いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
骨密度測定を行った経験のある方はいると思います。
時折、自治体のキャンペーンなどで
無料で測定できる事があります。
その場合、超音波で足を置いて測るものが
測定機器としては小さくて一般的だと思います。
その骨密度は18歳くらいでピークに達して
40歳半ばまでは保持されるといわれています。
一般的に骨粗しょう症になるのは女性が多い
と言われています。
40代後半くらいまではほとんどかかる人はいないのですが、
女性の場合は50代くらいから一気に増えて
60代後半では三人に1人以上、70代後半では二人に1人が
骨粗しょう症になるといわれてます。
その理由は
---
・腸でのカルシウムの吸収が悪くなる
・カルシウムの吸収を助ける
ビタミンDを作る働きが弱くなる
---
これらの事が挙げられています。
また
女性ホルモンであるエストロゲンは
カルシウムが骨から溶け出すのを抑制する働きがあります。
しかし、
閉経期を迎えて女性ホルモンが低下すると
急激に骨密度が減ることが挙げられています。
従って、
閉経を迎えた女性の方は
そういった骨のリスクがあることを
頭に入れておくことが大事です。
下述する骨粗しょう症の治療についても
薬剤に使用において、条件として
閉経後に定められているものもあります。
また、
他の疾患が骨粗しょう症を引き起こす原因となることも
あります。
・関節リウマチ
・副甲状腺機能亢進症
・糖尿病
・慢性腎臓病(CKD)
・動脈硬化
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
あるいは
・免疫を調整するステロイド薬の長期服用
も挙げられています。
従って、
生活習慣病などとも関連があります。
実際に喫煙、過度の飲酒、運動不足、極端なダイエットは
骨粗しょう症のリスクを高めます。
あるいは
ビタミンDの生成のためには
ある程度は太陽を浴びることは大事です。
長い時間ではなくてもいいので
軽い運動と日光浴を組み合わせることは
一つ賢明な予防策だと考えられます。
(以上、参考文献(1)参照)
日本において骨粗しょう症の予防医療、治療を
考えることの重要性は大きいと思っています。
一つは
これから高齢化社会を迎え
女性の寿命は男性に比べて長いですから
後期高齢の女性の人口は増えます。
上述したように70代後半では
半分の人が骨粗しょう症のリスクがありますから、
社会の中で多くの罹患される方が生まれます。
骨粗しょう症によって
骨密度が下がり、骨折をすると
一気に生活の質が低下してしまいます。
それによって認知症、生活習慣病など
他の深刻な病を併発してしまう可能性もあります。
例えば、脊椎を骨折したら普通に生活できなくなります。
そうではなくても生活の中で
誤って転倒した時に簡単に骨折してしまいます。
従って、
運動、栄養、太陽を浴びるなど
適切な予防策の情報共有、浸透を図るとともに
骨粗しょう症に罹患してしまった場合においても
良い治療が受けられるようにしておくことが
大事であると考えられます。
Eben G. Estell氏らが骨粗しょう症の新しい治療である
同化作用療法(anabolic therapies)の展望について
総括しているので
読者の方と情報共有したいと思います(2)。
骨粗しょう症は代謝的な疾患であると
位置づけられています。
骨の組織が古くなり、新しく入れ替わる循環の中で
その交換がうまくいかなくなり(5)
骨の微小構造や延性など機械的な特性が劣化する
ことが挙げられています。
その結果、骨折などのリスクが高まります(3,4)。
骨というのは硬いようで多少の柔軟性を持っています。
そのようなしなやかさが組織としての強さを生んでいます。
従って、骨の内部の組織がしっかりしていて
しなやかな機械的特性が良い骨が必要です。
今までの骨粗しょう症の薬は
古くなり分解された骨を再生するための
骨の形成を促進するような働きというよりも
破骨細胞という骨を分解する細胞の吸収を阻害して
骨ミネラル密度(カルシウム、リンなど)を
調整するような役割を果たすものです。
例えば
・ibandronate・risedronate・alendronate
・zoledronic acid
これらです。
これらの薬は骨折を防ぐ役割をしますが
一方で、一部に逆に骨折のリスクが高くなる
領域が存在しうる可能性が示唆されています(6)。
これらの破骨細胞の再吸収阻害薬による治療は
アメリカでは2004年の時点では15%でしたが
今は3%になっています(7)。
骨粗しょう症に対して高い治療効果を得るような
薬物療法を考えた時には、
上述したような
破骨細胞の再吸収を阻害するような薬だけではなく、
骨を形成するのを助ける働きをする薬を開発し、
投薬することが重要であると考えられます。
このような骨の形成に関わる
骨芽細胞を活性化する働きを持っていて
現在日本で認可されているのは
