いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおいて
ワクチンというのは重要ですが、
第3相臨床試験の途中で緊急承認がおりて、
何億人という人が接種された際には
重篤な副作用、副反応が確認される可能性は否定はできません。
ワクチンの影響かどうか切り分けるのも難しいことから
その可能性は低くはないと思います。
今までの試験でも偽薬、コントロール群で
ワクチンの成分が入っていない人たちでも
副作用、副反応が同様にみられているからです。
しかし、何億人と接種した場合には
偽薬の人が半数いて、トレースできる状況ではないですから
それがワクチンの影響なのかどうかはわかりません。
しかし、仮に神経症など重篤な方が現れると
接種を受ける方の不安を増大させる要因となります。
ワクチンの安全性を確かめるのには
少なくとも数年はかかるといわれていますから
今の段階で接種するとなったときには
義務化するという事はできません。
そうすると結果次第では
ワクチンの接種を中断せざるをえないかもしれないし
あるいは実際の接種率が極めて下がるかもしれません。
もしくは
ワクチンの種類、摂取量などを調整する可能性もあります。
しかし、
これだけ新型コロナウィルスが
医療現場だけではなく、社会産業的に悪影響も与えていますから
そういうことを総合すると
社会全体で見れば
「ある程度のリスクは許容しないといけない。」
ということになります。
しかし、個人レベルで見れば
「健康なのにリスクは背負いたくない。」
というのが本音としてあると思います。
でも、その場合も家族や大切な人、
あるいは自分の仕事、感染のリスク
そういったことと天秤をかけて総合的に判断する必要があります。
今の状況において
社会的にも、個人的にもゼロリスクはありません。
新型コロナウィルスが流行する前よりも
「どの選択をしてもリスクが高い」ことは認める必要があります。
しかしながら、だからといって
何もしないかというとそうではありません。
ワクチンの安全性を継続的に上げていく事もそうですし、
産業、社会、医療、経済、心の健康、教育など
総合的な判断の中で
健全に世の中が回っていた時に如何に近づけるかが重要です。
社会がどの選択をしたとしても
リスクが下がるように立ち向かっていく必要があります。
そうしたことを考えると
医療においてワクチンに頼るだけではなく、
治療やそれに使われる治療薬についても
継続的に考えていく必要があります。
そのために用意されている時間は
今までの歴史を見ても顕著に短いと考えています。
そうなるとワクチンと同様
産学を含め国際的な協力が必要になります。
今まで様々な治療薬が試されてきました。
レムデシビル(エボラ出血熱の薬)
ヒドロキシクロロキン(マラリアの薬)
ロピナビル(HIV感染症の薬)
インターフェロン ベータ-1a(多発性硬化症の薬)
など過去の感染症に使われた薬を
リパーポスとして使用した場合において
WHO(世界保健機関)によれば、
薬効がほとんどないか、ないという評価になっています(2)。
唯一薬効が認められる薬として
デキサメタゾン(免疫抑制剤)があります。
しかし、この薬も呼吸の補助が必要がない
比較的、軽症、中等症の方には奏功は確認されない
という評価になっています(3)。
従って、
今、日本の医療現場の医師の方のコメントの中には
「決定的な治療薬がない中で治療していくしかない。」
というのがあります。
最終的には患者さんの回復力に委ねるしかない
ということかもしれません。
最後の砦であるECMOも治療するのではなく
回復するための時間的猶予を与えるものである
という認識です。
このECMOも使えない方もいます。
従って、医療現場では
今、強く特効薬の開発が待たれている段階だと考えられます。
そのためには新型コロナウィルスで現れる
特徴的な生理機序を掴んで
それを少なくとも薬学的に調整していく事が必要になります。
新型コロナウィルスには
特徴的な事がいくつかありますが、
特にウィルスの数を減らすために必要な免疫機能においては
インターフェロン(Ⅰ型、Ⅲ型)の分泌が少なくとも発症初期で少ない
という事が挙げられています(4,7)。
もう一つはこれに関連する部分もあると思いますが、
白血球のうちリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞など)の数が減少し、
相対的に好中球の量が上がる
という特徴もあります。
特に免疫の初動を担う自然免役系である
NK細胞に関しては高齢で数が減り、
IL-6という炎症性サイトカインが
そのNK細胞の機能を歪め、弱めると言われています(5,6)。
また、同様にNK細胞が減ると
インターフェロンの反応が悪くなることが知られています(5)。
このIL-6というのは
炎症性サイトカインであり新型コロナウィルスで
上昇が確認されているサイトカインの「一つ」です(4)。
その事が新型コロナウィルスが流行した
かなり初期の段階で認識されていたためか
J.H. Stone氏ら医療、研究チームによって
4月の時点から炎症性サイトカインであるIL-6に対して
機能を弱め、アンタゴニストとして働く
「トシリズマブ」治療薬の効果を検証しています(1)。
この薬は免疫抑制効果を示し、
関節リウマチ、全身型若年性特発性関節炎などに
使われる薬です。
以下、参考文献(1)の内容の一部を
読者の方と情報共有したいと考えます。
/条件/
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(人数)
トシリズマブ投薬:161名
偽薬(プラセボ):82名
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(場所)
アメリカ7か所(病院、医療機関)
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(実施時期)
