2020年11月18日水曜日

メモリ免疫細胞、ワクチンによる重症化率低減

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本では11月17日時点で
第二波の時よりも重症の患者さんの数が増えています。
重症の方への治療は多くの医療スタッフの方を
必要とするので一人当たりの労働量が
顕著に多くなると理解しています。
医療スタッフの労働力にも限界がありますから
重症者が増えることは医療崩壊のリスクを
顕著に高めることになります。
もちろん、基本的に感染対策をして
感染リスクを社会的に下げるということは大切ですが、
生活をするうえでリスクをゼロにはできませんし
経済活動との両立もあります。
そうした中で、もし仮に感染してしまっても
普通の風邪のように重症化しないという状況に
早く持っていきたいというのがあります。

そうした場合、重症化した方が
どういった症状の特徴があったかという傾向を
分析する必要があります。
一つは
インターフェロンの数が
感染初期に少なかったというのがあります。
もう一つの特徴として
白血球の減少が見らえるということです(2)。
(参考文献(1) Fig.2(d))
白血球の中にはリンパ球がありますが
そのリンパ球の一種である
T細胞、B細胞の数が新型コロナウィルスの
重症の患者さんで減少している事が知られています(3)。

このT細胞、B細胞は
細胞性免疫、液性免疫などを担います。
つまり、
感染細胞を見分けて攻撃したり
ウィルスに合う抗体を作るための
機能をそれぞれ担います。
これらの数が感染初期に減少するということは
ウィルスが細胞への感染を通じて
数を大きく増やしてしまうリスクが大きいということです。
一旦、体内の数が増えると
そこから数を減らすのが難しくなります。
例えば、
再生産数が2だとします。
100から200に増える段階では
数は100しか変わりません。
しかし、
200,400,800,1600,3200,6400、、、、
と倍に段階的に増えていって
12800から25600になったときには
1回の増殖で12800を増やすことになります。
そうするとそこで初めて抗体を多く出して
あるいは細胞を攻撃したとしても
初期の段階で消火するよりも
はるかにウィルスの数を減らすのが難しくなります。
従って、
基本的にウィルスに対する脅威を減らすためには
「感染初期の体の免疫応答」が非常に大切になります。

今、アメリカのファイザー社(さん)
アメリカのモデルナ社(さん)から
第三相の治験結果の途中報告が出ていますが、
開発に成功した時には
そのワクチンの貢献は大きいと思っています。

基本的にウィルスやワクチンなどによって
「抗原」が体に入った時に
それに対する抗体をどう生み出すか?
そのプロセスは
初めにリンパ節や脾臓(4)にある胚中心の中の
FollicularヘルバーT細胞が
新型コロナウィルス
あるいはそれを模したワクチンの抗原を認識して
それをFollicular B細胞に信号伝達して
B細胞はそれを記憶し、
抗原に合った抗体を体内で放出します。
この時にこれらの胚中心にある
T細胞、B細胞は「メモリ(記憶化)」されて
その後、ウィルスが侵入した時には
その記憶を使って迅速に反応し、
早く、適切な抗体を放出できるようになります。
その細胞の記憶はT細胞の場合は11年続く
という報告もあります(5)。
もちろん検出されたということですから
「どれくらいの量」という問題はありますが、
少なくとも数か月しか続かないかもしれないと考えられている
抗体よりは長期間記憶が可能だと考えられます。
そうした時に
効果のあるワクチンをインフルエンザのように
毎年、定期的に接種することで
これら新型コロナウィルス特異的な
B細胞やT細胞の体内のある程度のレベルを維持できる
可能性があります。
そうすると常に体は新型コロナウィルスに対して
「迅速に」抗体生成できるようになりますから
上述したように感染初期でウィルス量を減らせる
可能性が高いために重症化のリスクを下げられる
ことが考えられます。

今、イギリスのアストラゼネカ社(さん)も含め
開発されたワクチンを
何億人という人に対して接種するときには
そこには膨大なデータがあります。
今後の事も考えると
その分析においては
感染者数の推移、重症化率、副作用、抗体の持続性
だけではなく、
白血球(単球、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球)
の時間変化の分析や
その中のリンパ球の中の免疫細胞、
T細胞やB細胞の下記に示すような
表面受容体などを含めた詳細な時系列分析が
大切になると思います。
その継続的調査は
新型コロナウィルスだけではなく
今後脅威になるかもしれないウィルスに対しても
社会的、科学的にも意味がある事だと思います。

Jian Zhang氏らは、
その新型コロナウィルスに対して特異的な可能性がある
FollicularヘルバーT細胞の表現型を調べています(1)。
そのなかで
・CD154+
・OX40+CD25+
・IL21
・IFNγ
これらを発現している
・CXCR3+ or CXCR3- FollicularヘルパーT細胞
これらのコントロール群に対する上昇が見られ
新型コロナウィルス特異性の可能性について示唆しています。・
(参考文献(1) Fig.3(i-l)より)

以上です。

(参考文献)
(1)
Jian Zhang, Qian Wu, Ziyan Liu, Qijie Wang, Jiajing Wu, Yabin Hu, Tingting Bai, Ting Xie, Mincheng Huang, Tiantian Wu, Danhong Peng, Weijin Huang, Kun Jin, Ling Niu, Wangyuan Guo, Dixian Luo, Dongzhu Lei, Zhijian Wu, Guicheng Li, Renbin Huang, Yingbiao Lin, Xiangping Xie, Shuangyan He, Yunfan Deng, Jianghua Liu, Weilang Li, Zhongyi Lu, Haifu Chen, Ting Zeng, Qingting Luo, Yi-Ping Li, Youchun Wang, Wenpei Liu & Xiaowang Qu 
Spike-specific circulating T follicular helper cell and cross-neutralizing antibody responses in COVID-19-convalescent individuals
Nature Microbiology (2020)
(2)
Chen, G. et al. 
Clinical and immunological features of severe and moderate coronavirus disease 2019. 
J. Clin. Invest. 130, 2620–2629 (2020).
(3)
Guan, W. J. et al. 
Clinical characteristics of coronavirus disease 2019 in China. 
N. Engl. J. Med. 382, 1708–1720 (2020).
(4)
Natkunam,Yasodha 
The Biology of the Germinal Center. 
Hematology. 2007: 210–215(1 January 2007). 
(5)
Ng, O.-W. et al. 
Memory T cell responses targeting the SARS coronavirus persist up to 11 years post-infection. 
Vaccine 34, 2008–2014 (2016).

0 コメント:

コメントを投稿

 
;