2020年11月24日火曜日

肺の免疫機能について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスで問題となるのは
一つはウィルス感染による免疫機能の異常です。
重症の患者さんで最も頻繁に損傷として現れるのは
臓器の中では肺であると理解しています。
新型コロナウィルスは大気中から吸い込み
口腔、鼻腔、目、喉、気管、気管支、肺胞といった
呼吸器系気管の粘膜に接触して
最初に感染すると考えられます。
従って、
初期のウィルスの接触と関わる肺は
損傷を受けやすい臓器だと考えます。
ゆえに、
肺の免疫について基礎として詳しく知ることは重要になります。

Kyle J. Travaglini氏ら研究グループは
人において
解剖学的な観点も踏まえ、肺の各組織の細胞の種類
肺に働く、あるいは常在する免疫細胞の種類
免疫細胞を誘導するケモカインの種類について
詳しく調べています(1)。
その情報について整理して読者の方と共有したいと思います。

/リンパ球/
B細胞:血液90%/肺10% 
血管内(intravascular) 数854(任意単位)
-
血漿細胞:血液10%/肺90% 
リンパ節から分泌(Egress) 数189
-
CD8メモリ/エフェクタ細胞 血液80%/肺20%
リンパ節から分泌(Egress) 数1249
-
CD8ナイーブ細胞 血液80%/肺20%
リンパ節から分泌(Egress) 数2420
-
CD4メモリ/エフェクタ細胞 血液60%/肺40%
リンパ節から分泌(Egress) 数3139
-
CD4ナイーブ細胞 血液90%/肺10%
リンパ節から分泌(Egress) 数1063
-
NK-T細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数387
-
NK細胞 血液40%/肺60%
リンパ節から分泌(Egress) 数6001
-
増殖型NK-T細胞 血液10%/肺90%
リンパ節から分泌(Egress) 数122

/顆粒/
好中球 血液40%/肺60%
骨髄から分泌(Egress) 数113
-
肥満細胞-好塩基球1 肺100%
肺に誘引(Homing) 数1396
-
肥満細胞-好塩基球2 肺100%
肺に誘引(Homing) 数552

/血小板/
巨核球 血液10%/肺90%
血管内(intravascular)  数40

/骨髄性/
マクロファージ 肺100%
肺に常在(Resident) 数14766
-
増殖性マクロファージ 肺100%
肺に常在(Resident) 数226
-
形質細胞様樹状細胞 血液50%/肺50%
骨髄から分泌(Egress) 数150
-
骨髄性樹状細胞1 肺100%
肺に誘引(Homing) 数141
-
骨髄性樹状細胞2 血液50%/肺50%
骨髄から分泌(Egress) 数273
-
IGSF21活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数288
-
EREG活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数142
-
TREM活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数159
-
CL活性単球 血液90%/肺10%
骨髄から分泌(Egress) 数2183
-
OLR1活性単球 肺100%
肺に誘引(Homing) 数207
-
NC活性単球 血液70%/肺30%
骨髄から分泌(Egress) 数831
-
Int活性単球 肺100%
肺に誘引(Homing) 数194
----------
(参考文献(1) Fig.2(a)参照)

これらを総観すると
サブタイプによって異なるものの
ある程度、バランスよく肺に免疫細胞は存在しますが、
B細胞、CD8T細胞、CD4T細胞については
血液に比率としては多く存在するので、
ウィルス感染時には、
これらの免疫機能を引き付けることが重要になる
と考えられます。
自然にそのような応答になるかもしれません。
特に、新型コロナウィルスの重症の患者さんは
感染初期のリンパ球(T細胞、B細胞を含む)が
減少している傾向がみられる(2,3)という報告もあります。
従って、
これらの細胞を抗体によってメモリ化させること
あるいは後述するように親和性、感受性の高い
ケモカインによって誘導することが考えられます。

免疫細胞表面には「Chamoattractant」である
ケモカインに対する受容体が存在します。
そしてその受容体にケモカイン(リガント)が結合します。
従って、
このケモカインが肺の組織から放出されたときに
その濃度勾配によって
免疫細胞が静電引力や特異的結合などを通して
肺に対して同様に濃度勾配ができると考えられます。
つまり、
ケモカインの密度が高い肺近くの空間では
それに親和性を示す免疫細胞が多くなるという考え方です。
前述したように
例えば、リンパ球減少が
感染初期で見られる時には注意が必要である
ということであれば、
感染初期の段階でリンパ球減少を確認して、
そのうえで有効にリンパ球を誘導するケモカインを
薬剤によって分泌を促すことが考えられます。

参考文献(1) Fig.3では
上で示した人の肺における各免疫細胞に対する
ケモカイン受容体のタイプ、結合するケモカイン(リガンド)が
示されています。
それを見ると受容体の型はほぼCXCR4ですが、
結合するケモカインは異なり、
リンパ球に対しては「CCL5」が
他の骨髄性などの免疫細胞に対して
特異的に多くなっています。
従って、
肺にリンパ球を作用させる時には
CCL5が一つ鍵となるかもしれません。
ただ、参考文献(2)によれば、
重症化した後ではリンパ球の数が軽症の方より増えています。
従って、
免疫機能を誘導するタイミングが重要になると思います。
症状が出た後で、免疫機能を誘導すると
逆効果という事も考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Kyle J. Travaglini, Ahmad N. Nabhan, Lolita Penland, Rahul Sinha, Astrid Gillich, Rene V. Sit, Stephen Chang, Stephanie D. Conley, Yasuo Mori, Jun Seita, Gerald J. Berry, Joseph B. Shrager, Ross J. Metzger, Christin S. Kuo, Norma Neff, Irving L. Weissman, Stephen R. Quake & Mark A. Krasnow 
A molecular cell atlas of the human lung from single-cell RNA sequencing
Nature (2020)
(2)
Jian Zhang, Qian Wu, Ziyan Liu, Qijie Wang, Jiajing Wu, Yabin Hu, Tingting Bai, Ting Xie, Mincheng Huang, Tiantian Wu, Danhong Peng, Weijin Huang, Kun Jin, Ling Niu, Wangyuan Guo, Dixian Luo, Dongzhu Lei, Zhijian Wu, Guicheng Li, Renbin Huang, Yingbiao Lin, Xiangping Xie, Shuangyan He, Yunfan Deng, Jianghua Liu, Weilang Li, Zhongyi Lu, Haifu Chen, Ting Zeng, Qingting Luo, Yi-Ping Li, Youchun Wang, Wenpei Liu & Xiaowang Qu 
Spike-specific circulating T follicular helper cell and cross-neutralizing antibody responses in COVID-19-convalescent individuals
Nature Microbiology (2020)
(3)
Chen, G. et al. 
Clinical and immunological features of severe and moderate coronavirus disease 2019. 
J. Clin. Invest. 130, 2620–2629 (2020).



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