2020年4月20日~6月15日
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(対象患者さんの条件)
・参加72時間以内に38℃以上の発熱
・肺への浸潤物
・酸素吸入が必要
これらの少なくとも2つ以上を満たす
--
・C反応性タンパク質 50mg/lより多い
・フェリチン 500ng/mlより多い
・Dダイマー 1000ng/mlより多い
・乳酸脱水素酵素 250U/lより多い
これらを少なくとも1つ位以上満たす
--
従って、症状としては軽症ではなく
中等症以上の患者さんを治療薬の薬効を
確認する前に選んでいると考えられます。
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(トシリズマブ用量)
体重1kgあたり8mg、800mgを超えない
-----
(症状の分類)
1, discharged or ready for discharge;
2, in (or ready for) a non-ICU hospital ward and not receiving
supplemental oxygen;
3, in (or ready for) a non-ICU hospital ward and receiving
supplemental oxygen;
4, in the ICU or a non-ICU hospital ward and receiving
noninvasive ventilation or high-flow oxygen;
5, in the ICU, intubated, and receiving mechanical ventilation;
6, in the ICU and receiving extracorporeal membrane oxygenation
or mechanical ventilation and additional organ support;
7, death
これらの段階で最低1段階でも上に上がれば
評価して「悪化した」と判断
-----
(他の併用薬条件)
レムデシビル(トシリズマブ群33%、偽薬群29%)
ヒドロキシクロロキン(トシリズマブ群4%、偽薬群4%)
グルココルチコイド(トシリズマブ群11%、偽薬群6%)
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/結果/
--
(人工呼吸器要もしくは亡くなられた方)
トシリズマブ投与28日後 ハザード比0.83(対:偽薬)
--
(症状が「悪化した」方)
トシリズマブ投与28日後 ハザード比1.11(対:偽薬)
--
(副作用)
好中球減少グレード3 13.7%(偽薬:1.2%)
※差が顕著なものだけ抽出
/J.H. Stone氏らの判断/
・中等症患者に対して挿管、救命の効果は確認されない
ただしいくつかの薬効、副作用は除外はできない
(統計的母数、ばらつきなどを考慮)
/考察/
IL-6を投薬した治療のタイミングとしては
現状に則したものであると思われますが、
ある程度症状が出た後と考えることができます。
血液中にも反応が出ているので
ある程度、ウィルスも免疫機能も
広い範囲で乱されている段階ではないかと考えられます。
そうした中での治療薬の検証であるという判断です。
IL-6というのは新型コロナウィルスで注目される
代表的な炎症性サイトカインであります(7)が、
実際には
TNF, IL-6, IL-7, IL-8, IL-10, IFN-γ, CCL3
IL-1β, IL-12, IL-23, CCL4
これら複数のサイトカイン、ケモカインの上昇が
みられ炎症性への関与が考えられます(4).。
従って、
IL-6一つだけ抑えた場合、
全体としてインパクトがあるかどうか
という点に対しては検討が必要です。
また、IL-6自体は血液で調べることができますが、
トシリズマブはIL-6の受容体のモノクローナル抗体なので
それが結合して機能をしているかどうかは
分析が困難であるかもしれません。
実際にはIL-6のエピトープを認識して
結合阻害活性を調べることになるのか?ということです。
実際に薬が狙った通り働いているかの確認が
必要かもしれないということです。
実際に副作用について好中球減少が多くみられていました。
その他、トシリズマブの副作用で多いものの中で
「肺炎」があります。
これは新型コロナウィルスの症状とも重なるので
結果の病状の悪化が薬の副作用と関連があるか
という考察も必要であると考えられます。
/追記、治療に関して/
基本的にはウィルスは細胞内に感染して
細胞内でRNAをコピーして増えていくので
その増殖回数に対して
比例ではなく指数で増えていくと考えています。
実効再生産数の考え方と同じです。
それを細胞内でウィルスの場合で考え
その値は多分大きいだろうということです。
そうすると
体内のウィルスが1万個の時と1億個の時では
1回の増殖における増加量が大きく異なるわけですから
増殖時間に大きな差がないとしたら
基本的には感染して長い時間経過したら治療は難しくなる
ということです。
それは他のインフルエンザでも同じです。
従って、基本的には
「発症初期で如何に適切な治療を行えるか?」
というのが一つの治療の上での骨子となると思います。
しかし、
新型コロナウィルスは
潜伏期間が長くて14日程度となります(4)。
従って、上述した発症初期で治療するのが
現実的には難しいという事になります。
また、初期に気づいて医療機関を受診したとしても
全ての患者さんが重症化するわけではないので、
重症化を想定した強い治療をするわけにもいきません。
薬には一定の副作用もあります。
そうすると
結果的に重症化した患者さんの臨床データを遡って、
一番初期の段階で現れる特異的な信号を見つけて
それがどのタイミングで出るか?
