2020年11月11日水曜日

グルタミンによる筋組織の代謝、回復について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスで外出の機会が減り
身体の筋組織の減少が懸念されています。
外出の機会が減り、簡単な食事で済ませることで
タンパク質が不足して、
それによって筋力の低下が認められるという
ことをメディアを通じて知りました。
特に高齢の方は注意が必要です。
筋肉は体を温める効果もあり、
免疫力を保つ上で大切であると考えられます。
また、
マイヨカインという筋組織から
分泌される物質が様々な臓器に働きかけます。
その中で、
筋組織は「内分泌の臓器」とも呼ばれます(1)。
さらに
ふくらはぎの筋肉は
「第二の心臓」と呼ばれることもあり
血液を全身にいきわたらせるうえで重要な
働きをしているといわれています。
従って、筋肉を維持するということは重要です。

その筋肉はグルタミンが多く含まれており
血中に含まれるグルタミンも含めて
筋組織の恒常性に寄与しています(2-4)。
しかし、
グルタミンが不足すると
代謝にそれらの一部が使われるため
筋組織の回復などで必要とされる
グルタミン量が不足するために、
筋組織が回復できず縮小することが懸念されています。
従って、グルタミンの生成活性を上げる事は
一つの基礎として重要になります。

この代謝バランスにおいて
グルタミン量が不足したり、
あるいは筋組織が破壊されて
回復のためにグルタミンが必要になった時には
免疫細胞であるマクロファージが修復に関与します(5,6)。
その時に
・Glutamate dehydrogenase 1(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)
この酵素がグルタミン生成の制御に関わっています。
これは細胞のエネルギー代謝に関わるミトコンドリア
に存在すると言われていますが、
マクロファージの細胞内に存在する
Glutamate dehydrogenase 1を阻害することで
マクロファージから生成されるグルタミン生成効率を
上げる事がMin Shang氏らによって確認されました(7)。
このマクロファージ由来のグルタミンが
筋組織の幹細胞であるSatellite cellによって取得されます。
この時にグルタミン輸送媒体のSLC1A5が
この筋組織の幹細胞に働きかけ
グルタミンを栄養分として分化と増殖を促進します。
それによって筋組織が回復します(7)。
このようなマクロファージと
筋組織の幹細胞であるSatellite cellとの
グルタミンを通して代謝における
クロストーク(相互作用、相互調整、会話)が
恒常性のために成立していることが初めて確かめられました(7)。
※但し、人ではなくマウスによる確認です。
また、Glutamate dehydrogenase 1を欠乏させた
マウスでは筋線維組織の回復が早いことが確かめられています。
さらに、筋組織を意図的に破壊した後
この酵素を欠乏させたマウスでは
そうではないコントロール条件のマウスに対して
運動機能が高いことが示されています(7)。
また筋組織の観察でも
筋線維がその線維に囲まれる組織の領域の
均等性が高いように均一に形成されています。
またコラーゲンの蓄積も少なくなっています(7)。

従って、マクロファージに特異的な受容体を使って
この遺伝子の働きを弱めるベクターを胞子の中に導入して、
回復を促したい筋組織の近くから投与した時に
回復を促せるか?
その点において細胞特異的輸送系統のコンセプトが
利用できる可能性があります。
また
ALS(筋萎縮性側索硬化症)(10)や筋ジストロフィー(11)
と筋組織の代謝に関わる
グルタミンの関連性も指摘されています。
これらの治療の観点として
筋組織の代謝を健全に保つにはどうしたらいいか?
参考文献(7)で示された
免疫細胞であるマクロファージと筋組織の幹細胞の
免疫信号の相互制御も踏まえて
考えていく事が重要になると思われます。

