いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
人が長く健康でいるためには、
組織と組織をつなぐ
サイトカイン、エクソソーム、ホルモン、
神経伝達物質などの細胞間伝達物質が
上手く制御されていることも大切ですが、
もう一つ根本的な事としては
体全体の細胞からなる組織が正常な状態に近いことです。
その割合が多くなればなるほど、
身体は基礎として機能を適正に制御しやすい状態である
と推定しています。
その機能不全の状態は少なくとも
・癌化・老化・線維化・炎症
これらが挙げられます。
これらは独立した概念、要因ではないと思いますが、
この4つの要素を回避する方法が見つかれば
新たなステージに行けると考えている部分があります。
本日はその機能不全の一つである「線維化」について
読者の方と情報共有したいと思います(1)。
細胞が何らかのきっかけで損傷を受け
そこから再生するときには、
その土台、骨組みとしてコラーゲンなどから成る
細胞外マトリックス(ECM)を使用します。
しかし、
線維化した組織ではそのような創傷治癒の段階で
不均衡な身体の信号によって
過剰に細胞外マトリックスが蓄積してしまい
その代表的な物質である繊維状のコラーゲンが
組織を形成してしまいます。
臓器がそのような状態であると
様々な機能不全を引き起こすとされています。
それは肺、肝臓、腎臓などがあげられてます(1)。
もしくは心臓も線維化すると言われています。
そのような臓器だけではなく
結合組織の疾患も引き起こします。
・全身硬化症(systemic sclerosis (SSc-ILD))(2)
・リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis (RA-ILD))(3)
例えばこれらが挙げられています。
前述した腎臓の線維症、腎線維症では
・巣状分節状糸球体硬化-focal segmental glomerulosclerosis
・尿細管間質炎-tubulointerstitial fibrosis
これらが腎臓血管系の改変に伴って所見されます。
また、
高血圧に伴って心臓疾患が併発症として挙げられます(1)。
例えば、
鼻腔にある上皮組織が免疫異常などで
炎症を起こした時、そこから回復するときに
治癒能力に不全があると上皮間葉転換(5)によって
細胞が間質に遊離してしまうことがあり
それによって組織に空壁ができます。
(参考文献(4)Fig.3参照)
さらに
突発性肺線維症の患者さんでは
WNT-βカテニン経路という胚発生を制御する
細胞の進化過程を適切に保つ経路がありますが、
それが肺胞の上皮細胞で異常活性化してしまって
いることが確認されています(6)
そのWNT-βカテニン経路活性化が
臨床前段階の研究によれば
上皮間葉転換と密接な関係を持ち、
線維組織形成と密接に関わっている
可能性が示唆されてます(6)。
上述したように心臓でも線維化が起こります。
その一つの部位として心筋の線維化があります。
その場合、筋線維芽細胞(myofibroblast)が
損傷を受けた後に促進されますが、
この筋線維芽細胞は間葉系由来です。
この筋線維芽細胞が過剰に活性化されると
筋組織の線維化が起こるとされています(1)。
このような筋線維芽細胞が過剰活性化は
細胞死(アポトーシス)に対して抵抗性が上がり(1)
組織を適正に保つための消滅のプログラムが
失われてしまいます。
それによって細胞外マトリックスの
制御不能な代謝の中で蓄積されていくとされています(1)。
線維化に関わる因子(の一部)として以下があげられます。
-------
・Phosphoinositide 3-kinase (PI3K)
これは細胞内の信号を司るたんぱく質ファミリーで
癌細胞では度々この機能が制御不能となっています。
これは線維化の病理の中でも指摘されています。
これが細胞死に抵抗を示す
筋線維芽細胞(の過剰活性化)に関係します(7)。
--------
・Transforming growth factor-β(TGFβ)
これは形質転換因子なので細胞の分化に関係します。
これが異常に分泌されると細胞は
筋線維芽細胞分化優位になり
異常な細胞外マトリックス回転率となります(1)。
このようなバランスが乱れることで
組織の線維化が促進されると考えられます。
---------
・LOXL2酵素
これは細胞外マトリックスを変質させる酵素で有り
コラーゲンの単量体間の共有結合を触媒する作用があり
多量体化する中で異常な配座、形で結合させる
要因になるといわれています。
その中で構造不安定性を生み、
結果として細胞外マトリックスを劣化させます(1)。
このような細胞外マトリックスの質が
線維化、組織の劣化と関係があるとされています(1)。
また、おそらく
このように酵素で反応が活性になって
異常な速度で重合することで
制御不能なコラーゲンの蓄積となり、
結果として組織の繊維化につながるとも考えられます。
従って、創傷治癒の段階では
骨組みや足場であるコラーゲンから成る
細胞外マトリックスの形成速度を適正に制御しながら
質の良い細胞の結合が促されることが
線維化を防ぐ一つの要因になると考えられます。
(考察)
このような線維化の治療を行う時には
まだ線維化していない段階で行うことは
ほとんどないと考えられます。
なぜならこれから
線維化が起こるだろうということは予測できないし、
予防医学的に治療されるわけではないからです。
従って、
すでに心臓、肺、肝臓、腎臓、関節などの
組織が劣化していて線維化が起こっている状態で
・進行を遅らせる
・進行を止める
・線維化を回復させる
これらのことが治療の目標としてあります。
そうした場合、
すでに線維化が起こっている組織がある
ということは治療をするうえで無視はできません。
例えば、線維化した細胞を
マクロファージなどの食作用がある細胞が
分解してくれて組織を一時的に失わせた場合に
