いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスは、免疫異常によって
血管に損傷を与え、血栓を生じさせる(2)
という事が知られています。
血管は毛細血管も含めると全身に張り巡らされているので
発熱、関節痛、頭痛、吐き気といった症状から
臓器不全まで多くの事に少なくとも一部は関わっている
可能性が考えられます。
従って、改めて血管を守る事の大切さ
というのを実感しています。
世界の人が最も命を落とされている主因は
心疾患であると考えられています(1)。
日本でも平成30年の調査ではがんに次ぐ疾患である
と言われています。
その中で多い心臓に関連する疾患は
心筋梗塞と脳卒中であると言われています。
つまり、
血管の状態が悪化することで心疾患を引き起こすことです。
その血管の悪化とは一つは動脈硬化です(1)。
動脈硬化は長い間無症状の状態が続き(1)、
早い人では20~30歳ごろから現れ、
無症状のまま長い時間をかけて進行し
40~60歳ごろになって症状が現れることが多い
といわれています(3)。
動脈硬化はLDLコレステロールが動脈の内皮組織に滞留し、
その後酸化し、炎症性免疫を誘発して(5-7)
組織の炎症を引き起こし(4)、組織が硬化することです。
動脈硬化の検査として日本では
LOX-index検査というのが知られていますが、
これは変性LDLというのを見るものです(8)。
おそらく変性LDLは上述した酸化LDLのことで
それを検出することによってリスクを評価するということです。
そのような血管内皮の組織の炎症や
滞留した酸化LDL(oxLDL)などによって放出される、
あるいは組織中に発現される抗原を
免疫細胞が認識して、特異的な免疫反応が発現したり、
免疫細胞の中のB細胞が抗原認識して
抗体を発現することで組織や付着物と反応したり
あるいは抗体がさらに免疫応答を促したりする
といった複雑な免疫系生理機序があると考えられます。
そういった中で
炎症を抑制するもの、増大させるもの
両方が存在すると考えられます。
動脈硬化進行時における
B細胞の働きについては今まで研究されてきました(9-14)。
その中で焦点を当てられてきたのが
LDLの酸化によって生じた新しいエピトープ(抗原認識部位)に
関するものでした(15-20)。
Cristina Lorenzo氏らは動脈瘤から発生した
1700種類のB細胞に対して細胞ごとの解像度で
抗体の遺伝子シーケンスを分析して
より動脈硬化を治療するために効果的な抗体を選び出しました(1)。
その中でプロリン代謝に関わるミトコンドリアの脱水素酵素である
ALDH4A1とう抗原に対して
その機能を弱める抗体A12を特定しました(1)。
このALDH4A1の分布は動脈硬化を持つ
マウスや人で変わり、その量が増加することがわかっています(1)。
従って、
動脈硬化を示す新たなバイオマーカーとして
使える可能性があります(1)。
マウスのデータによれば、
ALDH4A1の量は個体によって偏差、ばらつきがるので
(参考文献(1) Fig.3(f)より)
上述した酸化LDLの量など他の評価と合わせれば
動脈硬化の治療において、
抗体A12の治療効果、治療適性なども
事前に推測することができる可能性もあります。
マウスに高脂肪食を与え、動脈硬化を促進させて
リンパ球を含め免疫細胞がどのように改変するか?
