようになっています。
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①炎症性免疫機能↑(亢進)
CD3(T細胞関連)、CD20(B細胞関連)
これらが慢性閉塞性肺疾患では異常に(?)組織に
形成されている。
(参考文献(1) Fig.1(b)(c)参照)
--
②Lymphotoxinβ-receptor(LTβR)信号↑(亢進)
この信号は、細胞死であるアポトーシス、
サイトカインIL-8に関わっている
これはファーゴサイトーシスに関わっており
異常亢進すればアポトーシスを含めて
組織破壊に関係すると考えられます。
従って、この信号は肺気腫などにも関わっている
可能性があります。
--
③NF-κB 信号↑(亢進)
この信号は免疫系の制御に関わっているため
上述した①炎症性免疫機能の亢進と関わっている
可能性があります。
--
④noncanonical WNT/β-catenin 信号↓(抑制)
これは細胞骨格形成を制御しており
細胞の形を整える役目をしています。
従って、
組織形成の基礎となるものであると考えられます。
この信号は肺の成長、恒常性において
重要な役割を果たしているとされています(2,3)。
またこの信号を活性化させることは
肺の修復を促したとされています(4,5)。
組織の破壊を促すかもしれない
②LTβR信号活性化は、このWNT信号が抑制されると
より組織の恒常性が乱され、肺胞壁が失われる
可能性は考えられます。
------
上述したようにThomas M. Conlonらは
このうち②LTβR受容体に抗体を付けて
この信号を抑制することで
その他の信号のバランスを調整することに成功し
結果として肺の組織の再生を促すことができました。
期間としては、4か月~6か月程度です(1)。
これは細胞表面にある受容体なので
薬剤によって関与しやすい経路であると考えられます。

(考察)
肺気腫の場合は細胞壁がなくなっている状態なので
まだ細胞壁が存在しているところから
組織の成長が促されるということかもしれません。
しかし、細胞壁があるけど
それがコラーゲンなどを含む線維化した組織の場合には
それを一旦消化して、
再度形成する必要があるように思えます。
突発性肺線維症の場合には
CTで見た時に硬い組織である白い部分が
網目状になっている画像があります。
この組織を通常の軟組織にするためには
単に再生、成長というプロセスだけではなく
この硬い組織をどうやって廃棄するか?
という前段階のプロセスが必要だと考えます。
喫煙による慢性閉塞性肺疾患の場合
禁煙すれば、ある程度組織は回復すると言われています。
もし、線維症は自然治癒が難しいのであれば、
一つの理由として硬い組織が存在することによって
軟らかい通常の組織の成長が阻害されている
ということが挙げられる可能性を考えました。

以上です。

(参考文献)
(1)
Thomas M. Conlon, Gerrit John-Schuster, Danijela Heide, Dominik Pfister, Mareike Lehmann, Yan Hu, Zeynep Ertüz, Martin A. Lopez, Meshal Ansari, Maximilian Strunz, Christoph Mayr, Chiara Ciminieri, Rita Costa, Marlene Sophia Kohlhepp, Adrien Guillot, Gizem Günes, Aicha Jeridi, Maja C. Funk, Giorgi Beroshvili, Sandra Prokosch, Jenny Hetzer, Stijn E. Verleden, Hani Alsafadi, Michael Lindner, Gerald Burgstaller, Lore Becker, Martin Irmler, Michael Dudek, Jakob Janzen, Eric Goffin, Reinoud Gosens, Percy Knolle, Bernard Pirotte, Tobias Stoeger, Johannes Beckers, Darcy Wagner, Indrabahadur Singh, Fabian J. Theis, Martin Hrabé de Angelis, Tracy O’Connor, Frank Tacke, Michael Boutros, Emmanuel Dejardin, Oliver Eickelberg, Herbert B. Schiller, Melanie Königshoff, Mathias Heikenwalder & Ali Önder Yildirim 
Inhibition of LTβR signalling activates WNT-induced regeneration in lung
Nature (2020)
(2)
Nabhan, A. N., Brownfield, D. G., Harbury, P. B., Krasnow, M. A. & Desai, T. J. 
Single-cell Wnt signaling niches maintain stemness of alveolar type 2 cells. 
Science 359, 1118–1123 (2018).
(3)
Zacharias, W. J. et al. 
Regeneration of the lung alveolus by an evolutionarily conserved epithelial progenitor. 
Nature 555, 251–255 (2018).
(4)
Uhl, F. E. et al. 
Preclinical validation and imaging of Wnt-induced repair in human 3D lung tissue cultures. 
Eur. Respir. J. 46, 1150–1166 (2015).
(5)
Kneidinger, N. et al. 
Activation of the WNT/β-catenin pathway attenuates experimental emphysema. 
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 183, 723–733 (2011).


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