2020年12月1日火曜日

鼻、口、目からの感染と脳への影響

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの一つの脅威は
症状が多様である、広範であるということです。
リスクが高いと言われる
既往歴がある方、高齢の方だけではなく
若い人でも症状が続くことがあります。
肺炎など明らかな症状を示す場合もありますが、
原因がはっきりしないような
曖昧な症状もあると思っています。
例えば、
頭痛、倦怠感、関節痛、吐き気などです。
その他に嗅覚、味覚障害、嘔吐などを合わせると
海外の調査では約3人に1人が
このような脳神経的な症状があると言われています(1-3)。
もっと深刻なものでは
意識障害、急性脳血管疾患も報告されています(4)。
実際に新型コロナウィルスでは
脳や脳の間質に流れる脳脊髄液の中に
ウィルスのRNAが存在しているという証拠も示されています(5,6)。
また、
過去から存在するコロナ系ウィルスに関しても
調査したケースの48%の方の脳、せき髄の中枢神経系において
ウィルスRNAの検出が認められています(7)。
ウィルス系統の中で
比較的類似性が高いSARS-CoV、MAR-CoVにおいても
神経系へのウィルスの侵入が確認されています(8-10)。
このように
コロナ系ウィルスの脳に対する影響は
ある程度の普遍性を持つことから、
新型コロナウィルスで現れる
頭痛、倦怠感、関節痛などの神経症状において
ウィルスの脳への侵入による神経系の影響が
関係してる可能性が考えられます。
今のところ原因がはっきりしないので
医療機関に受診しても適切な治療が受けられない
状況だと認識しています。
その中で
「いつまで続くのか?」という不安が生まれ
さらに症状が続くことから生活の質を落とすことになります。
従って、
そういった後遺症を緩和するために
あるいは現れても適切な治療を見つけるためには
ウィルスがどういうルートで入って、
どのように神経系に影響を与えて、
その量がどのように変わっているのか
感染はいつまで続くのか
そういったことを考える必要があります。
新型コロナウィルスの後遺症の情報からして
脳やせき髄などの中枢神経系、
あるいは末梢神経などに対するウィルスの影響を考える
重要性は非常に高いと思っています。

Jenny Meinhardt氏ら研究グループは、
今述べた「ウィルス浸入ルート、経路」について
解剖学的な見地も踏まえ、詳しく調査しています。
新型コロナウィルスで亡くなられた33人の方の
鼻、口、目、神経系を調べて、
新型コロナウィルスの神経向性と
浸入する機序について見識を与えています(1)。
神経向性とは、つまり
新型コロナウィルスがどのような信号で
神経系に引き付けられているか?ということです。

/調査した条件/
---
22人男性、11人女性
2020年3月~4月
年齢の中央値71.6歳(30歳~98歳)
発症から亡くなられるまで4日~79日
神経症状の有無で選び出してはいない
---

R1~R7の解剖図(参考文献(1) Fig.1(a)より)
/鼻/
-
R1:鼻粘膜(olfactory mucosa)
20人ウィルスRNAを検出
-
R2:嗅球(olfactory bulb)
3人ウィルスRNAを検出
-
R3:嗅結節(olfactory tubercle)
1人ウィルスRNAを検出
-------
/口/
-
R4:口腔粘膜(oral mucosa)
6人ウィルスRNAを検出
-------
/目/
-
・結膜(conjunctiva)
2人ウィルスRNAを検出
-
・角膜(cornea)
3人ウィルスRNAを検出
-------
/神経系/
-
R5:三叉神経節(trigeminal ganglion)
3人ウィルスRNAを検出
-
R6:延髄(medulla  oblongata)
6人ウィルスRNAを検出
-
R7:小脳(cerebellum)
3人ウィルスRNAを検出
-
神経系のRNA検出の時期は40日以内(一例を除く)
20日以内では検出確率があがる。
検出レベルも指数関数的に時間の経過とともに下がる。
(参考文献(1) Fig.1(e)より)

上述した嗅覚障害や味覚障害は
粘膜と神経系の界面、連結を神経系の侵入に使っている
事で現れる症状を示していると指摘されています(1)。
従って、これらの症状が出ている場合には
鼻や口からの神経系への侵入が疑われるので
他の倦怠感、頭痛、吐き気などの症状と
連動性がないかどうかの調査は必要です。
そのデータは、
これらの後遺症がどういったルートで起こっているか
という事を分析することに役立つと考えます。

/嗅上皮の構造/(11)
層状の構造に準じた上皮構造となっている
・olfactory sensory neurons (OSNs),
・apical sustentacular cells
・Bowman’s gland (BG)
・microvillous cells 
・neural stem cells
上に固有層(粘膜)があり、嗅上皮があって
そこに神経系が貫通するような構造になっています。
嗅覚信号を受信する受容体細胞は嗅上皮内に
埋め込まれています。
Bowman’s gland (BG)も嗅上皮組織に貫通する
ように位置し、粘性のタンパク質や
匂いに結合するタンパク質を出すために
組織としての恒常性や機能性を保つための
部位であると考えられます。