(補足)
マクロファージは筋組織だけではなく
一般的な組織の成長、創傷治癒、血管生成に
関わっているとされています(8)。
また、急性あるいは慢性の炎症からの
回復に関わっているとされています(8)。
例えば、新型コロナウィルスでは
ブレインフォグと呼ばれる
脳のCT画像で脳幹(?)(脳の中央)の部分に
組織として硬くなっている事を示す
白い部分が観測されています。
組織として硬くなっている事は
一般的には炎症が起こっていると考えられます。
従って、
そこから回復させる場合においても
免疫機能の中でマクロファージの働きは
一つ重要になると考えられます。
しかしながら、
新型コロナウィルスで度々概念として引用される
サイトカインストームの中には
このマクロファージの異常活性ということも
含まれています(9)。
おそらく炎症から回復させるためには
適正な量のマクロファージが一つの要因として
必要だと考えられますが、
その分泌量が感染直後から後遺症が確認される
長い時間にかけて炎症が起こっている部位の近くでの
作用量がどのように変わっているか?
という観点は一つとしてあると思います。

以上です。

(参考文献)
(1)
Mark A. Febbraio & Bente K. Pedersen 
Who would have thought — myokines two decades on
Nature Reviews Endocrinology volume 16, pages619–620(2020)
(2)
Rennie, M. J. et al. 
Skeletal muscle glutamine transport, intramuscular glutamine concentration, and muscle–protein turnover. 
Metabolism 38 (Suppl 1), 47–51 (1989).
(3)
Biolo, G., Fleming, R. Y., Maggi, S. P. & Wolfe, R. R. 
Transmembrane transport and intracellular kinetics of amino acids in human skeletal muscle. 
Am. J. Physiol. 268,  E75–E84 (1995).
(4)
Nurjhan, N. et al. 
Glutamine: a major gluconeogenic precursor and vehicle for interorgan carbon transport in man. 
J. Clin. Invest. 95, 272–277 (1995).
(5)
Saclier, M., Cuvellier, S., Magnan, M., Mounier, R. & Chazaud, B. 
Monocyte/macrophage interactions with myogenic precursor cells during skeletal muscle regeneration. 
FEBS J. 280, 4118–4130 (2013).
(6)
Tidball, J. G. 
Regulation of muscle growth and regeneration by the immune system.  
Nat. Rev. Immunol. 17, 165–178 (2017).
(7)
Min Shang, Federica Cappellesso, Ricardo Amorim, Jens Serneels, Federico Virga, Guy Eelen, Stefania Carobbio, Melvin Y. Rincon, Pierre Maechler, Katrien De Bock, Ping-Chih Ho, Marco Sandri, Bart Ghesquière, Peter Carmeliet, Mario Di Matteo, Emanuele Berardi & Massimiliano Mazzone 
Macrophage-derived glutamine boosts satellite cells and muscle regeneration
Nature (2020)
(8)
Kajal Hamidzadeh, Stephen M. Christensen, Elizabeth Dalby, Prabha Chandrasekaran, and David M. Mosser
Macrophages and the Recovery from Acute and Chronic Inflammation
Annu Rev Physiol. 2017 Feb 10; 79: 567–592.
(9)
Ryo Otsuka and Ken-ichiro Seino
Macrophage activation syndrome and COVID-19
Inflamm Regen. 2020; 40: 19.
(10)
David S. Howland, Jian Liu, Yijin She, Beth Goad, Nicholas J. Maragakis, Benjamin Kim, Jamie Erickson, John Kulik, Lisa DeVito, George Psaltis, Louis J. DeGennaro, Don W. Cleveland, and Jeffrey D. Rothstein
Focal loss of the glutamate transporter EAAT2 in a transgenic rat model of SOD1 mutant-mediated amyotrophic lateral sclerosis (ALS)
PNAS February 5, 2002 99 (3) 1604-1609
(11)
Régis G Hankard, David Hammond, Morey W Haymond & Dominique Darmaun 
Oral Glutamine Slows Down Whole Body Protein Breakdown in Duchenne Muscular Dystrophy
Pediatric Research volume 43, pages222–226(1998)


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