テリパラチドという薬です。
このテリパラチドは
副甲状腺ホルモンの類似物です。
このホルモンはカルシウムの量を
血中、骨、腎臓、腸管などの組織、臓器
かつビタミンDを調整することで
適正に保つ働きがあります。
このホルモンは骨芽細胞の膜貫通タンパク質である
PTH1受容体に結合することで骨の形成を促進します。
その時に一時的に
Gタンパク質、Adenylylcyclasecを介して
細胞内のcAMP信号が亢進されます(8)。
(参考文献(2) Fig 1より)
このシグナルは
「細胞のエネルギー通貨」と呼ばれる
エネルギーの交換、それによる代謝機能に関わる
Adenosine triphosphate(ATP)と関わりがあり、
骨芽細胞の代謝機能に作用します。
それによって骨の形成を促進すると考えられています(2)。
このテリパラチドよりも
さらにPTH1受容体に親和性が高く
多くの骨芽細胞に作用する可能性が考えられる
Abaloparatideという薬があります。
これはPTHrPの類似物で
PTH1受容体のRG配座面に対して
強い親和性と選択性を持つと考えられてます(9)。
すでに骨の同化作用が強いことが確かめられています(10)。
この薬は2017年にアメリカで
閉経後の骨粗しょう症の薬として認可されています。
日本認可薬であるテリパラチドと
Abaloparatideは
骨芽細胞の成長を促進する受容体に結合するだけではなく
WNT信号、sclerostin(WNT抑制受容体)の減少などによって
骨芽細胞の分化、増殖、生存に貢献します。
また循環している間葉細胞によっても
骨芽細胞のこれらの機能に貢献します。
(参考文献(2) Fig.2より)
WNT信号は細胞内の遺伝子の発現の調整をする機能があり
骨形成遺伝子の発現を亢進すると考えられています(12)。
これらのPTH受容体に作用させる場合には
間欠的に(投薬、中断を繰り返す)長期的に
治療することによって
骨を形成する種となる骨芽細胞が
骨表面に多く並び、骨の形成を促進するといわれています(11)。
また骨の形成には腸管からカルシウムが
吸収されることが重要です。
一方で腸管に棲む腸内細菌が生成する酪酸塩が
骨髄の中で骨形成に関わるWNT信号のプロセスに繋がる
PTHを通した同化活性のために必要であるといわれています。
従って、腸内細菌が生み出す栄養素も
骨形成の一つの材料として関わっている
可能性があります(13)。
/Abaloparatideに関して/
2017年にアメリカで承認された薬で
今後、日本で承認される可能性のある薬です。
フェーズ2の治験では
骨のミネラル密度に対しては従来薬のテリパラチドと
同程度の効果が得られました。
局部でみれば大腿部の骨ミネラル濃度が顕著に向上
しました。
また、テリパラチドに比べて
骨粗しょう症による骨折のケースが減り、
その他脊柱部分を含まない領域においても
テリパラチドの骨折抑制能と比べても
統計的な有意差はありませんでした(14)。
/併用に関して/
破骨細胞取り込み抑制剤(zoledronate)と
骨芽細胞活性剤(テリパラチド:teriparatide)の
併用では単一投薬に対して
付加的な骨格形成の利点はありませんでした。
しかし、
中程度の骨ミネラル密度の向上はみられました(15)。
骨を破壊する破骨細胞の取り込みを抑えながら
骨形成を促進する骨芽細胞活性剤の併用は
相乗効果がありそうですが、
少なくとも顕著な付加的は治療効果は得られていない
ということです。
/骨形成(同化)物質の処方について/
-------------
「閉経後」の女性
-
重度の骨粗しょう症
・Tスコアが-2.5以下
・2つ以上の脊椎骨折が所見
これらの条件がコホートスタディーの対象
-------------
処方のガイドラインとして
骨折リスク評価(FRAX)(GAVAN)があります。
-------------
参考文献(2)では、
狙った受容体に薬が到達しないオフターゲット効果に
対する副作用の可能性についても触れられていますが、
オンターゲット効率を上げるために
薬剤輸送系統が貢献できるか検討の余地があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
骨粗しょう症の原因 - いいほね
iihone.jp
(2)
Eben G. Estell & Clifford J. Rosen
Emerging insights into the comparative effectiveness of anabolic therapies for osteoporosis
Nature Reviews Endocrinology (2020)
(3)
Vestergaard, P., Rejnmark, L. & Mosekilde, L.
Increased mortality in patients with a hip fracture–effect of pre-morbid conditions and post- fracture complications.
