2020年12月4日金曜日

サイトカインを含む免疫機構について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスでは
重症の患者さんにおいて抗体が多く出ていて
免疫細胞の活性化もみられます。
体内に細胞機能や免疫機能を乱すウィルスが多くなると
身体はそれに反応して免疫機能を発揮するので
ウィルスが多くなると
いろんな免疫機能が惹起されやすいともいえます。
一方で
それは体を守るために必要な応答とも考えられます。
従って
今後社会的なリスクを下げていくために
基本的な戦略としては
新型コロナウィルスのように
細胞潜伏性が恐らく低く、
活発に生理機能改変を行うウィルスの場合は、
「体内で数が増える前に数を減らす、増やさない。」
という事が肝要だと考えられます。
そうすると乱される免疫機能も少なくて済むので
免疫機能に対する信号であるサイトカインの異常である
サイトカインストームなどのリスクも小さくなります。
しかし実情では、
いつ感染するかどうかわからないし
無症状の場合もあります。
自覚できる症状の遅れもあるわけですから
ウィルスが増殖する前の初期の治療というのを
確実にするのは基本的には難しいです。
そうするとあらかじめウィルスに対して
増殖を抑える機能がある特異的な抗体を入れておく
ワクチン接種が有効という事になります。

免疫細胞は基本的に血液に乗って全身を監視しているので
脳、肺、肝臓、腎臓、血管、リンパ、
胃腸、関節、心臓、気管、、、
全身の体の疾患に少なくとも一部は関わっています。
従って、自己免疫疾患という自己抗体による
獲得免疫系の異常が生じる体の部位は
上述したように多様にわたります。
免疫細胞は、
単球、リンパ球、好塩基球、好酸球、好中球などに分類され
発現される遺伝子の違いを考慮に入れば
その種類は非常に多様です。
その中で精緻な均衡状態が保たれていると考えられますが、
さらに複雑なのは
細胞同士の相互作用もあれば、
体内を伝達する細胞よりも小さな胞や物質があります。
サイトカインやケモカインなどがありますが、
サイトカインは主に
特定の免疫細胞の活性化に関わっており、
ケモカインは
特定の免疫細胞の引き寄せ(Recruitment)、走化性に
関わっていると考えられます。
(参考文献(1) Table 1より)
従って、
新型コロナウィルスにおいてメディアで
「サイトカインストーム」という言葉を聞いたことが
ある方は多いと思いますが、
サイトカインの量が異常に多くなることによって
いろんな免疫細胞が異常に活性化されるということです。
それによって通常の細胞も攻撃してしまい
組織の炎症を生じさせると理解しています。
他方で、
今述べた様にケモカインが主に引き寄せに関わっていて
サイトカインのように免疫細胞の活性度に対する影響が
小さいのであれば
免疫細胞上にあるケモカイン受容体とリガンドの作用において
細胞内信号があまり生じないのか?
あるいはそうではないのか?
調べる余地はあると思います。
もし、細胞内信号に対する感受性が低ければ、
細胞特異的輸送系統でアンカーとして選択する受容体の
選定に貢献する可能性があると考えます。

このようにサイトカインストームが起こって
免疫機能に異常が生じると
ほとんどの場合、発熱するといわれており
ひどい場合には体温の上昇も顕著になります(1,2)。
また、倦怠感、食欲不振、頭痛、発疹、下痢
関節痛、筋肉痛、不安などの心の状態の変化など
様々な症状との関連が示唆されています(1)。
新型コロナウィルスで見られる症状と重なる部分があり
免疫機能が異常に活性化していることが考えられます。
今まで近いものはあっても
類似性の極めて高いウィルスの感染がないために
ウィルス浸入に対する体の感受性の高さ
というのがあるかもしれません。
このような症状の原因は
上述したように組織のダメージや
急速な細胞内外の生理機能の変化、乱れによる
かもしれないとされています(1)。
身体全体には中枢神経を取り囲むように
末梢神経が全身に伸びていて脳と連結しているので
こういった組織、生理機能の変化は
上述した身体の自覚できる症状とつながると
考えることもできます。

