2020年11月29日日曜日

コロナ系ウィルスの免疫交差性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

考えると少し気持ち悪さがある方もいるかもしれないですが、
人の細胞の中にはミトコンドリアという生物もいますし
腸内には多くの細菌、古細菌、真菌などがいます。
それらが人の体の恒常性に貢献していると考えられます。
一方、
生物とはいえないですがウィルスも
身体の中に多く生息していると推測されています。
すでに知られているものもありますが、
まだ見つかっていない、認知されていない
人の体の常在するウィルスもいるかもしれないと
考えられています。
また、
インフルエンザや風邪ウィルスのように
空気感染を経て、度々人の体に侵入してくるウィルスもいます。
ウィルスは潜伏性が強く比較的静かなものもいると思うので
一般化は難しいかもしれないですが、
細胞内に侵入することで
細胞の機能や、体中をめぐる免疫機能に影響を与える
と考えられています。
例えば、
サイトメガロウイルス(CMV)というウィルスは
慢性的なヘルペスウィルスの一種で
人体に終生寄生するといわれています(2)。
日本では成人期での抗体保有率は
60~90%と高いといわれています(3)。
健常人では脅威とはならないと考えられていますが、
一方で
ナイーブT細胞の種類が歪められたり(4)、
T細胞、B細胞の機能が落ちたり(5)、
炎症性の仲介物質が増えたり(6)、
高齢者における健康状態に影響を与えたり(7)
している可能性が示唆されています。
他にも
どこにでもいるウィルスとして
ライノウィルス、エンテロウィルス、インフルエンザ
などが挙げられています(1)。
これらに常時さらされることで
身体の免疫機能に一定の偏りが生じている
という事は考えられると思います。
それが上述したような悪い方向にいっているかどうかは
わからない部分があります。
例えば、
インフルエンザに今まで何度も罹患したことで
逆に免疫機能が刺激されて機能が高まる
ということも一方では考えられます。
こういったウィルスに対する既往歴は
今、問題になっている新型コロナウィルスに対して
罹患した時の症状の度合いに影響を与えると考えられます。
一般的に他のウィルスが
特定のウィルスに対して免疫に影響を与えることを
「交差性」と呼ぶと理解しています。

Ellen Shrock氏らは
190人の血液によるDNAによる抗体タンパク質の分析することで
以前から存在する他のコロナウィルスと
新型コロナウィルスの抗体における交差性を評価しています(1)。

/参考文献(1)内容、結果/
新型コロナウィルスに罹患する前から
ある程度、新型コロナウィルス特異的な免疫は存在していますが、
当然、罹患後は抗体の特異性のレベルは一気に上がります。
アメリカの調査では、
一般に風邪ウィルスと言われる
コモンコールドなウィルス
HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1に対する
抗体における免疫の程度は個人差がありますが、
その抗体保持が必ずしも新型コロナウィルスに対する
抗体における事前免疫とは連動していません。
一方、
新型コロナウィルスによる罹患で
コモンコールドなウィルスに特異的な抗体のレベルも
向上しており、一定の交差性が認められます。
(参考文献(1) Fig.1(D)より)
このことは、PCR検査で偽陽性が出る事と関係している
という指摘もあります(1)。
つまり、
新型コロナウィルスには罹患していないけど
類似する風邪ウィルスに罹ったためにできた抗体が
新型コロナウィルスのエピトープに反応し
それで陽性という診断になるということです。
コモンコールドなコロナウィルスはすでに
社会に存在していて、一定の類似性があるので
診断の中での難しさはあると考えます。
どこに閾値があるのか?ということです。

/考察/
実際には新型コロナウィルスに罹患した時の
他のコロナウィルスの交差性の評価では、
罹患して抗体が強く出ているときに評価しているので
構造に一定の類似性が見られる
他のコロナウィルスに対して交差性が認められる
という事だ考えます。
しかし、
新型コロナウィルスに罹患していない人が
事前免疫を持っているかどうか?を
「抗体に対して」評価するときには、
実際にコモンコールドの風邪ウィルスに罹患して
抗体がB細胞から強く放出されている段階で
新型コロナウィルスに対する交差性を評価しないと
---
新型コロナウィルス⇒コモンコールドコロナウィルス
コモンコールドコロナウィルス⇒新型コロナウィルス
---
という交差性の双方向性を平等には評価できない
と考えています。
その原因の一つとしては
抗体の放出は少なくとも3か月間くらいは保持される(7)
という評価もありますが、
その量の一定の低減がある程度短期間で認められます。
そうした場合に
より交差性の評価として重要になるのが
リンパ節の胚中心で主に形成される
コモンコールドな風邪ウィルスも含めた
コロナ系ウィルスに特異的なメモリT細胞とメモリB細胞、
あるいはNK細胞などリンパ球の機能において
類似性の高い新型コロナウィルスで交差性が認められるか
ということだと考えています。
「抗体の」交差性ではなく「免疫細胞の」交差性です。
これらの細胞の記憶は一般的に
抗体の体内の保持時間よりも長いと考えられるからです。
長く保持していると考えられる
新型コロナウィルス罹患前の免疫細胞の特徴と
新型コロナウィルス罹患後の免疫細胞の機動性と
症状の重さにおける関連性はどうか?
ということです。
つまり
以前にコモンコールドなコロナウィルスに
罹患したことがある人は
それに特異的な免疫細胞を保持していて
その細胞の記憶が新型コロナウィルスに罹患した時に
免疫機能の強化、迅速性に貢献するか?
ということです。

以上です。

(参考文献)
(1)
Ellen Shrock et al.
Viral epitope profiling of COVID-19 patients reveals cross-reactivity and correlates of severity
Science  27 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6520, eabd4250
(2)
小杉伊三夫 (2010).
「[特集 ヘルペスウイルス(HHV1-8)のウイルス学] 3. サイトメガロウイルス(CMV)」. 
ウイルス. 60 (2): 209-220., 
(3)
サイトメガロウイルス感染症 メルクマニュアル
(4)
P. Klenerman, P. R. Dunbar, 
CMV and the art of memory maintenance. 
Immunity 29, 520 – 522 (2008).
(5)
G. Pawelec et al., 
Immunosenescence, suppression and tumour progression. 
Cancer Immunol. Immunother. 55, 981 – 986 (2006).
(6)
J. L. Craigen et al., 
Human cytomegalovirus infection upregulates interleukin-8 gene expression and stimulates neutrophil transendothelial migration. 
Immunology 92,138 – 145 (1997). 
(7)
Kening Li, Bin Huang, Min Wu, Aifang Zhong, Lu Li, Yun Cai, Zhihua Wang, Lingxiang Wu, Mengyan Zhu, Jie Li, Ziyu Wang, Wei Wu, Wanlin Li, Bakwatanisa Bosco, Zhenhua Gan, Qinghua Qiao, Jian Wu, Qianghu Wang, Shukui Wang & Xinyi Xia 
Dynamic changes in anti-SARS-CoV-2 antibodies during SARS-CoV-2 infection and recovery from COVID-19
Nature Communications volume 11, Article number: 6044 (2020)


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