2020年11月15日日曜日

固形癌成長阻止のため細胞外マトリックスの質を守る

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

細胞と細胞の間には間質と呼ばれる組織があり
そこには蜘蛛の巣のように(?)
細胞外マトリックスが形成されています。
その細胞外マトリックスは
1000種類を超えるタンパク質があり(1)、
その大分類としては
コラーゲン、フェブロネクチン、エラスチン
などがあるとされています(2)。

血液などの液体などに遊離しているような
癌ではなく、上皮組織などの表面に
塊として形成している固形癌が
組織として成長するためには、
この組織の間質にある
細胞外マトリックスの形質を変える必要があります。
その時に、細胞外マトリックスを劣化させるような
機序が働くと言われています(3-7)。
そのような劣化因子は
「invadosome」と呼ばれます。
癌細胞が細胞内、膜表面に様々な生理物質を発現させて
膨らむように形を変えて(18)、
細胞外マトリックスに働きかけます。
これは
・マクロファージ(免疫細胞)
・破骨細胞(骨を分解する細胞)
・癌細胞
これらに見られており、上述した生理物質を通して
細胞外マトリックスを劣化させます(8,9)。

Manon Ros氏ら研究グループは
乳癌、肺癌、肝臓癌など固形癌に関連性の高い
細胞外マトリックスの劣化の機序について報告しています(1)。

通常細胞外マトリックスは
二硫化物という硫黄に関わる結合を多く持っていますが、
この結合を切ることが一つ
細胞外マトリックスを劣化させるということです(1)。
従って、
どのような癌組織の生理機序で細胞外マトリックスの
二硫化物の結合を切断するか?
を考えることが重要になります。
そのためには
CnxとERp57というcalnexin cycleと呼ばれる
二硫化物の形成のサイクルに関わる物質が
複合体として働くことで
細胞外マトリックスの二硫化物の結合を切る
とされています。
そして癌組織にはCnxとERp57の複合体が
細胞表面に多く発現されています(1)。

実際にコラーゲンタイプⅢ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ
フェブロネクチンにおいて
二硫化結合は確認されています(14-16)。

GALA経路と呼ばれる
GALNT(polypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase)
と呼ばれる物質をゴルジ体から小胞体に移動させ
そこでTnグリカンと呼ばれる炭水化物が作られます。
このようにGALNTの輸送を通じて
小胞体に働きかける経路ですが、
その生理によって
上述したCnx(ER-resident calnexin)と呼ばれる
プロテインを折りたたんだり、質をコントロールする
カルネキシンと呼ばれる小胞体由来の物質を
おそらく癌組織で見られる
過剰に発現されているTnグリカン(10-13)で
「糖化する」ことで
上述したERp57と複合体として
細胞外マトリックスの二硫化物の結合を切り、
質を劣化させて、組織としての成長を可能にしている
ということだと理解しています。
従って、Cnxの癌組織特有の「糖化」ということが
一つのキーとなる物理であると考えています。

ゆえに、固形癌の成長を食い止めるためには
細胞外マトリックスの劣化を防ぐことが
一つの治療手段として有効であると考えられます。
この二硫化結合は
細胞の小胞体の中でタンパク質を
正しく折りたたむための鎖のような役割をしている
と考えられえています(17)。
従って、同じタンパク質である
細胞外マトリックスにおいても
正しく、質の良いタンパク質を守るための
鎖となる結合であると考えられます。
従って、この結合を如何に守るか?
ということになります。
例えば
①癌細胞の小胞体に働きかける
②癌細胞の表面に働きかける
③細胞外マトリックスそのものに働きかける
これらの3つのアプローチが考えられます。
①では
二硫化結合の切断に関わるCnxの糖化が
小胞体で起こらないようにするためには
どうしたらいいか?
②では
癌細胞表面に出たCnx-ERp57の不活化する。
これに関しては
参考文献(1)で試みられています。
その結果として癌組織の成長の阻害が診られています。
(参考文献(1) Fig.6参照)
③では
二硫化結合の鎖としての機能を高める
あるいは守るような物質を負荷できないか?
ということになります。
またタンパク質の形状が守られる機序についても
調べる必要があります。
またどのような機序で
タンパク質が二硫化結合によって
秩序を持って(?)形成されるかといったモデルも
③のアプローチのヒントになると考えられます。