評価しています。
/結果/
・germinal centre B cells (Fas+GL7+),
・T follicular helper cells (CXCR5+PD1+)
・memory B cells (PD-L2+)
・IgG+ switched B cells
・CD138+kappa+ (expressing the kappa light chain)
・plasma cells
・plasmablasts
これらの増加が見られています。
(参考文献(1) Fig. 1a, Extended Data Figs.1,2a–c,3a,b)
特に動脈硬化は
リンパ節にある胚中心のB細胞(germinal centre B cells)の
反応の強化が見られています(1)。
また、B細胞による液性免疫の機序によって
特異的に発現、分泌される抗体において
血管内皮の滞留物に対する反応は多種類にわたり
その効果も多様であるとされています(1)。
A12は心臓と動脈の連結部である大動脈基部(aortic root)
において免疫反応を示す蛍光発光が観測されています。
(参考文献(1) Extended Data Figure.6(b)より)
動脈瘤がどの位置に存在するかに依存している可能性はありますが、
一方で抗原、抗体の体の部位、組織特異性がある可能性も考えられます。
また
この抗体は脾臓で確認されています。
(参考文献(1) Extended Data Figure.6(d)より)
さらにこの抗体は動脈に限らず
肝臓の静脈でも反応性を示すことが確認されています。
(参考文献(1) Extended Data Figure.6(e)より)
抗体A12の抗原ALDH4A1に対する特異性は
酵素免疫測定法によって確認されています。
(参考文献(1) Fig.3(c)より)
この抗体の発現は動脈硬化が起こっている
マウスで分泌量が増えていますが、
その量にはばらつきがあります。
(参考文献(1) Fig.3(d)より)
A12抗体投与による遊離コレステロールと
LDLコレステロールの変化を見たところ
大きく減少したマウスもいますが、
その効果には、ばらつきがみられます。
(参考文献(1) Fig.4(d)(e)より)
従って、
上述したように個体によって
A12に対する感受性が異なると考えられます。
先ほど、酸化LDLから発現される抗原、抗体は多様である
と確認しましたが、A12がエピトープとして主要であるものと
そうでない個体があるという事も考えられます。
ただこのA12は動脈硬化患部に直接働きかけるだけではなく、
肝臓の脂質形成などに対しても
作動性を持つ可能性が示唆されています(1)。
/考察、追記/
例えば、新型コロナウィルスやインフルエンザなど
ウィルスが体内に入った時には、
自然免疫、獲得免疫の分類の中で
液性免疫、細胞性免疫など
多様な免疫機能の改変が行われます。
また、それらの境界はあいまいで
液性免疫と細胞性免疫は相互作用を持ちます。
例えば、
新型コロナウィルスを抗原認識して
B細胞が抗体を発現するときには
抗体のFcドメインによって他の免疫細胞に影響を与えます。
その免疫は細胞性免疫に影響があるので
液性免疫と細胞性免疫の相互作用が考えられます。
このような事は
ウィルスに限らず、身体の組織に何らの
変化が起こった時に生じることかもしれません。
血管内皮などは常に血液に暴露され
血液は白血球を含むので免疫機能との関連性は高い
と考えられます。
そうした中で血小板によって血栓が生じたり、
今述べた様に酸化LDLの滞留などがあると
ウィルスと同じように
自然免疫、獲得免疫の中で
液性免疫、細胞免疫などが改変されて
その中で組織の状態が変わっていくと考えられます。
その複雑な天秤の中で炎症性が強くなれば
炎症、硬化、癌化などといった
病状の進行が見られると考えました。
そのように考えると
今回新型コロナウィルスによって
免疫の機序が詳しく調べられていますが、
そのメカニズムを詳しく研究して臨床応用することは
アテローム性動脈硬化などの
他の病気の治療にも貢献する可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Cristina Lorenzo, Pilar Delgado, Christian E. Busse, Alejandro Sanz-Bravo, Inmaculada Martos-Folgado, Elena Bonzon-Kulichenko, Alessia Ferrarini, Ileana B. Gonzalez-Valdes, Sonia M. Mur, Raquel Roldán-Montero, Diego Martinez-Lopez, Jose L. Martin-Ventura, Jesús Vázquez, Hedda Wardemann & Almudena R. Ramiro
ALDH4A1 is an atherosclerosis auto-antigen targeted by protective antibodies
Nature (2020)
(2)
Joan T. Merrill, Doruk Erkan, Jerald Winakur & Judith A. James
Emerging evidence of a COVID-19 thrombotic syndrome has treatment implications
Nature Reviews Rheumatology volume 16, pages581–589(2020)
(3)
社会医療法人 社団至誠会
木村病院
様々な病気を引き起こす動脈硬化
(4)
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Atherosclerosis. Nature 407, 233–241 (2000).
(5)
Reardon, C. A. et al.
Effect of immune deficiency on lipoproteins and atherosclerosis in male apolipoprotein E-deficient mice.
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Lymphocytes are important in early atherosclerosis.
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Hansson, G. K. & Hermansson, A.
The immune system in atherosclerosis.
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(8)
医療法人 彩新会
LOX-index検査
(9)
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Oxidized phospholipids are proinflammatory and proatherogenic in hypercholesterolaemic mice.
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