2020年12月2日水曜日

黄熱病ワクチンベースで遺伝子改変したワクチン

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

薬ではリパーポスという
すでに人での安全性が認められ
投薬における許容用量や禁忌などが明確になっている薬を
別の疾患に対して使うというものがあります。
新型コロナウィルスの場合は
レムデシビルや
デキサメタゾンなどのステロイドがそうです。
このような考え方はワクチンでも考えられます。
もちろんワクチンの場合は
抗体依存性感染増強という接種することで
逆に症状を悪化させてしまうことがあるので
仮に過去使用したワクチンが特定のウィルスに対して
安全性を示したとしても、
他のウィルスにはそのまま使うことはできません。
しかし、
ベースとしては同じで、遺伝子を改変する事で
新しいウィルス、この場合新型コロナウィルスに
適合するように設計すれば、
過去使用した実績がある程度は引き継がれると考えられます。

過去黄熱病のワクチンとして開発された
YF17Dという不活性ウィルスワクチンがあり、
これを土台にして遺伝子改変を行い
日本脳炎のワクチン (Imojev®) 
デングウィルスのワクチン(Dengvaxia®).
として承認されています(1)。
このYF17DはWHO(世界保健機関)により
リスクがあるエリアにおいては
生後9が月から高齢の方までの使用が推奨されています
内科的疾患を持つ人も含めてです(2,3)。

Lorena Sanchez-Felipe氏ら
ベルギーを中心とした研究グループは
日本脳炎やデングウィルスのケースと同じように
新型コロナウィルスのSタンパク質に合うように
遺伝子改変を行い
不活性化ウィルスワクチンを開発しています(1)。
いくつかの構造を設計した中で
へき開性を持たない構造が比較的安定した
S0バージョンのワクチンが好ましいことがわかっています。
(ワクチン名:YF-S0)
元々黄熱病のために開発されたYF17Dの
人に対する高い安全性は証明されています(2,4,5)。
但し、ごくまれに内蔵系に影響が出ることがあります(2,5)。
そのYF17Dのワクチンを
人よりも体の小さいハムスターに接種すると
ほとんどのケースで数日続く内蔵系への副作用が見られましたが、
今回新型コロナウィルスに合うように
遺伝子変異させたYF-S0の場合は6匹中1匹でした。
(参考文献(1) Extended Data Fig. 3より)
従って、
すでに人での安全性が認められ
WHOからリスク地域における接種が勧められている
ワクチンベクトルよりも
「ハムスターのケースの比較では」
副作用が少なく、安全性が高い可能性が示唆されています。

現状のワクチンは2回接種する必要がありますが、
このワクチンは1回の接種でもいい可能性があります。
接種後14日後に3桁程度の中和抗体量増加が見られ
その後21日まで安定します。
(長期的な評価はされていません。)
(参考文献(1) Fig.1(c)より)

またハムスターにおいて
ワクチンの接種の予防効果を評価するために
接種後抗体量の安定が見られる23~28日後に
10^5(PFU)の新型コロナウィルス量を感染させて
ワクチン接種有無において各臓器で比較しました。
最も懸念される肺の比較では
5桁以上の減少が見られました。
Sタンパク質の構造においてへき開可能な
不安定性を持つものでは
そのウィルス量のばらつきがありましたが、
最も好ましいと考えられえるへき開できない構造では
比較的安定して顕著な低下が見られました。
(参考文献(1) Fig.1(f)より)
その他、脾臓、肝臓、腎臓、心臓でも
ウィルスの検出はほとんどありませんでした。

またYF17Dは急速に
自然免疫、液性免疫、細胞性免疫を引き出し
それが長く続くかもしれないことがわかっています(4)。
このような効果は
新型コロナウィルス用に改変したYF-SOでも見られます。
日本に供給される
アメリカのファイザー社(さん)、ドイツのビオンテック社(さん)
のRNAワクチン(BNT162b1)では
ワクチンの抗体の効果のほかに
Th1型のT細胞反応が見られたと報告されています(6)。
同じようにこのYF-S0でもTh1の細胞性免疫の効果が見られています。
このTh1はCD8、CD4のT細胞やB細胞、単球などがありますが、
解析結果によると
新型コロナウィルスのSタンパク質に特異的な
・IFN-γ、TNF-αを表面に発現しているCD8+T細胞
・IFN-γを表面に発現しているCD4+T細胞
・γ/δT細胞
少なくともこれらの亢進が見られます。
(参考文献(1) Fig.2(g)より)