/神経炎症の機序/
myeloid-related protein 14 (MRP14)を発現する
単球(マクロファージ)活性が感染初期に嗅上皮で
見られました。
この単球は雪崩的な免疫機能を誘発して
TLR4–MyD88信号を通して
組織のダメージ、炎症に関わるということが
インフルエンザのケースで確認されています(12)。
これが神経系に直接作用しているという
証拠はありませんが、
小(神経)膠細胞(マイクログリア)で
白血球の型HLA-DR陽性になり
それがIL-6、IL-18、CCL2など炎症性サイトカインを誘発して
組織の炎症にに関わっていとされています(1,13)。
このHLA-DR陽性はマイクログリアと関係がありますが、
DRのセロタイプは16種類ありますので
マイクログリア特異的な
あるいは特異性が強いセロタイプが見つかれば
脳の炎症が現在進行形で起こっているのかどうかの
診断に役立つ可能性があると考えました。

実際にはこのような鼻、口、目などの組織を通して
神経系に感染するルートであるか
あるいは全身をめぐる血液を通してウィルス感染するか
もしくは異常な免疫細胞の伝搬によるか
(サイトカインストームを含む)
その類別は難しいですが、
急性の脳梗塞が部分的に所見されます(1)。
しかし、
R5:三叉神経節(trigeminal ganglion)
R6:延髄(medulla  oblongata)
の比較的鼻に近い組織の感染においては
感染初期にウィルスRNA量が大きくなっているので
神経経路を考えると
鼻、目、口からのウィルス感染の影響が出る可能性が
考えられます。
確率的には鼻である可能性が高いです。
三叉神経節は
運動神経と知覚性に関わる最大の神経だと言われています。
運動神経は身体や内臓の筋肉の動きに関わるため
筋肉が動きにくいとか、身体が重いといったことに
関わってる可能性はあります。
知覚性は身体や内臓の感覚を送信するための信号に関わる
とされているので、身体の感覚が鈍ってくるような
事がある可能性もあります。
延髄は
嘔吐、嚥下、唾液、呼吸および循環、消化の中枢
といわれています。
食べ物が飲み込みにくい、
あるいは吐き気、嘔吐などの症状との関りが気になります。

実際に新型コロナウィルス感染による
呼吸器系疾患や心疾患において
肺や心臓の少なくとも一部の制御には
脳やせき髄の中枢神経系が関わっているので(14)、
脳への感染を考えることは
これらの付随する疾患に対しての
治療にもつながると考えられます。

/考察/
神経系のウィルスRNA量の変化をみると
症状が現れてから短期間の間に神経への
高いレベルの感染が見られ、
その後(免疫機能が働き?)
ウィルスの量は指数関数的に下がっていく
傾向にあると分析できます。
おそらく個人差はあると思いますが、
重要なのは感染初期に
鼻、口、目から侵入したウィルスを
如何に神経系に伝染させないかが重要だと考えます。
鼻粘膜からの感染のケースが多く
以前の報告でも鼻の細胞のACE2受容体が多い
というものがあることから
まず第一に鼻からの感染を如何に防ぐか?
ということが求められます。
そのためには
個人として出来ることはマスク鼻を覆う事ですが、
感染してしまったときには
感染初期に点鼻薬などによってウィルスを
局所的、特異的に除去できないか?
検討の余地があると考えられます。
あるいはワクチン接種によって
鼻、口、目などウィルスの入り口となるところで
抗体の分布がどうなっているか
という分析も重要だと考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Jenny Meinhardt, Josefine Radke, Carsten Dittmayer, Jonas Franz, Carolina Thomas, Ronja Mothes, Michael Laue, Julia Schneider, Sebastian Brünink, Selina Greuel, Malte Lehmann, Olga Hassan, Tom Aschman, Elisa Schumann, Robert Lorenz Chua, Christian Conrad, Roland Eils, Werner Stenzel, Marc Windgassen, Larissa Rößler, Hans-Hilmar Goebel, Hans R. Gelderblom, Hubert Martin, Andreas Nitsche, Walter J. Schulz-Schaeffer, Samy Hakroush, Martin S. Winkler, Björn Tampe, Franziska Scheibe, Péter Körtvélyessy, Dirk Reinhold, Britta Siegmund, Anja A. Kühl, Sefer Elezkurtaj, David Horst, Lars Oesterhelweg, Michael Tsokos, Barbara Ingold-Heppner, Christine Stadelmann, Christian Drosten, Victor Max Corman, Helena Radbruch & Frank L. Heppner 
Olfactory transmucosal SARS-CoV-2 invasion as a port of central nervous system entry in individuals with COVID-19
Nature Neuroscience (2020)
(2)
Huang, C. et al. 
Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China. 
Lancet 395, 497–506 (2020).
(3)
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Neurotropism of SARS-CoV 2: mechanisms and manifestations. 
J. Neurol. Sci. 412, 116824 (2020).
(4)
Mao, L. et al. 
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DAMP molecule S100A9 acts as a molecular pattern to enhance inflammation during influenza A virus infection: role of DDX21–TRIF–TLR4–MyD88 pathway.
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Evidence of the COVID-19 virus targeting the CNS: tissue distribution, host–virus interaction, and proposed neurotropic mechanisms. 
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