いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの侵入経路は
主に口、鼻
それ以外では目も考えられますが、
皮膚からの浸潤はないと考えられています。
口、喉、鼻腔、気管、気管支、肺(肺胞)などの
呼吸器系器官の表面積は大きく、
呼吸を通して、
外界の伝染性のウィルスと直接的に接触します(1)。
従って
感染経路の入り口、初期は
この口や鼻からウィルスを吸い込んで
これらの呼吸器系器官の表面で作用する事にあります。
新型コロナウィルスは
・急性成人呼吸促迫症候群(ARDS)(2)
・心臓の外傷(2)
・腎臓の外傷(2)
・血栓症(3)
・脳神経症(4)
など多岐に症状が及びます。
しかし、それを引き起こす初めのきっかけは
おそらく口や鼻、
そして上述した口、喉、鼻腔、気管、気管支、肺(肺胞)
などの呼吸器系器官の表層での接触に依ります。
そこにはACE2受容体などの細胞に感染するための
エントリー受容体があり、
細胞感染、あるいは組織の間質を通して
そこで免疫機能を誘発します。
あるいは組織内へ侵入して、
より多層に渡り感染が起こり免疫機能を誘発します。
そこでその免疫にかかわる白血球が
主に血管などから誘発され、組織に運ばれて
「トラフィッキング」されます(1)。
つまり
単球、リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球など
白血球がウィルスやウィルス感染細胞に対して
走化性、向性を示して誘導されて、機能を発揮しします。
しかし、
ウィルスの数が増えてくると
それら白血球の制御が難しくなり、
単球、好酸球、好中球などが異常分泌してしまいます。
それによって炎症が起こります。
おそらく、
身体の呼吸器系器官での感染に端を発して
そこで白血球などの免疫機能が制御不能になることで
感染組織で炎症が起こり、
その組織に隣接する血管から乱された白血球が
体中をめぐり、そこから雪崩のように
血液の成分、組織、臓器に不全を生じさせる
と考えています。
例えば、
肺には気管支を通じた肺胞が無数にありますが、
その肺胞の周りには毛細血管が張り巡らされています。
動脈に酸素を送り込み、静脈から二酸化炭素を取り込む
という呼吸のプロセスがあるので当然です。
大気から口、鼻を通じた空気が肺胞まで届きますから
大気中に存在している新型コロナウィルスの一部も
ここまで届きます。
そこには血管から上皮細胞までの組織があり
(血管、血管内皮、周皮、間質、上皮)
それらの層構造の中でウィルスによって感染があると
サイトカイン、ケモカインなどの信号によって
免疫機能が誘発され、すぐ近くの毛細血管内に
存在する白血球のバランスに影響を与えます。
そういったことが呼吸器器官の表面を通じて
色んな所で起きると
身体の様々な箇所に影響を与えるほどの
白血球のバランス不全につながると考えられます。
そのように考えると
呼吸器系器官で新型コロナウィルスの感染が起こった時に
どのような免疫機構が生じるか?
それを包括的に考えることが重要になってきます。
Ronen Alon氏らは、
感染が起こった時に白血球が肺でどのように働くか?
インフルエンザの例を踏まえながら総括しています(1)。
白血球が血管中の血液から感染した呼吸器系組織に
どのような経路で浸潤するか?