基本的に細胞特異的輸送系統を考えるときに
固形癌に対する安定的な近接、アプローチは
血液性など液性の癌に比べて難しいと考えています。
従って、標的部位の周辺も含めた
より多面的なアプローチの中で
治療していく事が大事だと考えられます。
従って、
細胞内、細胞表面、周辺組織、免疫機能、内分泌
温度管理、栄養状態など含めて
包括的な対策が必要だと思っています。
この記事に関しては
如何に包括的に細胞外マトリックスを守るか?
ということを論点としています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Manon Ros, Anh Tuan Nguyen, Joanne Chia, Son Le Tran, Xavier Le Guezennec, Ruth McDowall, Sergey Vakhrushev, Henrik Clausen, Martin James Humphries, Frederic Saltel & Frederic André Bard
ER-resident oxidoreductases are glycosylated and trafficked to the cell surface to promote matrix degradation by tumour cells
Nature Cell Biology volume 22, pages1371–1381(2020)
(2)
Naba, A. et al. 
The extracellular matrix: tools and insights for the ‘omics’ era. 
Matrix Biol. 49, 10–24 (2016).
(3)
Hotary, K., Allen, E., Punturieri, A., Yana, I. & Weiss, S. J. 
Regulation of cell invasion and morphogenesis in a three-dimensional type I collagen matrix by membrane-type matrix metalloproteinases 1, 2, and 3. 
J. Cell Biol. 149, 1309–1323 (2000).
(4)
Hotary, K. B. et al. 
Membrane type I matrix metalloproteinase usurps tumor growth control imposed by the three-dimensional extracellular matrix. 
Cell 114, 33–45 (2003).
(5)
Nguyen, A. T. et al. 
Organelle specific O-glycosylation drives MMP14 activation, tumor growth, and metastasis. 
Cancer Cell 32, 639–653.e6  (2017).
(6)
Lu, P., Takai, K., Weaver, V. M. & Werb, Z. 
Extracellular matrix degradation and remodeling in development and disease. 
Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 3, a005058 (2011).
(7)
Bonnans, C., Chou, J. & Werb, Z. 
Remodelling the extracellular matrix in development and disease. 
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 15, 786–801 (2014).
(8)
Linder, S., Wiesner, C. & Himmel, M. 
Degrading devices: invadosomes in proteolytic cell invasion. 
Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 27, 185–211 (2011).
(9)
Paterson, E. K. & Courtneidge, S. A. 
Invadosomes are coming: new insights into function and disease relevance. 
FEBS J. 285, 8–27 (2018).
(10)
Springer, G. F. 
T and Tn, general carcinoma autoantigens. 
Science 224, 1198–1206 (1984).
(11)
Ju, T., Otto, V. I. & Cummings, R. D. 
The Tn antigen-structural simplicity and biological complexity. 
Angew. Chem. Int. Ed. 50, 1770–1791 (2011).
(12)
Ju, T. et al. 
Tn and sialyl-Tn antigens, aberrant O-glycomics as human disease markers. 
Proteomics Clin. Appl. 7, 618–631 (2013).
(13)
Chia, J., Goh, G. & Bard, F. 
Short O-GalNAc glycans: regulation and role in tumor development and clinical perspectives. 
Biochim. Biophys. Acta 1860, 1623–1639 (2016).
(14)
Khoshnoodi, J., Pedchenko, V. & Hudson, B. G. 
Mammalian collagen IV. 
Microsc. Res. Tech. 71, 357–370 (2008).
(15)
Engel, J. et al. 
Structure and macromolecular organization of type VI collagen. 
Ann. NY Acad. Sci. 460, 25–37 (1985).
(16)
Birk, D. E. 
Type V collagen: heterotypic type I/V collagen interactions in the regulation of fibril assembly. 
Micron 32, 223–237 (2001).
(17)
Kim Baumann 
Extracellular bonds
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 14, page404(2013)
(18)
Sanelab Mrkonjic et al.
Mechanotransduction pulls the strings of matrix degradation at invadosome
Matrix Biology Volumes 57–58, January 2017, Pages 190-203


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