このような組織の炎症は
常に免疫機能を全身に運んでいる血管に及び
血管の閉塞、血栓、低酸素症、低血圧など
血管の不全につながることが懸念されています(1)。
あるいは
新型コロナウィルスの場合は
呼吸器系からの感染が主なので
咳、呼吸促拍、急性呼吸促拍症候群(ARDS)など
呼吸器系の不全につながることも考えられます。
その中で、
サイトカインストームによる
各臓器の影響も考えられますが、
脳に関しては毒性が現れるのがやや遅れる
といわれています。

実際にサイトカインストームが起こっているどうかの
直接的な診断は難しいと言われています。
直接的とはサイトカインそのものの量を測る
ということです。
その理由は、サイトカインの半減期、寿命が短いために
すぐに状態が変わり原理的に解析が難しいこと
が挙げられます(1)。
それはサイトカインが炎症性の組織の周りに
作用しないように(1)体の防御反応として
獲得してきた物性ですが、
それが特定のサイトカインの量を定量化するのを
難しくしています。
従って、診断するときには
サイトカインストームが原因となって起こると考えられる
2次的な症状によって判断します。
・白血球増加、減少
・貧血
・血小板減少
・フェリチン
・Dダイマー
これらです(1)。血液検査で診断します。
従って、
比較的マクロに、普遍的に症状を見るために
サイトカインストームがどの場所が原因で起こっているか
あるいは原因となっている疾患の特定が
これらの測定からは難しいと考えられています(1)。
例えば、新型コロナウィルスで
白血球の増加が血液検査で見られたとしても、
どこの組織に多くウィルスがいて
どの組織が炎症を起こしていてということは
「この検査からは」判断することができません。
従って、臓器の機能を見ていく事になりますが、
その場合においてもその臨床的な軌跡、
つまりどのような流れでそうなったのか?
というのを分析するのは難しいのではないかと考えています。
一方で
サイトカインの寿命が短いことは、
逆手に取るとそれだけ環境の可変性が高いということです。
薬剤や細胞の作用をうまく引き出すことができれば
患部の環境を変えられることを意味しています。
同じようにケモカインの半減期も30分と言われています。
従って、
免疫細胞の活性や分布は可変性が高く
介入の余地が大きいとも言えます。

サイトカインは他の免疫細胞に働きかけますが、
免疫細胞には
・独自に細胞毒性、傷害性を持つものと
・その程度が低い、あるいはないもの
があります。
前者に対して例えば、
細胞毒性を持つT細胞であるCD8+T細胞は
グランザイム、パーフォリンなどの働きによって
標的細胞に穴をあけ、中に入って細胞死を誘導します。
あるいは
ファーゴサイトーシスというウィルスや細菌を食べたり
あるいは死んだ細胞を食べるような働きがある
単球、好中球などがあります。
ひょっとすると感染細胞を生きたまま食べるような
働きもあるかもしれません。
そういった独自に傷害性を持つ細胞が
良い風に働けば、不要な感染細胞を攻撃してくれますが、
悪く働けば、組織の炎症などに繋がります。
それは一つ、細胞の量とも関係すると思いますが、
もう一つとして
同じCD8+T細胞でも発現している遺伝子がいろいろあり
その中には悪い要素が強いものがあると認識しています。
一方、
後者の細胞毒性を独自に持たない細胞は、
主にヘルパー細胞と呼ばれます。
代表的なのはCD4+T細胞です
この細胞はTh1、Th2、Th9、Th17などの型があり
それぞれ前述した細胞間の信号を分泌して
特異的に他の免疫細胞に作用します。
例えば
Th1という新型コロナウィルスのワクチンで
強まる(3)と考えられる獲得免疫では
マクロファージと樹状細胞を引き付けます。
(参考文献(1) Figure 3 参照)
その他にCD8+T細胞、B細胞などの分布もしくは機能にも
サイトカイン(IL-12など)によって寄与します。

