2020年11月16日月曜日

身体の恒常性のための調整役としてのFOXOタンパク質

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

人は生まれながらに運命は決まっているか?
というとおそらくその答えは「ノー」だと考えています。
その運命というと生物、生理学の分野では
一つは遺伝子だと思います。
「人の才能は遺伝によって決まるか?」
といったこともいわれますが、
そういった場合にも
「両親の染色体から引き継がれた遺伝子」
という意味合いで遺伝と使われると理解しています。
しかしながら、
決定的に強い遺伝子は恐らくあると思いますが、
そうであってもある種の不安定性があると考えられます。
環境によって変わる部分があると思っています。
遺伝子にはシーケンスがあって
アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の
4つの塩基配列がどう並んでいるか?
によって決定されますが、
その配列の特定の位置に遺伝子のスイッチとなるような
装飾因子が結合することがあります。
リン酸化(Phosphorylation) 
アセチル化(Acetylation)
ユビキチン化(Ubiquitylation)
メチル化(Methylation)
これらの頭文字をとってP、Ac、Ub、Me
とそれぞれ書かれることが一般的です。
これらは遺伝子に作用することがあります。
実際に遺伝子が転写、翻訳して
生み出したタンパク質などの物質があります。
その翻訳後のタンパク質に対しても
同じようにその機能を変えるような
上のような装飾因子があります。
その翻訳後の装飾因子による改変の制御を担っている
一つの物質が「FOXOタンパク質」です(1,2)。
身体を正常に保つような恒常性に関わっているので
通常は厳しく機能調整が行われています。
従って、この機能が乱れることで
心臓病、癌、糖尿病、神経症など
様々な疾患と関わりがあります(1)。

またFOXO1、FOXO3、FOXO4、FOXO6
これらの4種類が確認されています。
FOXO1:筋肉、肝臓、すい臓
FOXO3:細胞死、赤血球、寿命
FOXO4:身体中広く存在
FOXO6:肝臓、骨格筋、脳
といわれています。
筋肉、脳、肝臓など再生、可塑性が
盛んな臓器と関連がある事から
細胞、寿命などと関連がある事を考えると
組織の修復や再生になどにおいて
重要な役割を果たしていると推測できます。

例えば、FOXO3は寿命に関わるタンパク質であることから
老化に対する治療の標的として注目されています(3,4)。
細胞レベルで見た時の
老化(5)、オートファジー(6)、幹細胞維持(7)
にも関与しています。

FOXOタンパク質は癌の抑制因子としても知られています(8,9)。
またp53は変異が起きた時の癌の強いドライバー因子となりますが、
FOXO4とp53が相互作用することによって
老化細胞を選択的に薬剤によって排除できる
「Senolytics」の発展が期待されています(5)。 

このFOXOタンパク質は
「フォークの先のような構造(Forkhead domain)」
をしています。
従って、4つの先がありますから
DBD、NES、NLS、TADと呼ばれるドメインがあります。
そしてその形状は
3つのα螺旋、β螺旋
2つの翼のようなループ構造があります(10)。
このFOXOタンパク質は
DNAと結合する場合においては、
ファンデルワールス力によって静電引力で
水素結合を通してα螺旋構造の一つが
「DNAの溝にはまるように」
結合すると考えられています(11)。

上述したドメインのうちNES、NLSは「細胞内外の(?)」
特定の受容体のタンパク質に結合することによって
FOXOタンパク質の分布に影響を与えている
と考えられています(12)。
従って、上述したように
FOXOのタイプによって
体のどの臓器に主に存在しているかというのは
4つのドメインのうちNES、NLSが
主に関与していると推測しています。

4つのドメイン以外の
タンパク質体積のの75%は
秩序のない(不安定な?)構造を含んでいる
といわれています(1)。
この領域は、装飾因子を決める翻訳後の修正、
タンパク質とタンパク質の相互作用において
重要な役割を果たします(13)。
秩序がない(disorder)であることが
FOXOの広範で柔軟な(?)生理機序に貢献している
とも考えることができます。

FOXOは細胞の生理、機能の本質的な仲介役というよりも
何か外的要因によってストレスがかかった時の
検知する役目、修正する役目を担っています(1)。
従って、
・酸化還元バランスを保つ
・遺伝子の安定性をコントロール
・タンパク質の生成、消化の回転率を制御
これらを含めた調整を行うために
環境の変化によって異なる応答を示します(1)。
従って、
・糖や脂質の代謝
・アポトーシス(細胞のプログラム死)
・オートファジー(タンパク質の分解)
・細胞サイクルの抑止
・ストレス耐性を維持
・DNA修復
・血管生成
・炎症、免疫応答
・細胞の多能性、分化
といった様々な機能において
「その調整において(?)」重要な役割を果たしています(1)。