その組織には一定の機械的なストレスが加わります。
そうした時に失われた周りの細胞が
その機械的ストレスによってどのような応答をするか
というのは考える必要があります。
線維化を推し進める因子は上述したように
明らかになっています。
それを薬剤によって抑制するというのは
一つの直接的な治療ではありますが、
治験の段階でうまく進んでいないものも散見されます。
その一つの理由としては、
線維化が起こっている組織に対して
そのような線維化を止めるような処置を施した時に
患部、患部近くの構造的な動的機序(時系列での変化)が
どのようであるか?というのがわからない事には
良い結果に結びつかない事が挙げられます。
オルガノイドなどの組織の一部に線維化を起こしておいて、
それに対して線維化抑制要素を加えた時に
「その場観察(in situ)」で組織がどのようになるか?
というのを評価する必要があると思います。
組織、細胞が機械的なストレスを受けた時の
機序を説明している報告はありますが(8-10)、
形を変えたことによって細胞質の信号、
あるいは細胞表面の結合因子、受容体の状態が変わり
それによって免疫応答などが変化する
可能性も考えられます。
・免疫応答が変化
・組織の形態に関わるモフォゲンの変化
これらはその後の組織形成に密接に関わります。
従って、
線維化だけに限らず
癌、老化、炎症など組織の不全を
健全な状態に治癒する段階においては、
組織の構造的な動的機序など
全体像をしっかり把握して
そのうえで総合的な観点も踏まえて
治療方針を考えていく必要があると思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
Carmel B. Nanthakumar, Richard J. D. Hatley, Seble Lemma, Jack Gauldie, Richard P. Marshall & Simon J. F. Macdonald
Dissecting fibrosis: therapeutic insights from the small-molecule toolbox
Nature Reviews Drug Discovery volume 14, pages693–720(2015)
(2)
Winstone, T. et al.
Predictors of mortality and progression in scleroderma-associated interstitial lung disease: a systematic review.
Chest 13, 2626 (2014).
(3)
Kim, D.
Interstitial lung disease in rheumatoid arthritis: recent advances.
Curr. Opin. Pulm. Med. 12, 346–353 (2006).
(4)
Claus Bachert, Bradley Marple, Rodney J. Schlosser, Claire Hopkins, Robert P. Schleimer, Bart N. Lambrecht, Barbara M. Bröker, Tanya Laidlaw & Woo-Jung Song
Adult chronic rhinosinusitis
Nature Reviews Disease Primers volume 6, Article number: 86 (2020)
(5)
Lamouille, S., Xu, J. & Derynck, R. ]
Molecular mechanisms of epithelial-mesenchymal transition.
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 15, 178–196 (2014).
(6)
Konigshoff, M. et al.
Functional Wnt signalling is increased in idiopathic pulmonary fibrosis.
PLoS ONE 3, e2142 (2008).
(7)
Maher, T. M. et al.
Diminished prostaglandin E2 contributes to the apoptosis paradox in idiopathic pulmonary fibrosis.
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 182, 73–82 (2010).
(8)
Zhouyang Shen and Philipp Niethammer
A cellular sense of space and pressure
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, pp. 295-296
(9)
A. J. Lomakin et al.
The nucleus acts as a ruler tailoring cell responses to spatial constraints
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, eaba2894
(10)
Valeria Venturini et al.
The nucleus measures shape changes for cellular proprioception to control dynamic cell behavior
Science 16 Oct 2020: Vol. 370, Issue 6514, eaba2644
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