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組織が炎症、線維化、硬化、癌化した時に
その患部に対しては免疫機能が働きますが、
患部が治癒するようにバランスの取れた免疫機能が
強く、持続的に働く保証はなく、
時には患部の病状を悪化させてしまうような
副作用を示す免疫のバランスになることもあります。
そうしたこともあって
狙った細胞治癒能力のある免疫細胞を
患部に浸潤させて免疫が持続的に働くような
システムを意図的に構築したいという需要があります。
そのためには
例えば、細胞傷害性を示すT細胞やNK細胞を
患部に安定的に浸潤させるために
その患部が特異的に持っている受容体を検出して
その受容体に結合性を示すように
体外でT細胞やNK細胞をエンジニアリングします。
具体的にはレトロウィルスなどを細胞内に入れて
目的とする受容体を発現させます。
その時にB細胞のリンパ芽球性白血病であれば
CD19という比較的強い受容体があるため
このCD19に結合性を示す受容体を発現させます(1)。
その場合、いくつかの臨床実績もあります(2,3)。
このCAR免疫細胞技術は多能性幹細胞でも研究されています。
その多能性幹細胞の一つである
誘発性多能性幹細胞であるiPS細胞による
CAR-T細胞の臨床研究が
京都大学と武田薬品工業株式会社で
2021年から世界で初めて人での臨床試験を開始する
と発表されています(1,4)。
武田薬品工業株式会社(さん)は
現在、12のCAR-Tプログラムを開発中であるとされており
2021年の5件の臨床試験のうち1つであるとされています(4)。
Atsutaka Minagawa氏研究グループによれば
iPS細胞技術をCAR-T細胞に使う一つの利点としては、
余計な受容体の再構築をしないことが挙げられています(5)。
純度の高い受容体設計ができるということです。
従って、
制御性が高く、副作用の回避も期待できるとされています(5)。
iPS細胞を使ったCAR技術については
NK細胞(6)や単球(マクロファージ)(7)についても行われています。
しかしながら、
NK細胞に関しては卵巣がんが適用範囲となっていますが(6)、
上述したように基本的には白血病など
血液性の癌に対する適用が多くなっています。
その理由としては
CD19のように強い受容体がまだ未確認な事と
肺、肝臓、腎臓、腸、膵臓、皮膚などにできる固形癌に対しては
安定的なアクセスが難しいことが挙げられています。
従って、
現状では適用範囲が限られていると認識しています。
そういった固形癌に対してのアクセス性を高めるためには
固形癌が特異的に発現する受容体の認識だけではなく
それらの組織が特異的に発現する分泌物質を認識する
受容体を追加で作製することです。
Keishi Adachi氏ら研究グループは
IL-7、CCL19というインターロイキン、ケモカインを
CAR-T細胞の受容体として設計して
固形癌に対するアクセス性を高めています(8)。
また
Lynsey M. Whildingら研究グループによって
同様に固形癌に対するアプローチとして
癌組織が発現、分泌するするIL-8に結合性を示す受容体CXCR1と
癌組織が表面に発現しているインテグリンαvβ6を
CARとして装飾した設計が考えられています(9)。
このような癌組織が発現する「Chemoattractant」に対する
親和性を示す受容体を追加で装飾することで
癌組織へのCAR免疫細胞の向性、屈性を高め、
より効果的な免疫細胞の浸潤を促すことができる
と考えられます。
また細胞特異的輸送系統で
上述したインテグリンなどを標的として
狙った「Chemoattractant」を患部まで運ぶこともできます。
例えば、
Zongmin Zhao氏らの研究によれば
赤血球は肺の転移性癌組織に高い局在性を示すことが
わかっているので
その赤血球を輸送体として「Chemoattractant」である
ケモカインを腫瘍組織近くまで運ぶことを実現しています(10)。
そこでより
CAR-T細胞、NK細胞、マクロファージなどに対して
元々親和性の高い「Chemoattractant」を選択して
癌組織近くの分泌環境を改変することもできます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Erin A. Kimbrel & Robert Lanza
Next-generation stem cells — ushering in a new era of cell-based therapies
Nature Reviews Drug Discovery volume 19, pages463–479(2020)
(2)
Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Homer A. Macapinlac, M.D., Philip Thompson, M.B., B.S., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, B.S.N., Peter Thall, Ph.D., Mecit Kaplan, M.S., Vandana Nandivada, M.S., Indresh Kaur, Ph.D., et al.
Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors
The New England Journal of Medicine 2020; 382:545-553
(3)
Michael Wang, M.D., Javier Munoz, M.D., Andre Goy, M.D., Frederick L. Locke, M.D., Caron A. Jacobson, M.D., Brian T. Hill, M.D., Ph.D., John M. Timmerman, M.D., Houston Holmes, M.D., Samantha Jaglowski, M.D., Ian W. Flinn, M.D., Ph.D., Peter A. McSweeney, M.D., David B. Miklos, M.D., et al.
KTE-X19 CAR T-Cell Therapy in Relapsed or Refractory Mantle-Cell Lymphoma
The New England Journal of Medicine 2020; 382:1331-1342
(4)
Takeda/What we do/T-cira/ニュースルーム
京都大学iPS細胞研究所と武田薬品が創製した初のiPS細胞由来CAR-T細胞療法臨床試験に向けた新たなプログラムを開始
(5)
Atsutaka Minagawa, Toshiaki Yoshikawa, Masaki Yasukawa, Akitsu Hotta1, Mihoko Kunitomo, Shoichi Iriguchi, Maiko Takiguchi, Yoshiaki Kassai, Eri Imai, Yutaka Yasui, Yohei Kawai, Rong Zhang, Yasushi Uemura, Hiroyuki Miyoshi, Mahito Nakanishi, Akira Watanabe, Akira Hayashi, Kei Kawana, Tomoyuki Fujii, Tetsuya Nakatsura, and Shin Kaneko
Enhancing T cell Receptor Stability in Rejuvenated iPSC-derived T cells improves their use in cancer immunotherapy
Cell Stem Cell. 2018 Dec 6;23(6):850-858.e4.
(6)
Li, Y., Hermanson, D. L., Moriarity, B. S. & Kaufman, D. S.
Human iPSC-derived natural killer cells engineered with chimeric antigen receptors enhance anti-tumor activity.
Cell Stem Cell 23, 181–192.e5 (2018).
(7)
Senju, S. et al.
Generation of dendritic cells and macrophages from human induced pluripotent stem cells aiming at cell therapy.
Gene Ther. 18, 874–883 (2011).
(8)
Keishi Adachi, Yosuke Kano, Tomohiko Nagai, Namiko Okuyama, Yukimi Sakoda & Koji Tamada
IL-7 and CCL19 expression in CAR-T cells improves immune cell infiltration and CAR-T cell survival in the tumor
Nature Biotechnology volume 36, pages346–351(2018)
(9)
Lynsey M. Whilding et al.
CAR T-Cells Targeting the Integrin αvβ6 and Co-Expressing the Chemokine Receptor CXCR2 Demonstrate Enhanced Homing and Efficacy against Several Solid Malignancies
Cancers 2019, 11, 674;
(10)
Zongmin Zhao, Anvay Ukidve, Vinu Krishnan, Alexandra Fehnel, Daniel C. Pan, Yongsheng Gao, Jayoung Kim, Michael A. Evans, Abhirup Mandal, Junling Guo, Vladimir R. Muzykantov & Samir Mitragotri
Systemic tumour suppression via the preferential accumulation of erythrocyte-anchored chemokine-encapsulating nanoparticles in lung metastases
Nature Biomedical Engineering (2020)
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