その出口となる血管には3種類あります(1)。
---
①小静脈(postcapillary venules)
気管、気管支の中に存在
動脈⇒小動脈⇒毛細血管⇒「小静脈」⇒静脈
---
②肺胞の毛細血管
肺の柔組織に存在
---
③小静脈(high endothelial venules(HEVs))
リンパ節内に存在
リンパ節内にある胚中心でT,B細胞(など)がメモリ化
するための未発達なT,B細胞の入り口にあたります。
----
これらの血管は内皮細胞に並行して形成されています。
これらにより免疫機能の恒常性、バランスが保たれている
と考えられています(13,14)。
これらの血管では内皮細胞から発現されている
ICAM1という受容体に白血球(の一部)が固定されているため
この受容体によっても組織への分泌量が制御されています。
しかし、
組織の感染によって
細胞内の信号に変化が表れ、ケモカインが放出されると
この受容体の結合は解かれ、
固定されていた白血球の一部が
組織内に浸潤することが考えられます(15)。
(参考文献(1) Fig.2より)
血管の内皮細胞の表面にはICAM1、
下述するPセクレチンという血栓の原因となる
血液凝固因子に関わる受容体だけではなく
様々な受容体があります。
(参考文献(1) Fig.3より)
これらの結合活性は免疫機能の恒常性維持のために
制御されていると考えられますが、
上述したように
その結合活性はケモカインの分泌によって
上流側で制御されていると考えられます。
おそらく特定のケモカインとその受容体の結合によって
細胞内で何らかの信号の変化があり、
それによって内皮細胞との結合状態が変わると推測しています。
新型コロナウィルスで血管、血液の事を
考える重要性は高いと思っています。
例えば、
後遺症とも関連があると考えられる脳への影響に関しては
血栓などとも関係がある脳の低酸素状態が考えられます。
その他の臓器、腎臓、心臓においても
直接的にも、間接的にも関わっていると考えられます。
上述した血栓症は
白血球の異常やサイトカインストームによって
起こっている可能性が示唆されています。
そのような想定される経路の中で
血栓に関わる因子として
バイベル・パラーデ小体(Weibel–Palade bodies)
があります。
血管、心臓を裏打ちする血管内皮細胞に存在する貯蔵顆粒です(6)。
また、
Pセクレチン(P-selectin)はもう一つの血液凝固因子で
炎症が起こっている組織まで血管外も含めて白血球の遊走を
支援する物質です(7,8)。
バイベル・パラーデ小体、Pセクレチンは
外傷の信号に反応するものです(9,10)。
細胞内にウィルスが感染した時に
おそらく起こるであろうことは
感染細胞内からサイトカインやケモカインが放出されることです。
ケモカインは免疫細胞に対して
「chemoattractant」として働き
数多くの免疫細胞を含む白血球の患部に対する
正の走化性、向性に影響を与えると考えられます。
平たく言えば、
ウィルス感染でダメージを受けた組織が
ケモカインを放出して、
そのケモカインの濃度分布を白血球(免疫細胞など)が認識して、
それに引き付けられるように
免疫細胞が患部に移動するということです。
実際には受容体の静電気的な引き付け、
親和性による結合頻度によって
細胞の数の分布の勾配が生じると考えています。
この考えに従うと
ウィルスが非常に多くなって
組織の炎症の度合いなどが大きくなり
ケモカインの放出量が多くなると
異常な量の白血球が引き付けられることによって
制御性を失い炎症を悪化させる
負の連鎖に陥ることが考えられます。
実際に各免疫細胞には
このケモカインを認識する受容体があります。
従って、放出されるケモカインの種類によって
正の走化性、向性を示す免疫細胞が異なるということです。
(参考文献(1) Table 2より)
これによれば、
白血球の各細胞がそれぞれ持つケモカイン受容体があり
毛細血管の場所や高内皮細静脈によって変わる
ということです(1)。
例えば、
新型コロナウィルスでは重症の患者さんで
好中球/リンパ球(B,T細胞など)の比率が高くなり
好中球が相対的に多くなると言われています(5)。
従って、
免疫のバランスを整えるために
好中球、リンパ球に関わるケモカインを分類して
その比率を調整するような薬の投与が有効になる可能性があります。
参考文献(1) Table 2をみれば
好中球:CXCR1, CXCR2, CXCR4, PAFR, BLT1
T、B細胞:CCR7
※場所は異なる、メモリ細胞の場合は異なるか?
メモリーCD8+T細胞はCCR5という報告もあります(23)。
とありますので、
好中球のケモカインの受容体を蓋するような
抗体を持つ薬剤を入れる事や
CCR7受容体を亢進させるアゴニスト性を持つ
薬剤を入れる事などが考えられます。
好中球、単球(マクロファージ)、NK細胞は
(少なくともNK細胞は抗原認識を行わないため)
免疫機能の「初動」を担うとされています(1)。
つまり、
新型コロナウィルスが侵入してきた時には
いくつかの段階を経ないといけない
B細胞やT細胞などよりも先に
好中球、単球(マクロファージ)、NK細胞が
走化性、向性を持って働くということです。
このうち
好中球に関してはウィルスの除去の働きもありますが
その量が多くなると炎症を導くとされています(16,17)。
この好中球は炎症が起こっている血管などの組織に
高い親和性を示し、テザリング、結合されます(18)。
この好中球は
「Matrix metallopeptidasesとelastase」を放出し
タイプ4のコラーゲンの結合を切るといわれています。
このコラーゲンは内皮の土台となる被膜の構成物質で
血管との結合部位に層として形成されている(19)ので
その結合を切ることは
内皮と血管の結合性を切ることなので
局所的な血管の剥がれなどが生じ(?)