体はいろんな環境的な刺激を受けますが
そうであっても人が一定の機能を維持できるのは
FOXOのようなタンパク質が
「調整役」「司令塔」になって
細胞レベルで体の色んな機能のバランスを
調整してくれている事が貢献していると考えられます。

/考察/
FOXO3は老化に関わるタンパク質で
それによる疾患の治療を目指しても研究されていますが、
この調整役であるFOXOの量、バランスが
年齢に対してどのように変わっていくのか?
あるいは
「不安定性」という機能を決める
構造上の特徴があります。
例えば、
タンパク質の秩序を保つ鎖のような役割は
二硫化結合と言われます(14)。
FOXO3における酸化還元反応の調整と
二硫化結合の関連性について指摘されていますが(15)、
このようなたんぱく質の秩序を決めるかもしれない
キーとなる結合状態が年齢によって変わるのか?
あるいは疾患によってFOXOの機能不全が認められた時に
その分布、量、構造上の特徴はあるのか?
そういった点に着目しています。
二型糖尿病ではFOXOを抑制する(1)
ということもありますので
必ずしもこのたんぱく質が多ければいいのではない
ということは考えられます。
そういった過不足の評価も大切になると考えられます。
細胞特異的輸送系統としては
このFOXOたんぱく質の量を調整できるような遺伝子に
作用させ、場所特異的にその過不足を調整できれば
と考えています。

(参考文献)
(1)
Giampaolo Calissi, Eric W.-F. Lam & Wolfgang Link 
Therapeutic strategies targeting FOXO transcription factors
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
(2)
van der Horst, A. & Burgering, B. M. 
Stressing the role of FoxO proteins in lifespan and disease. 
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8, 440–450 (2007).
(3)
 Grossi, V. et al. 
The longevity SNP rs2802292 uncovered: HSF1 activates stress- dependent expression of FOXO3 through an intronic enhancer. 
Nucleic Acids Res. 46, 5587–5600 (2018).
(4)
Flachsbart, F. et al. 
Identification and characterization of two functional variants in the human longevity gene FOXO3. 
Nat. Commun. 8, 2063 (2017).
(5)
Baar, M. P. et al. 
Targeted apoptosis of senescent  cells restores tissue homeostasis in response to chemotoxicity and aging. 
Cell 169, 132–147.e16 (2017).  
(6)
Cheng, Z. 
The FoxO–autophagy axis in health and disease. 
Trends Endocrinol. Metab. 30, 658–671 (2019).
(7)
Liang, R. & Ghaffari, S. 
in Current Topics in Developmental Biology Vol. 127 23–47 (Academic Press Inc., 2018).
(8)
Dansen, T. B. & Burgering, B. M. 
Unravelling the tumor-suppressive functions of FOXO proteins. 
Trends Cell Biol. 18, 421–429 (2008).
(9)
Paik, J. H. et al. 
FoxOs are lineage-restricted redundant tumor suppressors and regulate endothelial cell homeostasis. 
Cell 128, 309–323 (2007). 
(10)
Clark, K. L., Halay, E. D., Lai, E. & Burley, S. K.  
Co-crystal structure of the HNF-3/fork head DNA-recognition motif resembles histone H5. 
Nature 364, 412–420 (1993).
(11)
Obsil, T. & Obsilova, V. 
Structural basis for DNA recognition by FOXO proteins. 
Biochim. Biophys. Acta Mol. Cell Res. 1813, 1946–1953 (2011).
(12)
Van Der Heide, L. P., Hoekman, M. F. & Smidt, M. P. 
The ins and outs of FoxO shuttling: mechanisms of FoxO translocation and transcriptional regulation. 
Biochem. J. 380, 297–309 (2004).
(13)
Wang, F., Marshall, C. B. & Ikura, M. 
Forkhead followed by disordered tail: the intrinsically disordered regions of FOXO3a. 
Intrinsically Disord. Proteins 3, e1056906 (2015).
(14)
Kim Baumann 
Extracellular bonds
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 14, page404(2013)
(15)
Marrit Putker
Evolutionary Acquisition of Cysteines Determines FOXO Paralog-Specific Redox Signaling
ANTIOXIDANTS & REDOX SIGNALING Volume 22, Number 1, 2015


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