その傾向を調べることだと思います。
しかし、実際にそれがわかったとしても
全員詳細な検査をするわけにもいかないですし
当面、医療機関の負担も大きくあることから
それも現実的ではないということになります。
もちろんそれを調べることは後々大きな意味がある事です。
そうすると年齢、既往歴などでリスクの高い人だけ
事前に治療方針を変えるかという事になると思います。
しかしそれも一定の疑問が残ります。
このような事を考慮に入れると
医療機関の医師の方の需要は
「ある程度症状が出た後に効く薬を開発すること」
だと思います。
ある程度症状が出た時に起こっている(だろう)事を
考えると治療には3つの観点が必要だと思います。
①ウィルス数を減らす事
②サイトカイン、ケモカインを含む免疫機能を調整する事
③炎症組織を回復させる事
これらです。
上述したトシリズマブは②の一部にあたります。
こういったことを考えると
IL-6を抑えるだけで奏功を得るというのは
原理的に難しいかもしれないと思う部分があります。
それが根本的原因で「雪崩的に」
正のスパイラルになって①~③が満たされる
というのであればいいとは思います。
でも、実際には難しいと思います。
もう一つの違った観点としては
〇インフルエンザの治療薬の薬理を参考にする
ということです。
今まではリパーポスということですが
もっと原理的なことに戻って、
なぜ、インフルエンザの治療薬はよく効くのか?
どういう作用、経路で病状を抑えているのか?
そのベクトル、ネットワークが
薬剤開発の指針になる可能性があります。
①ウィルス数を減らす事
細胞外:中和抗体、デコイ抗体など
細胞内:RNA増殖抑制因子など
相互作用:免疫細胞機能を引き出す
簡単にはこういった観点があります。
-----
②サイトカイン、ケモカインを含む免疫機能を調整する事
デキサメタゾンがこれですが、
逆効果もあるのでもっと病状の細かい把握が必要です。
数ある免疫の天秤が今どうなっているのか?
それぞれの患者さんで検査、診断する必要があります。
そのうえで
不足している免疫機能を誘発して
過剰な免疫機能を抑えるということです。
-----
③炎症組織を回復させる事
・細胞組織内遺伝子レベルの修復
・細胞、組織の連結状態の回復
・組織内に少しある幹細胞の働きを促進
その他、組織の回復(Repair)の機序を詳しく把握する事です。
同時にどの組織、臓器が炎症しているのか?
その検査、診断の必要性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
J.H. Stone, M.J. Frigault, N.J. Serling‑Boyd, A.D. Fernandes, L. Harvey, A.S. Foulkes, N.K. Horick, B.C. Healy, R. Shah, A.M. Bensaci, A.E. Woolley, S. Nikiforow, N. Lin, M. Sagar, H. Schrager, D.S. Huckins, M. Axelrod, M.D. Pincus, J. Fleisher, C.A. Sacks, M. Dougan, C.M. North, Y.‑D. Halvorsen, T.K. Thurber, Z. Dagher, A. Scherer, R.S. Wallwork, A.Y. Kim, S. Schoenfeld, P. Sen, T.G. Neilan, C.A. Perugino, S.H. Unizony, D.S. Collier, M.A. Matza, J.M. Yinh, K.A. Bowman, E. Meyerowitz, A. Zafar, Z.D. Drobni, M.B. Bolster, M. Kohler, K.M. D’Silva, J. Dau, M.M. Lockwood, C. Cubbison, B.N. Weber, and M.K. Mansour, for the BACC Bay Tocilizumab Trial Investigators
Efficacy of Tocilizumab in Patients Hospitalized with Covid-19
The New England Journal of Medicine 2020;383:2333-44.
(2)
WHO Solidarity Trial Consortium
Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 — Interim WHO Solidarity Trial Results
The New England Journal of Medicine December 2, 2020,
(3)
The RECOVERY Collaborative Group
Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 — Preliminary Report
The New England Journal of Medicine July 17, 2020
(4)
Ioanna-Evdokia Galani, Nikoletta Rovina, Vicky Lampropoulou, Vasiliki Triantafyllia, Maria Manioudaki, Eleftherios Pavlos, Evangelia Koukaki, Paraskevi C. Fragkou, Vasiliki Panou, Vasiliki Rapti, Ourania Koltsida, Andreas Mentis, Nikolaos Koulouris, Sotirios Tsiodras, Antonia Koutsoukou & Evangelos Andreakos
Untuned antiviral immunity in COVID-19 revealed by temporal type I/III interferon patterns and flu comparison
Nature Immunology (2020)
(5)
Agrawal A.
Mechanisms and Implications of Age-Associated Impaired Innate Interferon Secretion by Dendritic Cells: A Mini-Review
Gerontology 2013;59:421-426
(6)
David C. Fajgenbaum, M.D., and Carl H. June, M.D.
Cytokine Storm
The New England Journal of Medicine 2020;383:2255-73.
(7)
Anne H. Rowley
Understanding SARS-CoV-2-related multisystem inflammatory syndrome in children
Nature Reviews Immunology volume 20, pages453–454(2020)
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