組織として脆弱になることが考えられます。
このような好中球の異常活性は
インフルエンザや新型コロナウィルスで
急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群のリスクを上げる
ことが示唆されています(20,21)。
免疫細胞は元は骨髄内にある幹細胞であり、
B細胞腸関連リンパ組織(11)
T細胞は胸腺で成熟します。
その後、リンパ系器官である脾臓やリンパ節に入り、
リンパ節にある胚中心で
新型コロナウィルスや
それを模したワクチンなどの抗原を認識して
新型コロナウィルスに対して中和活性を持つ
抗体がメモリーB細胞から放出されます。
その時には前段階としてヘルパーT細胞が働くとされています。
また、
おそらく細胞傷害性を持つCD8+T細胞においても
新型コロナウィルスに対する特異性を
このリンパ節の胚中心で獲得すると理解しています(12)。
B細胞やT細胞の成熟、
新型コロナウィルス特異性を持つメモリ化の
生成及び作用過程においては
骨髄⇒血管系⇒リンパ系⇒血管系⇔組織
このような経路が想定されます。
そうした場合、それぞれが体のどの部位にあって
どのようにネットワークを築いているかが大事になります。
血管は毛細血管を含めると体全体にくまなく分布していますが、
リンパ系はその分布に偏りがあります。
「頭部中心、後頭部」「頸部(首)」「両脇、肩」
「胴体中心」「腸」「股関節」という風になります。
少なくとも腸付近には精緻、密な
リンパ系のネットワークがありますから
腸における獲得免疫の効果は大きいと推測されます。
例えば、
インフルエンザウィルスは肺⇒脾臓⇒骨髄など
リンパ節が存在する体の部位に侵入し
そのリンパ節の胚中心で
CD4+、CD8+のメモリーT細胞を始め
様々な抗原提示細胞が発現、分化されると言われています(22)。
新型コロナウィルスでも脾臓、骨髄中の抗原が
確認されていますが、
インフルエンザのケースと同じように
様々な抗原提示細胞が発現、分化されているか
というのはまだはっきりしたことはわかっていません(22)。
胚中心で抗原認識してメモリT細胞が発現、分化された時
少なくともその一部は感染組織近くでの滞在時間、
あるいは寿命が短いといわれていますが、
前駆細胞を介して滞在時間、寿命が長い
「CD8+ resident memory T細胞」
が生じると言われています(24)。
これらがインテグリンなど結合受容体を介して
獲得免疫の一部として存在すると言われています(1)。
従って、
メモリT細胞において
コロナ系ウィルスで交差性が認められる
という報告もあります(25-27)。
過去、東アジアで分布されている
コモンコールドなコロナウィルス(風邪ウィルスの一種)
に罹患している場合には、肺胞などの表面に
今述べたような段階を経たメモリ免疫細胞が
インテグリンなどの受容体との結合を介して
常在している可能性があります。
リンパ系である
リンパ節は豆のような形をしており
大きさは0.2-3cmで一つの場所に2~10数個集まっています。
全身で600個程度あるといわれています。
新型コロナウィルスを始め、
ウィルス感染、ワクチン接種において重要なのは
リンパ節の「draining」という概念です。
drainingとは獲得免疫反応が起きているということなので
その前提として隣接するリンパ管から
ウィルスやワクチン接種で生じた抗原が
リンパ節に入ることです。
そこにある胚中心の中の
follicularヘルパーT細胞、follicularB細胞が抗原認識しますが
身体に600個あるということなので
そのうち何%のリンパ節が
ウィルス抗原と接触があり、
免疫の獲得性を有する、メモリ化しているか?
ということが
免疫の応答性の高さ、速さに関係する可能性を考えました。
また炎症組織とリンパ節の距離の関係もありますから
どの場所のリンパ節がdrainingしているか?
というのも重要だと思います。
以上です。
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