また、
マクロファージ、好中球、単球、γδT細胞、
NK細胞は自然免役系と呼ばれます(1,4)。
自然免疫と呼ばれるのは
おそらく抗原認識せずに
パターン認識によって病原体に対する攻撃性を決める
からであると考えています。
従って、免疫の初動を担うと考えられます。
しかし、
新型コロナウィルスでは
リンパ球に対する好中球の量が多くなると
症状が悪化するといわれています(5)。
好中球は一般的に細胞外にタンパク質線維を形成し、
血管の内皮に付着することで血栓の原因となる
といわれています。
またそのたんぱく質によって
サイトカインが惹起されるとも言われています(1)。
従って、
自然免疫の中でも細胞種の均衡状態
あるいは活性の程度などの制御が必要である
ということです。
この自然免疫は炎症などによって
惹起されたサイトカインによって機能が歪められる
ことがあります。
例えば、
NK細胞はサイトカインストームを抑える働きがあり、
免疫機構において重要ですが、
逆に炎症性の強いサイトカインであるIL-6は
NK細胞の機能を弱めることで知られています(1)。

このIL-6というのは
炎症性サイトカインで知られており、
CAR-T細胞療法と呼ばれる
キメラ抗原受容体を任意に細胞外でつけて
白血病などの治療に適用されますが、
その時にこのIL-6が過剰放出されるといわれています(6)。
それによって免疫疾患が生じるとされています。
このようにある程度サイトカインが
基礎研究も含めた積み重ねで特定できている場合は
IL-6を標的とするモノクローナル抗体を入れて
IL-6の機能を弱めることで
このような免疫疾患を緩和することができます(1)。
このCAR-T細胞においては
サイトカインストームを起こさない人もいて
免疫応答に個人差があるといわれています。
その理由として
・CAR-T細胞の構造、受容体設計(7)
・症状の重さ(8)
・患者さんの遺伝子の状態(9)
これらが挙げられています。
従って、
2021年から日本で臨床試験が行われる予定である
iPS細胞を使ったCAR-T細胞治療では(10)
原理的には自分自身の体細胞を使え
表面受容体の制御性も高い(純度が高い)
と言われているので
こういった免疫応答に対するリスクも下げられる
可能性があります。

一般的にウィルスを介さない疾患では
B細胞はサイトカインストームとの関連性は
あまりないといわれていますが、
ウィルス感染時には確認されると言われています(1)。
新型コロナウィルスでも同じですが、
B細胞はウィルスを抗原認識して
それに合うようにIgG抗体を作製します。
そのY字型のIgG抗体の基部はFcドメインと呼ばれ
これがT細胞と結合して作用します。
従って、B細胞から放出された抗体を介した
T細胞への影響によって
サイトカインの状態を変える可能性は考えられます。

/治療に関して/
IL-6のように様々な免疫疾患と関りがある
サイトカインがあります(11,12)。
このように特定のサイトカインによって
免疫暴走が起こっているかというのがわかれば
そのサイトカインに結合して
結合性、機能を弱める
モノクローナル抗体が有効です。
ただ、
サイトカインを含め、免疫機能を抑制するときには
・必要な免疫機能<発現免疫機能
・抗炎症性免疫機能<炎症性免疫機能
・サイトカイン抗炎症性<サイトカイン炎症性 
・ウィルス量の進行性、増加 or 減少
こういった不等号、要因を考える必要があります。
必要な免疫機能が多い場合には
抑えると逆効果になることも考えられます。
新型コロナウィルスで免疫抑制剤である
デキサメタゾンが悪化させるケースというのは
このような軸の関係が上手く整合していない
ということが挙げられると推測しています。
また
Castleman's diseaseのように
IL-6の想定される受容体が信号伝達と整合していないために
モノクローナル抗体が上手く働かない
ということもあります(13)。
つまりIL-6を抑えるにしても
そのエピトープを特異的に認識することは
一つとして大切であると考えられます。

感染症に対する制御不能な生体反応に起因する
生命を脅かすような臓器障害と定義される
「敗血病」があります。
新型コロナウィルスも感染症ですから
それによる臓器障害が敗血病にあたるかどうか?
また
敗血病に関連するサイトカインストームか
あるいはそうではないサイトカインストームか
そのような判断基準は明確にはない
と言われています(1)。
私見としては
一つの要因としては
ウィルスが全身にどれだけ広がっているか
だと考えています。
つまり後者は、
ウィルスは全身には広がっていないけど
雪崩のように免疫機能が乱れることによって
起こっているという事も含まれる
ということです。