Osteoporos. Int. 18, 1583–159 (2007).
(4)
Unnanuntana, A., Gladnick, B. P., Donnelly, E. & Lane, J. M.
The assessment of fracture risk.
J. Bone Jt. Surg. Am. 92, 743–753 (2010).
(5)
Boskey, A. L. & Coleman, R.
Aging and bone.
J. Dent. Res. 89, 1333–1348 (2010).
(6)
Filleul, O., Crompot, E. & Saussez, S.
Bisphosphonate-
induced osteonecrosis of the jaw: a review of 2,400 patient cases.
J. Cancer Res. Clin. Oncol. 136, 1117–1124 (2010).
(7)
Kim, S. C. et al.
Impact of the U.S. Food and Drug Administration’s Safety- Related Announcements on the Use of Bisphosphonates After Hip Fracture.
J. Bone Miner. Res. 31, 1536–1540 (2016).
(8)
Yang, D. et al.
Contributions of parathyroid hormone (PTH)/PTH- related peptide receptor signaling pathways to the anabolic effect of PTH on bone.
Bone 40, 1453–1461 (2007).
(9)
Dean, T., Vilardaga, J. P., Potts, J. T. Jr & Gardella, T. J.
Altered selectivity of parathyroid hormone (PTH) and PTH- related protein (PTHrP) for distinct conformations of the PTH/PTHrP receptor.
Mol. Endocrinol. 22, 156–166 (2008).
(10)
Tella, S. H., Kommalapati, A. & Correa, R.
Profile of abaloparatide and its potential in the treatment of postmenopausal osteoporosis.
Cureus 9, e1300 (2017).
(11)
Augustine, M. & Horwitz, M. J.
Parathyroid hormone and parathyroid hormone- related protein analogs as therapies for osteoporosis.
Curr. Osteoporos. Rep. 11, 400–406 (2013).
(12)
Tobimatsu, T. et al.
Parathyroid hormone increases β- catenin levels through Smad3 in mouse osteoblastic cells.
Endocrinology 147, 2583–2590 (2006).
(13)
Li, J.-Y. et al.
Microbiota dependent production of butyrate is required for the bone anabolic activity of PTH.
J. Clin. Invest. 130, 1767–1781 (2020).
(14)
Miller, P. D. et al.
Effect of abaloparatide vs placebo on new vertebral fractures in postmenopausal women with osteoporosis: a randomized clinical trial.
JAMA 316, 722–733 (2016).
(15)
Cosman, F. et al.
Effects of intravenous zoledronic acid plus subcutaneous teriparatide [rhPTH(1–34)] in postmenopausal osteoporosis.
J. Bone Miner. Res. 26, 503–511 (2011)
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