2020年12月21日月曜日

酸素濃度を保つ免疫に対する重要性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

生物の進化の過程での大きな転換点として
細胞の中にミトコンドリアが共生したというのがある
とされています。
このミトコンドリアは生命活動を維持するために
エネルギー源の一つとして酸素を必要とします。
結果的に地球に酸素が生まれて
生物がこれだけ進化できるようになったのは
地球に酸素がある事とミトコンドリアの影響が大きいと
考えることもできます。
人は60兆個の細胞があるといわれますが、
各細胞にミトコンドリアは2000個いると言われています。
(※諸説はあると思います。)
そうすると12京個(1.2×10の17乗個)あり
地球上には80億人近くいます。
また酸素を必要とするほとんどの生物が持っているとされていますから
地球上にいるミトコンドリアの数は天文学的数字となります。
従って
「酸素」というのは
私たちの体の組織、その中の細胞を健全に維持するためには
欠かすことのできない元素、気体であると考えられます。
その酸素バランスが失われ、酸素欠乏に陥ると
身体の色んな所で問題が起き、体調不良をきたします。
例えば
富士山に登山した時にです。
7合目、8合目になると一定割合の人が高山病に罹るといわれています。
その症状は
頭痛、吐き気、嘔吐、眠気(めまい)です。
比較的身近な疾患ですが、
これは標高が高くなり空気が薄くなることによって
身体に必要な酸素が足りなくなり発症すると考えられます。

新型コロナウィルスでも中等症、重症の方の
最も共通した症状は低酸素血症といわれています(3,4,5)
血中の酸素量を示す酸素飽和度は
通常は96%以上が正常ですが、
それは90%を下回ることもあります(3)。
新型コロナウィルスの治療に当たられている看護師は
「酸素が不足したら状態が悪くなる。」
というのを現場で感じていると言われています。
従って、酸素飽和度の適正な管理は
新型コロナウィルスの治療において一つの中核をなすものです。

新型コロナウィルスでは肺炎が生じて
肺胞から血液中への酸素の取り込みに障害が生じて
その結果、酸素が不足すると考えられますが。
この酸素不足は炎症性の免疫機能を高め(1,2)、
より肺炎を深刻化させたり、
身体のいろんな組織、臓器の不全につながることが考えらえます。
ウィルスによって免疫機能が乱されるということもある
と考えられますが、
酸素が不足することによって
その免疫機能のバランスがさらに悪くなり、
負のスパイラルに陥ることも考えられます。
実際にはウィルス量は発症一週間程度で減る
という報告もあります(6)。
また重症患者の抗体量も多いですから
入院してしばらく続く体の不調は
低酸素状態にさらされることによって生じた
免疫機能の乱れも一因としてある可能性があります。
高齢で基礎疾患を抱えた人が
新型コロナウィルスに発症して
自宅待機の間で状態が急変して亡くなられることがありますが、
血中の酸素濃度が急激に低下して
一気に状態が悪くなったという可能性も除外はできません。
その中で、
日本赤十字社の医師の方が
パルスオキシメータという指先で非侵襲で計測できる
酸素濃度計で自宅待機でリスクの高い人は
血中酸素飽和濃度をチェックすることを提案されていました。

その医療の現場で欠かすことのできない
「酸素管理」。
その重要性について
まずは「免疫機能の観点」で調べました。
医療従事者の方、行政、特にリスクの高い方と
情報共有したいと思っています。
一読いただければと考えます。

Cormac T. Taylor氏、Sean P. Colgan氏(1)
および
Holger K. Eltzschig氏、Peter Carmeliet氏(2)
医療、研究グループは
低酸素状態と免疫機能、炎症について報告しています(1,2)。
その内容を中心に情報を提供いたします。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察
その他は参考文献(1,2)に準拠しています。

//高山での症状、高山病との関わり//
-----

前述したように標高が高いところでは大気圧が減少します。
それによって1回の呼吸で利用できる酸素の量が減り、
低酸素状態に陥ります。
-----
標高3400mでは血中の
・IL-6、IL-6受容体
・C-reactive protein
これらの炎症のマーカーがこの標高で3日過ごした時に
健康な人で上昇したことを示しています(7)。
-----

IL-6は新型コロナウィルスで上昇する特徴的な
炎症性サイトカインなので
中等症以上になり酸素飽和度が下がり
酸素が不足した状態によっても
IL-6が上がっている可能性があります。
-----

//短期低酸素状態でも影響あり//
「マウスのケース」ですが、
短い期間の低酸素状態でも
・血管からの内用液の滲出
・多臓器での炎症性細胞の蓄積
・サイトカインの血中の上昇
これらが確認されています(8-12)。

//臓器との関わり//-----------
(肥満組織)
肥満の状態で膨れ上がった肥満細胞組織での
細胞の酸素の需要>供給
つまり酸素が足りなくなると
炎症性アディポカインの上昇が見られます(2)。
---
(腸)
低酸素状態は腸の粘膜の炎症と関連があり
炎症性腸疾患の症状を強めます(19-21)。
これらの関係はBidirection
つまり低酸素状態⇔腸の炎症です。
(参考文献(1) Figure 1より)
---
(肺)
低酸素状態は腸の粘膜の炎症と関連があり
急性肺障害と関連があります(22-26)。
これらの関係はBidirection
つまり低酸素状態⇔肺の傷害です。
(参考文献(1) Figure 1より)
---
(腎臓)
・活性なイオン輸送
・髄質での酸素の逆流交換
これらから酸素を多く必要とする臓器です(32)
-----