以上です。

(参考文献)
(1)
David C. Fajgenbaum, M.D., and Carl H. June, M.D.  
Cytokine Storm
The New England Journal of Medicine 2020;383:2255-73.
(2)
Grupp SA, Kalos M, Barrett D, et al. 
Chimeric antigen receptor-modified T cells for  acute  lymphoid  leukemia. 
N  Engl  J Med 2013; 368: 1509-18.
(3)
Ugur Sahin, Alexander Muik, Evelyna Derhovanessian, Isabel Vogler, Lena M. Kranz, Mathias Vormehr, Alina Baum, Kristen Pascal, Jasmin Quandt, Daniel Maurus, Sebastian Brachtendorf, Verena Lörks, Julian Sikorski, Rolf Hilker, Dirk Becker, Ann-Kathrin Eller, Jan Grützner, Carsten Boesler, Corinna Rosenbaum, Marie-Cristine Kühnle, Ulrich Luxemburger, Alexandra Kemmer-Brück, David Langer, Martin Bexon, Stefanie Bolte, Katalin Karikó, Tania Palanche, Boris Fischer, Armin Schultz, Pei-Yong Shi, Camila Fontes-Garfias, John L. Perez, Kena A. Swanson, Jakob Loschko, Ingrid L. Scully, Mark Cutler, Warren Kalina, Christos A. Kyratsous, David Cooper, Philip R. Dormitzer, Kathrin U. Jansen & Özlem Türeci 
COVID-19 vaccine BNT162b1 elicits human antibody and TH1 T cell responses
Nature volume 586, pages594–599(2020)
(4)
Hashimoto  D,  Chow  A,  Noizat  C,  et  al.  
Tissue-resident  macrophages  self-maintain  locally  throughout  adult  life with minimal contribution from circulating monocytes. 
Immunity 2013; 38: 792-804.
(5)
Arturo Ciccullo et al.
Neutrophil-to-lymphocyte ratio and clinical outcome in COVID-19: a report from the Italian front line
Int J Antimicrob Agents. 2020 Aug; 56(2): 106017.
(6)
Porter DL, Hwang WT, Frey NV, et al. 
Chimeric antigen receptor T cells persist and  induce  sustained  remissions  in  relapsed refractory chronic lymphocytic leukemia. 
Sci Transl Med 2015; 7: 303ra139.
(7)
Xu XJ, Tang YM. 
Cytokine release syndrome  in  cancer  immunotherapy  with chimeric antigen receptor engineered T cells. 
Cancer Lett 2014; 343: 172-8.
(8)
Frey NV, Porter DL. 
Cytokine release syndrome  with  novel  therapeutics  for acute  lymphoblastic  leukemia.  
Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2016; 2016: 567-72.
(9)
Dahmer  MK,  Randolph  A,  Vitali  S, 
Quasney MW. Genetic polymorphisms in sepsis. 
Pediatr Crit Care Med 2005; 6: Suppl: S61-S73.
(10)
武田薬品工業株式会社
京都大学iPS細胞研究所と武田薬品が創製した初のiPS細胞由来CAR-T細胞療法臨床試験に向けた新たなプログラムを開始
(11)
Winkler  U,  Jensen  M,  Manzke  O, Schulz  H,  Diehl  V,  Engert  A.  
Cytokine-release syndrome in patients with B-cell chronic  lymphocytic  leukemia  and  high lymphocyte  counts  after  treatment  with an anti-CD20 monoclonal antibody (rituxi-mab, IDEC-C2B8).
Blood 1999; 94: 2217-24.
(12)
Teachey DT, Rheingold SR, Maude SL, et  al.  
Cytokine  release  syndrome  after blinatumomab  treatment  related  to  abnormal macrophage activation and ameliorated  with  cytokine-directed  therapy. 
Blood 2013; 121: 5154-7.
(13)
Ramaswami R, Lurain K, Peer CJ, et al. 
Tocilizumab  in  patients  with  symptomatic Kaposi sarcoma herpesvirus-associated  multicentric  Castleman  disease. 
Blood 2020; 135: 2316-9.

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