抗体の生成に関しては
ハムスター以外のカニクイザルでも同様にみられています。
(参考文献(1) Fig.3(a)より)

人による治験の情報はありません。

以上です。

(参考文献)
(1)
Lorena Sanchez-Felipe, Thomas Vercruysse, Sapna Sharma, Ji Ma, Viktor Lemmens, Dominique Van Looveren, Mahadesh Prasad Arkalagud Javarappa, Robbert Boudewijns, Bert Malengier-Devlies, Laurens Liesenborghs, Suzanne J. F. Kaptein, Carolien De Keyzer, Lindsey Bervoets, Sarah Debaveye, Madina Rasulova, Laura Seldeslachts, Li-Hsin Li, Sander Jansen, Michael Bright Yakass, Babs E. Verstrepen, Kinga P. Böszörményi, Gwendoline Kiemenyi-Kayere, Nikki van Driel, Osbourne Quaye, Xin Zhang, Sebastiaan ter Horst, Niraj Mishra, Ward Deboutte, Jelle Matthijnssens, Lotte Coelmont, Corinne Vandermeulen, Elisabeth Heylen, Valentijn Vergote, Dominique Schols, Zhongde Wang, Willy Bogers, Thijs Kuiken, Ernst Verschoor, Christopher Cawthorne, Koen Van Laere, Ghislain Opdenakker, Greetje Vande Velde, Birgit Weynand, Dirk E. Teuwen, Patrick Matthys, Johan Neyts, Hendrik Jan Thibaut & Kai Dallmeier 
A single-dose live-attenuated YF17D-vectored SARS-CoV-2 vaccine candidate
Nature (2020)
(2)
Thomas, R. E., Lorenzetti, D. L., Spragins, W., Jackson, D. & Williamson, T. 
The safety of yellow fever vaccine 17D or 17DD in children, pregnant women, HIV+ individuals, and older persons: systematic review. 
The American journal of tropical medicine and hygiene 86, 359-372, 
https://doi.org/10.4269/ajtmh.2012.11-0525 (2012).
(3)
WHO. International Travel and Health. Yellow fever, 
<https://www.who.int/ith/vaccines/yf/en/ > (retrieved November 4, 2020).
(4)
Barrett, A. D. & Teuwen, D. E. 
Yellow fever vaccine - how does it work and why do rare cases of serious adverse events take place? 
Curr Opin Immunol 21, 308-313, 
https://doi.org/10.1016/j.coi.2009.05.018 (2009)
(5)
Rafferty, E., Duclos, P., Yactayo, S. & Schuster, M. 
Risk of yellow fever vaccine-associated viscerotropic disease among the elderly: A systematic review. 
Vaccine 31, 5798-5805, 
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2013.09.030 (2013).
(6)
Ugur Sahin, Alexander Muik, Evelyna Derhovanessian, Isabel Vogler, Lena M. Kranz, Mathias Vormehr, Alina Baum, Kristen Pascal, Jasmin Quandt, Daniel Maurus, Sebastian Brachtendorf, Verena Lörks, Julian Sikorski, Rolf Hilker, Dirk Becker, Ann-Kathrin Eller, Jan Grützner, Carsten Boesler, Corinna Rosenbaum, Marie-Cristine Kühnle, Ulrich Luxemburger, Alexandra Kemmer-Brück, David Langer, Martin Bexon, Stefanie Bolte, Katalin Karikó, Tania Palanche, Boris Fischer, Armin Schultz, Pei-Yong Shi, Camila Fontes-Garfias, John L. Perez, Kena A. Swanson, Jakob Loschko, Ingrid L. Scully, Mark Cutler, Warren Kalina, Christos A. Kyratsous, David Cooper, Philip R. Dormitzer, Kathrin U. Jansen & Özlem Türeci 
COVID-19 vaccine BNT162b1 elicits human antibody and TH1 T cell responses
Nature volume 586, pages594–599(2020)


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