2020年11月29日日曜日

ES細胞のテロメア防御機構

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

細胞分裂、増殖に関わる細胞内の染色体を保護することは
生命活動における恒常性を得るために必要だ
と考えられています(1)。
染色体の端にはテロメアと呼ばれる繰り返し構造を持つ
部位が存在し、そのテロメアが細胞の分化回数の
制限に関わっているといわれますが、
この繰り返し構造に 
shelterinと呼ばれる
TRF1, TRF2, POT1, TPP1, TIN2, Rap1
の6つのサブユニットタンパク質混合物によって
上述した染色体の保護の少なくとも一部を実現している
と考えられています(2)。
その保護の具体的な機能としては
染色体の端の部分が融合することを防ぎます(1)。
これは細胞の生存能力を妨げたり
遺伝子の不安定性を誘発する事に繋がります(3)。

その中でTRF2という遺伝子でコード化されたタンパク質があります。
それが欠落すると
テロメアの保護の機能が著しく低下するという事は
以前から知られています(2)。
それは多能性幹細胞から分化した細胞では見られますが、
Marta Markiewicz-Potoczny氏らグループの調査では
TRF2タンパク質が欠損しても
すぐにテロメアの機能に関わる細胞の成長、分化能は
失われないことがわかっています(1)。
ただ、一定の低下はあります。
(参考文献(1) Fig.1(a)より)
それは多能性幹細胞であるES細胞には
TRF2が失われたときにはZscan4という遺伝子が働き
それによってコード化されたタンパク質が
冒頭で述べたテロメアの保護機能に貢献するからである
とされています(1)。
しかしながら、
この機能は少なくとも内的には
分化した後の多能性を失った細胞では確認されていません(1)。

基本的には
テロメアの伸張に関わるテロメラーゼ活性は
生殖細胞、幹細胞、癌細胞などでは保持されている
とされています。
通常の細胞ではテロメラーゼ活性が抑えられていますが、
このように正常性を保ちながらも
テロメラーゼ活性を幹細胞が維持するために
通常の細胞よりも
染色体やその一部であるテロメアを守る機序が
多層にわたり備えられているということかもしれない
と考えました。

以上です。

(参考文献)
(1)
Marta Markiewicz-Potoczny, Anastasia Lobanova, Anisha M. Loeb, Oktay Kirak, Teresa Olbrich, Sergio Ruiz & Eros Lazzerini Denchi 
TRF2-mediated telomere protection is dispensable in pluripotent stem cells
Nature (2020)
(2)
de Lange, T. 
Shelterin: the protein complex that shapes and safeguards human telomeres. 
Genes Dev. 19, 2100–2110 (2005).
(3)
Artandi, S. E. et al. 
Telomere dysfunction promotes non-reciprocal translocations and epithelial cancers in mice. 
Nature 406, 641–645 (2000).


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