いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
癌治療の痛みの緩和のためにモルヒネが
使われることが共通的な治療法です。
また、
緩和ケアのために使われる標準的な薬である
といわれています。
その臨床の中でモルヒネの安全性が確かめられ、
た中毒になる、感受性が低くなる(効きにくくなる)
ことはないと言われています(1)。
しかしながら、
もしモルヒネを処方して、
その後、減少したり、処方を止めたりする場合に
副作用が完全にないか?というと
そうではない可能性があります。
Opioid withdrawalというものが指摘されています。
中断した時に起こる副作用です。
しかし、
これが起こる条件は
用量が多い事と、長期間にわたった場合と言われています(2,3)。
従って
容量が少なく、短期間の場合には
このようなリスクは少ない可能性があります。
その時の副作用として挙げられているのは
薬物渇望、不安、吐き気、下痢、発汗、心拍数上昇です(4)。
このいくつかは他の薬物によって制御できる可能性はある
と思います。
いずれにしても強い吐き気、痛みなどは
癌だけではなく、様々な難治性の病において
患者さんの負担になるので
そういった痛みに対するケアの幅が広がれば
より患者さんにとってストレスのない治療につながり
そういった心理面から(免疫などに作用し(?))
治療効果が上がる可能性も考えられます。
Matthew Alsaloumらは
痛みの信号の経路である末梢神経系の
ナトリウムチャンネルをブロックすることで
中毒性のない痛みの治療につながる可能性を
示しています(5)。
このNaチャンネルは分類として9種類がありますが、
後根神経節(dorsal root ganglion)と呼ばれる
後角(dorsal horn)近くにある神経節は
痛みの信号を脊髄、髄質につなげるといわれています。
(参考文献(5) Fig.1より)
従って、
このチャンネルの働きを抑制してやれば
痛みの緩和につながるだろうということです。
この後根神経節を多く発現しているのは
Naチャンネルのうち
Na-v1.7, Na-v1.8,Na-v1.9と言われています(6)。
このうち
---
Na-v1.7:神経発火閾値に達するまでのチャンネル
Na-v1.8:電気信号の閾値を超えたピークの値に関わるチャンネル
(参考文献(5) Fig.2より)
---
と考えられています。
/Na-v1.7/
これは嗅覚に関わる神経の中で発現される
と言われています(7,8)。
Na-v1.7ブロッカーに関する知見の進捗
結果のサマリーに関しては
参考文献(5) Table 1にまとめられています。
まだ承認されている薬はないという理解です。
/Na-v1.8/
神経障害痛に関して主要な働きをします(9,10)。
突き刺すような痛みで脊髄損傷、多発性硬化症(11)、
また癌の治療における副作用で幅広く見られます(12,13)。
Na-v1.8ブロッカーに関する知見の進捗
結果のサマリーに関しては
参考文献(5) Table 3にまとめられています。
まだ承認されている薬はないという理解です。
/Na-v1.9/
神経発火の閾値に強く影響を与えるチャンネルです(14-16)。
しかしながら、今のところ
この神経チャンネル特異性を持つ薬剤の開発は発展途上です。
その理由として薬学的に機能、特徴捉えることが
難しいことが挙げられます。
それは異種性の高いチャンネルであるためであり(14)、
構造的かつ機能経路的な特定が難しいため
特異的に抑制するような化学物質を作ることが
できないことにあると考えています。
ただ、HEK-293細胞(腎臓の人胚細胞)に安定的に
発現されている事は確認されています(5)。
痛みの信号は
一つ、あるいは数個の神経節に束ねられているのか?
というのは、この神経節の働きをブロックすると
他の必要な痛みや感覚まで
完全にマヒするようなことにならないか?
という懸念があるからです。
一方で
「どれくらいブロックするか?」
という程度は考えられています。
例えば、50%のブロックで痛みが和らげられるか
そうでないか?ということが考えられてます(5)。
つまり
神経障害痛といった強い痛みに関して
痛みが緩和するようなブロックの匙加減を考える
ということです。
こういった痛みに対する治療が
効きにくくなるということに対する一つの要因としては
代償性変化(compensatory changes)ということが
上げられると思います。
つまり薬によって抑制させたときに
遺伝子変異などを通じて構造的に(?)神経節の
受容体などが変わることによって
効果が薄れるかもしれないということです。
従って、
効きにくくなり、
薬は増量すれば何らかの副作用が出る可能性は
高くなりますので、
薬を作用させたときの作用点周辺の構造的な
安定性を見ることは一つ大切になると思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
亀田メディカルセンター
医療法人鉄蕉会 医療ポータルサイト
モルヒネについての誤った意識(質問集)~痛みを我慢しないでください~
(2)
Diagnostic and statistical manual of mental disorders : DSM-5 (5th ed.).
American Psychiatric Association. 2013. pp. 547–549.
(3)
Volkow, Nora D.; Blanco, Carlos (2020-01-02).
Medications for opioid use disorders: clinical and pharmacological considerations.
The Journal of Clinical Investigation. 130 (1): 10–13.
(4)
Wikipedia: Opioid withdrawal
(5)
Matthew Alsaloum, Grant P. Higerd, Philip R. Effraim & Stephen G. Waxman
Status of peripheral sodium channel blockers for non-addictive pain treatment
Nature Reviews Neurology (2020)
(6)
Bennett, D. L., Clark, A. J., Huang, J., Waxman, S. G. & Dib- Hajj, S. D.
The role of voltage- gated sodium channels in pain signaling. Physiol. Rev. 99, 1079–1151 (2019).
(7)
Weiss, J. et al.
Loss-of-function mutations in sodium channel Nav1.7 cause anosmia.
Nature 472, 186–190 (2011).
(8)
Ahn, H.-S. et al.
Nav1.7 is the predominant sodium channel in rodent olfactory sensory neurons.
Mol. Pain 7, 32 (2011).
(9)
Faber, C. G. et al.
Gain-of-function Nav1.8 mutations in painful neuropathy.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 109, 19444–19449 (2012).
(10)
Han, C., Huang, J. & Waxman, S. G.
Sodium channel Nav1.8: emerging links to human disease.
Neurology 86, 473–483 (2016).
(11)
Foley P, Vesterinen H, Laird B, et al.
Prevalence and natural history of pain in adults with multiple sclerosis: Systematic review and meta-analysis.
Pain. 154 (5): 632–42. (2013).
(12)
Chemotherapy-induced Peripheral Neuropathy Fact Sheet,
Retrieved on 29 December 2008
(13)
Archived 2009-07-08 at the Wayback Machine Cancerbackup, Macmillan Cancer Support, Peripheral neuropathy,
Retrieved on 29 December 2008
(14)
Bennett, D. L., Clark, A. J., Huang, J., Waxman, S. G. & Dib- Hajj, S. D.
The role of voltage-gated sodium channels in pain signaling.
Physiol. Rev. 99, 1079–1151 (2019).
(15)
Baker, M. D., Chandra, S. Y., Ding, Y., Waxman, S. G. & Wood, J. N.
GTP-induced tetrodotoxin- resistant Na+ current regulates excitability in mouse and rat small diameter sensory neurones.
J. Physiol. 548, 373–382 (2003).
(16)
Dib- Hajj, S., Black, J. A., Cummins, T. R. & Waxman, S. G.
NaN/Nav1.9: a sodium channel with unique properties.
Trends Neurosci. 25, 253–259 (2002).
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