透析患者など腎疾患がある人の新型コロナウィルスのリスクは
高いと言われています。
その理由は「腎臓が酸素を多く必要とするから」
というのがある可能性があrます。
従って、腎疾患を持っている、
あるいはその症状を示している患者さんに対しては
特に酸素濃度の管理が必要になると考えられます。
-----
(リンパ節)
胚中心は酸素を多く消費するために
通常でも低酸素状態にあるといわれています(1)。
-----

低酸素状態とリンパ球の発展に関わるリンパ節の
関連が気になります。
下述するB細胞の抗体の質が落ちる事と関係している
可能性があります。
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-----------

//低酸素による細胞内の反応//-----------
(低酸素誘導因子(HIF))
低酸素状態になると転写因子である
低酸素誘導因子HIFが活性化されます(13,14)。
-
このHIFの改変は細胞内で消費される酸素のうち
ミトコンドリアで必要とされるもの以外の
10%程度の酸素によるとされています(1,28)。
-
このHIFは通常の状態では沈静化されていますが、
酸素が不足すると水酸基の反応が弱まるため
それを調整しようとして発現されるもので
酸素に依存しないタンパク質を分解する
リソソームが関与します(29-31)。
---
(NF-κB)
NF-κBは炎症、免疫反応、組織の恒常性に関わります(15-17)。
低酸素状態はToll様受容体の発現と伝達が上昇することによって
NF-κBを亢進します(2)。
-----

Toll様受容体が多く発現することは自然免疫系の応答を高める
事と関係しています。
低酸素状態は別の項でも触れているように自然免疫系を亢進させる
働きがあります。その一つは自然免疫系がパターン認識する
Toll様受容体の発現の亢進によると考えられます。
-----
-----------

//低酸素による免疫機能の影響//-----------
低酸素状態は自然免疫系を強め
獲得免疫系を弱める傾向があります。
---
(自然免疫系の働きを強める)
低酸素誘導因子によって好中球の寿命を長くする(18)。
-
一方で低酸素状態は
ヌクレオチドを酵素でadenosineに変換する。
(ATP、adenosine diphosphate、AMP)⇒adenosine
これによって自然免疫系の働きを抑制します(27)。
--
(獲得免疫系の働きを抑制する)
ヘルパーT細胞 Type1<Type2(Type1⇒Type2)に導きます。
Type1:マクロファージや細胞傷害性T細胞の機能を強める
Type2:IL-10増加、IFN-γ減少⇒炎症性
---
自然免疫>獲得免疫
(参考文献(2) Figure 3より)
-----
⇒自然免疫系の好中球が高まり、
獲得免疫系のT細胞やB細胞などのリンパ球が下がることは
新型コロナウィルスで特徴的にみられる
(好中球/リンパ球)比が高いことと関連がある可能性があります。
好中球は多くなると組織の炎症と関わります。
IL-10やIFN-γの減少が新型コロナウィルスで見られます。
低酸素状態が関連している可能性もあります。
IFN-γは
NK細胞、B細胞の活性を高める事に貢献します。
-----
-----------

//低酸素状態(HIF)における各免疫細胞の影響//-----------
(マクロファージ)
・M1、M2極性・運動性・殺菌効果・癌の発展を制御(33,34)。
Fc受容体を亢進しマクロファージの機能を高め
食作用(ファーゴサイトーシス)を高める。
これは好中球でも見られます(33)。
---
(樹状細胞)
・寿命・分布・抗原提示・インターフェロン合成・分化
これらを制御(35,36)。
樹状細胞を介した炎症性サイトカイン放出などを制御(35)。
---
(T細胞)
・寿命・分化・増殖・抗癌作用
これらを制御(37)。
---
(B細胞)
・寿命・発展・抗体生成過程
これを制御(38)。
高い親和性を示すIgG抗体の生成が弱体化される(38)。
・IgG2cに切り替え
・B細胞記憶の早期化
・抗体反応の取り消し
-----

低酸素状態になるのことで
新型コロナウィルスに対する抗体の質
つまり細胞内感染抑制能力、中和能が高い抗体の
生成が上手くいかなくなる可能性があります。
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-----------

//追記//
おそらくミトコンドリアで消費される90%の酸素供給が
細胞内で優先されるために
その他の10%のミトコンドリア以外で使われる
酸素が半分なくなることになります。
(参考文献(1) Figure 3より)
そうすると細胞内の代謝が嫌気性で行われるようになるため
おそらく細胞の様々な機能が改変されることになります。
例えば、HIFが安定化され、
それが細胞核の遺伝子に結合することで
細胞の生死やタンパク質の循環などが
変わる可能性があると考えられます。
--
低酸素状態になったときに
高山病に使われる薬は使えないでしょうか?
ダイアモックス錠やデカドロン錠など
--
低酸素状態を回避するというのは
免疫を調整するデキサメタゾンやアクテムラのような
治療薬と同じで
免疫機能を正常に戻すという上で非常に重要です。
特に、酸素を多く必要とする腎臓に傷害がある場合には
十分な酸素レベルの維持は
患者さんを救命する上で大切な管理項目だと考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Cormac T. Taylor & Sean P. Colgan 
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(2)
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