2020年11月22日日曜日

罹患時に生じた質の良い抗体の評価

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスに罹患した際には、
ウィルス抗原をB細胞が認識して抗体が発現されますが、
その抗体は一種類ではありません。
質の良いものからそうでないものまで
多くの種類の抗体が放出されます。
その質を示す一つの指標は中和能と呼ばれる
新型コロナウィルスのSタンパク質が
細胞感染のための受容体と結合する面を
如何に効率よく蓋することができるか?
というものです。
その抗体は前述したようにB細胞から放出されますが、
そのB細胞は抗原認識によってメモリ化(記憶化)されます。
そこで
M. Alejandra Tortorici氏ら研究グループは
新型コロナウィルスに罹患した重症の患者さんが
回復した時にそのメモリB細胞を取り出し、
そこから特に質のよい抗体を選び出して、
その抗体の機能を詳しく調べました(1)。

抗体名:S2E12とS2M11

このうちS2M11はph5.4と酸性の状態で多く結合し
その酸性状態ではSタンパク質は結合活性が低い
「クローズな」配座(close conformation)であり(2)、
そのクローズは構造のまま結合して
構造を安定化させることがわかっています。
その時には抗体S2M11とSタンパク質の
エピトープ、結合部位が1か所ではなく
周りの部位とも静電引力で結合しているこおとがわかっています。
(参考文献(1) fig.3より)
一方、
S2E12は結合活性が高い
「オープンな」配座(open conformation)で
新型コロナウィルスのSタンパク質と結合することがわかっています。
その際、Sタンパク質が結合活性が高い状態で
構造変異があったと考えられます。
その時に生じたエピトープはよくわかっておらず
その部位に結合しているのではないか?
と考えられています(1)。

これらの質の良い抗体S2E12とS2M11は
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に特異性が高く
2003年に流行したSARS-CoVには
Sタンパク質に対して結合性を示さない
ことがわかっています。
(参考文献(1) Fig.1(c-f)より)

また、
抗体がNK細胞を通して細胞傷害性を示す
(Ab-dependent cell cytotoxicity ACDD)
ことと
マクロファージを通して細胞食作用を示す
(Ab-dependentcell phagocytosis (ADCP) 
ことが知られています。
この際、免疫細胞である
NK細胞、マクロファージの表面には
Fc受容体というのがあります。
この受容体に抗体が親和性を示して結合する
と考えられています(3)。
また、同様に
樹状細胞にも結合して、
その後、樹状細胞が細胞傷害性を示すCD8+T細胞を認識して
感染細胞に傷害性を示すことも考えられています。
この場合もFc受容体が関与します。
いずれの場合も
抗体のY字型の底面であるFc domainが結合に関与します。
(参考文献(4) Figure 1参照)
従って、
抗体は細胞性免疫の役目も誘発することが考えられ、
液性免疫と細胞性免疫の交差性があります。
ゆえに免疫機構は複雑です。

M. Alejandra Tortorici氏らは
NK細胞とマクロファージについて調べています。
NK細胞を介したACDDについては
既にワクチンとして治験が始められている
最適化された抗体S309と混合させたときに
強く出ることがわかっています。
この時に関わるFc受容体はFcγRⅢaと言われています。
(参考文献(1) Fig.4(H)より)
マクロファージを介したADCPに関しては
S2M11の抗体に対して用量依存的な効果が見らえています。
この時に関わるFc受容体はFcγRⅢaと言われています。
(参考文献(1) Fig.4(I)より)

また
新型コロナウィルスは広く伝搬しているので
Sタンパク質を含めて変異しますが、
その変異に対する適応性は
上述した抗体が混ざった時、
あるいはワクチンの抗体S309と混合させたときに
高くなることが考えられます(1)。
従って、
ワクチンを接種した時には狙いの抗体がありますが、
身体の反応として本当に一種類の抗体しか
メインに発現、分泌されないか?
という評価は変異に関する適応性を考慮すると大切になります。
また、
実際に罹患した人の血清を使う場合には
ワクチンとの違いはより多くの抗体を含んでいる事
というのがあるかもしれません。
例えば、
上の2種類の抗体だけでも
クローズとオープンの配座でそれぞれ結合し
どちらの構造においても適応できるようになっています。
こうした違いを認識することが
ワクチンの接種の効果を評価していくうえで
大切になると考えられます。

上述したのは生体外での実験ですが
生体内の効果を確かめるためにハムスターで確かめています。
その結果では
RNAの数の減少率に関しては
それぞれの抗体が単独で働いた場合と
ミックスした場合では大きな変化はなく、
どの状態においても大きな減少率(4ケタ減少)を実現しています。
(参考文献(1) Fig.5(A)より)

以上です。

(参考文献)
(1)
M. Alejandra Tortorici et al.
Ultrapotent human antibodies protect against SARS-CoV-2 challenge via multiple mechanisms
Science  20 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6519, pp. 950-957
(2)
T. Zhou et al., 
bioRxiv 2020.07.04.187989 (2020).
(3)
S. Bournazos, T. T. Wang, J. V. Ravetch, 
Microbiol. Spectr. 4,
10.1128/microbiolspec.MCHD-0045-2016 (2016).
(4)
Xiaojie Yu & Mark S. Cragg
Engineered antibodies to combat viral threats
Nature (2020)

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