いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
テロメアの長さが5Kbpほどになると
細胞分裂できなくなるという
ヘイフリック限界という説があります。
それによると人の分裂限界は50で
最大の寿命は120年といわれます。
歴代の最高齢はフランスのジャンヌ・カルマンさんで
122歳164日といわれています。
おおよそこのヘイフック限界による
算出と一致する結果となっています。
しかし、
テロメアの長さが短くなることで
細胞分裂ができなくなるということは
ある程度証明されていると理解していますが、
細胞の老化に関しては、
テロメアの長さだけでは決まらない可能性がある
といわれています。
細胞の老化には、遺伝子の異常と転写の異常の両方が
ランダム性を持って関係しているという指摘もあります(1)。
従って、
部分的に組織を再生させていくという戦略「だけ」では
延命は難しいかもしれないと考えています。
一方、
早老症とテロメアの長さの関連も指摘されています。
その中で、
寿命⇔組織の老化⇔細胞の老化⇔テロメア長さ
これらの関係は議論が続いているものである
と考えています。
実はこのテロメアの長さを伸張させる酵素があります。
テロメラーゼと呼ばれます。
このテロメラーゼが働けば細胞の不死化は可能です。
しかし、
人の進化の中で私たちホモサピエンスは
このテロメラーゼを体細胞では少なくしてきた経緯がある
かもしれないと指摘されています。
それは、なぜか?
このテロメラーゼは癌化と強い関連があるからです。
従って、
テロメラーゼの発現は通常厳密に制御されている
とされています(2)。
例えば、肝臓のケースでは
健康な肝臓→慢性肝疾患→肝硬変→肝臓がん
このように病状が進行していく段階で
最初はテロメアの短縮化が起こりますが
肝硬変から肝臓癌に進行する段階で
またテロメアの伸張が起こります。
その時に
Telomerase reverse transcriptase(TERT)
テロメラーゼ逆転写酵素と呼ばれる
染色体の末端にあるテロメアのTTAGGG配列の
ヌクレオチドを追加させる触媒となる働きがある
酵素があります(4)が
それが肝硬変から肝臓がんに進行する段階で
亢進されるとされています。
(参考文献(3) Fig.1参照)
これは前述したテロメアの伸張に関わる
テロメラーゼという酵素が
人において癌化と強い相関がある事を示しています。
これから色々調査していく事になりますが、
現時点でいくつか考えていることがあります。
-----
①人のヘイフリック限界はどの細胞も同じか?
今、脳の神経細胞について調べると
神経細胞は細胞分裂能を失っているが
脳は神経疾患など特別な病気に罹らない限り
老化しないという説もあります。
またマウスの例では
神経細胞を元々のマウスよりも
寿命の長いマウスに移植した時に
元々のマウスの寿命よりも
移植した神経細胞は長く生き残った
という報告もあります(5)。
従って、
未来はどうなるかわかりませんが、
神経細胞からなる組織以外の細胞を
健全な形で寿命を延ばせたら
自己同一性など最も懸念される問題を
回避しながら延命できる可能性もゼロではありません。
また、幹細胞ではテロメラーゼが働くため
ヘイブリック限界は異なると言われています。
従って、再生医療の可能性もあります。
また、マウスの肝臓組織において
Tertというテロメラーゼのサブユニットを
コード化する遺伝子を働かせると
肝臓組織の再生が可能になったことから
元々再生機能がある肝臓組織においては
肝臓組織の中にある幹細胞が働いているのか
精査する必要がありますが
テロメラーゼが正常に働く可能性も示唆されています(6)。
-----
②テロメアの構造の違いについて
子供さんの細胞のテロメアは私よりは長いです。
子どもの肌の組織を見ると本当に綺麗だなと思います。
細胞が若いということかもしれません。
その子供の染色体の端のテロメアの構造と
癌化などを起こした時にテロメラーゼによって
伸張された時のテロメアの構造が同じか?
ということが気になります。
遺伝子配列もそうですが、
メチル化、アセチル化など装飾因子も気になります。
もし、仮に若い時のテロメアの構造が
ほぼ同じ形で再現できたときにも
やっぱり人の細胞は癌化するのか?
それは確かめたいと思っています。
------
③テロメアの長さと遺伝子変異、転写変異は関係するか?
参考文献(1)で示されたように
老化した時の組織の状態は
「平均的に老化している」と表現されています。
「確率的」「ランダム」ということです。
つまり、位置特異的に老化が顕在化するとは
少なくとも限らないということです。
それはiPS細胞などで部分的に
制御して再生できたとしても
・組織の中でランダムに老化
・細胞内遺伝子座においてランダムに変異
・ランダムに転写因子が変異している
ということであれば、
それを若返らせる、正常に近づけるのには
非常に難しさがあるということです。
遺伝子と転写は細胞内外の様々な機能に大きくかかわる
特定のタンパク質などを作る設計図ですから
それが異常を起こすと細胞内外に悪影響があります。
それによる雪崩的な老化も考えられますが、
もし、テロメアによって細胞分裂するときに
遺伝子、転写因子異常が起こりにくいような条件が
テロメアが長いときに確率的に多ければ、
それらは相関関係を持つということです。
そうすると
もしテロメアの長さを
「癌化しないような条件」で伸張することができたら、
他の老化の要因にも影響を与える可能性があります。
------
④心臓のような癌化しにくい組織の場合はどうか?
心臓は場所によりますが基本的に温度が高いために
癌化しにくいといわれています。
その点において他の組織と異なるので
テロメラーゼによる癌化のリスクはどうなるのか?
ということです。
以上です。
(参考文献)
(1)
Jan Vijg
Loss of gene coordination as a stochastic cause of ageing
Nature Metabolism (2020)
(2)
Caitlin M. Roake & Steven E. Artandi
Regulation of human telomerase in homeostasis and disease
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 21, pages384–397(2020)
(3)
Jean-Charles Nault, Massih Ningarhari, Sandra Rebouissou & Jessica Zucman-Rossi
The role of telomeres and telomerase in cirrhosis and liver cancer
Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology volume 16, pages544–558(2019)
(4)
Shampay J, Blackburn EH (January 1988).
Generation of telomere-length heterogeneity in Saccharomyces cerevisiae
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 85 (2): 534–8.
(5)
Lorenzo Magrassi, Ketty Leto, and Ferdinando Rossi
Lifespan of neurons is uncoupled from organismal lifespan
PNAS March 12, 2013 110 (11) 4374-4379
(6)
Shengda Lin, Elisabete M. Nascimento, Chandresh R. Gajera, Lu Chen, Patrick Neuhöfer, Alina Garbuzov, Sui Wang & Steven E. Artandi
Distributed hepatocytes expressing telomerase repopulate the liver in homeostasis and injury
Nature volume 556, pages244–248(2018)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